加算を新しく算定したときの増収額は、次の式で試算できます。「加算の単位数×算定回数×1単位の単価」です。ただし、要件に当たりそうな利用者の全員に算定できるとは限りません。そのため、1つの数字ではなく幅で見ます。実際に算定できる割合を、高・中・低の3通りに置きます。この記事では、この割合を「算定率」と呼びます。
幅で見ておくと、算定率が見込みを下回っても費用を賄えるかを、届出の前に確かめられます。
この記事では、介護加算のシミュレーションの方法を扱います。試算式の形、算定回数の数え方、算定率と損益分岐の求め方の順です。処遇改善加算と限度額の扱いも説明します(2026年10月時点)。加算に限らない報酬全体の試算は、「介護報酬シミュレーションのやり方」で解説しています。
加算の 算定 方法で 変わる 試算式
加算には、1回・1日・1月ごとに単位数が決まっているものがあります。ほかの単位数に割合を掛けるものもあります。算定方法によって、試算式の形が変わります。
加算の算定方法 | 月の増収額の試算式 |
|---|---|
1回・1日・1月ごとの単位数 | 単位数×算定回数×1単位の単価 |
所定単位数に割合を掛ける | 対象の単位数×割合×1単位の単価 |
介護職員等処遇改善加算 | 1月の総単位数×加算率×1単位の単価 |
単位数は、最新の算定構造で確かめます。1回・1日・1月のどれで算定するかも一緒に見ます。2026年6月の改定で変わった箇所には、算定構造のなかで印が付いています。サービス提供体制強化加算のように、区分のうち1つしか算定できない加算もあります。上の区分に移るとき、増える単位数は区分の単位数の差です。処遇改善加算の「1月の総単位数」は、基本サービス費に各種加算減算を加えた単位数です。処遇改善加算そのものは除きます。
1単位の単価は、10円に割合を掛けた額です。割合は、事業所の地域区分とサービス種類で決まります。単価は10円から11.40円の間です。同じ地域区分でもサービス種類で単価が違うため、検討する加算のサービスの単価を使います。単位数を金額にしたときの1円未満の端数は切り捨てます。なお、試算した増収額には、保険請求分と利用者負担分の両方が含まれます。単価の一覧は「介護報酬の1単位の単価」で確かめられます。割合を掛けるときの四捨五入の順番は、「介護報酬の計算方法」で解説しています。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「厚生労働大臣が定める一単位の単価」一、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」三、老発0313第6号 2⑴)
利用 実績からの 算定 回数の 数え 方
算定回数は、自事業所の直近の利用実績から数えます。次の順に進めます。
- 加算の要件と算定の単位(1回・1日・1月)を、算定構造と留意事項通知で確かめます。1月ごとに算定する加算に利用日数を掛けるなど、算定の単位の取り違えに気をつけます。
- 直近の数か月分の請求明細やサービス提供記録から、要件に当たりうる利用者を抜き出します。要介護度や状態などの要件に当たらない利用者まで数えないようにします。
- 抜き出した利用者ごとに、算定の単位に合わせて月の回数を数えます。1回ごとの加算なら利用回数、1日ごとの加算なら利用日数です。月平均の延べ回数を出します。入院などで利用がなかった月を除くと、回数が多めに出ます。実績のとおりに平均します。
- 居宅サービスの加算が支給限度額管理の対象なら、区分支給限度基準額に近い利用者に印を付けます。この利用者の扱いは、後の節で説明します。
算定率の 3通りと 損益 分岐
要件に当たりうる回数のすべてで算定できるとは限りません。計画への同意が得られない利用者がいる、要件の記録がそろわない月がある、といった理由です。そこで、算定率を高・中・低の3通りに置き、増収額と純増額の幅を出します。純増額は、増収額から追加の費用を引いた額です。
次の例は、計算の流れを示すための仮の数値です。1回20単位の加算について、要件に当たりうる延べ回数を月300回と置いています。1単位の単価は10円、加算を維持するための追加の費用は月36,000円です。追加の費用の見積もり方と判断の手順は、「介護加算の費用対効果」で解説しています。
算定率 | 月の算定回数 | 月の増収額 | 費用を引いた純増額 |
|---|---|---|---|
100%(高) | 300回 | 60,000円 | 24,000円 |
70%(中) | 210回 | 42,000円 | 6,000円 |
50%(低) | 150回 | 30,000円 | −6,000円 |
この例では、算定率が60%を下回ると純増額がマイナスになります。この境目が、損益分岐の算定率です。月の追加の費用を、算定率100%のときの月の増収額で割って求めます。36,000円÷60,000円=60%です。記録の時間のように、算定回数に比例して増える費用もあります。その場合は、算定率ごとに費用も計算し直します。
自事業所の試算では、損益分岐の算定率と、算定を始めた直後に見込める算定率を比べます。中の算定率で純増が出ても、損益分岐との差が小さいことがあります。この場合、少し算定率が下がるだけでマイナスになります。そこで、算定率が下がる理由への手当てを先に整えます。同意の取り方や、記録の様式です。そのあとで届け出ると、試算に近い回数を算定しやすくなります。こうした準備は、加算が求めるケアを対象の利用者に行き届かせることにもつながります。
なお、サービス提供体制強化加算のように、事業所の体制に対する加算は別です。要件を満たせば、対象のサービスに算定します。算定率の幅より、職員の退職や異動のあとも要件を満たし続けられるかを確かめます。
処遇 改善 加算の 増加分の 扱い
新しい加算を算定すると、処遇改善加算の額も増えます。計算のもとになる1月の総単位数が増えるためです。増える額は、「新しい加算で増える単位数×加算率×1単位の単価」で試算できます。ただし、処遇改善加算は、算定額に相当する職員の賃金改善を実施しなければならない加算です。試算では、この増加分を純増額に入れません。賃金改善に充てる額として、別の行に書いておきます。加算率は、サービスと加算の区分で異なります。2026年6月以降の率は、通知の別紙1で確かめます。
(参考:厚生労働省 老発0313第6号 2⑴⑵)
区分 支給 限度 基準額と 利用者 負担の 確認
居宅サービスでは、要介護度別に区分支給限度基準額が決められています。限度額を超えて利用した分は、全額が利用者の自己負担です。加算が支給限度額管理の対象なら、限度額に近い利用者に注意します。試算どおりに算定できないことがあるためです。加算の分だけ限度額を超える場合があります。担当の介護支援専門員が、ほかのサービスの回数を調整する場合もあります。算定回数を数えるときに印を付けた利用者は、低い算定率の側に含めて考えます。
支給限度額管理の対象かどうかは、算定構造の各サービスの注記で確かめます。たとえば、介護職員等処遇改善加算は、限度額の算定対象から除かれています。通所介護のサービス提供体制強化加算も対象外です。見分け方は「介護報酬の加算一覧の見方」で説明しています。
限度額管理の対象外の加算でも、利用者負担は増えます。利用者負担は1割で、一定以上の所得がある方は2割または3割です。試算では、利用者1人あたりの月の負担の増え方も出しておきます。利用者やご家族、担当の介護支援専門員に説明する材料になります。
(参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」、同「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、老発0313第6号 2⑴)
まとめ
加算の増収額は、単位数×算定回数×1単位の単価で試算します。算定率を3通りに置いた幅と、損益分岐の算定率で見ます。出発点は、最新の算定構造で単位数と算定の単位を確かめることです。そのうえで、直近の利用実績から、要件に当たりうる延べ回数を数えます。試算で純増が見込めたら、要件の確認と届出へ進みます。進め方は「介護の加算で増収を検討する手順」で確かめられます。

