介護の加算による増収は、見込み額から、算定のために増えるコストを引いた額で見ます。見込み額は、算定できる利用者数と回数に、単位数と1単位の単価を掛けた額です。加算は、要件を満たした場合にだけ算定でき、要件は加算ごとに違います。

そのため、検討は5つの段階で進めます。見込み額の算出、要件の照合、ほかの加算との関係の確認、届出、算定後の検証の順です。この順で確かめておくと、要件を満たさないまま請求して返還になる事態を避けられます。加算が評価する体制やケアを、利用者に続けて提供できます。

この記事では、各段階で確かめることを扱います(2026年10月時点)。個々の加算の単位数や要件は、最新の資料で確かめてください。2024年度改定と、2026年6月の期中改定の資料です。

見込み額の出し方

見込み額は、加算を算定できる利用者の数と回数から出します。利用者全員で計算すると、見込みが大きくなりすぎます。対象になる利用者は、要件に定められた条件で数えます。要介護度、状態、利用状況などです。その数に、1人あたり月に算定できる回数・日数と、加算の単位数、1単位の単価を掛けます。

この額は、利用者負担分を含む報酬の総額です。ここから、算定のために増えるコストを引いた額が、実際の増収になります。コストは、人員の配置や研修、記録の手間などです。なお、ほかの加算を取ると、介護職員等処遇改善加算の額も増えます。この分は増収に数えず、職員の賃金改善に充てる額として分けて見ます。

試算の式と計算例は、「介護加算のシミュレーション方法」で解説しています。いま算定している加算の収益の出し方は、「介護施設の加算収益の集計方法」で確かめられます。

(参考:厚生労働省「厚生労働大臣が定める一単位の単価」、厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」)

要件の照合と不足の分け方

加算の算定要件は、3つの資料に分かれて書かれています。単位数表の注、厚生労働大臣が定める基準(大臣基準告示)、留意事項通知です。読んだ要件は、次の3つに分けて、自事業所の現状と照らし合わせます。足りないものが見えます。

要件の種類

主な内容

足りないときの対応

人員・体制

配置する職種と人数、研修や会議

採用や配置の見直し

記録・書類

計画書、記録、同意書、報告

様式と担当者の決定

利用者の条件

要介護度や状態、利用状況

対象者の把握

足りない要件の種類によって、準備にかかる期間とコストが変わります。候補の加算が複数あるときは、見込み額とあわせて、足りない要件の種類と数を並べます。取り組む順番を決めやすいでしょう。3つの資料の読み方は、「介護加算の算定要件の調べ方」で解説しています。

(参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」)

ほかの加算との関係の確認

候補の加算は、いま算定している加算との関係を最初に確かめます。併せて算定できない場合があるためです。反対に、ある加算の届出や算定が、別の加算の要件になっている場合もあります。関係は、次の4つに分かれます。

関係の種類

例

確かめる資料

併せて算定できない

特養の日常生活継続支援加算を算定していると、サービス提供体制強化加算は算定できない

単位数表の注

併せて算定すると単位数が変わる

通所介護で個別機能訓練加算を算定していると、生活機能向上連携加算の(Ⅰ)は算定できず、(Ⅱ)は月200単位が100単位になる

単位数表の注

別の加算の届出が要件になる

処遇改善加算の区分Ⅰイ・Ⅰロのキャリアパス要件Ⅴは、サービス提供体制強化加算などの届出で満たす

処遇改善加算の通知

別の加算の算定が要件の選択肢になる

処遇改善加算の区分Ⅰロ・Ⅱロの2026年度特例要件は、施設・居住系や短期入所などでは、生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡの算定でも満たせる

処遇改善加算の通知

上の2行に当たるときは、増える単位数を差し引きで見込みます。

キャリアパス要件Ⅴは、介護福祉士等の配置要件です。届出で満たせる加算は、サービスごとに決まっています。サービス提供体制強化加算、特定事業所加算、入居継続支援加算、日常生活継続支援加算です。2026年度特例要件は、2026年6月にできた上乗せの区分に求められます。選べる取組は、サービスによって違います。ケアプランデータ連携システムの利用や、社会福祉連携推進法人への所属もあります。

候補の加算を取ることで、処遇改善加算の上位の区分に移れる場合があります。その分は、職員の賃金改善の原資になります。一方、要件になっている加算の区分が下がると、処遇改善加算の区分にも影響する場合があります。処遇改善加算の区分と要件は、「介護職員等処遇改善加算の区分と要件」で解説しています。生産性向上推進体制加算は、「生産性向上推進体制加算の要件」で確かめられます。

(参考:厚生労働省「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」別表の1(介護福祉施設サービス)のサービス提供体制強化加算の注、同「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」別表の6(通所介護費)注12、同「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」3⑴⑥⑧、厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定について」)

届出と算定開始月の確認

加算によっては、算定の前に、指定権者への届出(体制届)が必要です。指定権者は、事業所を指定した都道府県または市町村です。届出が必要な項目は、「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」に並んでいます。候補の加算が一覧表にあるかを確かめます。

算定を始められる月は、届出の日とサービスの種類で決まります。訪問・通所系のサービスでは、届出が毎月15日以前なら翌月から、16日以降なら翌々月からです。サービスごとの開始月は、「介護加算はいつから算定できるか」で確かめてください。

加算を算定すると、利用者負担も増えます。算定を始める月より前に、利用者やご家族に加算の内容と負担の変わり方を説明します。担当のケアマネジャーにも伝えます。ケアプランの見直しや限度額の管理が間に合います。要件の整備、届出、利用者への説明の予定は、算定を始めたい月から逆算して組みます。届出の書類と提出方法は、「介護加算の届出(体制届)の流れ」で解説しています。

(参考:厚生労働省「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」、同「令和6年度介護報酬改定について」掲載の留意事項通知(老企第36号、新旧対照表)第1の1⑹)

算定を始めたあとの毎月の検証

算定を始めたら、次の順に毎月確かめます。

  1. 請求実績と見込みの比較:請求した加算の回数と単位数を、見込みと比べます。よくある失敗は、届出をしたのに請求ソフトの設定を変えておらず、加算が請求に載っていないことです。
  2. 要件の記録の点検:要件に必要な記録・会議・研修が、実際に行われているかを確かめます。よくある失敗は、計画書や同意書の日付が、算定を始めた月より後になっていることです。
  3. 対象者の見直し:見込みより算定回数が少なければ、対象者の把握や記録の運用を見直します。よくある失敗は、新しく利用を始めた人や状態が変わった人を、対象者の一覧に加えていないことです。
  4. コストとの差し引き:算定のために増えた人件費や研修費と、増収額を比べます。よくある失敗は、処遇改善加算の増えた分まで増収に数えてしまうことです。

要件を満たさない月に算定していたと分かった場合は、その分の返還が必要になることがあります。点検の観点は、「介護加算の自己点検のやり方」で解説しています。返還の範囲は、「介護加算の返還が必要になる場面」で確かめられます。

まとめ

加算による増収は、見込み額から算定のためのコストを引いて判断します。

出発点は、候補の加算ごとに対象者を数えることです。要件は、人員・体制、記録・書類、利用者の条件に分けて、自事業所の現状と照らし合わせます。

取得すると決めたら、ほかの加算との関係を確かめます。算定を始めたい月から逆算して、届出と利用者への説明の予定を組みます。算定後は、請求実績と要件の記録を毎月点検してください。

参考