通所介護と地域密着型通所介護の記録は、運営基準で書面によるとされているものの多くを、電磁的記録で作成・保存できます。紙を一度にやめる必要はなく、記録を棚卸しして、書く回数が多く書き写しの多い記録から順に移せば、IT担当者のいない事業所でも進められます。記録を探す・書き写す時間が減れば、その分を利用者との関わりや家族への連絡に回せます。

この記事では、定員の少ないデイサービスの管理者・生活相談員に向けて、電子化できる記録と保存期間、計画の交付や同意を電子で行う条件、記録ごとの電子化の順番、棚卸しから紙の廃止までの6つの手順を扱います(2026年9月時点)。

電子化できる記録と保存期間

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下「居宅基準」)第217条第1項は、この省令で書面で行うとされている作成や保存を、書面に代えて電磁的記録で行えると定めています。地域密着型通所介護には、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下「地域密着型基準」)第183条第1項に同じ定めがあります。ただし、被保険者証で受給資格を確かめる手続(居宅基準第11条第1項など)は、この対象から除かれています。

保存が求められる記録は、通所介護では居宅基準第104条の4第2項、地域密着型通所介護では地域密着型基準第36条第2項に並んでいます。通所介護計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等の記録、市町村への通知に係る記録、苦情の内容等の記録、事故の状況と処置の記録の6つで、地域密着型通所介護ではこれに運営推進会議の報告・評価・要望・助言等の記録が加わります。

保存期間は、省令では「その完結の日から二年間」です。完結の日は、解釈通知で、契約の終了などにより利用者ごとに一連のサービス提供が終わった日とされています。ただし、指定権者の条例でこれと異なる期間や数え始めの日を定めている場合があり、たとえば和歌山市は、サービスを提供した日から5年間の保存を市独自の基準としています。電子化の前に、事業所を指定した自治体の条例で年数と数え始めの日を確かめ、ソフトの保存期間や解約後のデータの扱いがそれに足りるかを見てください。対象書類と条件の詳細は「介護保険関係書類の電磁的保存とは」で解説しています。

なお、厚生労働省の「介護保険施設等運営指導マニュアル」(2024年7月改訂)は、電磁的記録で管理されている書面は運営指導でディスプレイ上で内容を確認し、印刷した書類の準備や提出は求めないよう、自治体に示しています。紙を廃止するときは、運営指導でどの記録をどの画面で見せるかを決めておくと、当日に印刷し直す手間を避けられます。

(参考:居宅基準第11条第1項・第104条の4第2項・第217条第1項、地域密着型基準第36条第2項・第183条第1項、「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(平成11年9月17日老企第25号)、和歌山市「介護サービス事業の基準条例について」、厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」)

計画の交付と同意を電子で行う条件

通所介護計画は、管理者が内容を利用者または家族に説明して利用者の同意を得たうえで、利用者に交付するものです(居宅基準第99条第3項・第4項。地域密着型通所介護は地域密着型基準第27条第3項・第4項)。この説明・同意・交付などを書面に代えて電磁的方法で行うには、相手方の承諾を得る必要があります(居宅基準第217条第2項、地域密着型基準第183条第2項)。

タブレットの画面で同意を受けたり、計画をご家族の方のスマートフォンに送ったりする運用にするなら、先に承諾を得て、その記録を残します。承諾が得られない場合や、スマートフォンを使わない利用者・ご家族には、紙での説明と交付を続けます。電子と紙の両方が残る前提で運用を組むと、移行の途中で交付漏れが起きにくくなります。

(参考:居宅基準第99条第3項・第4項・第217条第2項、地域密着型基準第27条第3項・第4項・第183条第2項)

デイサービスの記録と電子化の順番

デイサービスで紙に書いている主な記録を、運営基準や請求との関係で並べると次のとおりです。基準との関係は上の条文、請求との関係は「デイサービスの加算一覧|通所介護の主な加算・減算の単位数と算定の単位」によります。

記録

基準・請求との関係

電子化の順番の考え方

移す前に確かめること

サービス提供記録(提供時間・内容・実施状況)

保存が求められる記録で、請求の実績の根拠にもなる

毎回書くため先に移すと効果が出やすい

記録した提供時間や入浴の有無が請求の実績につながるか

バイタル(体温・血圧・脈拍など)

サービス提供記録の一部として残すことが多い

提供記録と同じ画面で入れられるなら同時に移す

看護職員と介護職員が同じ画面で見られるか

送迎の記録

送迎の有無が送迎減算の判断に使われる

送迎表の作成と一緒に移すと書き写しが減る

車内や利用者宅の前で入力する場合の通信

個別機能訓練の計画と実施記録

個別機能訓練加算を算定する場合の根拠になる

加算を算定しているなら提供記録と同じ時期に移す

計画書の様式とLIFEへ出すCSVに対応しているか

通所介護計画

保存が求められ、説明・同意・交付が必要

同意と交付の方法を決めてから移す

電子で交付する家族の承諾

事故・苦情・身体的拘束等の記録

保存が求められる記録

件数が少ないため様式を決めて移す

記録から報告書の様式を出せるか

連絡帳

運営基準が保存を名指しする記録ではない

家族の状況に合わせて最後に移すか紙を残す

ご家族の方が端末で見られるか

毎日書き、書いた内容を請求や別の書類に書き写している記録ほど、電子化で減る手間が大きくなります。反対に連絡帳は、ご家族の方が読めなくなると連絡そのものが途切れるため、急いで紙をやめる必要はありません。

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紙の記録を減らす6つの手順

  1. 記録の棚卸し:紙に書いている記録を、様式名・書く人・書く場面・書き写し先・保管場所の5点で1枚の表に書き出します。よくある失敗は、様式だけを並べて、同じ内容を提供記録から請求用の実績表や連絡帳に書き写している箇所を見落とすことです。
  2. 電子化する範囲の決定:棚卸しの表から、上の表の考え方に沿って最初に移す記録を少数に絞り、残りは紙のままにする期間を決めます。よくある失敗は、すべての記録を同時に移そうとして、職員が操作を覚えきれずに紙へ戻ってしまうことです。
  3. 端末と通信の準備:記録を入力する場所(フロア、機能訓練の場、送迎車内)ごとに、使う端末の種類と台数、Wi-Fiが届くかを確かめます。共用の端末にはパスコードを設定し、職員ごとのログインで誰が記録したかが残るようにします。よくある失敗は、事務所だけでWi-Fiを確かめ、フロアの奥や送迎の出発前に入力できないと導入後に気づくことです。
  4. ソフトの選定と試用:候補の製品を絞り、実際の利用者の1日分の記録を試用版で入力して、提供記録から請求の実績、個別機能訓練の記録、LIFEへ出すCSVまで入れ直しなくつながるかを見ます。補助制度を使う場合は、対象になる経費や契約・購入してよい時期が要項で決まっているため、契約の前に都道府県の要項を確かめます。よくある失敗は、管理者だけがデモを見て決め、記録を書く介護職員や機能訓練指導員が試さないことです。
  5. 紙との並行運用:期間を決めて、紙と電子の両方で記録し、月末に電子の記録から出した実績と紙の記録を突き合わせます。よくある失敗は、終わりを決めずに並行運用を続け、二重に書く手間が増えたままになることです。
  6. 紙の廃止と保存:突き合わせで食い違いがなくなった記録から紙をやめ、電子の記録の保存先、バックアップ、解約したときのデータの取り出し方を確かめます。過去の紙の記録をスキャンして保存し紙を処分するかは、指定権者に確かめてから決めます。よくある失敗は、紙をやめた日を記録に残さず、どの期間の記録が紙と電子のどちらにあるか分からなくなることです。

手順1と2は、ソフトを決める前に事業所内だけで進められます。手順4で見る機能の一覧は「介護ソフトの基本機能|記録・計画・請求・LIFE対応の範囲とサービス別の確認点」、記録の入力画面の比べ方は「介護記録ソフト・アプリの比較ポイント|入力方法・記録様式・請求連携・職員間の共有・試用の5項目」、候補を公平に比べる進め方は「介護ソフトを公平に比較する進め方|デモ依頼の条件と試用・選定の手順」で解説しています。ソフトや端末の導入に使える補助制度は「介護テクノロジー導入支援事業と補助金・助成金|使える制度の見分け方と申請前の確認点(2026年度)」と助成金マップで探せます。

LIFEと個別機能訓練加算の記録とのつながり

科学的介護推進体制加算や個別機能訓練加算(Ⅱ)など、LIFEへの提出が必要な加算を算定している事業所では、日々の記録と計画の内容がLIFEへ出す様式情報のもとになります。記録を電子化するなら、同じソフトで計画書を作り、LIFEへ出すCSVまで出力できるかを試用の段階で確かめておくと、提出のたびに紙から入力し直す作業がなくなります。LIFEの仕組みは「科学的介護とは・LIFEとは」、個別機能訓練計画書の項目は「個別機能訓練加算」で解説しています。

下の表は、デイサービス向けの機能を持つ介護ソフトの製品例です。対応する記録の種類とLIFEへの出力は、各社の公式サイトや試用で確かめてください。

製品名特徴料金おすすめ
Rehab Cloud(旧リハプラン)
公式サイト ↗
デイサービス向けに計画、記録、請求、LIFE、運動プログラムをまとめて支援する。個別見積初期費用0円(保守・契約更新料もなし)。基本料金はプランにより異なり、料金表の請求で確認デイサービス向けに計画・記録・請求・LIFE・運動プログラムをまとめて支援
スマイリオ
公式サイト ↗
通所介護向けに予定、送迎、記録、請求などをまとめて管理する。個別見積個別見積通所介護向けに予定・送迎・記録・請求をまとめて管理
介舟ファミリー
公式サイト ↗
請求・記録・計画書を一元管理し、訪問系・通所系など幅広いサービスに対応。初期費用+月額標準パック:居宅介護支援 月額8,800円、介護保険サービス 月額16,500円~、障害福祉サービス 月額16,500円~。簡易パック:月額5,500円~(いずれも1拠点あたり・税込)。初期導入費用の例は標準パック55,000円、簡易パック22,000円(税込。無料試用あり)通所系を含む幅広いサービスで請求・記録・計画書を一元管理

まとめ

小規模なデイサービスでも、運営基準で書面とされている記録の多くは電子で作成・保存でき、書く回数と書き写しの多い記録から順に移せば紙を減らせます。出発点は、紙に書いている記録を1枚の表に棚卸しし、事業所を指定した自治体の条例で保存期間を確かめることです。そのうえで最初に移す記録を絞り、記録を書く職員と一緒にソフトを試用してください。記録を探す・書き写す時間が減れば、利用者の様子を見て声をかける時間や、ご家族の方に日中の様子を伝える時間を確保しやすくなります。

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参考