介護職員等処遇改善加算は、2026年6月から、対象が介護職員のみから介護従事者に広がり、生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの区分(Ⅰロ・Ⅱロ)が加わりました。2026年9月時点の区分は、Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6つです。

どの区分を算定するかで加算額が決まり、事業所はその加算額以上の賃金改善を職員に行わなければなりません。区分の要件を正しく押さえることは、算定できる区分の取りこぼしや加算の返還を防ぎ、職員に約束した賃上げを確実に届けることにつながります。

この記事では、2026年3月13日付の厚生労働省通知(老発0313第6号)とQ&A(第1版)をもとに、6月からの変更点、区分ごとの要件、加算率、2026年度特例要件と誓約の扱い、賃金改善のルール、区分変更と実績報告の期限を扱います。

2026年6月の期中改定による変更点

2027年度の介護報酬改定を待たずに行われた期中改定で、介護従事者に月1.0万円(3.3%)、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員に月0.7万円(2.4%)の賃上げを実現する措置がとられました。介護職員については、定期昇給0.2万円を含めて最大月1.9万円(6.3%)の賃上げとされています。加算の仕組みでは、次の3点が変わりました。

  • 対象を介護職員のみから介護従事者に広げ、加算率を引き上げた
  • 生産性向上や協働化に取り組む事業者向けに、上乗せの区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を設けた
  • これまで対象外だった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援等に、加算を新設した

2026年4月・5月の算定は従来の区分(Ⅰ〜Ⅳ)と加算率、6月以降の算定は新しい区分と加算率です。4月・5月分の請求を見直すときは、通知の別紙1の表1-1を見てください。

(参考:厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定について」、厚生労働省 老発0313第6号 記1・記2⑴)

区分ごとの要件の違い

6区分のどれを算定する場合も、加算額以上の賃金改善に加えて、月額賃金改善要件、キャリアパス要件Ⅰ(任用要件と賃金体系の整備)、キャリアパス要件Ⅱ(研修の計画と実施)が必要です。月額賃金改善要件は、区分Ⅳを算定した場合の加算額(見込み)の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てるというものです。区分によって違うのは、次の要件です。

区分

キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)

キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金)

キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)

職場環境等要件

2026年度特例要件

Ⅳ

不要

不要

不要

各区分1以上(生産性向上は2以上)

不要

Ⅲ

必要

不要

不要

各区分1以上(生産性向上は2以上)

不要

Ⅱイ

必要

必要

不要

各区分2以上(生産性向上は3以上)と取組の公表

不要

Ⅱロ

必要

必要

不要

各区分2以上(生産性向上は3以上)と取組の公表

必要

Ⅰイ

必要

必要

必要

各区分2以上(生産性向上は3以上)と取組の公表

不要

Ⅰロ

必要

必要

必要

各区分2以上(生産性向上は3以上)と取組の公表

必要

要件が大きく増えるのはⅢからⅡイへ上がるところで、ⅠとⅡの差はキャリアパス要件Ⅴだけです。また、ロの区分はイの要件に2026年度特例要件を足したものなので、いまイを算定している事業所は、特例要件を満たせばロへ移れます。

キャリアパス要件Ⅳは、経験・技能のある介護職員のうち1人以上について、賃金改善後の見込みの年額が440万円以上であることです。経験・技能のある介護職員は、介護福祉士の資格を持ち、法人での勤続が10年以上の介護職員を基本に、事業者が設定します。小規模な事業所で職種間の賃金バランスに配慮が必要な場合など、例外的に難しく、合理的な説明ができる場合は、この要件を満たさなくても算定できます。

キャリアパス要件Ⅴは、サービスごとに別紙1の表3に掲げる加算の届出をしていることです。多くのサービスはサービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡで、訪問介護は特定事業所加算ⅠまたはⅡが該当します。特定施設入居者生活介護は入居継続支援加算、介護老人福祉施設は日常生活継続支援加算でも満たせます。サービス提供体制強化加算の職員割合は、「サービス提供体制強化加算の算定要件|区分別の職員割合と計算方法・届出後の管理」で解説しています。

職場環境等要件は、別紙1の表4にある6区分・28項目から取組を選びます。区分は、入職促進、資質の向上やキャリアアップ、両立支援・多様な働き方、腰痛を含む心身の健康管理、やりがい・働きがいの醸成、生産性向上の6つです。Ⅰ・Ⅱ(イ・ロ)では、生産性向上の取組に⑰(生産性向上ガイドラインに基づく業務改善の体制づくり)か⑱(現場の課題の見える化)を必ず含めます。ただし、生産性向上推進体制加算を算定していれば生産性向上の区分は満たしたものとされ、1法人1事業所のような小規模事業者は、㉔(協働化の取組)を実施していれば満たします。Ⅰ・Ⅱの公表は、介護サービス情報公表制度の「事業所の特色」欄に取組内容を書く方法が基本で、報告の対象でない場合は自社のホームページなどで公表します。なお、前年度から続けて算定する場合は、従来の取組を続けていればよく、毎年新しい取組を始める必要はありません。

(参考:厚生労働省 老発0313第6号 記3⑴・別紙1 表2-2・表3・表4、厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問7-1)

2026年6月以降の加算率の確認

加算率は、処遇改善加算を除く加減算後の1月あたりの総単位数に乗じます。主なサービスの加算率は次のとおりです。

サービス

Ⅰイ

Ⅰロ

Ⅱイ

Ⅱロ

Ⅲ

Ⅳ

訪問介護

27.0%

28.7%

24.9%

26.6%

20.7%

17.0%

通所介護

11.1%

12.0%

10.9%

11.8%

9.9%

8.3%

地域密着型通所介護

11.7%

12.7%

11.5%

12.5%

10.5%

8.9%

特定施設入居者生活介護

14.8%

15.9%

14.2%

15.3%

13.0%

10.8%

認知症対応型共同生活介護

21.0%

22.8%

20.2%

22.0%

17.9%

14.9%

介護老人福祉施設・短期入所生活介護

16.3%

17.6%

15.9%

17.2%

13.6%

11.3%

介護老人保健施設

9.0%

9.7%

8.6%

9.3%

6.9%

5.9%

同じサービスでも、区分と、イかロかで加算率が変わります。ロへの移行や上位区分への変更を検討するときは、別紙1の表1-2〜表1-4で自事業所のサービスの率を確かめ、加算額の差を試算してから判断するとよいでしょう。上の表にないサービスも、同じ表で確認できます。

新たに対象となったサービスの加算率は、訪問看護が1.8%、訪問リハビリテーションが1.5%、居宅介護支援・介護予防支援が2.1%で、区分はありません。福祉用具貸与、特定福祉用具販売、居宅療養管理指導は対象外です。

(参考:厚生労働省 老発0313第6号 記2⑴・別紙1 表1-2〜表1-5・表1-7)

訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援の算定要件

新たに加算の対象となった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援、介護予防支援などは、賃金改善の実施に加えて、次のどちらかを満たせば算定できます。1つは2026年度特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用、または社会福祉連携推進法人への所属)で、もう1つは区分Ⅳに準ずる要件(職員を対象にしたキャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと、職場環境等要件の各区分1以上・生産性向上2以上)です。2026年度は、どちらも処遇改善計画書で2027年3月末までの対応を誓約すれば、申請時点から満たしたものとして扱われます。誓約した場合は、期限までに整備や利用を行い、実績報告書で報告します。

(参考:厚生労働省 老発0313第6号 記3⑵・別紙1 表2-3)

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2026年度特例要件と誓約の扱い

Ⅰロ・Ⅱロに必要な2026年度特例要件(通知では「令和8年度特例要件」)は、次のいずれかの取組です。

取組

使えるサービス

申請時点で未実施の場合

保存しておく根拠資料の例

ケアプランデータ連携システム(同等と認められたシステムを含む)の利用

訪問・通所系と小規模多機能・短期入所等(別紙1 表1-2・表1-3)

加入・利用の誓約で可。2027年3月末までに利用し、実績報告書で利用実績を報告

データの送信または受信の記録が分かる使用画面のスクリーンショット

生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡの算定

小規模多機能・短期入所等と施設・居住系(別紙1 表1-3・表1-4)

算定の誓約で可。実績報告書で算定を報告

体制届出

社会福祉連携推進法人への所属

すべての対象サービス

通知に誓約の定めはない

受理された社会福祉連携推進認定申請書

ケアプランデータ連携システムは、加入するだけでは足りず、実際に利用することが必要です。根拠資料は一律の提出は求められませんが、指定権者(都道府県・市町村)から求められたらすぐ出せるよう、2年間保存します。ケアプランデータ連携システムの仕組みは「ケアプランデータ連携システムとは?導入で軽減できる業務負担」、生産性向上推進体制加算の要件は「生産性向上推進体制加算の要件|(Ⅰ)(Ⅱ)の違いと導入前調査・実績報告の準備」で解説しています。

申請時点で特例要件を満たす事業所(誓約した場合を含む)は、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳと職場環境等要件についても、処遇改善計画書で2027年3月末までに整備することを誓約すれば、申請時点から満たしたものとして扱われます。一方、キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)はこの扱いに含まれていないため、Ⅰロを算定するには申請時点で表3の加算の届出が必要です。誓約した要件は期限までに整備し、実績報告書で報告します。整備しないままでは算定要件を満たさないことになり、加算の返還を求められる場合があります。

なお、2025年度に要件の整備を誓約して加算を算定し、年度内に整備できなかった事業所は、原則として返還の対象です。ただし、2026年度特例要件を満たし(誓約を含む)、2026年度の計画書で改めて整備を誓約して算定を続ける場合は、2025年度分の返還を求めない取扱いになっています。

(参考:厚生労働省 老発0313第6号 記3⑴、厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問4-10・問8-2・問8-4)

賃金改善の配分と返還になる場合

事業所は、加算の算定額以上の賃金改善を行います。賃金改善には、基本給・手当・賞与等(退職手当を除く)のほか、それに伴う法定福利費等の事業主負担の増加分を含められます。改善する項目を特定したうえで行い、特別事情届出書を出す場合を除いて、賃金水準を下げてはいけません。

2025年度より増えた加算額(新規算定や、Ⅰロ・Ⅱロを含む上位区分への移行による増加分と、6月以降の加算率引上げによる増加分)については、過去に独自の賃金改善をしていたかどうかに関わらず、新たに賃金改善を行います。その方法はベースアップ(賃金表の改訂)が基本で、賃金体系の整備途中などベースアップだけでは難しい場合は、手当や一時金と組み合わせてもかまいません。

配分は、介護職員、特に経験・技能のある介護職員の処遇改善が重要であることに留意しつつ、事業所の判断で柔軟に決められます。ただし、一部の職員や法人内の一部の事業所に集中させるなど、職務や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分はできません。

実績報告で賃金改善額が加算額を下回ると、返還の対象になります。ただし、不足分を賞与などの一時金として職員に追加で配分すれば、返還を求めない取扱いにできます。年度の途中から、加算の見込額と賃金改善の実績を月ごとに突き合わせておくと、年度末に不足分を把握して一時金で配分する判断がしやすくなります。給与計算ソフトで処遇改善分を管理するときの確認点は「介護施設向け給与計算ソフトの選び方|処遇改善加算と夜勤手当の確認ポイント」で紹介しています。

(参考:厚生労働省 老発0313第6号 記2⑵、厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-9)

年度途中の区分変更と実績報告の手順

2026年度の処遇改善計画書の提出期日(通常は4月15日、6月から算定を始めた新設サービスのみの事業者は6月15日)は過ぎています。2026年9月時点で事業所がすることは、区分を変える場合の届出と、誓約した要件の整備、実績報告の準備です。

  1. 算定できる区分の確認:別紙1の表2-2で自事業所が満たす要件を照らし合わせ、表1-2〜表1-5で加算率を確かめます。よくある失敗は、4月・5月の旧区分の加算率を6月以降の請求にそのまま使うことです。
  2. 区分変更・新規算定の届出:区分を変える場合や新たに算定する場合は、変更届出書(別紙様式4)と別紙様式2-1〜2-3を、体制届出と一緒に提出します。期日は、居宅系サービス(居宅介護支援を含む)が算定を始める月の前月15日、施設系サービス(短期入所・特定施設・認知症対応型共同生活介護を含む)がその月の1日です。よくある失敗は、サービス提供体制強化加算を取り下げたのに、キャリアパス要件Ⅴを満たさなくなった区分Ⅰの変更届出を忘れることです。体制届の出し方は「介護加算の届出(体制届)の流れ|提出先・書類・電子申請・受理後の対応」で解説しています。
  3. 誓約した要件の整備:キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲは、任用要件と賃金体系、研修の計画、昇給の仕組みを就業規則等に書面で定め、すべての介護職員に周知します(常時雇用する人が10人未満で就業規則の作成義務がない事業所は、内規でもかまいません)。期限は2027年3月末です。よくある失敗は、規程を作っただけで職員への周知をしていないことです。
  4. 賃金改善の実施:月額賃金改善要件のために、手当や一時金の一部を基本給へ付け替えることもできます。よくある失敗は、事業所全体では下がっていなくても、個々の職員の賃金が下がる付け替えをしてしまうことで、付け替えの前に職員ごとに試算します。
  5. 実績報告書の提出:実績報告書(別紙様式3-1・3-2)は、年度の最後の加算の支払があった月の翌々月の末日までに出します。2026年度分は、2027年3月分の支払が2027年5月のため、通常は2027年7月31日です。誓約した要件の整備や特例要件の利用実績もここで報告し、根拠資料は2年間保存します。よくある失敗は、ケアプランデータ連携システムの送受信記録を残しておらず、求められたときに示せないことです。

年度の途中で就業規則の処遇に関する部分だけを改訂した場合は、実績報告書を出すときに変更届出書もあわせて提出します。複数の事業所を持つ法人は、計画書と実績報告書を法人単位でまとめて作れますが、提出は事業所ごとの指定権者に行います。指定権者が提出期日や方法を別に案内している場合もあるので、様式は厚生労働省の「介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式」から取り、期日は指定権者の案内で確かめてください。

(参考:厚生労働省 老発0313第6号 記4・記5⑴、厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問3・問4-1)

まとめ

2026年6月以降の処遇改善加算は6区分で、Ⅰロ・Ⅱロはそれぞれイの要件に2026年度特例要件を加えた区分です。

まず、自事業所がいま算定している区分と通知の別紙1の表2-2を突き合わせ、特例要件を満たしてロに移れるか、計画書で誓約した要件が何かを洗い出してください。

区分を変える場合は、算定を始める月の体制届出の期日までに変更届出書を出します。誓約した要件は2027年3月末までに整備し、2027年7月31日(通常)の実績報告書で報告できるよう、加算額と賃金改善額の突き合わせと根拠資料の保存を続けます。判断に迷う点は、指定権者か厚生労働省の相談窓口に確認してください。

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参考