見守りシステムの多くは、センサーやカメラの情報を無線で送り、職員のスマートフォンや専用端末、ナースコールに知らせます。電波が届きにくい場所があると、その居室だけ通知が遅れたり届かなかったりして、見守りが途切れます。このため、製品の機能を比べるのと並行して、自施設の建物と通信環境を確かめておく必要があります。通知が確実に届けば、職員は離床や転倒の兆しに気づきやすくなり、利用者の安全につながります。この記事では、介護施設で多い電波のトラブル、確認する項目と進め方、複数拠点・多床室での注意点、導入後の備えを扱います。見守りシステム全体の仕組みは「見守りシステムとは|検知・通知・記録の3要素と見守りセンサーとの違い」で解説しています。

介護施設で多い電波のトラブル

電波環境協議会が2020年1〜2月に介護老人福祉施設と介護老人保健施設を対象に行った調査(回答357施設)では、見守り支援機器を導入している施設の44.9%が電波に関するトラブルを経験していました。原因として挙がったのは、「特定の場所で電波が受信できない」「誤検知が多い」「報知に気が付かない」「電池切れに気が付かない」などです。また、無線LANを導入している施設の44.1%もトラブルを経験しており、主な原因は「無線LANにつながらない・つながりづらい」「特定の場所で電波が十分に届かない」でした。

電波が届くかどうかだけでなく、通知に職員が気づけるか、電池切れに気づけるかも、見守りが途切れる原因になります。このため、確認は建物と通信の設備だけでなく、通知の受け方や電池の管理といった運用にも広げておくと安心です。

(参考:電波環境協議会「2019年度医療機関等における適正な電波利用推進に関する調査の結果【介護施設】」)

建物と通信環境の確認項目

見守りシステムの導入前に確かめたい項目は、次のとおりです。

確認項目

確かめる内容

主な確認先

通信方式

既存Wi-Fiを使うか専用の無線か

メーカー

電波が届きにくい場所

金属の扉・厚い壁・アクセスポイントから遠い居室

平面図と現地

アクセスポイント

居室数・階数に見合う台数と位置

メーカー・通信業者

電波の干渉

2.4GHz帯の機器や持ち込み機器

現地

通信量

映像やインカムと回線を分け合うか

メーカー・通信業者

通知の受け方

スマホ・専用端末・ナースコール

メーカー

電池と電源

電池の交換周期と停電時の動作

メーカー

医療機関向けの資料ですが、電波環境協議会は、無線LANの電波が届く範囲はアクセスポイントを置く高さや、周りの壁・床・天井の材質で大きく変わるとしています。また、通信が不安定になる原因として、2.4GHz帯を使う機器からの干渉、持ち込み機器による干渉、1台のアクセスポイントに多くの端末がつながること、アクセスポイントと端末の距離、金属の壁や扉による遮へいを挙げています。無線LANで音声通話をする場合は、ほかのデータ通信が多いときに音が途切れることがあるともしています。

見守りシステムを既存のWi-Fiに載せる場合は、介護記録用のタブレットやインカムなど、すでに同じ回線を使っている機器をメーカーに伝えてください。カメラ型を選ぶ場合は、映像を送るのに必要な通信量もあわせて確かめます。通知の届け先の違いは「介護見守りセンサーの種類|検知方式・知らせるタイミング・通知経路の違い」で、インカムやナースコールとの連携は「介護インカムとナースコール・見守りシステムの連携」で解説しています。

(参考:電波環境協議会「医療機関における安心・安全な電波利用のためのエリア別の対策実施例・よくある質問と回答(Q&A)」)

導入前の確認の進め方

  1. 施設の平面図を用意し、居室・スタッフステーション・既存のアクセスポイントとナースコールの位置を書き込みます。増改築の前の図面を使うと、壁や扉の位置が実際と合わないことがあります。
  2. 見守りシステムを既存のWi-Fiに載せるか、専用の無線を使うかを、平面図をもとにメーカーと相談します。既存の回線を使う機器を伝え忘れると、導入後に通信が混み合うことがあります。
  3. 電波の強さを測ります。電波環境協議会によると、無線LANの電波の強さは市販のソフトで簡易に測れ、精密な測定が必要な場合は、無線LANの整備・保守事業者や専門業者に依頼するとよいとされています。スタッフステーションの近くだけで測ると、居室の奥やベッドの位置での弱さを見落とします。
  4. 電波が届きにくいと考えられる居室を含めて試用します。試用の間は、通知が届いたか、遅れや誤検知がなかったかを記録します。条件のよい居室だけで試すと、全体に導入してから問題が見つかります。
  5. 通知を受ける職員と端末、電池交換の担当を決めます。通知への気づきやすさは、職員が少ない夜勤の時間帯にも確かめておきます。

試用の結果と測定の結果は、導入するかどうかの判断だけでなく、アクセスポイントを増やすかどうかを決める材料にもなります。試用期間の記録の取り方は「見守りセンサーの費用対効果|費用の内訳と効果の測り方・試用期間の記録の取り方」で解説しています。

複数拠点と多床室での確認

複数の建物や拠点を持つ法人では、建物の構造や通信環境が拠点ごとに異なる場合があります。1つの拠点で問題なく動いたシステムが、別の拠点では電波が届かないこともあるため、拠点ごとに平面図の確認と電波の測定を行ってください。

多床室のある施設では、同じ部屋の利用者のうち誰に関する通知なのかを、職員が見分けられるかを確かめます。ベッドごとに通知を区別できるか、通知の表示名をどう設定するかは、試用の段階でメーカーに確認しておくとよいでしょう。

導入後の改修とトラブルへの備え

電波環境協議会は、導入後にトラブルが起きる要因として、改修による建物構造の変化、新たな電波の干渉、導入時に想定していなかった使い方などを挙げています。そのうえで、稼働前に整備・保守事業者との保守契約の範囲を確かめ、ネットワーク構成図などの設計書や電波の測定結果をいつでも見られるようにしておくことを勧めています。見守りシステムのメーカーと通信設備の業者が別の場合は、通知が届かないときにどちらへ連絡するかも、あらかじめ決めておくと対応が早くなります。

(参考:電波環境協議会「医療機関における安心・安全な電波利用のためのエリア別の対策実施例・よくある質問と回答(Q&A)」)

通信環境の整備費用と補助

Wi-Fiの配線工事やアクセスポイントなどの整備費は、都道府県が行う介護テクノロジー導入支援事業で、補助を受けて導入する機器にあわせて対象になる場合があります。たとえば愛知県の2026年度の案内では、介護テクノロジーの導入に伴って必要となるWi-Fi環境の整備費が対象とされ、通信費やメンテナンス費は対象外とされています。対象や申請の時期は都道府県ごとに異なるため、見積りを取る段階で、自施設の都道府県の要綱を確かめてください。補助の概要は「見守りシステム導入で使える補助金|介護テクノロジー導入支援事業の対象・補助額と申請の準備」で解説しています。

(参考:愛知県「令和8年度愛知県介護テクノロジー導入支援事業費補助金について」)

製品名特徴料金
Care Bird
公式サイト ↗
カメラと各種センサーで居室を見守り、異常時に通知する。施設の状況に合わせた構成が可能。個別見積個別見積(公式サイトに価格の記載なし。無償貸出による無料体験あり)
eライブ
公式サイト ↗
映像とセンサーで利用者の動きを確認し、必要なときだけ訪室できるよう支援する。買い切りスタンダードセット148,000円、セレクトセット195,000円、コンプリートセット208,000円(税別。別途管理サーバーが必要)
LIFELENS
公式サイト ↗
センサー、介護記録、ナースコールなどの情報をまとめ、利用者の状態変化を把握しやすくする。初期費用+月額初期費用(機器・工事など)は個別見積。サービス利用料は1室あたり月額1,870円~(税込。体動センサーのみ。映像センサー併用は3,300円)

まとめ

見守りシステムの導入では、製品の機能と同じように、建物の構造や通信環境との相性が、通知が確実に届くかどうかを左右します。確認の出発点は、施設の平面図に居室とアクセスポイントの位置を書き込み、電波が届きにくい場所の見当を付けることです。そのうえで、メーカーや通信業者に電波の測定を依頼し、届きにくい居室を含めて試用してください。複数拠点がある場合は、拠点ごとに同じ確認を行います。

参考