厚生労働省の「介護保険施設等運営指導マニュアル」は、事業所による自己点検が望ましいとしています。運営指導では、加算について4つの観点と基本報酬が確認されます。「考え方」「実施状況」「請求の内容」「効果」です。介護加算の自己点検も、同じ観点で進めるのが近道です。

この観点で点検しておくと、運営指導の場で根拠の書類を示して説明できます。誤りがあっても、早い段階で過誤調整に進めます。利用者にとっても、負担している加算が受けているサービスと合っていることの裏付けになります。

この記事では、運営指導で確認される観点と、自己点検シートの使い方を扱います。加算ごとの点検手順と、誤りが見つかったときの確認範囲も整理します。記録と点検の時期も扱います(2026年10月時点)。

運営指導で加算について確認される観点

マニュアルが示す運営指導の流れでは、報酬請求に関する確認として次の5点が挙げられています。左の2列がマニュアルの記載です。右の列は、それを自己点検に置き換えたものです。

運営指導での確認の観点

運営指導で行われること

自己点検で確かめること

加算及び減算に係る考え方

請求にあたっての基本的な考え方を確認する

算定中の加算の要件を、担当者が根拠の資料に沿って説明できるか

加算及び減算の実施状況

請求している加算の種類などの状況を確認する

算定中の加算と該当する減算の一覧が、届出と請求の実績に合っているか

加算及び減算の請求の内容

請求している加算について、関係書類により事業所から説明を受ける

要件ごとに、実施したことを示す書類がそろっているか

効果

加算を実施したことによる効果について説明を受ける

加算の取り組みで利用者に何が変わったかを、記録や事例で示せるか

基本報酬

算定している単位数が、実際のサービスに相応したものかを確認する

提供したサービスの内容・区分と、請求した基本の単位数が合っているか

加算だけでなく、減算と基本報酬も確認の対象です。点検の範囲は、「算定している加算」より広く取ります。減算に当たる月がないか、基本の単位数が合っているかまで含めてください。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」Ⅰ 基本編 第2章 第3節、Ⅱ 実践編 第3章 第1節の運営指導の流れ)

点検に使う資料と自己点検シートの注意点

厚生労働省は、「各種加算等自己点検シート」を公開しています。事業者が加算を定期的に自己点検するための参考様式です。掲載されているのは、居宅サービス11種類と居宅介護支援の分です。加算・減算の項目ごとに、報酬基準の該当箇所と点検事項が並んでいます。次の順で使います。

  1. 「確認対象」の欄で、算定中の加算を「確認対象」、算定していない加算を「対象外」にします。前回の点検で付けた区分を、そのまま引き継がないようにします。
  2. 点検事項ごとに、根拠の書類を「(参考)適否の根拠となる文書等」の欄に書きます。届出書の控え、勤務体制一覧表、計画書、実施記録などです。書類の名前だけを書いて、中身を開かずに済ませないようにします。
  3. 「適否」の欄に、適か不適かを記入します。利用者の割合やLIFEへの提出など月ごとに変わる要件は、直近の数か月分の記録で確かめます。届出時の計算書だけを見て「適」にしないようにします。

掲載のシートは、2024年度の報酬改定に対応した版です。2026年6月の改定で変わった加算は、要件を別に確かめます。「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」で、改定箇所の印を見ます。留意事項通知の内容も、シートには載っていません。指定権者(都道府県・市町村)が独自の点検表を公開している場合は、それも使えます。要件を調べる順は「介護加算の算定要件の調べ方」で解説しています。場面別の確認項目は「介護加算のチェックリスト」で整理しています。

シートは、欄を埋めるだけでは点検になりません。マニュアルも、自己点検シートの結果だけを根拠にする指導は、書面指導と変わらないとしています。加算の多くは、要件ごとに必要な挙証資料が異なります。

(参考:厚生労働省「各種加算等自己点検シートについて」、「各種加算等自己点検シート」106 通所介護、「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「介護保険施設等運営指導マニュアル」Ⅰ 基本編 第2章 第3節、Ⅱ 実践編 第3章 第6節)

加算ごとの点検手順

点検は、算定している加算を1つずつ取り上げ、次の順で進めます。

  1. 届出の内容と今の体制を照らし合わせます。届け出た人員配置や体制が、いまの勤務体制一覧表と勤務実績に合っているかを見ます。よくある失敗は、届出時の職員名簿のまま確認し、その後の退職や異動を反映していないことです。届出と算定後に残す書類は「介護加算の届出に必要な書類」で整理しています。
  2. 算定要件を1つずつ、根拠の書類で確かめます。マニュアルは、要件を1つでも欠いていれば、自己点検のうえ過誤調整を行うよう指導するとしています。よくある失敗は、研修や会議の日付や参加者の分かる記録が残っていないことです。
  3. 請求した単位数と回数を、サービス提供の記録と照らし合わせます。よくある失敗は、予定の内容のまま請求し、当日の中止や内容の変更を反映していないことです。
  4. 減算に当たる月がないかを確かめます。定員超過利用、人員基準欠如、高齢者虐待防止措置未実施減算、業務継続計画未策定減算などです。減算の種類は、サービスごとに算定構造で確かめます。よくある失敗は、加算だけを見て減算を見落とすことです。定員超過利用・人員基準欠如に当たらないことを、要件に含む加算もあります。
  5. 基本報酬の区分を確かめます。提供したサービスの時間区分や要介護度などと、請求した基本の単位数が合っているかを見ます。よくある失敗は、要介護度や計画の変更を反映せず、前の月の区分で請求を続けることです。
  6. 効果を説明できる材料をそろえます。利用者の状態や生活にどんな変化があったかを、記録や事例で示せるようにします。よくある失敗は、実施した回数だけをまとめ、利用者にとっての変化を示せないことです。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」Ⅰ 基本編 第3章 第2節、Ⅱ 実践編 第3章 第6節、「各種加算等自己点検シート」106 通所介護、「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」)

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誤りが見つかったときの確認範囲

マニュアルは、不正ではなく単なる請求上の誤りと判断した場合の指導を示しています。ほかにも同様の誤りがないかを確認し、自己点検のうえ過誤調整を行うよう指導するとしています。事業所が自分で誤りを見つけたときも、次の3つの方向に範囲を広げて確かめます。

  • 同じ加算で、ほかの利用者にも同じ誤りがないか
  • 同じ誤りが、ほかの月にも続いていないか
  • 要件の似たほかの加算にも、同じ解釈の誤りがないか

範囲が分かったら、過誤の手続きと扱いを保険者(市町村)や指定権者に確認します。誤りか不正かを判断するのは、行政機関です。マニュアルには、不正請求と認めざるを得ない場合があるとも書かれています。人員基準に満たないのに減算せず、通常の単位数で請求していた場合などです。解釈誤りや、極めて単純な事務的な誤りは除かれます。事業所だけで判断せず、見つけた経緯と範囲を整理して相談してください。

加算の請求を訂正すると、利用者から受け取った自己負担分にも影響します。再請求の考え方は「介護加算の過誤請求への対応」で解説しています。利用者負担分の扱いは「介護加算の返還が必要になる場面」で確かめられます。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」Ⅰ 基本編 第3章 第2節、Ⅱ 実践編 第3章 第6節)

点検結果の記録に残す項目

点検の結果は、次の項目で残します。

  • 点検した日と、点検した担当者
  • 点検の対象にした月と、加算の名称・区分
  • 結果(要件を満たしている・満たしていない・確認できない)
  • 満たしていない場合の是正の内容と、完了した日
  • 根拠にした書類の名称と置き場所

運営指導では、加算の考え方や請求の内容について、関係書類で説明を求められます。点検の記録と根拠の書類の置き場所がそろっていれば、その場で示せます。また、過誤調整を求められた場合は、自主点検の結果の報告が必要とされています。点検の記録は、その報告の下書きにもなります。

自己点検シートには、「点検確認記録」のシートも付いています。点検日、点検者、要改善事項、対応策、対応結果を書く様式です。点検者とは別に、確認者の欄もあります。不適の項目を見つけたまま、対応結果を書かずに終えないようにします。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」Ⅱ 実践編 第3章 第1節の運営指導の流れ)

点検の時期の決め方

定期的な点検に加えて、次の3つの時点を点検の区切りにすると、誤りが長く続くのを防げます。

  • 新しく加算を届け出たあと:最初の請求の前後に、要件と請求の内容を確かめる
  • 報酬改定や人員体制が変わったあと:改定された加算や、人員が要件になっている加算と減算を確かめる
  • 運営指導の通知が届いたとき:5つの観点で説明できる状態かを確かめる

運営指導は、実施予定日のおおむね1か月以上前に通知されるのが原則です。緊急時などには、事前の通知なく行われる場合もあります。通知を待たずに点検しておきます。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」Ⅰ 基本編 第2章 第3節、Ⅱ 実践編 第3章 第1節)

まとめ

加算の自己点検は、運営指導で確認される観点に沿って進めます。根拠の書類を実際に開いて確かめることが要点です。出発点は、自事業所で算定している加算と、該当しうる減算の一覧です。まず、厚生労働省の自己点検シートか指定権者の点検表を用意します。次に、加算を1つ選んで手順どおりに点検し、結果を記録してください。不正の疑いがある場合の監査は、自己点検とは別の手続きです。

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参考