訪問介護の加算は、訪問の時間帯や人数で決まるもの、緊急の訪問や利用開始時の対応で決まるもの、他職種との連携や認知症ケアで決まるもの、事業所の体制を評価する特定事業所加算、事業所や利用者の所在地で決まる地域の加算、介護職員等処遇改善加算の6つに分けると整理できます。所定単位数に対する割合で決まる加算が多く、特定事業所加算と処遇改善加算は区分によって割合が大きく変わります。訪問入浴介護や訪問看護にあるサービス提供体制強化加算は訪問介護の算定構造になく、職員の体制は特定事業所加算で評価されます。研修や緊急時の対応といった体制を保って算定することは、利用者が自宅での生活を続けるための支えを保つことにもなります。
この記事では、厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」と単位数表の告示をもとに、訪問介護費の加算と減算をすべて載せています。あわせて、基本の単位数、緊急時訪問介護加算と初回加算の要件、特定事業所加算の区分ごとの要件、介護職員等処遇改善加算の加算率と2026年6月の見直し、同一建物の減算の区分、算定中の加算の点検手順を扱います。要支援の利用者への訪問介護は介護予防・日常生活支援総合事業(第一号訪問事業)で行われ、介護予防サービスの算定構造に訪問介護はないため、この記事では扱いません。算定要件の細部は告示と留意事項通知で確かめてください(調べる順番は「介護加算の算定要件の調べ方」で解説しています)。なお、こちらの単位数は2026年6月改定後のものです。
一覧を 読む前に 押さえる 3つの 点
1つ目は算定の単位です。基本の単位数と、時間帯・人数・緊急時の加算、特定事業所加算、地域の加算は1回につき、認知症専門ケア加算は1日につき、初回加算と生活機能向上連携加算は1月につき算定します。口腔連携強化加算は1回につき算定しますが、1月に1回までです。割合で決まる加算と減算は基本の単位数(所定単位数)に掛けて計算し、介護職員等処遇改善加算だけは、ほかの加算・減算を反映した1月の合計に加算率を掛けます。
2つ目は体制届です。一覧の「体制届」の列が「必要」の加算は、指定権者に「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」を提出していなければ算定できません。訪問介護の一覧表には、各表で「必要」とした加算のほか、共生型サービスの提供、同一建物減算、高齢者虐待防止措置・業務継続計画の有無(減算型か基準型か)の項目があり、特定事業所加算は「Ⅴ以外」と「Ⅴ」の2項目に分かれています。単位数が増える加算は、届出が毎月15日以前なら翌月から、16日以降なら翌々月から算定を始めます。届出の流れは「介護加算の届出(体制届)の流れ」、算定開始月の考え方は「介護加算はいつから算定できるか」で解説しています。
3つ目は区分支給限度基準額との関係です。特別地域訪問介護加算、中山間地域等の2つの加算、介護職員等処遇改善加算は、限度額管理の対象外です。同一建物の利用者への減算を受ける場合は、限度額の計算に減算前の単位数を算入します。ケアマネジャー(介護支援専門員)と給付管理の単位数を突き合わせるときは、この扱いを前提にしてください。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」の別紙様式(別紙1-1)、平成12年老企第36号 第1の1(6))
加算を算定の単位・届出の要否・限度額管理の3つの軸で見る方法は、「介護報酬の加算一覧の見方」で解説しています。
加算の 土台になる 基本の 単位数
訪問介護費は、身体介護、生活援助、通院等乗降介助の3つに分かれ、身体介護と生活援助は所要時間の区分で単位数が決まります。所要時間は、実際にかかった時間ではなく、訪問介護計画に位置付けた内容の訪問介護を行うのに要する標準的な時間です。
区分 | 所要時間 | 単位数 |
|---|---|---|
身体介護 | 20分未満 | 163単位 |
身体介護 | 20分以上30分未満 | 244単位 |
身体介護 | 30分以上1時間未満 | 387単位 |
身体介護 | 1時間以上 | 567単位に、30分を増すごとに82単位を加算 |
生活援助 | 20分以上45分未満 | 179単位 |
生活援助 | 45分以上 | 220単位 |
通院等乗降介助 | 1回(片道)につき | 97単位 |
生活援助は、一人暮らしの利用者や、同居する家族等が障害や疾病などで家事を行うことが難しい利用者が対象です。通院等乗降介助は、訪問介護員等が自分で運転する車両への乗車・降車の介助と、乗車前や降車後の移動の介助、受診の手続きなどを行った場合に算定し、運転中の時間は対象になりません。
前回の訪問からおおむね2時間未満の間隔で次の訪問を行った場合は、緊急時訪問介護加算を算定する場合などを除き、所要時間を合算して1回として算定します。20分未満の身体介護を2時間空けずに繰り返す頻回の訪問には、利用者の状態や24時間の連絡体制などの要件があり、体制届の「定期巡回・随時対応サービスに関する状況」の届出も要ります。
なお、利用者が短期入所生活介護、特定施設入居者生活介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護などを受けている間は、訪問介護費を算定しません。標準的な時間と実際の時間が大きくずれた状態が続いているときは、計画の見直しをケアマネジャーと調整してください。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第19号)、老企第36号 第2の2(4)〜(7))
訪問の 時間帯と 人数で 決まる 加算
加算 | 単位数 | 主な条件 | 体制届 |
|---|---|---|---|
夜間・早朝の加算 | 1回につき所定単位数の25% | 夜間(18時〜22時)または早朝(6時〜8時)に訪問 | 不要 |
深夜の加算 | 1回につき所定単位数の50% | 深夜(22時〜翌6時)に訪問 | 不要 |
2人の訪問介護員等による場合 | 所定単位数の200%で算定 | 利用者や家族の同意を得て、同時に2人で身体介護または生活援助を実施 | 不要 |
身体介護に引き続く生活援助 | 生活援助の所要時間が20分から起算して25分を増すごとに65単位(195単位が上限) | 20分以上の身体介護と20分以上の生活援助を続けて実施 | 不要 |
夜間・早朝・深夜の加算は、居宅サービス計画または訪問介護計画のうえで、サービスの開始時刻が対象の時間帯にある場合に算定します。ただし、長時間の利用で、対象の時間帯にかかる時間が全体のごくわずかな場合は算定できません。
2人の訪問介護員等による場合は、利用者や家族の同意に加えて、利用者の身体的理由で1人での介護が難しい場合、暴力行為や著しい迷惑行為などがある場合、これらに準ずる場合のいずれかに当たることが要件です。体重が重い利用者の入浴介助などが例に挙げられています。単に安全確保のために深夜に2人で訪問しただけでは、利用者側の希望で同意を得た場合を除き、算定できません。
身体介護に引き続く生活援助は、生活援助が20分以上で65単位、45分以上で130単位、70分以上で195単位を、身体介護の単位数に加えます。身体介護と生活援助の順序は問いませんが、計画を作る段階で内容を身体介護と生活援助に分け、それぞれの標準的な時間を決めておく必要があります。20分未満の身体介護では、緊急時訪問介護加算を算定する場合を除き、この加算は使えません。
これらは訪問のたびに算定の有無が変わります。訪問の時刻や同行者を正確に記録することは、算定の根拠になるだけでなく、利用者に計画どおりのサービスが届いているかを事業所として確かめることにもなります。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」、「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年厚生労働省告示第94号)第3号、老企第36号 第2の2(3)(12)(13))
緊急時 訪問 介護 加算と 初回 加算の 単位数と 要件
加算 | 単位数 | 主な条件 | 体制届 |
|---|---|---|---|
緊急時訪問介護加算 | 1回につき100単位 | 利用者や家族の要請を受け、居宅サービス計画にない身体介護を24時間以内に実施 | 不要 |
初回加算 | 1月につき200単位 | 新規に訪問介護計画を作成した利用者に、サービス提供責任者が初回の月に訪問または同行 | 不要 |
緊急時訪問介護加算の対象は、身体介護が中心の訪問だけです。あらかじめ居宅サービス計画に位置付けられた日時以外の時間帯に、利用者や家族からの要請を受けてから24時間以内に行った場合に、1回の要請につき1回算定します。サービス提供責任者が事前にケアマネジャーと連携し、ケアマネジャーが必要と判断していることが前提ですが、やむを得ず事前に連携できなかった場合も、事後にケアマネジャーが必要だったと判断すれば算定できます。
この加算の対象になる訪問は、所要時間が20分未満でも身体介護の20分未満の単位数と加算を算定でき、前後の訪問との間隔が2時間未満でも所要時間を合算しません。所要時間は、要請の内容からケアマネジャーが判断します。提供した場合は、要請のあった時間、要請の内容、提供時刻、この加算の対象であることを記録します。
初回加算は、新規に訪問介護計画を作成した利用者について、サービス提供責任者が初回の訪問か、初回の訪問と同じ月の訪問を自分で行った場合、または他の訪問介護員等がその月に行う訪問に同行した場合に算定します。対象は、過去2月間(暦月)にその事業所から訪問介護の提供を受けていない利用者です。同行した場合はその旨を記録します。同行するサービス提供責任者は訪問の最後まで滞在する必要はなく、利用者の状況を確認したうえで途中で離れても算定できます。
どちらも体制届は要りませんが、サービス提供責任者の関わりを示す記録が算定の根拠になるので、緊急の要請の経過と初回の月の訪問・同行の記録を、利用者ごとに請求内容と照合してください。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」、老企第36号 第2の2(20)(21))
他職種との 連携と 認知症 ケアの 加算
加算 | 単位数 | 主な条件 | 体制届 |
|---|---|---|---|
生活機能向上連携加算(Ⅰ) | 1月につき100単位(初回の訪問介護を行った月) | リハビリテーション事業所等の理学療法士等の助言に基づいて訪問介護計画を作成し、訪問介護を実施 | 不要 |
生活機能向上連携加算(Ⅱ) | 1月につき200単位(初回の訪問介護を行った月から3月間) | リハビリテーション事業所等の理学療法士等と利用者の状況を共同で評価して訪問介護計画を作成し、訪問介護を実施 | 不要 |
口腔連携強化加算 | 1回につき50単位(1月に1回まで) | 口腔の健康状態を評価し、利用者の同意を得て歯科医療機関とケアマネジャーに情報提供 | 必要 |
認知症専門ケア加算(Ⅰ) | 1日につき3単位 | 日常生活自立度Ⅱ以上の認知症の利用者に専門的な認知症ケアを実施 | 必要 |
認知症専門ケア加算(Ⅱ) | 1日につき4単位 | 日常生活自立度Ⅲ以上の認知症の利用者に専門的な認知症ケアを実施 | 必要 |
生活機能向上連携加算で連携する相手は、訪問リハビリテーション事業所、通所リハビリテーション事業所、リハビリテーションを実施している医療提供施設の医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下、理学療法士等)です。(Ⅰ)は、理学療法士等が利用者の自宅を訪問せずに状況を把握して助言する場合、(Ⅱ)は、理学療法士等の訪問にサービス提供責任者が同行するか、それぞれが訪問したあとに共同でカンファレンスを行う場合の区分で、同時には算定できません。(Ⅱ)を3月を超えて算定するには、もう一度共同で評価して計画を見直す必要があるため、計画を作成した月を利用者ごとに控えておきます。
口腔連携強化加算は、歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関の歯科医師や歯科衛生士に相談できる体制を確保し、文書等で取り決めていることが事業所の基準です。ほかの介護サービス事業所が同じ利用者にこの加算を算定している場合は、算定できません。
認知症専門ケア加算は、(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらか一方だけを算定します。(Ⅰ)は、利用者のうち日常生活自立度Ⅱ以上の人が2分の1以上であること、認知症介護実践リーダー研修などの修了者を配置してチームでケアを行っていること、認知症ケアに関する会議を定期的に開いていることが基準です。(Ⅱ)は、自立度Ⅲ以上の人が100分の20以上であることや、認知症介護指導者養成研修などの修了者の配置が基準に入ります。利用者の割合は毎月記録し、基準を下回っていないかを確かめてください。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」、「厚生労働大臣が定める基準」(平成27年厚生労働省告示第95号)第3号の3・第3号の4、老企第36号 第2の2(22)〜(24))
特定 事業所 加算の 割合と 区分ごとの 算定 要件
特定事業所加算は、事業所の体制、職員の資格や経験、重度の利用者への対応を評価する加算で、区分に応じた割合を訪問1回ごとに加算します。要件は、体制要件、人材要件、重度要介護者等対応要件の3つに分かれ、区分によって必要な組合せが違います。
区分 | 加算の割合 | 体制要件 | 人材要件 | 重度要介護者等対応要件 | 体制届 |
|---|---|---|---|---|---|
特定事業所加算(Ⅰ) | 1回につき所定単位数の20% | 必要 | 訪問介護員等要件とサービス提供責任者要件の両方 | 必要 | 必要 |
特定事業所加算(Ⅱ) | 1回につき所定単位数の10% | 必要 | 訪問介護員等要件とサービス提供責任者要件のどちらか | 不要 | 必要 |
特定事業所加算(Ⅲ) | 1回につき所定単位数の10% | 必要 | サービス提供責任者の上乗せ配置と勤続年数要件のどちらか | 必要 | 必要 |
特定事業所加算(Ⅳ) | 1回につき所定単位数の3% | 必要 | サービス提供責任者の上乗せ配置と勤続年数要件のどちらか | 不要 | 必要 |
特定事業所加算(Ⅴ) | 1回につき所定単位数の3% | 必要(中山間地域等の利用者への提供に関する基準が加わる) | 不要 | 不要 | 必要 |
体制要件は、すべての区分に共通です。訪問介護員等とサービス提供責任者の一人ひとりに研修計画を作って研修を実施(または予定)していること、利用者の情報や留意事項の伝達、技術指導のための会議を定期的に開いていること、サービス提供責任者が担当の訪問介護員等に利用者の情報と留意事項を文書等で伝えてから訪問を始め、終了後に報告を受けていること、すべての訪問介護員等に健康診断等を定期的に実施していること、緊急時等の対応方法を利用者に明示していることの5つです。会議は登録ヘルパーを含む全員が参加しておおむね1月に1回以上開き、健康診断等は少なくとも1年以内ごとに1回、事業主の費用負担で実施します。
人材要件のうち訪問介護員等要件は、訪問介護員等の総数のうち介護福祉士が30%以上であるか、介護福祉士・実務者研修修了者・介護職員基礎研修課程修了者・1級課程修了者の合計が50%以上であることです。サービス提供責任者要件は、すべてのサービス提供責任者が、実務経験3年以上の介護福祉士か、実務経験5年以上の実務者研修修了者・介護職員基礎研修課程修了者・1級課程修了者であることで、基準上サービス提供責任者を1人を超えて置く事業所では、常勤のサービス提供責任者を2人以上配置します。(Ⅲ)と(Ⅳ)の人材要件は別の内容で、基準上の常勤のサービス提供責任者が2人以下の事業所が基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置しているか、訪問介護員等の総数のうち勤続7年以上の人が30%以上であることです。
重度要介護者等対応要件は、次のどちらかを満たすことです。1つは、利用者の総数のうち、要介護4・5の人、日常生活自立度Ⅲ以上の認知症の人、たんの吸引等を必要とする人(登録を受けてたんの吸引等を行う事業所に限って数える)の割合が20%以上であることです。もう1つは看取り期の対応で、病院・診療所・訪問看護ステーションの看護師と連携した24時間の連絡体制、看取り期の対応方針の説明と同意、多職種の協議による方針の見直し、看取りに関する職員研修を整えたうえで、前年度または直近3月間に看取り期の利用者が1人以上いることです。
(Ⅴ)は、体制要件に加えて、通常の事業の実施地域のうち中山間地域等に住み、居宅と最寄りの訪問介護事業所との距離が7キロメートルを超える利用者に継続的に訪問介護を提供していること、利用者の心身の状況や家族等の環境の変化に応じて、訪問介護員等やサービス提供責任者などが共同で訪問介護計画を随時見直していることが基準です。
(Ⅰ)から(Ⅳ)まではどれか1つだけを算定し、(Ⅴ)は(Ⅰ)から(Ⅳ)までのいずれかと同時に算定できます。ただし、(Ⅴ)は地域の3つの加算のいずれかを算定している場合は算定できません。職員や利用者の割合は、前年度(3月を除く)または届出月の前3月の平均で判定します。前3月の実績で届け出た事業所は、届出のあとも直近3月間の割合を毎月記録し、所定の割合を下回ったらすぐに届出を出します。未算定の事業所は、体制要件の5つがそろっているかを先に確かめ、次に職員と利用者の割合を計算して、届け出られる区分を見てください。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」、「厚生労働大臣が定める基準」第3号、老企第36号 第2の2(14))
事業所や 利用者の 所在地で 決まる 地域の 加算
加算 | 単位数 | 主な条件 | 体制届 |
|---|---|---|---|
特別地域訪問介護加算 | 1回につき所定単位数の15% | 大臣が定める地域にある事業所の訪問介護員等が訪問 | 必要 |
中山間地域等における小規模事業所加算 | 1回につき所定単位数の10% | 大臣が定める地域にあり、1月当たりの延べ訪問回数が200回以下の事業所が訪問 | 必要 |
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 1回につき所定単位数の5% | 大臣が定める地域に住む利用者に、通常の事業の実施地域を越えて訪問 | 不要 |
3つの加算は限度額管理の対象外で、特定事業所加算(Ⅴ)を算定している場合は算定できません。
中山間地域等における小規模事業所加算の延べ訪問回数は、前年度(3月を除く)の1月当たりの平均で判定し、毎月記録して、所定の回数を上回った場合はすぐに届出を出します。留意事項通知では、訪問介護に限り当分の間、前年度のいずれかの月の総訪問回数がおおむね200回以下の場合も算定でき(「おおむね200回」は400回程度を想定)、地域区分が「その他」以外の地域にある事業所も算定できるとされています。算定する場合は、利用者に事前に説明して同意を得ます。
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算を算定する利用者からは、通常の事業の実施地域を越えるための交通費の支払いを受けることができません。事業所の所在地や利用者の住所が対象の地域に当たるかは、指定権者に確かめてください。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」、「厚生労働大臣が定める施設基準」(平成27年厚生労働省告示第96号)第1号、老企第36号 第2の2(17)〜(19)、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」の別紙様式(別紙1-1))
介護 職員等 処遇 改善 加算の 6区分の 加算率と 2026年 6月の 見直し
介護職員等処遇改善加算は、基本の単位数にほかの加算・減算を反映した1月の単位数(算定構造のイからトまでの合計)に、区分ごとの加算率を掛けて算定します。算定には体制届と処遇改善計画書の提出が必要です。訪問介護の加算率と、区分ごとの主な要件は次のとおりです。どの区分も、加算額に相当する賃金改善を行うことが前提です。
区分 | 訪問介護の加算率(2026年6月以降) | 2026年4・5月の区分と加算率 | 主な要件(下の区分との違い) |
|---|---|---|---|
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ | 27.0% | 加算(Ⅰ)24.5% | 加算(Ⅱ)イの要件に加えて、特定事業所加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出 |
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)ロ | 28.7% | なし(2026年6月に新設) | 加算(Ⅰ)イの要件に加えて、2026年度特例要件 |
介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)イ | 24.9% | 加算(Ⅱ)22.4% | 加算(Ⅲ)の要件に加えて、経験・技能のある介護職員のうち1人は賃金改善後の年額が440万円以上であることと、職場環境等の取組の公表 |
介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)ロ | 26.6% | なし(2026年6月に新設) | 加算(Ⅱ)イの要件に加えて、2026年度特例要件 |
介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) | 20.7% | 加算(Ⅲ)18.2% | 加算(Ⅳ)の要件に加えて、経験や資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準で定期に昇給を判定する仕組み |
介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) | 17.0% | 加算(Ⅳ)14.5% | 任用要件・賃金体系の整備と研修の実施、職場環境等要件、加算(Ⅳ)相当額の2分の1以上を基本給か毎月の手当に充てること |
2026年6月の期中改定で変わった点は3つあります。1つ目は、加算の対象が介護職員から介護従事者に広がり、すべての区分で加算率が引き上げられたことです。2つ目は、生産性向上や協働化に取り組む事業所向けに加算(Ⅰ)ロと(Ⅱ)ロが新設され、それまでの加算(Ⅰ)・(Ⅱ)が(Ⅰ)イ・(Ⅱ)イになったことです。3つ目は、申請の事務負担に配慮した措置で、2026年度特例要件を満たす事業所は、任用要件や昇給の仕組みなどの要件を2027年3月末までに整えると処遇改善計画書で誓約すれば、申請の時点から満たしたものとして扱われます。
ロの区分に必要な2026年度特例要件は、訪問介護の場合、ケアプランデータ連携システムを利用していること、または法人が社会福祉連携推進法人に所属していることです。ケアプランデータ連携システムは、申請の時点で利用していなくても、加入して利用することを誓約すれば要件を満たすものとして扱われ、その場合は2027年3月末までに利用を始めて、実績報告書で利用実績を報告します。
加算(Ⅰ)のイ・ロは特定事業所加算の(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が要件なので、特定事業所加算の区分を(Ⅲ)以下に変える場合や取り下げる場合は、2つの届出をあわせて見直してください。区分の選び方と実績報告の期限は「介護職員等処遇改善加算の区分と要件」、システムの概要は「ケアプランデータ連携システムとは?」で解説しています。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「令和8年度介護報酬改定について」、「厚生労働大臣が定める基準」第4号、「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月13日老発0313第6号))
同一 建物の 利用者への 減算の 4つの 区分
事業所と同じ建物や近くの建物に住む利用者への訪問は、建物の位置と利用者の人数、事業所の利用者に占める割合によって、次の4つの区分で減算されます。
区分 | 減算の内容 | 対象になる利用者 |
|---|---|---|
同一敷地内建物等の利用者(割合90%以上の事業所の区分と50人以上の区分を除く) | 1回につき所定単位数の90%で算定 | 事業所と同じ敷地内や隣接する敷地内の建物、または事業所と同じ建物に住む利用者 |
同一敷地内建物等以外で利用者が20人以上住む建物の利用者 | 1回につき所定単位数の90%で算定 | 事業所の利用者が1月当たり20人以上住む建物(同一敷地内建物等を除く)に住む利用者 |
同一敷地内建物等の利用者の割合が90%以上の事業所 | 1回につき所定単位数の88%で算定 | 正当な理由なく割合が90%以上になった事業所の、同一敷地内建物等に住む利用者(50人以上の区分を除く) |
同一敷地内建物等に利用者が50人以上住む場合 | 1回につき所定単位数の85%で算定 | 事業所の利用者が1月当たり50人以上住む同一敷地内建物等に住む利用者 |
同一敷地内建物等は、建物の管理・運営法人が事業者と違っていても対象です。利用者数は、暦月の1日ごとの利用者の合計をその月の日数で割った平均(小数点以下切り捨て)で数えます。20人以上の区分では、総合事業の第一号訪問事業を一体的に運営している場合、その利用者も含めて数えます。
88%の区分は、年2回の判定期間ごとに、訪問介護を提供した利用者(実人員)のうち同一敷地内建物等に住む利用者の割合を計算して判定します。前期(3月1日〜8月31日)の割合が90%以上なら10月1日から翌年3月31日まで、後期(9月1日〜2月末日)の割合が90%以上なら4月1日から9月30日までが減算の期間です。同一敷地内建物等の利用者に訪問している事業所は、前期は9月15日まで、後期は3月15日までに計算の書類を作り、90%以上の場合は指定権者に提出し、90%未満の場合も2年間保存します。特別地域訪問介護加算を受けている事業所や、判定期間の1月当たりの延べ訪問回数が200回以下の事業所などは、正当な理由の例に挙げられています。
入居者の増減や転居で区分が変わるため、利用者の住所と建物ごとの人数は毎月確かめ、判定期間の割合は期限までに計算してください。同一建物減算は体制届にも項目があり、該当する場合は届け出ます。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」、「厚生労働大臣が定める基準」第3号の2、老企第36号 第2の2(16)、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」)
共生型 訪問 介護と 運営 基準に関する 減算
減算 | 減算の内容 | 主な条件 |
|---|---|---|
共生型訪問介護(指定居宅介護事業所で障害者居宅介護従業者基礎研修課程修了者等が行う場合) | 1回につき所定単位数の70%で算定 | 共生型訪問介護の届出をした障害福祉の指定居宅介護事業所が実施 |
共生型訪問介護(指定居宅介護事業所で重度訪問介護従業者養成研修修了者が行う場合) | 1回につき所定単位数の93%で算定 | 共生型訪問介護の届出をした障害福祉の指定居宅介護事業所が実施 |
共生型訪問介護(指定重度訪問介護事業所が行う場合) | 1回につき所定単位数の93%で算定 | 共生型訪問介護の届出をした障害福祉の指定重度訪問介護事業所が実施 |
高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の1%を減算 | 虐待防止の措置を講じていない |
業務継続計画未策定減算 | 所定単位数の1%を減算 | 業務継続計画の基準を満たしていない |
共生型訪問介護の3つは、障害福祉の事業所が介護保険の共生型訪問介護を行う場合の算定で、介護福祉士や介護職員初任者研修修了者などが行う場合は所定単位数のまま算定します。
高齢者虐待防止措置未実施減算は、委員会の定期的な開催、指針の整備、年1回以上の研修、担当者の配置のいずれかが欠けた場合に、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで、利用者全員に適用されます。業務継続計画未策定減算は、基準を満たさない事実が生じた月の翌月(月の初日に生じた場合はその月)から解消された月まで、利用者全員に適用されます。この2つは体制届で「減算型」か「基準型」かを届け出る項目でもあるので、議事録・研修記録・計画書で実施と策定を確かめ、届出の内容と合っているかも見ておきます。減算の全体像は「介護の減算とは」で解説しています。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」、老企第36号 第2の2(10)(11)(15))
算定中の 加算の 点検 手順
- 直近の請求明細から、算定中の加算と減算を「1回につき」「1日につき」「1月につき」に分けて書き出す。処遇改善加算の区分と加算率が、2026年5月までのもののままになっていないかに気をつけます。
- 一覧の「体制届」が「必要」の加算を、体制届の控えと照合する。特定事業所加算の区分を変えたのに、処遇改善加算の区分を前のままにしている食い違いに気をつけます。
- 夜間・早朝・深夜の加算、2人での訪問、身体介護に引き続く生活援助を、訪問介護計画とサービス提供記録の開始時刻・所要時間・同行者と突き合わせる。計画の変更で開始時刻が対象の時間帯から外れたのに、加算を付けたままにしている例に注意してください。
- 緊急時訪問介護加算は、要請のあった時間と内容、提供時刻、ケアマネジャーと連携した経過が記録に残っているかを確かめる。もともと居宅サービス計画に位置付けられていた日時の訪問に算定しないようにします。
- 初回加算・生活機能向上連携加算・口腔連携強化加算の算定月と回数を、利用者ごとに確かめる。初回加算で、サービス提供責任者が同行した記録が残っていない例に注意してください。
- 特定事業所加算と認知症専門ケア加算の根拠になる職員と利用者の割合、会議・研修・健康診断の実施を確かめる。届出のときの数値のままにして、毎月の記録を付けていない例が起きやすいところです。
- 同一建物の減算と地域の加算を、利用者の住所、建物ごとの人数、判定期間の割合に照らして確かめる。月の途中の転居や新しい入居者を反映し忘れやすいので、前月の区分をそのまま使わないようにします。
まとめ
訪問介護の加算は、訪問の状況、緊急時と初回、連携と認知症ケア、特定事業所加算、地域、処遇改善の6つに分け、算定の単位と体制届の要否を加算ごとに押さえると整理できます。出発点は、自事業所の請求明細と体制届の控えを並べ、算定中の加算と未算定の加算を分けることです。そのうえで、算定中の加算は訪問ごとの記録と体制の数値で根拠を確かめ、特定事業所加算や処遇改善加算の上位の区分など未算定のものは、告示と留意事項通知で要件を確かめて届出の時期を指定権者に確認してください。訪問看護や通所介護など、ほかのサービスの加算は「介護の加算一覧」から確かめられます。
参考
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第19号)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準」(平成27年厚生労働省告示第95号、全老健 法令・Q&A検索システム)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める施設基準」(平成27年厚生労働省告示第96号、全老健 法令・Q&A検索システム)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年厚生労働省告示第94号、全老健 法令・Q&A検索システム)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年老企第36号、全老健 法令・Q&A検索システム)
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月13日老発0313第6号)
- 厚生労働省「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」(令和6年3月15日老発0315第1号、令和8年3月13日一部改正)と別紙様式

