見守りシステムは、病院でも介護施設でも使われます。ただし、導入前に確かめる相手と中身が違います。病院の病棟では、離床センサーなどの無線が、医用テレメータと混信しないかを確かめます。医用テレメータは、患者の心電図などを無線で送るモニターです。相手は、院内で医療機器を管理する担当者です。一方、介護施設では、加算に見守り機器を使う場合に確認が要ります。対象は、夜勤職員配置加算や生産性向上推進体制加算です。必要なのは、介護報酬で定める見守り機器の要件を満たすことと、利用者や家族等への説明と同意です。どちらかの現場の確認だけで機種を決めると、もう一方の現場で使えないことがあります。加算の要件を満たせないこともあります。
この記事では、確認点が分かれる理由と、病院で確かめる電波干渉を扱います。介護施設の加算の要件と同意、併設する場合の選び方も整理します。
病院と 介護 施設で 確認点が 分かれる 理由
確認点が分かれるのは、周りで動いている無線機器と、見守り機器にかかる制度が違うためです。
確認の観点 | 病院(病棟) | 介護施設 |
|---|---|---|
電波で注意する機器 | 医用テレメータなどの医用電気機器 | 施設内のWi-Fiとほかの無線機器 |
院内・施設内の相談先 | 医療機器安全管理責任者と電波の担当者 | 加算で使う場合は機器の活用を検討する委員会 |
介護報酬上の要件 | 病院には適用されない | 加算に使う場合は機器の定義と台数 |
利用者への説明と同意 | 院内の方針による | 生産性向上推進体制加算では必要 |
病院の病棟では、医療機器と見守り機器の電波が同じ空間にあるため、電波の確認が選定の中心になります。介護施設では、加算に使うかどうかで、選べる機器と導入の手順が決まります。なお、介護医療院など、居室で医用テレメータなどの医用電気機器を使う介護施設もあります。その場合は、病院と同じ電波の確認もしてください。
病院で 確かめる 医療 機器との 電波 干渉
電波環境協議会の手引きは、病室で使われる無線機器の例に、無線式ナースコールと離床センサーを挙げています。無線設備を導入するときは、既存の設備に影響を与えないことを確かめるよう示しています。確認は、製造販売業者等と協力して行います。離床センサーなどの特定小電力無線局の設備は、医用テレメータと混信するおそれがあり、注意が必要です。医用テレメータが使う特定小電力無線局の周波数帯は、ほかの機器でも使われています。非観血血圧モニターや離床センサーシステムなどです。
病院の管理者は、医療機器の安全使用のための責任者(医療機器安全管理責任者)を置くことになっています。また、手引きは、電波の管理を担う担当者(電波利用コーディネータ)や委員会を置くことを勧めています。これは義務ではありません。医療安全管理や医療機器安全管理などの、既存の委員会の所管としてもよいとされています。見守りシステムの検討は、これらの担当者を交えて、次の順に進めます。
- 無線方式と周波数の確認:メーカーに、センサー・中継機・受信機それぞれの無線方式と周波数帯を示してもらいます。国内で使える無線機器には、技術基準適合証明番号が表示されています。総務省の検索で、周波数や出力を調べられます。職員が通知を受けるスマートフォンのWi-Fiだけを確かめるのが、よくある失敗です。センサーと中継機の間の無線を見落とさないようにします。
- 病棟の無線機器との照合:病棟で使っている無線機器と照らし合わせてもらいます。依頼先は、医療機器安全管理責任者や電波の担当者です。照合には、医用テレメータのチャネル管理表などを使います。見守りシステムの担当部署だけで判断しないようにします。
- 実際の病室での試験:医用テレメータなどを使っている病室で、見守り機器を動かします。見守りの通知が届くか、医療機器の受信に影響がないかを確かめます。医療機器を使っていない部屋だけで試して、導入を決めないようにします。
(参考:電波環境協議会「医療機関における安心・安全な電波利用のためのエリア別の対策実施例・よくある質問と回答(Q&A)」(「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(改定版)」(2021年7月)抜粋)、医療法施行規則第1条の11第2項第3号)
介護 施設で 確かめる 加算の 要件と 利用者の 同意
介護施設では、見守り機器を夜勤職員配置加算や生産性向上推進体制加算に使うかどうかを、先に決めます。加算で見守り機器として扱われる機器には、定義があります。利用者がベッドから離れようとしている状態や、離れたことを感知できるセンサーです。その情報を、外部通信機能により職員に通報できる必要もあります。加算に使う予定があるなら、検討中の製品がこの定義に当たるかを、メーカーに確かめてください。
夜勤職員配置加算では、見守り機器を使うと、加算に必要な夜勤職員の上乗せを1から0.9に減らせます。要件は、見守り機器を入所者数の10分の1以上設置し、委員会を3月に1回以上開くことなどです。夜勤時間帯を通じて入所者数以上を設置するなどの要件を満たせば、0.6にできる場合もあります。要件と届出の流れは「夜勤職員配置加算」で解説しています。生産性向上推進体制加算の(Ⅰ)では、見守り機器を全ての居室に設置することが要件の1つです。詳しくは「生産性向上推進体制加算の要件」を参照してください。
生産性向上推進体制加算では、見守り機器を居室に設置する前に、説明と同意が要ります。プライバシーに配慮する観点から、利用者または家族等に説明し、同意を得ることとされています。利用者や家族等の意向に応じて、機器の使用を止める運用も認められます。居室は、利用者の生活の場です。加算に使わない場合も、同じように説明と同意の手順を決めておくと、導入後の行き違いを防げます。カメラ型の機器を使う場合の配慮は「見守りカメラのプライバシー配慮」で解説しています。Wi-Fiなどの通信環境は「介護施設の見守りシステムと通信環境」で扱っています。
(参考:厚生労働省「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第40号)令和6年度改正の新旧対照表、厚生労働省「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」(令和6年3月15日老高発0315第4号))
病院と 介護 施設を 併設する 場合の 選び方
病院と介護施設を併設する法人が同じ機種にそろえると、操作の教育や保守の窓口を1つにできます。ただし、同じ機種にできるのは、病院側の電波の確認を通った機種に限られます。介護施設側で加算に使う場合は、見守り機器の定義にも当たる必要があります。どちらかの条件を満たさない場合は、現場ごとに機種を分けてください。
通知の受け方も、現場ごとに確かめます。既存のナースコールに通知を出すのか、スマートフォンやインカムで受けるのかで、連携できる機種が変わります。連携の確認項目は「介護インカムとナースコール・見守りシステムの連携」で解説しています。選定の場には、病院側の医療機器安全管理責任者と看護部門が加わるようにします。介護施設側は、介護職員の代表です。加算に使う場合は、機器の活用を検討する委員会が加わります。一方の現場の意見だけで決めないようにします。見守り機器の種類と通知の仕組みは「見守りシステムとは」で解説しています。
次の表は、見守りカメラ・見守りセンサーの製品の例です。病院で使う場合の無線方式と周波数帯は、各メーカーに確かめてください。加算の見守り機器の定義に当たるかどうかも確かめます。
| 製品名 | 特徴 | 料金 |
|---|---|---|
| Care Bird 公式サイト ↗ | カメラと各種センサーで居室を見守り、異常時に通知する。施設の状況に合わせた構成が可能。 | 個別見積個別見積(公式サイトに価格の記載なし。無償貸出による無料体験あり) |
| eライブ 公式サイト ↗ | 映像とセンサーで利用者の動きを確認し、必要なときだけ訪室できるよう支援する。 | 買い切りスタンダードセット148,000円、セレクトセット195,000円、コンプリートセット208,000円(税別。別途管理サーバーが必要) |
| LIFELENS 公式サイト ↗ | センサー、介護記録、ナースコールなどの情報をまとめ、利用者の状態変化を把握しやすくする。 | 初期費用+月額初期費用(機器・工事など)は個別見積。サービス利用料は1室あたり月額1,870円~(税込。体動センサーのみ。映像センサー併用は3,300円) |
まとめ
見守りシステムの導入前の主な確認点は、病院では医療機器との電波の共存です。介護施設では、加算の要件と利用者の同意です。出発点は、製品の無線方式と周波数帯、見守り機器の定義に当たるかを、メーカーに確かめることです。そのうえで、病院側は、医療機器安全管理責任者を交えて、医療機器を使っている病室で試験します。介護施設側は、加算の計画と説明・同意の手順を準備してください。この準備が整えば、医療機器のアラームを妨げず、利用者も納得したうえで見守りを行えます。患者や入所者の離床などに、職員が早く気づける環境を整えやすくなります。

