見守りセンサーの費用対効果は、機器の価格表だけでは判断できません。費用には、機器代や月額料金のほかに、通知を受けて職員が居室へ向かい確認する時間が含まれます。効果には、巡回や駆けつけにかかる時間の変化と、転倒などの事故や体調の変化に早く気づけたかどうかが含まれます。どちらも建物の造りや利用者の状態によって変わるため、自施設で試用し、導入前と試用中の記録を同じ方法で取って比べるのが確実です。
この記録は、導入するかどうかの判断だけでなく、機器を置くフロアや台数の決定、加算の算定や補助金の申請で求められる効果の説明にも使えます。この記事では、費用の内訳、効果を測る指標、試用期間の記録の取り方、加算・補助金との関係を扱います。
費用の 内訳と 見落としやすい 運用の 手間
見守りセンサーの費用は、見積もりで分かるものと、使ってみないと分からないものに分かれます。
費用の区分 | 主な中身 | 確かめ方 |
|---|---|---|
初期費用 | 機器の購入費またはレンタルの初期費用と設置工事費 | 設置する台数で見積もりを取る |
月額費用 | システム利用料・通信費・保守料 | 契約期間と更新時の条件も確かめる |
環境整備の費用 | Wi-Fiの増設や配線の工事 | 設置予定の居室で電波が届くか調べる |
運用の手間 | 通知の確認・駆けつけ・記録にかかる職員の時間 | 試用期間中に件数と時間を記録する |
上の3行は見積もりで比べられますが、運用の手間は製品の検知方式や設定によって変わり、見積もりには表れません。対応が不要だった通知(誤報や、確認したら問題がなかった通知)が多いと、夜勤の職員が詰所と居室を往復する回数が増え、定時巡回を減らしても全体の負担が減らないことがあります。価格は台数と使う年数をかけた総額で比べ、運用の手間は試用の記録で比べると分かりやすいでしょう。検知方式ごとの特徴は「介護見守りセンサーの種類|検知方式・知らせるタイミング・通知経路の違い」、通信環境の確認は「介護施設の見守りシステムと通信環境|建物・電波干渉の確認点と試用の進め方」で解説しています。
効果を 測る 指標と 記録すること
効果は、職員の時間と利用者の安全の両方で測ります。導入前と試用中で同じ項目を同じ方法で記録しないと、比べることができません。
指標 | 記録すること | 比べる点 |
|---|---|---|
巡回の時間 | 定時巡回の回数と1回の所要時間 | 巡回に使う時間が減ったか |
駆けつけ対応 | 通知の件数と対応が必要だった件数 | 必要な通知の割合が高いか |
利用者の安全 | 事故とヒヤリ・ハットの件数・発見の経緯 | 件数や発見の速さが悪化していないか |
職員の負担 | 夜勤帯の業務時間・超過勤務時間 | 業務時間が短くなったか |
巡回の時間が減っても、利用者の安全が悪化していれば効果とはいえません。厚生労働省の生産性向上推進体制加算の通知でも、職員の総業務時間と超過勤務時間の短縮と並んで、利用者の満足度等が悪化していないことを成果の条件にしています。また、同じ通知は、見守り機器を使う場合でも、安全面から特に注意が必要な利用者については定時巡回を検討することを求めています。巡回をすべてなくす前提で試算しないようにしましょう。
一方、転倒などの事故はもともと件数が少ないため、試用期間だけでは件数の差が出にくい効果です。件数の比較に加えて、センサーの通知で早く気づけた事例を、日時・利用者の状態・対応の内容とともに残しておくと、導入の判断材料になります。
(参考:厚生労働省「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」令和6年3月15日老高発0315第4号)
試用 期間の 記録の 取り方
- 目的と対象の決定:夜間の巡回を減らしたい、転倒のおそれが高い利用者に早く気づきたいなど、減らしたい負担を決め、試用するフロアと居室を選びます。全館の平均で比べると、センサーを置いていない居室の記録が混ざって差が見えなくなるので注意します。
- 導入前の記録:試用を始める前に、試用期間と同じ長さの期間、巡回の回数と所要時間、事故とヒヤリ・ハット、夜勤帯の業務時間を記録します。導入前の数字は後から取り直せないため、試用が始まってから思い出して書くことのないようにします。
- 利用者と家族への説明:生産性向上推進体制加算の通知では、見守り機器を居室に置く際に、利用者または家族等に必要な説明を行い同意を得ることとされています。試用の段階でも同じように説明します。試用の途中で居室を追加したときに説明を忘れるのは、よくある失敗です。
- 試用中の記録:導入前と同じ様式で、通知の件数、対応が必要だった件数、駆けつけにかかった時間、巡回の回数を記録します。通知の件数だけを数えると、対応が不要だった通知がどの設定や時間帯で起きたかが分からず、設定の見直しに使えません。感度などの設定を変えた日も書き残します。
- 比較と試算:減った巡回と駆けつけの時間から、増えた通知確認の時間を差し引き、台数と使う年数をかけた費用の総額と並べます。あわせて、事故とヒヤリ・ハットが悪化していないか、早く気づけた事例があるかを確かめます。減った時間を何に充てたか(利用者への声かけ、記録、休憩など)を残しておかないと、職員の負担が実際に軽くなったのかを説明できません。
加算と 補助金で 求められる 効果の 記録
見守りセンサーの導入が、加算の算定や補助金の要件に関わる場合があります。その場合、費用対効果の比較には、人員配置や加算の収入への影響も含まれます。
特養の夜勤職員配置加算では、見守り機器を入所者数の10分の1以上設置し、委員会を設けて必要な検討を行えば、夜勤職員の基準の数に上乗せする数を1から0.9にできます。見守り機器を夜勤時間帯を通じて入所者数以上設置し、夜勤を行う全ての介護職員・看護職員が情報通信機器を使うなどの要件を満たせば、0.6にできます。ただし、従来型で、見守り機器等により夜勤職員の基準の数そのものを0.8倍にしている場合は、上乗せする数は0.8です。区分と要件の詳細は「夜勤職員配置加算|特養の区分と単位数・必要な夜勤職員数・見守り機器を使う場合の要件」で解説しています。
生産性向上推進体制加算は、(Ⅱ)が見守り機器等のテクノロジーを1つ以上使って委員会で業務改善を続けること、(Ⅰ)がそれに加えて導入前後の比較で成果を確かめることなどを要件にしています。(Ⅰ)を目指す場合は、機器を入れる前に通知の様式で導入前の調査を済ませる必要があるため、試用の計画と一緒に検討してください。詳しくは「生産性向上推進体制加算の要件|(Ⅰ)(Ⅱ)の違いと導入前調査・実績報告の準備」で解説しています。
補助金では、都道府県が実施する介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金)で、見守り機器の購入が補助の対象になっています。厚生労働省の事業概要では、業務改善計画を提出し、効果を確認できるまで報告することが要件とされており、ここでも導入前後の記録が必要になります。実施の有無、補助率、募集の時期は都道府県ごとに違うため、所在地の都道府県の案内で確かめてください。制度の概要は「見守りシステム導入で使える補助金|介護テクノロジー導入支援事業の対象・補助額と申請の準備」で解説しています。
(参考:厚生労働省「厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準」平成12年厚生省告示第29号、老高発0315第4号、厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分))」事業概要)
| 製品名 | 特徴 | 料金 |
|---|---|---|
| CAREai ふむふむセンサー 公式サイト ↗ | 床への荷重を検知して離床・移動を知らせ、事故予防に役立てる。 | 買い切り定価:ふむふむセンサー39,000円(Sサイズ32,000円)+ふむふむアダプター18,000円(セットで使用。税込・税抜の表記なし。デモ機貸出あり) |
| CAREai 起き上がりセンサー 公式サイト ↗ | ベッド上の起き上がりや離床を検知し、転倒予防を支援する。 | 買い切り定価:起き上がりセンサー24,000円+アラームBOX 有線20,000円/無線24,000円(セットで使用。税込・税抜の表記なし。デモ機貸出あり) |
| CAREai 超音波センサー 公式サイト ↗ | 超音波で離床や移動を検知し、職員へ通知する。カメラを使わずプライバシーに配慮。 | 買い切り定価:1台20,000円(ナースコール連動・無線タイプは29,000円)。税込・税抜の表記なし(デモ機貸出あり) |
まとめ
見守りセンサーの費用対効果は、運用の手間を含めた費用と、巡回・駆けつけの時間や利用者の安全の変化を、同じ方法で取った導入前後の記録で比べて判断します。
出発点は、試用を始める前に、対象のフロアで巡回の回数と所要時間、事故とヒヤリ・ハットの記録を取っておくことです。
次に、台数と使う年数をかけた見積もりを取り、試用の記録と並べて、導入するフロアと台数を決めてください。加算や補助金を使う場合は、その要件になる記録も試用の計画に入れておきます。記録で効果を確かめてから導入すれば、転倒などに早く気づける体制を保ちながら夜間に居室へ入る回数を減らし、利用者の眠りを妨げる場面を減らすことにもつながります。
参考
- 厚生労働省「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」(令和6年3月15日老高発0315第4号):https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001238520.pdf
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準」(平成12年厚生省告示第29号):https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0263&dataType=0&pageNo=1
- 厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分))」(令和7年度当初予算の事業概要):https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001478274.pdf

