介護加算の算定要件は、1つの資料にまとまっていません。単位数と届出の要否は、単位数表の注に書かれています。人員・設備・割合などの具体的な基準は、「厚生労働大臣が定める基準」(大臣基準告示)にあります。研修の範囲や割合の計算方法といった解釈は、留意事項通知が示しています。
この3つを順に読むと、自事業所が要件を満たしているかを、根拠のある形で確かめられます。利用者に説明している加算と、実際に提供しているサービスの内容も一致させられます。
この記事では、3つの資料の役割と、通所介護の入浴介助加算を例にした読み方を扱います。要件の種類ごとの確認のしかたと、要件を欠いていた場合の扱いも整理します。自己点検シートを使った点検は、要点を示します(2026年10月時点)。
算定 要件が 書かれている 3つの 資料
居宅サービスの場合、算定要件は次の3つの資料に分かれています。
資料 | 居宅サービスでの名称 | 書かれていること |
|---|---|---|
単位数表の注 | 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)の別表 | 加算の名称と単位数、届出が必要かどうか、算定できる場合、ほかの加算と併せて算定できるか |
大臣基準告示 | 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号) | 人員・設備・利用者の割合・研修などの具体的な基準 |
留意事項通知 | 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年老企第36号) | 割合の計算方法、研修や記録の範囲、届出後に続ける管理など、基準の解釈 |
単位数表の注に「別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているもの」とあれば、目印です。大臣基準告示に、具体的な基準があります。まず、注で算定の枠組みをつかみます。次に、大臣基準告示で自事業所の体制と照らし合わせます。判断に迷う点は、留意事項通知で確かめます。この順で読むと分かりやすいでしょう。
施設サービスと地域密着型サービスは、単位数表と留意事項通知が別です。施設サービスの単位数表は、平成12年厚生省告示第21号の別表です。留意事項通知は、老企第40号を読みます。地域密着型サービスの単位数表は、平成18年厚生労働省告示第126号の別表です。留意事項通知は、老計発第0331005号ほかの通知です。居宅サービスでも、短期入所と特定施設入居者生活介護の通知は老企第40号です。サービス区分ごとの対応は「介護給付費の算定とは」の表で確かめられます。
(参考:厚生労働省「各種加算等自己点検シート」106 通所介護、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」、「令和6年度介護報酬改定について」掲載の留意事項通知の新旧対照表)
通所 介護の 入浴 介助 加算で 見る 3つの 資料の 読み方
単位数表の注10は、入浴介助加算を算定できる場合を定めています。大臣基準に適合するものとして届出を行い、かつ、その基準による入浴介助を行った場合です。このとき、1日につき(Ⅰ)40単位または(Ⅱ)55単位を加算します。(Ⅰ)と(Ⅱ)は併せて算定できません。届出をしただけでは算定できず、基準どおりの入浴介助を行った日が対象です。
大臣基準告示(第14号の5)では、(Ⅰ)の基準は2つです。1つは、入浴介助を適切に行える人員と設備を有して行う入浴介助であることです。もう1つは、入浴介助に関わる職員に研修等を行うことです。
(Ⅱ)は、これに3つの基準が加わります。1つ目は、医師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員などによる評価です。利用者の居宅を訪問し、浴室での動作と浴室の環境を評価します。2つ目は、機能訓練指導員などが共同して個別の入浴計画を作成することです。3つ目は、その計画にもとづく入浴介助です。個浴または居宅の浴室に近い環境で行います。
留意事項通知は、(Ⅰ)の「入浴介助に関する研修」の中身を示しています。入浴介助に関する基礎的な知識と技術を習得する機会、というものです。大臣基準告示だけでは研修の中身が分からないため、ここで確かめます。
届出の際は、(Ⅰ)(Ⅱ)のどちらでも添付する資料があります。浴室部分の状況が分かる平面図等と、研修を実施した(または実施する)ことが分かる資料等です。届出の進め方は「介護加算の届出(体制届)の流れ」で説明しています。
この加算を算定している事業所は、研修の記録があるかを確かめます。(Ⅱ)であれば、利用者ごとに居宅訪問による評価と個別の入浴計画がそろっているかも確かめます。
(参考:厚生労働省「各種加算等自己点検シート」106 通所介護、留意事項通知(老企第36号)の新旧対照表(令和6年度介護報酬改定)、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について(改正後全文)」)
要件の 種類ごとの 確認のしかた
要件は、人員・割合・設備と研修・データ提出に分けると、確かめる書類を決めやすくなります。
要件の種類 | 要件の例 | 確かめる書類 |
|---|---|---|
人員 | 中重度者ケア体制加算(通所介護):人員基準の員数に加えて看護職員または介護職員を常勤換算で2以上確保し、提供時間帯を通じて専従の看護職員を1名以上配置する | 勤務体制一覧表、出勤簿などの勤務実績 |
利用者の割合 | 中重度者ケア体制加算(通所介護):前年度または算定日が属する月の前3月間の利用者のうち、要介護3〜5の者の割合が30%以上 | 割合の計算書、利用実績 |
割合の継続管理 | 認知症専門ケア加算(訪問介護など):届出後も直近3月間の割合を毎月記録し、所定の割合を下回ったら直ちに届出を出す | 毎月の割合の記録、届出書の控え |
設備と研修 | 入浴介助加算(通所介護):浴室の状況が分かる平面図等と研修の実施が分かる資料を届出時に添付する | 届出書の控え、研修の記録 |
データ提出 | 科学的介護推進体制加算:利用者ごとに定められた月の翌月10日までにLIFEへ情報を提出する | LIFEの提出状況 |
割合の要件は、届出の時点で満たしていても、利用者の入れ替わりで下回ることがあります。留意事項通知が毎月の記録を求めている加算は、記録の担当者と置き場所を決めておきます。
科学的介護推進体制加算は、提出の遅れにも決まりがあります。提出すべき情報を期限までに提出できない事実が生じると、直ちに届出が必要です。その月のサービス提供分から、利用者全員について算定できなくなります。提出期限の考え方は「LIFEの提出期限」で説明しています。
(参考:厚生労働省「各種加算等自己点検シート」106 通所介護、留意事項通知(老企第36号)の新旧対照表(令和6年度介護報酬改定)、「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」)
要件を 1つでも 欠いていた 場合の 扱い
厚生労働省の運営指導マニュアルは、要件を欠いていた場合の指導を示しています。算定要件を誤って理解し、要件を1つでも満たしていなかった場合です。このときは、その加算について自己点検のうえ過誤調整を行うよう指導するとしています。
大臣基準告示には、「次に掲げる基準のいずれにも適合すること」と書かれた加算が多くあります。一部の基準だけを満たしていても、算定できません。一方、単なる誤りではなく不正の疑いがある場合は、扱いが変わります。運営指導から監査に切り替えて、事実関係を確認するとされています。
要件を欠いていたことに気づいたら、対象の期間と利用者を洗い出します。そのうえで、保険者(市町村)に過誤の手続を確かめます。加算を取り下げると、利用者の自己負担額にも影響する場合があります。利用者への説明と精算も、あわせて準備します。再請求の内容の決め方は「介護加算の過誤請求への対応」で説明しています。
(参考:厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和6年7月改訂))
自己 点検 シートを 使った 点検の 手順
厚生労働省の「各種加算等自己点検シート」は、加算の点検に使える参考様式です。加算ごとに、単位数表の注と大臣基準告示の基準が点検事項として並んでいます。適否と根拠の書類も書き込めます。掲載されているのは、2024年度改定に対応した版です。居宅サービス11種類と居宅介護支援の分があります。点検は、次の順で進めます。
- 算定中の加算を1つ選び、点検事項ごとに根拠の書類を開いて適否を付けます。書類の名前だけを書いて、中身を開かずに済ませないようにします。
- 判断に迷う点は、留意事項通知の原文で確かめます。シートには、通知の内容が載っていません。研修の範囲や割合の計算方法を見落としやすくなります。
- シートにないサービスの加算と、2026年6月施行の改定で変わった加算は、3つの資料を直接読みます。シートの内容が2024年度改定の時点のままであることを、見落とさないようにします。
改定後の告示と通知は、厚生労働省の「令和8年度介護報酬改定について」のページに掲載されています。シートの欄の使い方と点検の記録の残し方は「介護加算の自己点検のやり方」で説明しています。
(参考:厚生労働省「各種加算等自己点検シートについて」、「令和8年度介護報酬改定について」)
まとめ
加算の算定要件は、3つの資料を順に読んで確かめます。単位数表の注で算定の枠組みを、大臣基準告示で具体的な基準を、留意事項通知で解釈を確かめます。出発点は、自事業所が算定している加算の一覧と、厚生労働省の自己点検シートです。まず算定中の加算を1つ選び、点検事項ごとに根拠の書類を開いて適否を付けてください。要件を書類で確かめておけば、利用者に説明している加算と提供しているサービスが一致します。

