特養(介護老人福祉施設)の加算は、「体制」「入所者の状態とケアの取組」「医療連携と看取り」「感染症対策・生産性向上・処遇改善」の4系統に分けて並べると、自施設で算定していない加算や、該当していないか確かめるべき減算が見つけやすくなります。算定の抜けを埋めることは収入のためだけでなく、夜勤や看護の体制、機能訓練や栄養・口腔のケアを入所者に届けていることを、記録と報酬の両面で示すことにもなります。

この記事では、2026年6月の期中改定で変わった点を確かめたうえで、厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」から特養の代表的な加算と減算を系統ごとに挙げ、最後に棚卸しの手順を示します。2026年9月時点の情報で、すべての加算を網羅したものではありません。単位数は従来型・ユニット型に共通する値を基本とし、入所定員で変わるものは30人以上50人以下の値を載せています。算定要件は、最新の告示と留意事項通知で確かめてください。

2026年6月の期中改定で変わった点

2026年度は、2027年度の改定を待たずに期中改定が行われ、2026年6月に施行されました。特養の加算で単位数や率が変わったのは、介護職員等処遇改善加算です。対象が介護職員から介護従事者に広がり、生産性向上や協働化に取り組む施設向けに上乗せの区分(Ⅰロ・Ⅱロ)が設けられました。このほか、介護保険施設の食費の基準費用額が2026年8月から1日100円引き上げられています。

改定とは別に、協力医療機関連携加算では、協力医療機関との定期的な会議の開催頻度が2026年6月算定分から見直されました。

(参考:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(第253回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1)、介護保険最新情報Vol.1502(令和8年5月8日))

なお、こちらの単位数は2026年6月改定後のものです。

夜勤・看護・介護の配置を評価する体制の加算

勤務表と職員の配置から、算定できるかを確かめやすい系統です。

加算

区分と単位数

算定の単位

夜勤職員配置加算

(Ⅰ)〜(Ⅳ)22〜33単位

1日につき

看護体制加算

(Ⅰ)6単位、(Ⅱ)13単位

1日につき

日常生活継続支援加算

従来型36単位、ユニット型46単位

1日につき

夜勤職員配置加算と看護体制加算の単位数は入所定員30人以上50人以下の場合で、入所定員51人以上または経過的小規模の施設では、夜勤職員配置加算が13〜21単位、看護体制加算が(Ⅰ)4単位・(Ⅱ)8単位と少なくなります。夜勤職員配置加算は、(Ⅰ)(Ⅲ)が従来型、(Ⅱ)(Ⅳ)がユニット型の区分です。

この系統は、月途中の退職や休職で配置が要件を下回っていないかを、毎月の勤務実績で確かめることが大切です。区分ごとの要件は「夜勤職員配置加算」「日常生活継続支援加算」で解説しています。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」)

入所者の状態とケアの取組に応じた加算

機能訓練・褥瘡・排せつ・栄養・口腔・認知症ケアなど、入所者ごとの評価と計画に基づく加算です。

加算

区分と単位数

算定の単位

個別機能訓練加算

(Ⅰ)12単位

1日につき

個別機能訓練加算

(Ⅱ)(Ⅲ)各20単位

1月につき

ADL維持等加算

(Ⅰ)30単位、(Ⅱ)60単位

1月につき

褥瘡マネジメント加算

(Ⅰ)3単位、(Ⅱ)13単位

1月につき

排せつ支援加算

(Ⅰ)10、(Ⅱ)15、(Ⅲ)20単位

1月につき

自立支援促進加算

280単位

1月につき

栄養マネジメント強化加算

11単位

1日につき

口腔衛生管理加算

(Ⅰ)90単位、(Ⅱ)110単位

1月につき

科学的介護推進体制加算

(Ⅰ)40単位、(Ⅱ)50単位

1月につき

認知症チームケア推進加算

(Ⅰ)150単位、(Ⅱ)120単位

1月につき

この系統の加算の多くは、LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出が要件に含まれるため、算定を始める前に提出の体制を整えておく必要があります。LIFEは2026年5月11日から国保中央会(国民健康保険中央会)が運用しており、電子証明書(介護保険証明書または介護DX証明書)を入れた端末でなければ使えない点にも注意してください。どの加算で何を提出するかは「LIFEへの提出が必要な加算の一覧」、科学的介護推進体制加算の要件は「科学的介護推進体制加算の算定要件」で確認できます。

同じ名称の加算でも、サービスによって単位数が異なる場合があります。老健の単位数は「老健(介護老人保健施設)の加算一覧」にまとめています。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、介護保険最新情報Vol.1484)

協力医療機関・配置医師・看取りに関わる加算

加算

区分と単位数

算定の単位

協力医療機関連携加算

3要件を満たす医療機関と連携:50単位

1月につき

協力医療機関連携加算

それ以外の医療機関と連携:5単位

1月につき

配置医師緊急時対応加算

勤務時間外325単位

1回につき

配置医師緊急時対応加算

早朝・夜間650単位、深夜1,300単位

1回につき

協力医療機関連携加算の「3要件」は、相談対応と診療の体制を常時確保し、入院が必要な入所者を原則として受け入れる体制を確保していることです。2026年6月算定分からは、協力医療機関との定期的な会議を、電子的システムで入所者の情報を随時確認できる場合は年1回以上、それ以外は原則年3回以上開くことになりました(入院・往診の件数によっては年1回以上でよい場合があります)。会議の記録と開催頻度を、この要件に合わせて見直してください。詳しくは「協力医療機関連携加算の算定要件」で解説しています。

看取り介護加算は、死亡日から数えた期間ごとに1日あたりの単位数が決まっています。

死亡日以前の期間

看取り介護加算(Ⅰ)

看取り介護加算(Ⅱ)

31日以上45日以下

1日72単位

1日72単位

4日以上30日以下

1日144単位

1日144単位

2日または3日

1日680単位

1日780単位

死亡日

1,280単位

1,580単位

(Ⅱ)は、死亡日以前2日または3日と死亡日の単位数が(Ⅰ)より高い区分です。対象者や施設基準、(Ⅱ)で必要になる配置医師との取り決めは「看取り介護加算とは」で確認できます。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」、介護保険最新情報Vol.1502)

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感染症対策・生産性向上・処遇改善の加算

施設全体の体制や取組を評価する系統です。

加算

区分と単位数

算定の単位

高齢者施設等感染対策向上加算

(Ⅰ)10単位、(Ⅱ)5単位

1月につき

新興感染症等施設療養費

240単位

1日(月1回・連続5日まで)

生産性向上推進体制加算

(Ⅰ)100単位、(Ⅱ)10単位

1月につき

サービス提供体制強化加算

(Ⅰ)22、(Ⅱ)18、(Ⅲ)6単位

1日につき

新興感染症等施設療養費は、厚生労働大臣が指定する感染症にかかった入所者に対応した場合に算定するもので、2024年度改定の資料の時点では指定された感染症はありませんでした。生産性向上推進体制加算の要件は「生産性向上推進体制加算の要件」、サービス提供体制強化加算の職員割合の計算は「サービス提供体制強化加算の算定要件」で解説しています。

介護職員等処遇改善加算は、単位数ではなく、処遇改善加算を除いた加算・減算後の総単位数に加算率をかけて算定します。2026年6月以降の特養の加算率は次のとおりです。

区分

特養の加算率

加算(Ⅰ)イ

16.3%

加算(Ⅰ)ロ

17.6%

加算(Ⅱ)イ

15.9%

加算(Ⅱ)ロ

17.2%

加算(Ⅲ)

13.6%

加算(Ⅳ)

11.3%

上乗せの区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を算定するには、2026年度の特例要件を満たす必要があります。施設サービスでは、生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の取得と実績報告がその1つで、申請の時点では取得の誓約でも算定できます。そのため、生産性向上推進体制加算を算定していない施設は、処遇改善加算の区分とあわせて検討するとよいでしょう。区分ごとの要件と実績報告の期限は「介護職員等処遇改善加算の区分と要件」で確認できます。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」「令和8年度介護報酬改定について」「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)

運営基準に関わる5つの減算

加算とあわせて、次の減算に該当していないかを確かめます。いずれも、委員会の開催や指針・計画の整備など、運営基準で求められる取組ができていない場合に適用されます。

減算

減算される単位数

身体拘束廃止未実施減算

所定単位数の10%

高齢者虐待防止措置未実施減算

所定単位数の1%

業務継続計画未策定減算

所定単位数の3%

安全管理体制未実施減算

1日につき5単位

栄養管理の基準を満たさない場合

1日につき14単位

このほか、夜勤を行う職員の勤務条件基準を満たさない場合やユニットケアの体制が整っていない場合は所定単位数の97%、入所定員の超過や介護・看護職員などの人員欠如の場合は70%で算定します。減算の仕組みと月ごとの確認のしかたは「介護の減算とは」で解説しています。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」)

算定中の加算の棚卸しと未算定の加算の確認手順

  1. 直近の請求明細と、指定権者に出している体制届(介護給付費算定に係る体制等状況一覧表)から、算定中の加算と減算を書き出す。届出はしているのに請求していない加算が見つかることがあるので、請求明細だけで済ませないようにします。
  2. 書き出した加算を、この記事の4系統の表に振り分け、自施設で算定していない加算に印を付ける。この記事の表は代表例のため、初期加算・療養食加算・経口維持加算・認知症専門ケア加算・安全対策体制加算なども算定構造で確かめてください。
  3. 印を付けた加算は、告示と留意事項通知で算定要件を確かめ、職員配置・記録・計画書で満たせているかを見る。単位数だけで判断せず、LIFEへの提出や計画書の作成が要件に含まれていないかも確かめます。
  4. 算定を始める加算は、体制届を指定権者に出す。特養では、届出が受理された日が属する月の翌月(受理日が月の初日なら当月)から算定できます。月末に出して書類の補正が入ると、受理が翌月にずれて開始が1か月遅れることがあるので、余裕をもって提出します(詳しくは「介護加算はいつから算定できるか」)。
  5. 5つの減算に該当していないかを、委員会の議事録・研修の記録・指針や業務継続計画で確かめる。取組をしていても記録が残っていないと、運営指導で確認できないので、実施した日と内容を残します。

取りこぼしが起きやすい場所と資料の突き合わせ方は、「介護加算の取りこぼしの見つけ方」でも解説しています。

まとめ

特養の加算は、体制・入所者の状態とケアの取組・医療連携と看取り・感染症対策や処遇改善の4系統に分けると、算定中の加算と未算定の加算を見比べやすくなります。出発点は、直近の請求明細と体制届から算定中の加算と減算を書き出すことです。そのうえで、未算定の加算の要件を告示と留意事項通知で確かめ、配置や記録で満たせるものから届出の準備を進めてください。老健など他のサービスの加算は、それぞれの加算一覧の記事で確認してください。

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参考