老健(介護老人保健施設)の加算は、特養と共通する加算に加えて、在宅復帰・リハビリテーションと医療対応を評価する加算が多いのが特徴です。また、基本型・在宅強化型・療養型などの施設の区分によって算定できる加算が変わるため、まず自施設の区分を確かめ、そのうえで系統ごとに並べると、算定していない加算や該当していないか確かめるべき減算が見つけやすくなります。算定の抜けを埋めることは、収入のためだけでなく、入所者の在宅復帰に向けたリハビリや退所支援、施設内での医療対応を届けていることを、記録と報酬の両面で示すことにもなります。

この記事では、厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」から、老健の代表的な加算と減算を系統ごとに挙げ、最後に棚卸しの手順を示します。2026年9月時点の情報で、すべての加算を網羅したものではありません。単位数は、特に断りのない限り療養型老健以外の値です。算定要件は、最新の告示と留意事項通知(老企第40号)で確かめてください。

2026年6月の期中改定で変わった点

2026年度は、2027年度の改定を待たずに期中改定が行われ、2026年6月に施行されました。老健の加算で率が変わったのは介護職員等処遇改善加算で、対象が介護職員から介護従事者に広がり、生産性向上や協働化に取り組む施設向けに上乗せの区分(Ⅰロ・Ⅱロ)が設けられました。このほか、介護保険施設の食費の基準費用額が、2026年8月から1日1,445円から1,545円に引き上げられています。

改定とは別に、協力医療機関連携加算では、協力医療機関との定期的な会議の開催頻度が2026年6月算定分から見直されました。

(参考:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(第253回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1)、介護保険最新情報Vol.1502(令和8年5月8日))

なお、こちらの単位数は2026年6月改定後のものです。

施設の区分で算定できる加算の違い

老健の基本報酬は、在宅復帰率やベッド回転率など10項目を点数にした「在宅復帰・在宅療養支援等指標」などによって区分が分かれ、区分ごとに算定できる加算が異なります。

施設の区分

基本報酬

区分に関わる加算

基本型

介護保健施設サービス費(Ⅰ)

在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅰ)

在宅強化型

介護保健施設サービス費(Ⅰ)

在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅱ)

療養型

介護保健施設サービス費(Ⅱ)(Ⅲ)

在宅復帰支援機能加算(1日10単位)

その他型

介護保健施設サービス費(Ⅳ)

※2の付いた加算は算定不可

その他型(介護保健施設サービス費(Ⅳ))では、入所前後訪問指導加算、退所時等支援等加算、リハビリテーションマネジメント計画書情報加算、褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算、自立支援促進加算、科学的介護推進体制加算、所定疾患施設療養費など、算定構造で「※2」が付いた加算を算定できません。褥瘡マネジメント加算は、介護保健施設サービス費(Ⅰ)(ユニット型を含む)を算定する施設に限られます。また、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の人員配置による減算を受けている場合は、短期集中リハビリテーション実施加算と認知症短期集中リハビリテーション実施加算を算定できません。

指標の値が下がって区分が変わると、基本報酬だけでなく算定できる加算も変わります。この記事の表を使う前に、直近の指標の値と届け出ている区分が一致しているかを確かめてください。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)

在宅復帰とリハビリテーションの加算

老健に特有の系統です。入所前後の訪問、入所中のリハビリ、退所時の情報提供までが評価の対象になります。

加算

区分と単位数

算定の単位

在宅復帰・在宅療養支援機能加算

(Ⅰ)(Ⅱ)各51単位

1日につき

短期集中リハビリテーション実施加算

(Ⅰ)258単位、(Ⅱ)200単位

1日につき

認知症短期集中リハビリテーション実施加算

(Ⅰ)240単位、(Ⅱ)120単位

1日につき(週3日まで)

リハビリテーションマネジメント計画書情報加算

(Ⅰ)53単位、(Ⅱ)33単位

1月につき

入所前後訪問指導加算

(Ⅰ)450単位、(Ⅱ)480単位

1回につき

在宅復帰・在宅療養支援機能加算は、(Ⅰ)が基本型、(Ⅱ)が在宅強化型の施設の加算で、単位数はどちらも1日51単位です。入所前後訪問指導加算の(Ⅱ)は、(Ⅰ)の内容に加えて、生活機能の改善目標と退所後も含めた切れ目のない支援計画を作った場合の区分です。退所に向けた連携では、ほかに退所時情報提供加算((Ⅰ)500単位、(Ⅱ)250単位)、入退所前連携加算((Ⅰ)600単位、(Ⅱ)400単位)、試行的退所時指導加算(400単位)、訪問看護指示加算(300単位)があります。

入所前後の訪問や退所時の情報提供は、実施していても記録や様式がそろっていないと算定できません。退所支援の流れのどこで何を残すかを、相談員とリハビリ職で決めておくと、算定の抜けを防げます。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」)

医療対応と看取りの加算

加算

区分と単位数

算定の単位

協力医療機関連携加算

3要件を満たす医療機関と連携:50単位

1月につき

協力医療機関連携加算

それ以外の医療機関と連携:5単位

1月につき

所定疾患施設療養費

(Ⅰ)239単位(月1回・7日まで)

1日につき

所定疾患施設療養費

(Ⅱ)480単位(月1回・10日まで)

1日につき

緊急時施設療養費(緊急時治療管理)

518単位(月1回・3日まで)

1日につき

協力医療機関連携加算の「3要件」は、相談対応と診療の体制を常時確保し、緊急時に入院を受け入れる体制を確保していることです。2026年6月算定分からは、協力医療機関との定期的な会議を、電子的システムで入所者の情報を随時確認できる場合は年1回以上、それ以外は原則年3回以上開くことになりました(入院・往診の件数によっては年1回以上でよい場合があります)。老健の留意事項通知は特養の規定を準用しているため、見直しの内容は特養と同じです。会議の記録と開催頻度を、この要件に合わせて見直してください。詳しくは「協力医療機関連携加算の算定要件」で解説しています。

老健の看取りの加算は「ターミナルケア加算」といい、死亡日から数えた期間ごとに1日あたりの単位数が決まっています。療養型老健とそれ以外で単位数が異なります。

死亡日以前の期間

療養型老健以外

療養型老健

31日以上45日以下

1日72単位

1日80単位

4日以上30日以下

1日160単位

1日160単位

2日または3日

1日910単位

1日850単位

死亡日

1,900単位

1,700単位

特養の「看取り介護加算」とは名称も単位数も異なるため、特養向けの資料を流用しないようにしてください。自施設の区分の列で単位数を確かめます。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、介護保険最新情報Vol.1502)

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入所者のケアと施設の体制の加算

褥瘡・排せつ・栄養・口腔・認知症ケアなど入所者ごとの評価と計画に基づく加算と、感染症対策や職員体制など施設全体を評価する加算です。特養と名称が重なるものが多い系統です。

加算

区分と単位数

算定の単位

褥瘡マネジメント加算

(Ⅰ)3単位、(Ⅱ)13単位

1月につき

排せつ支援加算

(Ⅰ)10単位〜(Ⅲ)20単位

1月につき

自立支援促進加算

300単位

1月につき

科学的介護推進体制加算

(Ⅰ)40単位、(Ⅱ)60単位

1月につき

栄養マネジメント強化加算

11単位

1日につき

口腔衛生管理加算

(Ⅰ)90単位、(Ⅱ)110単位

1月につき

認知症専門ケア加算

(Ⅰ)3単位、(Ⅱ)4単位

1日につき

認知症チームケア推進加算

(Ⅰ)150単位、(Ⅱ)120単位

1月につき

高齢者施設等感染対策向上加算

(Ⅰ)10単位、(Ⅱ)5単位

1月につき

生産性向上推進体制加算

(Ⅰ)100単位、(Ⅱ)10単位

1月につき

サービス提供体制強化加算

(Ⅰ)22単位〜(Ⅲ)6単位

1日につき

排せつ支援加算は(Ⅱ)が15単位、サービス提供体制強化加算は(Ⅱ)が18単位です。名称が同じでも、自立支援促進加算(特養は280単位、老健は300単位)や科学的介護推進体制加算(Ⅱ)(特養は50単位、老健は60単位)のように、単位数が特養と違う加算があります。特養の単位数は「特養(介護老人福祉施設)の加算一覧」にまとめていますが、老健の算定では必ず老健の欄で確かめてください。

この系統の加算の多くは、LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出が要件に含まれます。LIFEは2026年5月11日から運営が国民健康保険中央会に移り、利用する端末に電子証明書が必要になりました。どの加算で何を提出するかは「LIFEへの提出が必要な加算の一覧」、科学的介護推進体制加算の要件は「科学的介護推進体制加算の算定要件」、褥瘡マネジメント加算の(Ⅰ)(Ⅱ)の違いは「褥瘡マネジメント加算とは」で確認できます。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、介護保険最新情報Vol.1484(令和8年3月23日))

介護職員等処遇改善加算の老健の加算率

介護職員等処遇改善加算は、単位数ではなく、処遇改善加算を除いた加算・減算後の総単位数に加算率をかけて算定します。2026年6月以降の老健の加算率は次のとおりです。

区分

老健の加算率

加算(Ⅰ)イ

9.0%

加算(Ⅰ)ロ

9.7%

加算(Ⅱ)イ

8.6%

加算(Ⅱ)ロ

9.3%

加算(Ⅲ)

6.9%

加算(Ⅳ)

5.9%

加算率はサービスごとに設定されており、特養((Ⅰ)イ16.3%)とは水準が異なります。上乗せの区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を算定するには2026年度の特例要件を満たす必要があり、施設サービスでは生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の取得と実績報告がその1つです(申請の時点では取得の誓約でも算定できます)。そのため、生産性向上推進体制加算を算定していない施設は、処遇改善加算の区分とあわせて検討するとよいでしょう。区分ごとの要件と実績報告の期限は「介護職員等処遇改善加算の区分と要件」で確認できます。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」「令和8年度介護報酬改定について」)

運営基準の減算と多床室の室料相当額控除

加算とあわせて、次の減算に該当していないかを確かめます。上の4つは、委員会の開催や指針・計画の整備など、運営基準で求められる取組ができていない場合に適用されます。

減算

減算される単位数

身体拘束廃止未実施減算

所定単位数の10%

高齢者虐待防止措置未実施減算

所定単位数の1%

業務継続計画未策定減算

所定単位数の3%

安全管理体制未実施減算

1日につき5単位

栄養管理の基準を満たさない場合

1日につき14単位

室料相当額控除(多床室)

1日につき26単位

室料相当額控除は、2025年8月から、多床室の入所者の基本報酬から1日26単位を差し引くものです。対象は、療養室の床面積の合計を入所定員で割った値が8㎡以上で、かつ判定の基準となる年度に介護保健施設サービス費(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)を算定した月が(Ⅰ)を算定した月より多い施設です。2025年8月から2027年7月までは2024年度の算定状況で、2027年8月から2030年7月までは2026年度の算定状況で判定されます。療養型やその他型の算定が多い施設は、2026年度の算定状況が2027年8月以降の控除に関わることを知っておくとよいでしょう。

減算の仕組みと月ごとの確認のしかたは「介護の減算とは」で解説しています。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第40号)令和6年度改正の新旧対照表)

算定中の加算の棚卸しと未算定の加算の確認手順

  1. 自施設の区分(基本型・在宅強化型・療養型・その他型)と、直近の在宅復帰・在宅療養支援等指標の値を確かめる。指標が下がって区分が変わっているのに、以前の区分の加算のまま請求していないかに注意します。
  2. 直近の請求明細と、指定権者に出している体制届(介護給付費算定に係る体制等状況一覧表)から、算定中の加算と減算を書き出す。届出はしているのに請求していない加算が見つかることがあるので、請求明細だけで済ませないようにします。
  3. 書き出した加算を、この記事の系統ごとの表に振り分け、自施設の区分で算定できるのに算定していない加算に印を付ける。この記事の表は代表例のため、初期加算・経口維持加算・かかりつけ医連携薬剤調整加算・安全対策体制加算なども算定構造で確かめてください。
  4. 印を付けた加算は、告示と留意事項通知で算定要件を確かめ、職員配置・記録・計画書で満たせているかを見る。単位数だけで判断せず、LIFEへの提出や計画書の作成が要件に含まれていないかも確かめます。
  5. 算定を始める加算は、体制届を指定権者に出す。届出の時期によって算定を始められる月が変わるので、開始したい月から逆算して提出します(詳しくは「介護加算はいつから算定できるか」)。
  6. 減算に該当していないかを、委員会の議事録・研修の記録・指針や業務継続計画で確かめる。取組をしていても記録が残っていないと、運営指導で確認できないので、実施した日と内容を残します。

取りこぼしが起きやすい場所と資料の突き合わせ方は、「介護加算の取りこぼしの見つけ方」でも解説しています。

まとめ

老健の加算は、施設の区分によって算定できるものが変わるため、区分を確かめてから、在宅復帰とリハビリ・医療対応と看取り・入所者のケアと施設の体制に分けて見ると、算定中の加算と未算定の加算を見比べやすくなります。出発点は、自施設の区分と指標の値を確かめ、請求明細と体制届から算定中の加算と減算を書き出すことです。そのうえで、未算定の加算の要件を告示と留意事項通知で確かめ、配置や記録で満たせるものから届出の準備を進めてください。そうした確認の積み重ねが、入所者の在宅復帰を支えるリハビリや退所支援を続けられる体制につながります。特養など他のサービスの加算は、それぞれの加算一覧の記事で確認してください。

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参考