介護保険関係書類の電磁的保存とは、運営基準上の書面を電子データで保存することです。根拠は、各サービスの基準省令にある「電磁的記録等」の条です。計画や提供の記録などは、書面に代えて電磁的記録で作成・保存できます。

同じ条は、重要事項を記した文書の交付や、計画への同意も扱っています。これらは、相手方の承諾を得れば電磁的方法で行えます。一方、被保険者証に関する手続は対象から除かれています。

この記事では、根拠の条文、対象書類の一覧、解釈通知が示す方法を扱います。個人情報の安全管理で従う指針も整理します(2026年10月時点)。

根拠になる基準省令の「電磁的記録等」の条

居宅サービスの基準省令(以下「居宅基準」)では、第217条が根拠です。第1項は、作成や保存を対象にしています。書面で行うと規定されているものや想定されるものは、電磁的記録で行えます。

第2項は、交付、説明、同意、承諾、締結などを対象にしています。こちらは、相手方の承諾を得れば、書面に代えて電磁的方法で行えます。

この条は、2021年4月施行の省令改正で設けられました。同じ趣旨の条は、ほかのサービスの基準省令にもあります。条番号と、電磁的記録の対象から除かれる規定は次のとおりです。

サービスの基準省令

「電磁的記録等」の条

対象外:被保険者証による受給資格等の確認

対象外:被保険者証への記載など

居宅サービス(訪問介護、通所介護、特定施設入居者生活介護など)

第217条

第11条第1項(各サービスに準用)

第181条第1項(特定施設での開始・終了の年月日などの記載)

居宅介護支援

第31条

第7条

第13条第24号(被保険者証の記載に沿った居宅サービス計画の作成)

地域密着型サービス

第183条

第3条の10第1項(各サービスに準用)

第95条第1項・第116条第1項・第135条第1項(入居・入所の年月日などの記載)

介護老人福祉施設

第50条

第5条第1項

第8条第1項(入退所の年月日などの記載)

介護老人保健施設

第51条

第6条第1項

第9条第1項(入退所の年月日などの記載)

介護医療院

第55条

第10条第1項

第13条第1項(入退所の年月日などの記載)

介護予防サービスは第293条、地域密着型介護予防サービスは第90条、介護予防支援は第33条です。除かれる規定は、どの省令でも被保険者証に関するものです。解釈通知(老企第25号)も「被保険者証に関するものを除く」と書いています。これらの手続は、記録を電子化しても被保険者証で行います。

(参考:居宅基準第217条、各サービスの基準省令、厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)第5の1)

電磁的記録・電磁的方法の対象書類の一覧

条文は、対象の書面を1つずつ挙げてはいません。下の表は、訪問介護を例に、条文に出てくる主な書面を当てはめたものです。かっこ内は居宅基準の条です。

区分

主な書面や手続

条件

電磁的記録で作成・保存できるもの(第217条第1項)

訪問介護計画(第24条第1項)、提供した具体的なサービスの内容等の記録(第19条第2項)、身体的拘束等の記録・市町村への通知に係る記録・苦情の内容等の記録・事故の状況と処置の記録(第39条第2項)、従業者・設備・備品・会計に関する諸記録(第39条第1項)

解釈通知が示す方法で作成・保存する

電磁的方法で交付・説明・同意・締結ができるもの(第217条第2項)

重要事項を記した文書の交付・説明と提供開始の同意(第8条)、訪問介護計画の説明・同意・交付(第24条第3項・第4項)、個人情報を用いる場合の文書による同意(第33条第3項)、特定施設の入居とサービス提供に関する契約の締結(第178条第1項)

事前に相手方の承諾を得る

対象外のもの

被保険者証による受給資格等の確認(第11条第1項)、特定施設での被保険者証への記載(第181条第1項)

被保険者証で行う

ほかのサービスにも、計画、提供の記録、苦情や事故の記録などの定めがあります。自事業所の基準省令の「記録の整備」の条で、保存する記録を確かめてください。保存期間と通所介護での進め方は「小規模デイサービスの記録の電子化」で解説しています。

単位数の算定に関する書面も、同じ扱いです。留意事項通知(老企第36号など)が、同じ方法を示しています。算定に当たって押印を要するとされていた文書は、押印を不要とする扱いです。

(参考:居宅基準第8条・第11条・第19条・第24条・第33条・第39条・第178条・第181条・第217条、留意事項通知(老企第36号)第2の1(9))

電磁的記録で作成・保存する方法

解釈通知は、作成と保存の方法を示しています。作成は、事業者のパソコンなどのファイルに記録する方法などです。

保存の方法は2つあります。1つは、電子で作成した記録をファイルで保存する方法です。もう1つは、書面をスキャナなどで読み取って保存する方法です。ただし、読み取ったあとの紙の扱いは、この通知に書かれていません。紙を処分する前に、指定権者に確かめてください。

運営指導では、電磁的記録で管理する書面は画面上で確認されます。厚生労働省のマニュアルが、印刷した書類の準備を求めないよう自治体に示しています。

(参考:老企第25号第5の1、厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」)

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電磁的方法で交付・同意・締結を行う条件

条件は、事前に利用者や家族の承諾を得ることです。解釈通知は、手続ごとに方法を示しています。

  • 交付:重要事項を電磁的方法で提供する決まりに準じます。居宅基準では第8条第2項から第6項です。
  • 同意:電子メールで同意の意思表示を受ける方法などが、例に挙げられています。
  • 締結:署名や記名・押印に代えて、電子署名を活用することが望ましいとされています。

第8条の決まりに沿うと、交付の手順は次のようになります。

  1. 使う方法とファイルへの記録の方式を示し、文書か電磁的方法で承諾を得ます。口頭の了解だけで始めないようにします。
  2. 電子メールなどでの送信、ウェブでの閲覧と保存、記録媒体の交付のいずれかで提供します。相手が印刷できない形は使えません。
  3. 電磁的方法では受けないという申出があれば、書面での交付に戻します。再び承諾を得れば、電磁的方法を使えます。

同意と締結について、通知は「押印についてのQ&A」を参考にするよう求めています。このQ&Aは、文書が本人の意思で作られたことを示す手段を挙げています。メールの送受信記録の保存や、電子署名の活用などです。同意を受けたメールや操作の記録は、消さずに保存してください。承諾が得られない利用者には、書面での交付と同意を続けます。

(参考:居宅基準第8条・第217条第2項、老企第25号第5の2、内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」)

個人情報の安全管理で従う2つの指針

解釈通知は、電磁的記録でも電磁的方法でも、2つの指針などを守るよう求めています。

1つ目は「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」です。個人情報保護委員会と厚生労働省が定め、2026年4月に一部改正されました。技術的な安全管理措置として、アクセス管理やアクセス記録の保存などを挙げています。個人データの取扱いを外部に委託する場合は、委託先の監督も求めています。

2つ目は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」です。2026年6月に第7.0版が出ています。対象の「医療機関等」には、介護事業者が含まれます。第7.0版では、サーバの保守をすべて事業者に委託できている機関向けの編が加わりました。この場合は、概説編と保守委託機関編に対応すれば、遵守しているとみなされます。

介護ソフトを使う事業所は、職員ごとのIDと権限の設定を確かめてください。ソフト会社との契約で、個人情報の扱いと保守の範囲も確かめます。クラウド型の比べ方は「クラウド型の介護ソフトの選び方」で解説しています。

(参考:老企第25号第5、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」Ⅳ7、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(概説編)」)

まとめ

運営基準上の書面は、被保険者証に関するものを除き、電磁的記録で作成・保存できます。まず、自事業所の基準省令で「電磁的記録等」の条と、保存する記録を確かめてください。次に、電子で交付や同意を行う書類を決め、承諾の取り方と記録の残し方を決めます。電子での交付は、通知が目的に挙げるとおり、利用者や家族の利便にもつながります。

なお、請求書など税務の書類の電子保存は、電子帳簿保存法による別の制度です。「介護事業所の請求書電子化」で解説しています。

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参考