介護施設の加算収益は、請求明細の単位数から把握できます。単位数を基本報酬と加算に分け、加算ごとに1単位の単価を掛けます。処遇改善加算は、別に集計します。算定額に相当する賃金改善が求められるためです。そのほかの加算は、算定にかかるコストと並べて見ます。続ける加算と、運用を見直す加算を区別しやすくなります。

この記事では、請求データからの集計手順と、処遇改善加算の分け方を扱います。年度をまたいで比べるときの注意と、コストとの並べ方も説明します。

介護報酬の構造と加算の位置づけ

介護報酬は、基本報酬と、事業所の体制や利用者の状況に応じた加算で構成されます。集計では、施設の体制に応じた加算と、利用者の状況や取組に応じた加算を分けておきます。増減の理由を追いやすくなります。加算の種類ごとの整理は、「介護報酬の加算一覧の見方」で解説しています。

(参考:厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」令和7年7月)

請求データから加算収益を出す手順

  1. 直近12か月分の請求明細(サービス提供月ごと)を用意します。請求ソフトの集計画面だけで済ませず、明細の単位数まで出せるかを確かめます。
  2. 基本報酬(基本サービス費)の単位数と、加算ごとの単位数を分けて集計します。処遇改善加算を、ほかの加算と同じ列に入れないようにします。
  3. 返戻や査定による増減を反映します。使うのは、国保連から届く2つの帳票です。「介護保険審査増減単位数通知書」と「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」です。請求した単位数のままにしないようにします。
  4. 単位数に1単位の単価を掛けて、月額と年額にします。単価は、事業所所在地の地域区分とサービスの種類で決まります。10円で一律に計算しないようにします。
  5. 報酬全体に占める加算の割合を出し、加算ごとに金額の大きい順に並べます。

集計の区分と、使う資料は次のとおりです。

集計の区分

出し方

使う資料

基本報酬

基本サービス費の単位数×単価

請求明細書

加算(処遇改善加算を除く)

加算ごとの単位数×単価

請求明細書

処遇改善加算

加算の単位数×単価

請求明細書

返戻・査定の増減

請求時の単位数から差し引く

審査増減単位数通知書

次は、1か月分の集計表の見本です。数値はすべて仮のもので、1単位は10円で計算しています。

集計の区分

月の単位数

月額

報酬全体に占める割合

基本報酬

160,000単位

1,600,000円

80%

加算A(体制に応じた加算)

12,000単位

120,000円

6%

加算B(利用者に応じた加算)

8,000単位

80,000円

4%

処遇改善加算

20,000単位

200,000円

10%

合計

200,000単位

2,000,000円

100%

この見本では、加算の割合は、処遇改善加算を除くと10%、含めると20%です。どちらの数字かを表に書いておきます。

単位数に単価を掛けた額は、保険から支払われる分と利用者負担分を合わせた額です。国保連からの入金額と比べるときは、利用者負担分を除いてから突き合わせます。請求ソフトに加算別の集計機能がない場合は、明細のデータを表計算ソフトに出力します。サービスコードごとに並べ替えて集計します。

(参考:国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」令和7年12月、「厚生労働大臣が定める一単位の単価」)

処遇改善加算を別に集計する理由

介護職員等処遇改善加算は、1か月の総単位数に加算率を掛けて算定します。総単位数は、基本サービス費に各種加算・減算を加えたものです。処遇改善加算そのものは除きます。事業所は、算定額に相当する職員の賃金改善を行わなければなりません。そのため、ほかの加算と同じ「自由に使える収益」としては扱えません。

計算の元にほかの加算が含まれるため、新たな加算を算定すると処遇改善加算の額も増えます。加算の増収効果を試算するときは、この増加分を収益に含めません。賃金改善の原資として分けて見ます。

2026年6月からは、期中改定により加算率が見直されました。上乗せ区分(加算Ⅰロ・Ⅱロ)も設けられています。訪問看護や居宅介護支援などにも、処遇改善加算が新設されました。区分と加算率、申請の準備は「介護職員等処遇改善加算の区分と要件」で解説しています。

(参考:厚生労働省老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」令和8年3月13日老発0313第6号、厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」)

年度をまたいで比べるときの注意

直近では、2024年度の改定に加えて、2026年6月に期中改定がありました。処遇改善が中心の改定です。直近12か月を前年と比べるときは、次の順に確認します。

  1. 比べる期間に、改定の施行月が入っていないかを確かめます。2026年度であれば、5月と6月の間で処遇改善加算の加算率が変わっています。
  2. 加算ごとに、名称・単位数・算定要件が改定の前後で変わっていないかを確かめます。見る資料は、告示と留意事項通知です。単位数が変わった加算は、算定回数と単位数を分けて比べます。
  3. 処遇改善加算を除いた加算収益と、処遇改善加算の額を、別々の行で前年と並べます。合計だけで比べると、処遇改善加算の加算率の変更が、加算全体の増収に見えてしまいます。

(参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」「令和8年度介護報酬改定について」)

加算ごとの収益とコストの並べ方

加算の算定には、人員配置や研修、記録、システム利用などの費用がかかる場合があります。収益の金額だけで判断せず、加算ごとに次の項目を同じ表に並べます。

  • 年間の加算収益(処遇改善加算を除く)
  • 算定のために追加した人件費・外部委託費・システム利用料
  • 算定に必要な記録や書類の作成にかかる職員の時間
  • 算定を続けるための要件(研修・会議・評価など)の運用状況

収益に対してコストが大きい加算は、すぐにやめる候補ではありません。まず、記録の方法や、対象となる利用者の把握の仕方を見直す候補になります。看取りや栄養改善のように、利用者のケアの質そのものを評価する加算もあります。算定をやめると、ケアの体制も弱まるおそれがあります。そのため、運用の負担を減らす方向で検討します。費用の項目と判断の手順は「介護加算の費用対効果」で解説しています。

分析の前に確認する資料

加算の単位数と算定要件は、告示(単位数表)と留意事項通知で定められています。解釈はQ&Aで示されます。集計した加算を見直すときは、これらを最新版で確かめます。要件の解釈に迷う加算は、自施設で判断しません。指定権者(都道府県や市町村)に確認します。

(参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」「令和8年度介護報酬改定について」)

まとめ

加算収益は、請求明細の単位数を基本報酬と加算に分けて集計します。返戻や査定の増減を反映したうえで、1単位の単価を掛けます。出発点は、直近12か月の請求明細から加算別の表を作ることです。処遇改善加算は、別の列に分けます。

表ができたら、加算ごとにコストを並べ、運用を見直す加算を決めます。まだ算定していない加算は、「介護加算のシミュレーション方法」で増収額を試算します。要件の確認と届出は、「介護の加算で増収を検討する手順」に沿って進めます。加算と利用者のケアの内容の結びつきも確かめると、入居者が受けるケアの質を保てます。

参考