見守りセンサーや見守りシステムの導入は、製品を選ぶ前に、夜勤で誰が通知を受け、誰が居室へ駆けつけ、何を記録するかを決め、その運用が夜勤の人数で回るかを試用で確かめてから本格導入に進むと、つまずきにくくなります。製品の性能が十分でも、対応の分担が決まっていないと、鳴っても誰も向かわない、通知が多すぎて止めてしまう、といった形で見守りが途切れるためです。

この記事では、特養・老健・有料老人ホームなどで見守りセンサーを導入する流れ、導入前に決めておく夜勤の運用、ナースコールやインカムとの関係、利用者と家族への説明、試用で確かめること、補助金や加算を使う場合の順番を扱います。センサーの種類と検知方式は「介護見守りセンサーの種類|検知方式・知らせるタイミング・通知経路の違い」、見守りセンサーと見守りシステムの違いは「見守りシステムとは|検知・通知・記録の3要素と見守りセンサーとの違い」で解説しています。

見守りセンサー導入の流れ

導入は次の順に進めます。補助金を使う場合は、手順3・4の段階で申請の準備を始めます。

  1. 目的と対象の決定:夜間の転落・転倒に早く気づきたい、定時巡回で利用者を起こす場面を減らしたいなど、解決したい課題と対象のフロア・利用者を決めます。よくある失敗は、「夜勤の負担を減らす」とだけ決め、何の記録で効果を確かめるかを決めないことです。
  2. 夜勤の運用の設計:通知を誰がどの端末で受け、誰が駆けつけ、何を記録するかを、夜勤の実際の人数で決めます(次の節の表)。よくある失敗は、日中の職員数を前提に決め、夜勤では対応しきれない運用になることです。
  3. 製品の候補の絞り込み:利用者の動き方と駆けつけにかかる時間から検知方式を選び、手順2の通知の受け方に対応する製品を候補にします。よくある失敗は、機能の多さで比べ、いまのナースコールや端末とつながるかを後から確かめることです。
  4. 建物と通信環境の確認:平面図に居室とアクセスポイントの位置を書き込み、電波が届きにくい居室の見当をつけて、メーカーに測定を相談します。よくある失敗は、スタッフステーションの近くだけで電波を確かめることです。
  5. 利用者と家族への説明:対象の利用者または家族等に目的と通知の使い方を説明し、同意を得ます。よくある失敗は、試用の途中で対象の居室を増やしたときに説明を忘れることです。
  6. 試用:デモ機や貸出を使い、電波が届きにくい居室を含めて、実際の利用者と夜勤で試します。よくある失敗は、記録を取らずに職員の印象だけで本格導入を決めることです。
  7. 本格導入と研修:試用の結果で運用の決まりを直し、夜勤に入る全ての職員に研修してから対象を広げます。よくある失敗は、試用に参加した職員だけが使い方を知っている状態で全館に広げることです。
  8. 導入後の見直し:通知の件数、誤った通知、ヒヤリ・ハットを定期的に振り返り、設定や対象の利用者を見直します。よくある失敗は、利用者の状態が変わっても導入時の感度をそのままにすることです。

建物と電波の確かめ方は「介護施設の見守りシステムと通信環境|建物・電波干渉の確認点と試用の進め方」で解説しています。

導入前に決めておく夜勤の運用

手順2で決める項目は次のとおりです。製品を決める前に施設で案を作り、試用で直していく前提で考えます。

決める項目

決める内容

決めていないと起きやすいこと

通知を受ける職員と端末

フロアごとの受け手と、スマートフォン・専用の受信器・ナースコールのどれで受けるか

全員に同じ通知が届き、誰が向かうかがその場で決まらない

駆けつけの分担

最初に向かう職員と、介助中で手が離せないときに代わる職員

介助中に通知が重なり、居室へ向かうのが遅れる

通知が重なったときの順番

離床・ナースコール・体調の変化など、通知の種類ごとの優先度

鳴った順に対応し、急ぐべき通知が後回しになる

定時巡回との関係

巡回を続ける利用者と、通知で対応する利用者の区分

巡回を一律になくし、注意が必要な利用者の変化に気づくのが遅れる

対応の記録

通知の時刻・対応した職員・居室で見た状態・対応の内容を残す場所

誤った通知の原因が分からず、設定を直せない

点検と電池の管理

動作を確かめる時刻と担当、電池交換や充電の担当

電池切れに気づかず、通知が来ないまま夜が過ぎる

設定を変える担当

感度や通知の条件を変えてよい職員と、変えたことの伝え方

職員ごとに設定が変わり、夜勤の組み合わせで動きが違う

夜勤で特に響くのは、駆けつけの分担と通知が重なったときの順番です。夜勤は職員が少なく、排せつ介助などで手が離せない時間があるため、「通知を受けた人が必ず向かう」だけでは回らない場面が出ます。代わりに向かう職員を決めておき、本人が押すナースコールと、本人が呼んでいないセンサーの通知のどちらを先に確かめるかも、利用者ごとの転倒のおそれを踏まえて話し合っておきます。

定時巡回については、厚生労働省の生産性向上推進体制加算の通知が、見守り機器を使う場合でも、安全面から特に留意すべき利用者は定時巡回の実施も検討することとしています。同じ通知は、あらかじめ時間を定めて機器の不具合を確かめる仕組みと、メーカー等と連携した定期的な点検も求めています。夜勤の始業時に動作と電池を確かめる、といった形で担当と時刻を決めておくとよいでしょう。

記録は、通知の件数だけでなく居室で何を見たかまで残すと、誤った通知がどの利用者のどの動きで起きたかが分かり、設定の見直しに使えます。見守りシステムの記録を介護記録ソフトに連携できる製品もあるため、記録を二重に書かずに済むかは手順3で確かめておきます。

(参考:厚生労働省「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」令和6年3月15日老高発0315第4号)

ナースコールやインカムとの関係

見守りセンサーの通知は、施設のナースコールにつなぐもの、専用の受信器や端末で受けるもの、スマートフォンに届けるものがあり、選べる経路は製品によって違います。導入前に決めたいのは、夜勤の職員が通知を確かめる場所をいくつにするかです。ナースコールは子機、見守りセンサーは別のスマートフォン、職員間の連絡はインカム、と端末が分かれると、持ち歩く機器が増え、どの通知に誰が対応したかも分かりにくくなります。

いまのナースコールにつなぐ場合は、ナースコールのメーカーに接続の可否を確かめます。インカムで見守りの通知を音声で受けられる製品もありますが、連携できるかは機種の組み合わせで決まります。確かめ方は「介護インカムとナースコール・見守りシステムの連携|選ぶときの確認項目と問い合わせ前の準備」で解説しています。

利用者と家族への説明と同意

生産性向上推進体制加算の通知では、見守り機器を居室に置く際は、プライバシーに配慮する観点から利用者または家族等に必要な説明を行い、同意を得ることとされ、意向に応じて機器の使用を停止するなどの運用も認められています。加算を算定しない施設でも、居室に機器を置く点は同じなので、同じ考え方で説明しておくとよいでしょう。

説明では、何を検知して誰に知らせるか、記録をどう使うかを伝え、使用をやめたいという申し出があったときの見守り方法も決めておきます。カメラ型を選ぶ場合は、映像の閲覧や保存のルールも必要です。詳しくは「見守りカメラのプライバシー配慮|利用目的の通知・居室での同意・映像の閲覧と保存のルール」を参照してください。

(参考:老高発0315第4号)

試用で確かめること

試用は、製品の性能だけでなく、手順2で決めた運用が夜勤の人数で回るかを確かめる期間です。通知が届いたかと誤った通知の件数に加えて、通知が重なった場面で誰がどの順に対応したか、代わりに向かう職員の決まりが機能したか、記録が抜けなく残ったか、職員が通知を止めた場面がなかったかを記録します。端末の持ち方や通知音の聞き取りやすさを夜勤の職員から聞いておくと、本格導入の前に直せる点が見つかります。

効果を比べるには、試用の前に巡回の回数や所要時間、ヒヤリ・ハットなどを同じ方法で記録しておく必要があります。記録の取り方と費用との比べ方は「見守りセンサーの費用対効果|費用の内訳と効果の測り方・試用期間の記録の取り方」で解説しています。

補助金や加算を使う場合の順番

都道府県の介護テクノロジー導入支援事業では、機器の契約や購入を交付決定の後に行うよう定めている例があります。たとえば兵庫県の2026年度の要綱は、購入業者との契約を交付決定後に行うこと、業者は原則として入札または2者以上の見積り合わせで決めることとしています。試用はデモ機や貸出で行い、購入の契約は交付決定を待ってから結びます。対象や募集の時期は都道府県で異なるため、「見守りシステム導入で使える補助金|介護テクノロジー導入支援事業の対象・補助額と申請の準備」と助成金マップで所在地の制度を確かめてください。

特養の夜勤職員配置加算では、見守り機器を使って要件を満たすと、夜勤職員の基準の数に上乗せする数を1から0.9や0.6などに減らせます。0.6の要件では3月以上の試行期間を設け、その間も通常の要件を満たしたまま委員会で人員体制と職員の負担を検討してから届け出ることとされているため、導入の時期はこの試行期間から逆算します。要件は「夜勤職員配置加算|特養の区分と単位数・必要な夜勤職員数・見守り機器を使う場合の要件」で解説しています。また、生産性向上推進体制加算の(Ⅰ)は導入前後の比較で成果を確かめることが要件のため、導入前の状況の調査を機器を入れる前に済ませておきます(「生産性向上推進体制加算の要件|(Ⅰ)(Ⅱ)の違いと導入前調査・実績報告の準備」)。

なお、特養・老健・介護医療院・特定施設入居者生活介護などでは、加算を算定しなくても、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会を定期的に開くことが運営基準で定められています(2027年3月31日までは努力義務)。見守りセンサーの運用の見直しをこの委員会の議題に入れると、手順8を続けやすくなります。

(参考:兵庫県「介護業務における介護テクノロジー導入支援事業 実施要綱」、老企第40号 令和6年度改正の新旧対照表、老高発0315第4号、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第35条の3、令和6年厚生労働省令第16号 附則第4条)

見守りセンサー・見守りシステムの製品を比べる際は、次の表も参考にしてください。通知の受け方や試用の条件は製品ごとに異なるため、手順2で決めた運用に合うかをメーカーに確かめます。

製品名特徴料金おすすめ
パルモスマートコール
公式サイト ↗
見守りセンサーと呼出し機能を組み合わせ、スマートフォンで通知・状況確認ができる。個別見積個別見積(無料試用あり)見守りセンサーと呼出しを組み合わせ、スマートフォンで通知を受けられる
まもる~のSHIP
公式サイト ↗
居室の映像とセンサー情報をまとめ、離床・転倒リスクなどを見守る。介護記録との連携にも対応。初期費用+月額購入プラン:本体130,000円~(税込143,000円)+月額800円~(税込880円)。サブスクリプションプラン:月額4,500円~(税込4,950円)。設置を依頼する場合は別途手数料(オプション別、無料試用あり)映像とセンサーの情報をまとめ、介護記録との連携に対応
ハピネス絆
公式サイト ↗
利用者の状態をセンサーで検知し、スマートフォンなどへ通知。必要なセンサーを選んで導入できる。個別見積個別見積(無料試用あり)必要なセンサーを選んで導入できる
ライフリズムナビ®+Dr.
公式サイト ↗
睡眠センサーと各種機器を組み合わせ、睡眠・活動状況を見える化。初期費用+月額スタータープラン15万円~/床(税込165,000円)、ベーシックプラン19.8万円~/床(税込217,800円)、エンタープライズプラン26万円~/床(税込286,000円)。ほかに初期の諸経費(見積もり)と、月額1,500円/床(税込1,650円)睡眠センサーなどで睡眠・活動状況を見える化

まとめ

見守りセンサーの導入は、夜勤で誰が通知を受け、誰が駆けつけ、何を記録するかを先に決め、その運用が回るかを試用で確かめてから本格導入に進めます。出発点は、解決したい夜間の課題と対象の利用者を書き出し、夜勤の実際の人数で通知と駆けつけの分担の案を作ることです。そのうえで、案に合う通知経路の製品を候補にして、電波が届きにくい居室を含めて試用し、補助金を使う場合は交付決定を待って契約してください。通知から駆けつけまでの流れが決まっていれば、職員は必要なときに必要な居室へ向かいやすくなり、利用者は転倒などに早く気づいてもらえるうえ、不要な訪室で眠りを妨げられる場面も減らせます。

参考