介護テクノロジー導入支援事業は、見守り機器・インカム・介護ソフトなどの導入費を都道府県が補助する事業です。2026年度は、国の補正予算による介護テクノロジー定着支援事業も行われています。どちらも申請先は事業所のある都道府県で、国には直接申請しません。
この記事では、2つの事業の違い、対象になる事業所、補助率と基準額、対象の機器、申請の流れを整理します。2026年10月時点の国の要綱と資料をもとにしています。
導入 支援 事業と 定着 支援 事業の 違い
介護テクノロジー導入支援事業の財源は、地域医療介護総合確保基金です。以前の介護ロボット導入支援事業とICT導入支援事業を引き継いでいます。2026年度は別に、介護テクノロジー定着支援事業があります。2025年度の補正予算から繰り越した事業で、国の実施要綱も別に定められています。
2つの事業は、補助率と要件が違います。どちらの事業として募集しているかは、都道府県によって違います。募集ページに書かれた事業名と、根拠になっている要綱を確かめてください。2026年度は、定着支援事業として募集している県が多く見られます。
(参考:厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金(人材分)の支援メニュー)」、「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」)
対象になる 事業所
定着支援事業の対象は、介護保険法のサービスを提供するすべての事業所です。訪問介護事業所と居宅介護支援事業所も含まれます。老人福祉法の養護老人ホームと軽費老人ホームも対象です。国の要綱は、サービスの種別で対象を制限しないよう都道府県に求めています。
ただし、サービスによって追加の条件があります。特養・老健・介護医療院・グループホーム・特定施設・小規模多機能・短期入所などでは、委員会の設置が条件です。利用者の安全と職員の負担軽減を検討する委員会で、生産性向上推進体制加算で求められる委員会と同じものです。訪問・通所・短期入所・居宅介護支援などでは、ケアプランデータ連携システムの利用が条件です。2026年度中に利用を始めます。
自事業所のサービスが当てはまるかは、要綱の一覧で確かめます。委員会の進め方は「生産性向上推進体制加算の要件」で解説しています。
(参考:「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」3・6)
補助率と 基準額
定着支援事業の補助率は4/5です。補助額は、実際に払った額に4/5を掛けた額と、区分ごとの基準額のうち少ないほうです。基金の導入支援事業は、補助率を都道府県が決めます。国の資料では、一定の要件を満たす事業所は3/4以上、それ以外は1/2以上とされています。
定着支援事業の国の要綱が定める基準額は、次のとおりです。
補助の対象 | 国の要綱の基準額 |
|---|---|
移乗支援・入浴支援の機器とインカム | 1台あたり100万円 |
見守り機器など、上記以外の介護テクノロジー | 1台あたり30万円 |
介護ソフト・バックオフィスソフト | 職員数に応じて100万〜250万円 |
介護ソフトと合わせて導入する端末・Wi-Fi工事など | 介護ソフトと合わせて115万〜265万円 |
複数の機器を連動させるパッケージ型の導入 | 400万〜1,000万円の範囲で都道府県が決める額 |
第三者による業務改善支援 | 48万円 |
居宅サービス事業所と居宅介護支援事業所は、条件を満たすと介護ソフトの基準額に5万円が加わります。2026年度中にケアプランデータ連携システムで5事業所以上と連携する場合です。
基準額は国の要綱の値で、都道府県はこれをもとに独自の上限を設けることがあります。1事業所や1法人あたりの合計に上限を設ける県もあります。申請額を決める前に、所在地の要綱で上限を確かめてください。
(参考:「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」5、厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金(人材分)の支援メニュー)」)
対象になる 機器と 経費
定着支援事業で補助の対象になるのは、主に次の5つです。
- テクノエイド協会の福祉用具情報システム(TAIS)で「介護テクノロジー」に選定された機器
- 介護ソフトと、一緒に使うパソコン・タブレット、Wi-Fi工事、導入前後のベンダーのサポート費用
- TAISに未掲載でも同じ水準と都道府県が判断した機器と、勤怠・給与・電子サインなどのバックオフィスソフト
- 複数の機器を連動させるパッケージ型の導入
- コンサルティング会社などによる業務改善支援の費用
販売価格が公表され、一般に購入できる機器が対象です。開発の費用と通信費は対象になりません。国の要綱は、見守り機器・インカム・介護ソフトを優先して補助するよう都道府県に求めています。
介護ソフトには条件があります。記録・情報共有・請求を、転記なしで一気通貫に行えるものに限られます。居宅サービスと居宅介護支援の事業所は、ケアプランデータ連携標準仕様のCSVへの対応が条件です。特養・老健・介護医療院と地域密着型特養は、LIFEのCSV連携仕様への対応が条件です。
これから介護ソフトを選ぶなら、候補が条件を満たすかを比較の段階で確かめます。申請の直前に製品を替える手戻りを防げます。比べ方は「介護ソフトを公平に比較する進め方」で解説しています。見守り機器の基準額とWi-Fi工事の扱いは「見守りシステム導入で使える補助金」で解説しています。
(参考:「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」4、テクノエイド協会「福祉用具情報システム(TAIS)」)
申請の 主な 要件
定着支援事業では、機器を導入するだけでなく、次の取り組みが求められます。
- 業務改善計画の作成:原則として、都道府県の介護生産性向上総合相談センターに相談して作ります。
- 業務改善の支援か研修:第三者の業務改善支援を受けるか、国や県の研修を受講します。国の研修には、生産性向上ビギナーセミナー・フォローアップセミナーとデジタル中核人材養成研修があります。
- SECURITY ACTIONの宣言:IPA(情報処理推進機構)の「★一つ星」か「★★二つ星」を宣言します。
- 効果の報告:補助の翌年度から3年間、業務改善計画の効果を都道府県に報告します。
- 賃金への還元:導入で収支が改善した場合は職員の賃金に還元し、その旨を職員に知らせます。
ほかの補助金で助成を受けたものは対象外です。基金の導入支援事業やIT導入補助金などで補助を受けた機器・ソフトには使えません。機器ごとに使う補助金を1つに決めておきます。
(参考:「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」4(3)・6・7、厚生労働省「相談窓口一覧(介護現場の生産性向上の取組・普及支援ナビ)」)
申請の 流れ
募集の時期と手順は都道府県ごとに違います。多くの県で共通する流れは、次のとおりです。
- 募集要領の確認:都道府県の募集ページで、事業名・募集期間・研修の条件を確かめます。前年度や他県の要綱で準備を進めないようにします。
- 研修の受講と相談:条件の研修を受け、相談センターに業務改善計画を相談します。研修の日程が、申請の締切より前に終わっている県があります。
- SECURITY ACTIONの宣言と見積もり:宣言を済ませて見積もりを取ります。TAISの掲載は、製品名と型番で確かめます。見積もりは、機器・工事・端末・通信費に分けて取ります。
- 申請:要望調査や事業計画の提出を経てから、交付申請を出す県があります。申請額が予算を超えると、選定が行われることがあります。
- 交付決定後の契約と購入:契約・発注は、交付決定や内示を受けてから行います。交付決定の前に契約した機器は、補助の対象になりません。
- 実績報告と補助金の受け取り:導入後に実績報告を出し、補助額が確定してから支払われます。代金はいったん自己資金で払うので、資金の手当てを先に考えておきます。
- 効果の報告:翌年度から3年間、効果を報告します。導入前の状態を記録しておかないと、前後を比べられません。記録の取り方は「見守りセンサーの費用対効果」で解説しています。
(参考:静岡県「令和8年度「介護テクノロジー定着支援事業費補助金」」、鹿児島県「令和8年度介護テクノロジー導入支援事業について」)
都道府県別の 募集 状況
ケアロジカでは、都道府県ごとに今年度の募集期間・補助率・申請先をまとめています。2026年度は、多くの都道府県で受付を終えています。受付を終えた県でも、今年度の条件は来年度の準備に使えます。
- 北海道:北海道
- 東北:青森県・岩手県・秋田県・宮城県・山形県・福島県
- 関東:茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県
- 中部:新潟県・富山県・石川県・福井県・山梨県・長野県・岐阜県・静岡県・愛知県
- 近畿:三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県
- 中国:鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県
- 四国:徳島県・香川県・愛媛県・高知県
- 九州・沖縄:福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県
市区町村の補助金や国の補助金もあわせて探すときは、助成金・補助金 検索を使えます。
ほかの 補助金との 使い分け
都道府県の受付が終わっているときの選択肢は、国のデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)です。事務局に登録されたITツールの導入を支援する補助金です。ただし、定着支援事業と同じソフトに重ねて使うことはできません。対象要件と申請の流れは「デジタル化・AI導入補助金の対象要件と申請の流れ」で解説しています。
賃上げや離職率の改善を目標にするなら、労働局の助成金も候補です。業務改善助成金と人材確保等支援助成金があります。要件と申請時期は、厚生労働省の案内で確かめてください。
まとめ
介護テクノロジー導入支援事業は、都道府県に申請する介護事業所向けの補助です。2026年度は、補助率4/5の定着支援事業として募集している県が多く見られます。
まず、所在地の都道府県の募集ページで、事業名と要綱、研修の条件を確かめてください。受付が終わっていれば、翌年度に向けて業務改善計画と見積もりの準備を進めます。
次に、導入で負担を減らしたい業務を決め、契約は交付決定を待ってから行います。記録や連絡の手間が減れば、その時間を利用者のケアに充てやすくなります。
参考
- 厚生労働省「介護サービス事業者の皆様へのお知らせ」(介護テクノロジーの導入に関する補助について)
- 厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金(人材分)の支援メニュー)」(国土交通省 スマートアイランド推進プラットフォーム掲載)
- 「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」(差替え後。静岡県ウェブサイトに国の要綱として掲載)
- 厚生労働省「相談窓口一覧(介護現場の生産性向上の取組・普及支援ナビ)」
- テクノエイド協会「福祉用具情報システム(TAIS)」介護テクノロジー
- 情報処理推進機構「介護テクノロジー定着支援事業・介護テクノロジー導入支援事業」(SECURITY ACTION)
- 静岡県「令和8年度「介護テクノロジー定着支援事業費補助金」」
- 鹿児島県「令和8年度介護テクノロジー導入支援事業について」

