介護記録ソフトや記録アプリを比べるときは、機能の数よりも先に、自事業所で記録をつける場面で、実際に入力する職員が迷わず使えるかを確かめると選び違いを防げます。記録は介護職員がケアの合間に毎日入力するものなので、入力に手間取る製品では手書きのメモをあとで打ち直す作業が残り、電子化の効果が出にくくなるためです。この記事では、記録ソフト・アプリを比べるときの確認項目を、入力方法と端末、サービス種別に合う記録様式、請求・LIFE・ケアプランデータ連携とのつながり、職員間の共有、記録の場面を使った試用の5つに分けて扱います(2026年9月時点)。
5つの 確認 項目の 一覧
厚生労働省の手引きは、介護ソフトを比べるときに「機能の有無」だけでなく、画面の情報が分かりやすいか、登録や参照の方法が直感的に理解できるかといった操作のしやすさからも比べるよう示しています。この考え方に沿って、記録ソフト・アプリで確かめたい項目を次の表にまとめました。
確認項目 | 比べるときに見るところ | 確かめ方 |
|---|---|---|
入力方法と使う端末 | 入力できる端末の種類。音声入力や選択式の入力の有無 | 記録をつける場所で職員が入力する |
サービス種別に合う記録様式 | 必要な記録項目がそろっているか。1回の入力が複数の帳票に反映されるか | 今の紙の様式と画面の項目を突き合わせる |
請求・LIFE・ケアプランデータ連携とのつながり | 記録が請求の実績やLIFEのCSVにそのまま使えるか | 記録から請求データやCSVの出力までを通して操作する |
職員間の共有 | 申し送りや閲覧ができる端末と人数。料金が何の数で決まるか | 離れた場所にいる職員どうしで記録を見る |
記録の場面を使った試用 | 忙しい時間帯でも記録が抜けないか。読んで分かる記録になるか | 同じ場面・同じ職員・同じ評価表で比べる |
上の3つは製品の資料やデモで候補を絞る段階で、下の2つは候補を少数に絞ったあとの試用で主に確かめる項目です。記録以外も含めた介護ソフトの機能の全体像は「介護ソフトの基本機能|記録・計画・請求・LIFE対応の範囲とサービス別の確認点」で解説しています。
(参考:厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き Ver.2」)
1. 入力 方法と 使う 端末
最初に、誰が・どこで・いつ記録をつけるかを書き出し、それに合う端末と入力方法の製品を選びます。施設なら居室やフロア、デイサービスならフロアや送迎の車内、訪問介護なら利用者のお宅が記録の場所になります。その場で入力できる端末がないと、メモを取って事務所のパソコンで打ち直す運用になり、転記の手間と書き写しの誤りが残ります。
タブレットは画面が大きく、フロアに置いて複数の職員で使う運用に向いています。一方、スマートフォンはポケットに入れて持ち歩けるため、訪問先や夜勤の巡回中に1人1台で記録する運用に合います。パソコンは、長い文章の記録や計画書の作成など、事務所での作業に向いています。製品によってはタブレット専用、スマートフォン中心など対応する端末が限られるため、使う予定の端末で動くかを確かめてください。
入力方法では、選択式の項目や定型文、音声入力があるかを見ます。食事量や排せつ、バイタルのように毎日同じ形で残す記録は、選択式で押すだけにできると速く入力できます。手が離せない場面や、様子を文章で残したい場面では音声入力が役立ちます。手引きの導入計画の記入例にも、音声入力の精度と持ち運びやすい大きさを優先してタブレットを選んだ事業所があります。
職員の私物のスマートフォンを記録に使う場合、手引きは、管理者がリスクを評価し、運用のルールを定めて対策をとったうえで行う必要があるとしています。端末を事業所で用意するか、私物を使うならどのルールで使うかを導入前に決めておきます。
(参考:厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き Ver.2」)
2. サービス 種別に 合う 記録 様式
記録ソフトの画面は、製品が想定しているサービス種別に合わせて作られています。手引きが示す一般的な機能の一覧でも、通所介護向けには入室・退室の記録や写真・動画の撮影、看護記録など、訪問介護向けの一覧にはない機能が挙げられています。施設では、夜勤帯を含めた24時間の経過を複数の職員が書き継ぐ記録が中心になります。
比べるときは、今使っている紙の様式や表計算ソフトの記録項目を並べ、候補の画面にそれぞれの項目があるかを突き合わせます。日々のケアの記録だけでなく、事故やヒヤリハット、苦情、身体的拘束等の記録を同じソフトで残せるかも確かめてください。運営基準では、たとえば訪問介護の場合、提供した具体的なサービスの内容等の記録のほか、身体的拘束等の記録、苦情の内容等の記録、事故の状況と処置の記録を整備し保存することが求められています。こうした記録は、書面に代えて電磁的記録で作成・保存できます。電子で保存するときの条件は「介護保険関係書類の電磁的保存とは?対象書類と満たすべき条件」で解説しています。
あわせて、1回の入力が複数の帳票に反映されるかを見ます。手引きには、連絡帳・業務日誌・介護記録の3つの帳票に転記していたサービス提供の記録を、タブレットでの入力で3帳票に同時に反映させるようにした通所介護の事例が載っています。同じ内容を複数の帳票に書いている事業所では、この点を必ず確かめてください。
(参考:厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き Ver.2」、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第39条第2項・第217条第1項)
3. 請求・ LIFE・ ケアプランデータ 連携とのつながり
記録ソフトには、請求までを1つの製品で行うものと、記録が中心で別の請求ソフトと連携するものがあります。今の請求ソフトを使い続けるなら、記録した実績を取り込めるか、どの項目が引き継がれるかを確かめてください。取り込めないと、実績を請求ソフトに入れ直す作業が毎月残ります。
LIFEへの提出が必要な加算を算定している事業所では、記録した評価の内容からLIFEに取り込むCSVを出力できるかも比べます。LIFEの仕組みは「LIFE(科学的介護情報システム)とは?提出とフィードバックの基本」で解説しています。居宅介護支援事業所とサービス提供票(予定・実績)を毎月やり取りするサービス事業所では、ケアプランデータ連携標準仕様に沿ったデータを扱えるかが、ケアプランデータ連携システムを使えるかどうかの前提になります。仕組みは「ケアプランデータ連携システムとは?導入で軽減できる業務負担」で解説しています。
候補を絞るときは、厚生労働省が公開している「介護記録ソフト機能調査結果」も使えます。ベンダーが回答した内容をまとめたもので、2026年8月24日版には、ソフトごとの対象サービス(訪問・通所・居住・ケアマネ・施設)と、記録・情報共有・請求のどの業務に対応するか、ケアプランデータ連携標準仕様への対応、LIFEのCSV連携仕様への対応状況が載っています。回答した製品だけの一覧なので、載っていない製品は販売会社に直接確かめてください。
(参考:厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」)
4. 職員間の 共有
記録を電子化すると、入力した内容をほかの職員がその場で見られるようになり、申し送りを紙や口頭で重ねる手間が減ります。比べるときは、申し送りや記録の閲覧をどの端末から何人が同時にできるか、アラートや職員間のメッセージの機能があるかを見ます。製品によっては、利用者の日々の様子を家族と共有する機能を持つものもあります。
共有する人数と端末の台数は、料金にも関わります。料金の決まり方は製品によって違い、iPadの台数ごと、ユーザー数ごと、事業所ごと、定員ごとなど、数える単位がそろっていません。夜勤帯を含めて同時に記録する職員の数と、用意する端末の台数を先に数え、その条件で各社の見積もりを取ると比べやすくなります。見積もりのそろえ方は「介護ソフトを公平に比較する進め方|デモ依頼の条件と試用・選定の手順」で解説しています。複数の拠点で記録を共有したい場合は、クラウド型かどうかも確かめます。違いは「介護システムはクラウド型とオンプレミス型のどちらを選ぶか」で紹介しています。
5. 記録の 場面を 使った 試用
記録ソフトの使いやすさの差は、デモを見るだけでは分かりにくく、実際の記録の場面で職員が入力すると見えてきます。デモの依頼から契約までの進め方は先に挙げた「介護ソフトを公平に比較する進め方」に任せ、ここでは記録に絞った試し方を示します。無料の試用期間を設けている製品もあるので、候補を少数に絞ったら次の手順で試します。
- 試す場面を決めます。食事や排せつ、夜勤の巡回、訪問先での記録など、記録が集中する場面や入力の条件が厳しい場面を選びます。よくある失敗は、落ち着いた時間に事務所で試し、忙しい時間帯の使い勝手を見ないことです。
- 入力する職員を選びます。記録を毎日つける介護職員や看護職員を入れ、端末の操作に慣れていない職員にも加わってもらいます。よくある失敗は、パソコンやスマートフォンに慣れた職員だけで試すことです。
- 評価表を先に作ります。1件の記録にかかる手間、迷った操作、入力漏れの有無など、同じ項目で全製品を評価できる表を用意します。よくある失敗は、試用が終わってから印象で順位を付けることです。
- 同じ場面と同じ職員で各製品を試します。実在の利用者の情報を入れる前に、販売会社との取り扱いの取り決めを確かめ、取り決めがなければ架空のデータを使います。よくある失敗は、製品ごとに試す場面や職員を変えてしまうことです。
- 入力した記録を別の職員に読んでもらいます。申し送りに使えるか、必要な情報を探しやすいかを確かめます。よくある失敗は、入力の速さだけを見て、読む側の使いやすさを確かめないことです。
- 月末の作業まで通して確かめます。記録から帳票の出力、請求ソフトへの取り込みやLIFEのCSV出力までを1回通します。よくある失敗は、日々の入力画面だけを試し、月末にまとめて行う作業を確かめないことです。
介護 記録 ソフト・ アプリの 製品例
記録機能を中心とする製品の例です。対応する端末やサービス種別、料金は変わることがあるため、各社の公式サイトや資料で確かめてください。記録ソフトや端末の導入費用は、都道府県の補助の対象になる場合があります。制度の概要は「介護テクノロジー導入支援事業と補助金・助成金|使える制度の見分け方と申請前の確認点(2026年度)」、地域ごとの制度は助成金マップで調べられます。
| 製品名 | 特徴 | 料金 | おすすめ |
|---|---|---|---|
| Blue Ocean System/ブルーオーシャンノート 公式サイト ↗ | 紙に近い入力画面で介護記録を作成し、パソコン・タブレット・スマートフォン・LIFEに対応する。 | 個別見積個別見積 | 紙に近い入力画面。タブレット・スマートフォンに対応 |
| c-report 公式サイト ↗ | スマートフォンで介護記録を入力し、音声入力とアラートに対応する。職員間メッセージは有料オプション。 | 初期費用+月額初期55,000円、月額22,000円~(定員29名まで。定員により最大49,500円。税込) | スマートフォンでの入力と音声入力に対応 |
| CareViewer 公式サイト ↗ | AIや音声入力で介護記録を作成し、計画書、LIFE、請求ソフト連携にも対応する。 | 初期費用+月額初期0円。Free 0円、Light 月額5,000円/事業所+定員1名につき300円、Standard 月額10,000円/事業所+定員1名につき400円(税別・年払い) | AIや音声入力で記録を作成。請求ソフト連携に対応 |
| ケアコラボ 公式サイト ↗ | 利用者の日々の様子や記録を家族・職員で共有する。利用者の基本情報をLIFE向けにCSVで出力できる。 | 初期費用+月額初期0円。10ユーザー月額8,800円、11ユーザー以上は月額880円/ユーザー(税別) | 記録を家族・職員で共有 |
| でらケア 公式サイト ↗ | 介護記録、申し送り、利用者情報をクラウドで共有。台数制限なく利用できる。 | 月額クラウドプランは月額10,000円/施設(ほかの費用なし。端末は施設で用意)。オンプレミスプランはシステム導入費240,000円+保守サポート費(税込・税抜の表記なし。30日間無料試用あり) | 記録と申し送りをクラウドで共有。台数制限なし |
まとめ
介護記録ソフト・アプリは、機能の数ではなく、自事業所の記録の場面で実際に入力する職員が迷わず使え、その記録が請求や申し送りにそのままつながるかで比べると選び違いを防げます。出発点は、誰が・どこで・いつ記録をつけているかと、今の紙の様式の記録項目を書き出すことです。次に、その内容で5つの確認項目に沿って候補を絞り、記録の場面を使った試用に進んでください。記録を短い時間で正確に残せるようになれば、その分を利用者と向き合う時間にあてやすくなり、職員どうしで利用者の変化にも気づきやすくなります。
参考
厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き Ver.2」

