介護ソフトを公平に比べるには、各社の機能一覧を並べるだけでなく、同じ業務の筋書き・同じ質問・同じ試用の条件で候補を見て、実際に記録を入力する職員の評価を加えて決めることが大切です。機能名が同じでも、画面の分かりやすさや入力の手順、記録から請求までのつながり方は製品ごとに異なり、厚生労働省の手引きも、比較では「機能の有無」だけでなく操作のしやすさの視点から見るよう示しています。この記事では、比較の準備、候補の絞り込み、デモの依頼、試用と現場職員の評価、選定と契約前の確認までを順に扱います(2026年9月時点)。
比較の 前に 書き出す 業務の 流れと 必要な 機能
比較の基準は、自施設の業務の流れです。記録、請求、LIFEへの提出、ケアマネジャーとのサービス利用票(提供票)のやり取り、シフト作成といった業務ごとに、いま誰が、何を使って(紙、表計算ソフト、現行のソフト)、どの順で行っているかを書き出します。そのうえで、ソフトに必ず任せたい業務と、あれば便利な業務に分けておくと、各社の説明を同じ物差しで聞けます。
厚生労働省の手引きは、介護ソフトの機能は必ずしもすべてが必要なわけではなく、導入の目的と業務の流れの見直しに基づいて必要な機能を選ぶよう示しています。多くの機能を備えた製品でも、業務の流れに合っていなかったり、職員が使いこなせなかったりすると、思っていたような効果が得られないことがあるともしています。書き出すときは、現行のソフトの機能一覧をそのまま条件にしないよう気をつけてください。いまの手順に合わせて条件を決めると、転記や二重入力のように、なくしたい作業まで新しいソフトに持ち込むことになります。
あわせて、記録や請求にかかっている時間を業務ごとに測っておくと、導入後に効果を確かめるときの比較の基準になります。介護ソフトの主な機能は「介護ソフトの基本機能|記録・計画・請求・LIFE対応の範囲とサービス別の確認点」で解説しています。
(参考:厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き Ver.2」)
候補の 絞り込みに 使える 情報
厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」は、検討の流れとして、情報収集(各社のホームページや営業担当への問い合わせ、近隣の事業所からの情報入手や見学、相談窓口への問い合わせ)、集めた情報による価格面・機能面・サービス面の比較、デモンストレーションや試用による比較の順を示しています。デモを頼む前に、書き出した必須の業務に対応しているかで候補を絞っておくと、デモの時間を操作性の確認に使えます。
絞り込みには、厚生労働省が公開している「介護記録ソフト機能調査結果」も使えます。介護ソフトのベンダーが回答した内容をまとめたもので、2026年8月24日版には、ソフトごとの対象サービス(訪問系・通所系・居住系・ケアマネ系・施設系)と対応する業務(記録・情報共有・請求など)、ケアプランデータ連携標準仕様への対応、LIFEのCSV連携仕様への対応状況などが載っています。回答した製品だけの一覧なので、載っていない候補は各社に直接確かめてください。
(参考:厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」、厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」)
デモ 依頼でそろえる 条件と 質問
候補が決まったら、全社に同じ内容の依頼書を送り、次の項目をそろえて伝え、同じ質問をします。項目は、ポイント集が示す機能面・サービス面・価格面の確認項目と、手引きの価格体系の観点をもとにしています。
確認の観点 | 各社にそろえて伝える・聞くこと |
|---|---|
自施設の条件 | サービス種類・利用者数・職員数 |
デモの内容 | 1日分の記録から請求データ作成まで |
必要な機能 | 必須の業務に対応するか・転記が要るか |
データ連携 | LIFE登録用ファイル・ケアプラン連携・国保連伝送 |
提供形態と端末 | クラウド型か・使える端末と通信環境 |
料金 | 初期費用・月額・一定期間の総額 |
料金に含む範囲 | 保守・サポート・報酬改定時の追加料金 |
サポート | 導入時の研修・導入後の問い合わせ方法 |
データの移行 | 現行データの引継ぎ・他社へ移るときの出力 |
安全管理 | 情報セキュリティ・個人情報保護の対応 |
依頼書と質問をそろえておけば、回答の違いがそのまま製品の違いとして読めます。回答は文書でもらい、同じ項目の表に並べてください。
料金は、条件をそろえないと比べられない項目です。手引きによると、月額で定額を払う製品もあれば複数年分の利用料をまとめて払う製品もあり、制度改正に対応するための保守費用が利用料に含まれる製品と別に設定される製品があります。同じ利用年数での総額と、料金に含まれる範囲をそろえて見積もりを取り、手引きが重要な観点として挙げる契約期間中の解約料の有無も聞いておきます。提供形態については、タブレットやスマートフォンで介護ソフトを使うには、クラウド型であることとWi-Fi環境などの整備が前提になるとポイント集は示しています。クラウド型とオンプレミス型の違いは「クラウド型の介護ソフトの選び方」で解説しています。
デモは、各社に同じ業務の筋書き(例:ある利用者の1日分の記録を入力し、月末に実績を確定して請求データを作る)を事前に渡し、その順に操作してもらいます。筋書きを渡さないと、各社が見せたい機能の説明が中心になり、自施設で毎日使う操作を比べられません。デモを録画する場合は、相手の了承を得てから残すと、あとで同じ場面を見比べられます。
(参考:厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」、厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き Ver.2」)
試用と 現場 職員による 評価の 手順
ポイント集は、デモンストレーションや試用による比較に加えて、実際に介護ソフトを使う現場職員が検討の過程に参加することが重要としています。候補を少数に絞ったら、次の順で試用します。
- 試用する業務と参加する職員を決めます。記録を入力する介護職員や看護職員、請求を担当する事務職員など、実際に使う立場の職員を入れます。よくある失敗は、管理者やパソコン操作に慣れた職員だけで試すことです。ポイント集も、介護ソフトの利用には職員間で個人差がみられることが多いとしています。
- 評価表を試用の前に作ります。画面の見やすさ、入力の手間、記録から請求までの転記の有無など、書き出した業務に沿った項目を並べ、全社を同じ表で評価します。よくある失敗は、試用が終わってから印象で順位を付けることです。
- 同じ筋書きと同じデータで各社を試します。実在の利用者の情報を試用環境に入れる前に、ベンダーとの取り扱いの取り決めを確かめ、取り決めがなければ架空のデータを使います。よくある失敗は、試す日や製品によって業務やデータを変えてしまうことです。
- 請求の機能は、すでに請求を終えた月のデータで試します。作成した請求データを実際の請求と突き合わせると、加算や端数処理の設定の違いに気づけます。よくある失敗は、合計額が合ったことだけで判断することです。請求まわりの試用の手順は「介護報酬SaaSの選び方|クラウド型ソフトを比べる6項目と試用の手順」で解説しています。
- 職員の評価と意見を候補ごとにまとめます。点数だけでなく、操作で迷った場面を具体的に書き残しておくと、ベンダーへの追加の質問や導入後の研修に生かせます。よくある失敗は、意見を口頭で聞くだけで記録に残さないことです。
(参考:厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」)
選定と 契約前の 確認
選定では、試用の評価(機能面)、サポートの内容(サービス面)、見積もり(価格面)を並べて決めます。どの観点をどれだけ重く見るかは、評価表を作る段階で決めておきます。比べ終わってから重みを変えると、印象の良かった製品に合わせた判断になりやすいためです。
契約の前には、見積もりの総額と料金に含まれる範囲、契約期間と解約の条件、他社のソフトに移るときのデータの引継ぎ方法を確かめます。ポイント集は、介護ソフトは使い始めたあとの状況に応じて変更が必要になる場合があるとして、価格体系やデータの引継ぎなど、変更するときの対応もあらかじめ確認するよう示しています。切り替えの時期は、請求の締めの作業と重ならないように決めます。ポイント集は、移行の過渡期に従来の介護ソフトを併用しながら徐々に移る方法もあるとしています。
導入費用は、都道府県の補助の対象になる場合があります。厚生労働省の介護ソフト機能調査の案内では、2026年度の介護テクノロジー定着支援事業の補助要件として、ケアプランデータ連携標準仕様に沿ったCSVファイルの出力・取込機能を持つことと、ケアプランデータ連携システムの活用を促すサポート体制が整っていることが挙げられています。補助を使う予定なら、対象や申請の時期を契約の前に都道府県の募集要項で確かめてください。支援制度の概要は「介護テクノロジー導入で活用できる支援制度をやさしく解説」で紹介しています。
(参考:厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」、厚生労働省「介護ソフト機能調査(介護ソフトベンダー向け)」)
| 製品名 | 特徴 | 料金 |
|---|---|---|
| ほのぼのNEXT 公式サイト ↗ | 介護記録、請求、ケアプラン、LIFE対応などを幅広く備えた大規模事業者にも対応するソフト。 | 年額5年間の使用権方式。金額は個別見積 |
| ケア樹 公式サイト ↗ | 介護記録と請求をクラウドで管理し、IoT機器やインカムとの連携にも対応する。 | 年額ケア樹Freeは月額システム利用料0円で、事業所・サービスごとの年間費用。例:特養・老健・特定施設は1年目878,000円、2年目378,000円(税別)。施設以外は2年目以降サポート解除で年間最安9,800円(2か月無料体験あり) |
| まもる君クラウド 公式サイト ↗ | 記録、請求、売上管理をクラウドで提供。端末を選ばず利用できる。 | 初期費用+月額初期0円、月額7,800円~(税別。1事業所番号・1サービスあたり。60日間無料体験あり) |
まとめ
介護ソフトの比較は、自施設の業務の流れを基準に、同じ条件・同じ質問・同じ筋書きで各社のデモと試用を行い、実際に使う職員の評価を加えて決めると公平になります。出発点は、業務ごとに誰が何を使ってどの順で行っているかを書き出し、ソフトに必ず任せたい業務を決めることです。次に、その内容で全社共通の依頼書と評価表を作り、デモの依頼に進んでください。現場の職員が使いこなせるソフトを選べれば、記録の転記や二重入力が減り、利用者の状態を職員の間で共有しやすくなります。

