加算の取りこぼしとは、要件を満たせる体制があるのに、算定できていない状態です。起きやすい場所は4つあります。届出をしていない加算と、届出済みでも下位の区分で止まっている加算です。改定で新設・拡充された加算と、届出が要らず記録から対象者を拾う加算もあります。
見つけるには、算定構造・届出控え・請求明細の3つの資料を使います。加算名の順に並べて、差を探します。取りこぼしを拾えれば、すでに提供しているサービスや整えている体制が報酬に反映されます。その報酬は、職員の処遇や体制の維持に充てる財源になります。
この記事では、4つの場所の見分け方と、資料の突き合わせの手順を扱います。届け出る前に要件を確かめる自己診断の表と、着手の順番も整理します(2026年10月時点)。なお、届出済みの加算が請求に載っていない「算定漏れ」は、別の記事で扱っています。点検の手順は「介護報酬の算定漏れチェック」をご覧ください。
取りこぼしが 出やすい 4つの 場所
加算は、届出が要るかどうかと、区分があるかどうかで、取りこぼし方が変わります。届出の項目は、厚生労働省の通知で決まっています。「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」に掲げる項目です。一覧表に項目がある加算は、届出をしてから算定します。項目がない加算は、要件を満たした利用者ごとに、記録をもとに算定します。訪問介護の初回加算や緊急時訪問介護加算が、その例です。
取りこぼしの場所 | どういう状態か | 突き合わせで見える差 |
|---|---|---|
未届出の加算 | 要件を満たせる体制があるのに、届出をしていない | 算定構造にあって、届出控えにない |
下位の区分で止まっている加算 | 届出済みだが、区分(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲなど)が、要件を満たせる区分より下のまま | 届出控えの区分と、要件を満たせる上位の区分が違う |
改定で新設・拡充された加算 | 改定で対象や区分が変わったのに、届出や区分を見直していない | 最新の算定構造にあって届出控えにない、または区分が違う |
届出が要らない加算 | 対象の利用者がいても、記録から拾えていない | 一覧表に項目がなく、請求明細にも載っていない |
上の3行は、届出控えと算定構造を比べると見つかります。最後の行は、請求明細と利用者の記録を見ないと見つかりません。下位の区分の例として、通所介護のサービス提供体制強化加算を見ます。2026年6月時点の算定構造では、(Ⅰ)が1回につき22単位です。(Ⅱ)は18単位、(Ⅲ)は6単位です。届出でも、(Ⅰ)〜(Ⅲ)のどれに該当するかを記載します。そのため、職員の割合が上位の区分の要件に届いたら、区分を変える届出が必要になります。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、同「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」)
算定 構造・ 届出 控え・ 請求 明細の 突き 合わせ 手順
- 自事業所のサービスの算定構造から、加算と区分を一覧にします。よくある失敗は、改定前の算定構造を使うことです。2026年6月の改定後の版で確かめます。
- 届出控え(体制等状況一覧表の控え)から、届出済みの加算と区分を書き写します。よくある失敗は、指定を受けたときの控えだけを見ることです。その後に出した変更の届出も含めて、最新の状態にします。
- 直近の数か月分の請求明細から、実際に請求している加算と区分を書き写します。よくある失敗は、1か月分だけで判断することです。対象の利用者が月によって変わる加算は、1か月分では見落とします。
- 3つを加算名の順に並べ、上の表の「突き合わせで見える差」に当てはまる加算に印を付けます。よくある失敗は、一覧表に項目がない加算を候補から外すことです。届出控えにないという理由で、外してしまいます。これらは請求明細と記録で確認します。
- 印を付けた加算ごとに、要件を分類して満たしているかを確かめます(次の節)。よくある失敗は、加算の名前だけで「うちは取れる」と判断することです。
「満たしている」と 判断する 前の 要件の 確認
候補の加算は、要件を1つずつ、根拠になる記録で確かめてから届け出ます。厚生労働省の運営指導マニュアルは、要件を誤解していた場合の扱いを示しています。算定要件を誤って理解し、要件を1つでも満たしていなかった場合です。その加算について、自己点検のうえ過誤調整を行うよう指導するとしています。取りこぼしを急いで取り戻すより、要件を満たす体制を先に確かめます。そのほうが、あとの手戻りを減らせます。
この確認は、加算の自己診断として表にすると進めやすくなります。要件を分類ごとに分解し、2つの列に○か×を付けます。「満たしているか」と「示す資料があるか」の2列です。
要件の分類 | 確かめる質問 | 満たしているか | 示す資料があるか(資料の例) |
|---|---|---|---|
人員 | 直近の勤務実績で、必要な職種・人数・割合を満たしているか | ○か× | ○か×(勤務表、資格証の写し) |
設備 | 要件にある設備や備品がそろっているか | ○か× | ○か×(平面図、機器の導入記録) |
実施内容と記録 | 計画書や会議の記録が、要件どおりの内容と頻度で残っているか | ○か× | ○か×(計画書、会議録、サービス提供記録) |
データの提出 | LIFEなどへの提出が要件の場合、提出できる体制があるか | ○か× | ○か×(提出の担当表、評価の記録) |
届出と請求 | 届出の書類がそろい、請求ソフトに区分を登録できるか | ○か× | ○か×(体制等状況一覧表、請求ソフトの設定画面) |
利用者への説明 | 算定の開始を、利用者と居宅介護支援事業者に知らせる段取りがあるか | ○か× | ○か×(説明の文書、重要事項説明書) |
診断の表は、検討する加算ごとに1枚作ります。行は、その加算の要件に合わせて足したり削ったりします。下の2行は要件そのものではなく、算定を始めるための準備です。資料の列には、資料の名前と保管場所も書き込みます。よくある失敗は、資料を開かずに「行っているはず」と考えて○を付けることです。どちらかの列に×が付いた要件が、届出の前に整える箇所になります。×は、数だけでなく、埋めるのにかかる期間でも分けて見ます。職員の採用や資格の取得は、短い期間では埋まりません。一方、記録の様式づくりは、すぐに整えられます。
診断で○が並んでも、算定してよいと決まるわけではありません。診断の結果は、準備の順番と、届出先に確かめる点を決める材料です。解釈に迷う要件は、自事業所だけで判断しません。届出先の都道府県または市町村に確認してください。記入した表は、資料の名前と保管場所を書いたまま残します。運営指導では、加算の適合性を、基本的に算定要件にかかる文書等で確認するためです。
要件の一覧は、厚生労働省の「各種加算等自己点検シート」を下敷きにできます。居宅サービス11種類と居宅介護支援の分が掲載されています。ただし、掲載されているのは2024年度の報酬改定に対応した版です。2026年6月の改定で変わった加算は、要件を別に確かめます。要件の細部は、単位数表・大臣基準告示・留意事項通知の順に読むと確かめやすくなります。読み方は「介護加算の算定要件の調べ方」で解説しています。算定を始めたあとの点検は「介護加算の自己点検のやり方」で扱っています。
(参考:厚生労働省「介護保険施設等 運営指導マニュアル」Ⅰ 基本編 第3章 第2節 運営指導、同「各種加算等自己点検シートについて」)
2026年 6月に 見直された 処遇 改善 加算の 区分の 確認
改定で新設・拡充された加算の代表が、介護職員等処遇改善加算です。2026年6月の改定で、対象と区分が大きく変わりました。対象は、介護職員のみから介護従事者に広がりました。生産性向上や協働化に取り組む事業者向けに、上乗せの区分が設けられました。加算Ⅰロ・Ⅱロです。訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等には、加算が新設されました。これらは、これまで対象外だったサービスです。
届出控えの区分と照らして、上乗せの区分に届くかを確かめます。新設の対象となったサービスの事業所は、加算を届け出ているかも確認します。区分ごとの要件と加算率は、「介護職員等処遇改善加算の区分と要件」で整理しています。
(参考:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」)
着手の 順番の 決め方
候補の加算は、準備の大きさで3つに分けると、着手の順番を決めやすくなります。
準備の大きさ | 加算の状態 | 次にすること |
|---|---|---|
すぐ届け出られる | 要件を満たしていて、書類がそろっている | 算定を始めたい月に間に合うように届け出る |
準備すれば届く | 人員配置・研修・記録様式の整備で要件を満たせる | 担当者と期限を決めて準備する |
見送りを検討する | 必要な体制の負担に対して、収入が見合わない | 収入と負担を同じ表で比べてから判断する |
収入と負担の比べ方は、「介護加算の費用対効果」で解説しています。
届出は、算定を始めたい月から逆算して出します。まず、算定したい月から届出の日を決めます。次に、×の付いた要件を整える期間をさかのぼって、準備を始める日を決めます。届出の日と算定を始められる月の関係は、サービスによって異なります。併設する別のサービスの決まりで締切を考えるのが、よくある失敗です。利用者への説明は、算定を始める前に済ませます。サービスごとの期限は、「介護加算はいつから算定できるか」で確かめてください。
まとめ
加算の取りこぼしは、4つの場所に出ます。未届出の加算と、下位の区分で止まっている加算が、そのうちの2つです。残りは、改定で新設・拡充された加算と、届出が要らない加算です。出発点は、3つの資料を手元にそろえることです。最新の算定構造、届出控え、直近の数か月分の請求明細です。3つを加算名の順に並べて、差に印を付けます。候補の加算は、○×の表と根拠の記録で要件を確かめます。そのうえで、準備の大きさに応じて届出の予定を立ててください。

