介護請求ソフトは、介護給付費の請求データを作り、国民健康保険団体連合会(国保連)へ伝送するためのソフトです。請求データは、国が定める方式で作ります。一般の請求書ソフトは、金額と宛先を入れて請求書を発行するものです。単位数の計算や国保連への伝送には使えません。
介護報酬の請求に使うソフトは、大きく2つに分かれます。国民健康保険中央会(国保中央会)の「介護伝送ソフト」と、民間の会社が販売する介護ソフトの請求機能です。国保中央会のソフトは、機能を請求に絞っています。その分、記録との連携やサポート期間に制約があります。事業所の規模や今の記録の方法によって、合うかどうかが分かれます。
この記事では、介護請求ソフトが受け持つ処理と、今の介護ソフトで確かめる点を扱います。国保中央会の介護伝送ソフトの機能と費用、市販の介護ソフトとの選び分けも整理します。一般の請求書ソフトで足りる範囲と、製品を比べる手順も扱います(2026年10月時点)。
介護 請求 ソフトが 受け持つ 処理
介護給付費の請求は、各月分を翌月10日までに審査支払機関へ行います。「介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令」(以下「請求命令」)の決まりです。審査支払機関は、市町村から審査・支払の事務を委託された国保連です。方法は、国が定める方式で請求データを伝送するか、光ディスク等で提出するかのどちらかです。介護請求ソフトは、請求データの作成から審査結果の受け取りまでを受け持ちます。
処理 | ソフトが行うこと |
|---|---|
単位数の計算 | サービスコードと加算・減算から単位数を集計 |
利用者負担の計算 | 負担割合(1割〜3割)と公費負担を反映 |
請求データの作成 | 請求書と明細書を定められた形式で作成 |
国保連への伝送 | 請求データを国保連へ送信 |
審査結果の受け取り | 返戻・保留などの通知を受信 |
サービスコードや単位数は、報酬改定のたびに変わります。そのため、介護請求ソフトは改定に合わせて更新されていることが前提です。国保中央会の介護伝送ソフトでも、2026年6月と8月に更新プログラムが提供されました。2026年度の報酬改定に合わせたもので、該当する明細書を作るには更新が必要とされています。請求の正確さは、ソフトの機能だけでは決まりません。改定のたびに更新が届き、事業所がそれを入れているかで決まります。
(参考:請求命令 第2条・第3条、介護保険法 第49条の2、国保中央会「介護伝送ソフトVer.10」「介護給付費請求の手引き」令和7年12月)
今の 介護 ソフトの 請求 機能の 確認
介護記録ソフトには、請求データの作成や国保連への伝送の機能を持つものがあります。すでに介護ソフトを使っている場合は、新しい製品を探す前に今の契約を確かめてください。請求機能と伝送機能が含まれているか、オプション契約が必要かを見ます。契約書や管理画面のメニューで、請求データの作成と伝送の両方を確かめます。
国保 中央会の 介護 伝送 ソフトの 機能と 費用
「国保中央会介護伝送ソフト」は、2つのソフトを組み合わせたものです。請求データを作る「簡易入力ソフト」と、国保連とやり取りする「伝送通信ソフト」です。2026年10月時点の最新版はVer.10で、2つは単体では販売されていません。
簡易入力ソフトでは、利用者・事業所・保険者の台帳を登録します。すべての様式の請求明細書と給付管理票を作成できます。対象は、居宅サービス、介護予防サービス、地域密着型サービス、施設サービスです。居宅介護支援、介護予防支援、介護予防・日常生活支援総合事業も含みます。伝送通信ソフトは、請求書・明細書・給付管理票を国保連へ送ります。審査支払の結果通知や連絡文書も受け取ります。
項目 | 国保中央会介護伝送ソフトVer.10の内容 |
|---|---|
利用料 | 60,000円(消費税・送料込)。マニュアルと操作方法のサポートを含む |
ライセンス | ソフトを入れるパソコン1台につき1ライセンス(CD-ROM1枚)。複数の事業所の請求を1台で行う場合は1ライセンス |
サービスコード | 別売の「介護給付費単位数表標準マスタ」を取り込むか、自分で調べて手入力。マスタの2026年度の使用許諾料は1ライセンス税込9,000円 |
サポート期間 | 原則として2027年3月末で、更新プログラムの提供とヘルプデスクが終了 |
動作環境 | Windows 11(64bit)。インストールにCD-ROMドライブが必要 |
申込みと支払い | 申込書(Excel)をメールで介護伝送ソフト受付センターへ送る。2026年8月7日から当面の間、支払いは銀行振込 |
表で特に確かめたいのはサポート期間です。国保中央会の介護伝送ソフトは、大きな報酬改定に合わせてバージョンが変わります。旧バージョンでは、更新プログラムもヘルプデスクも使えなくなります。Ver.10への切り替えでも、バージョンアップ版の料金はありませんでした。利用料を改めて負担する形でした。これから導入する場合は、サポートが原則2027年3月末までであることが前提です。次のバージョンの利用料も見込んでおいてください。
標準マスタを買わない場合は、改定のたびにサービスコードと単位数を自分で調べて登録します。入力の誤りは、返戻の原因になります。マスタの使用許諾料は年度ごとにかかるので、ソフトの利用料とあわせて比べてください。また、ソフトは申込順に発送され、届くまでに日数がかかります。新しく開設する事業所は、事業所番号を取得する前でも申し込めます。初回の請求月から逆算して、早めに申し込みます。
(参考:国保中央会「介護伝送ソフトVer.10」の動作環境と必要機器・利用のお申込み・お申込みに関するQ&A・パンフレット、国保中央会「介護給付費単位数表標準マスタ」)
国保 中央会の 伝送 ソフトと 市販の 介護 ソフトの 選び 分け
国保中央会の介護伝送ソフトのパンフレットに挙がっている機能は、3つです。台帳の管理、請求明細書と給付管理票の作成、国保連との伝送です。介護記録やシフトの機能は含まれていません。サービスの実績は請求明細書の画面に入力し、前月分をコピーして直す使い方になります。そのため、請求だけを低い費用で始めたい事業所の候補になります。利用者が少なく、記録は紙や別の方法で足りている場合です。
一方、記録や予定・実績の管理と請求をまとめたい場合は、請求機能を持つ市販の介護ソフトが合います。記録した実績が、そのまま請求データになるためです。実績を転記する手間と、その際の入力の誤りを減らせます。利用者が増えるほど、転記の手間は大きくなります。国保中央会のソフトから始めた事業所も、利用者数が増えた時点で見直す価値があります。
どちらを選ぶ場合も、インターネットでの請求には、国保連への請求開始の届出と電子証明書が別に要ります。電子証明書は、介護電子請求受付システムで発行します。代理人が請求する場合は、代理人申請電子請求受付システムです。発行には手数料がかかります。届出から請求開始までの流れは「国保連伝送(インターネット請求)の始め方」で解説しています。
(参考:請求命令 第4条、国保中央会「介護伝送ソフトVer.10」のパンフレットとお申込みに関するQ&A)
一般の 請求書 ソフトで 足りる 範囲
一般の請求書ソフトで対応できるのは、利用者に負担分を請求する請求書の発行です。ただし、請求書に載せる利用者負担額の計算には、介護請求ソフトの結果を使います。利用者負担額は、単位数を金額に換算し、負担割合や公費を当てはめて決まるためです。計算の手順は「介護報酬の計算方法」で解説しています。
領収証にも注意が要ります。訪問看護や通所リハビリテーションなどの居宅サービス等の対価には、医療費控除の対象になる部分があります。事業者が発行する領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額を記載することとされています。対象かどうかは、サービスの種類によって変わります。そのため、利用者負担分の請求書と領収証も、介護ソフトの帳票で出すほうが記載漏れを防げます。一般の請求書ソフトを使う場合の選び方は「請求管理システムとは」で扱っています。
(参考:国税庁 タックスアンサーNo.1127)
介護 請求 ソフトを 比べるときの 確認 手順
製品を比べるときは、国保中央会のソフトを候補に入れる場合も含めて、次の順に確かめます。
- サービス種類の対応:事業所で提供しているサービス種類が、すべて請求の対象になっているかを確かめます。よくある失敗は、主なサービスだけを確かめ、介護予防サービスや総合事業への対応を見落とすことです。
- 報酬改定時の更新とその費用:改定の月の請求に間に合うように、更新が提供されるかを確かめます。更新やバージョンの切り替えに、別の費用がかかるかも確かめます。よくある失敗は、導入時の料金だけを比べ、改定のたびに必要になる費用を見ないことです。国保中央会のソフトなら、次のバージョンの利用料と標準マスタの使用許諾料がこれに当たります。
- 実績の入力の手間:記録から実績が請求データに反映されるか、請求の画面に入力し直すかを確かめます。よくある失敗は、請求の画面の使いやすさだけを見ることです。毎月の実績の入力にかかる時間も見積もります。
- 返戻・保留の後の修正と再請求:審査結果の通知をソフトで受け取れるかを確かめます。返戻になった明細書を直して再請求する操作も、デモで確かめます。よくある失敗は、新しく請求する画面だけを見て、修正の画面を見ないことです。確認したい画面は「介護請求の返戻とは」にまとめています。
- 利用者向けの帳票:利用者負担分の請求書と、医療費控除の対象額を載せた領収証を、同じソフトで出せるかを確かめます。よくある失敗は、国保連への請求だけを確かめることです。利用者に渡す帳票を、別の方法で作り続けることになります。
- 伝送の方法と電子証明書の扱い:ソフトから直接国保連へ送信できるか、別の伝送ソフトが必要かを確かめます。電子証明書を、事業所と代理人のどちらの名義で取得するかも確かめます。よくある失敗は、伝送機能が別契約や別ソフトになっていることに、請求の直前で気づくことです。
比べるときの基準は「介護請求ソフトの比較の基準と5製品を調べた表」でも解説しています。下の表は介護ソフトの製品例です。請求機能の有無や対応するサービス種類は、各社の公式サイトや資料で確かめてください。
| 製品名 | 特徴 | 料金 |
|---|---|---|
| かんたん介護ソフト 公式サイト ↗ | 複数の介護サービスに対応し、請求、伝送、利用者管理を分かりやすく行える。 | 初期費用+月額月額10,780円+初回のみ契約事務手数料18,000円(税抜)。月額の税込・税抜は公式サイトの中で表記が分かれる(無料試用あり) |
| まもる君クラウド 公式サイト ↗ | 記録、請求、売上管理をクラウドで提供。端末を選ばず利用できる。 | 初期費用+月額初期0円、月額7,800円~(税別。1事業所番号・1サービスあたり。60日間無料体験あり) |
| 楽々ケアクラウド 公式サイト ↗ | 介護保険の請求、利用者管理、計画・実績管理をクラウドで行う。 | 初期費用+月額初期20,000円、月額8,150円~(税別) |
まとめ
介護報酬の請求には、国保連へ請求データを伝送できる介護請求ソフトが必要です。選択肢は、国保中央会の介護伝送ソフトと、請求機能を持つ市販の介護ソフトに分かれます。まず、今の介護ソフトの契約に、請求機能と伝送機能が含まれているかを確かめてください。含まれていない場合は、利用者数と記録の方法から、どちらが合うかを決めます。改定時の費用も含めて上の手順で比べ、国保連への届出と電子証明書の準備を進めます。請求を正確に行えれば、利用者に渡す請求書や領収証の金額の誤りも防げます。
参考
- 介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令(e-Gov法令検索)
- 介護保険法(e-Gov法令検索)
- 国民健康保険中央会「介護伝送ソフトVer.10」
- 国民健康保険中央会「介護伝送ソフトVer.10 動作環境と必要機器」
- 国民健康保険中央会「介護伝送ソフトVer.10 利用のお申込み」
- 国民健康保険中央会「お申込みに関するQ&A」
- 国民健康保険中央会「国保中央会介護伝送ソフトVer.10(令和6年度制度改正・報酬改定対応版)簡易入力機能付伝送ソフトのご案内」
- 国民健康保険中央会「介護給付費単位数表標準マスタ」
- 国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き」令和7年12月
- 国税庁 No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価

