介護サービスの事業者は、利用料の支払を受けるときに領収証を交付しなければなりません。その領収証には、費用を区分して記載する決まりがあります。根拠は、介護保険法と介護保険法施行規則です。合計金額だけを書いた領収証では、この決まりを満たせません。

加えて、領収証には「医療費控除の対象となる金額」を記載します。厚生労働省と国税庁が、この取扱いを示しています。利用者やご家族が、確定申告でこの金額を使うためです。

この記事では、区分して記載する費用と、医療費控除の対象となる金額の決まり方を扱います。厚生労働省の様式例、発行の手順、アプリや介護ソフトの確認点も整理します(2026年10月時点)。法令では「領収証」と書かれているので、この記事でも「領収証」と書きます。

領収証に区分して記載する費用

領収証の交付を定めているのは、介護保険法第41条第8項です。指定居宅サービス事業者は、費用の支払を受ける際に、領収証を交付しなければなりません。この規定は、ほかのサービスの事業者にも準用されています。地域密着型サービス、居宅介護支援、介護保険施設、介護予防サービスなどです。記載の方法は、介護保険法施行規則がサービスの種類ごとに定めています。

サービスの種類

領収証に区分して記載する費用

介護保険法施行規則の条文

居宅サービス(訪問介護、通所介護、短期入所生活介護など)

介護報酬の基準で算定した費用に係る支払額、食事の提供に要した費用、滞在に要した費用、その他の費用

第65条

地域密着型サービス、介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス

居宅サービスと同じ

第65条の5、第85条、第85条の4(第65条を準用)

居宅介護支援、介護予防支援

居宅介護支援について支払を受けた費用、その他の費用

第78条、第96条(第78条を準用)

介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)

介護報酬の基準で算定した費用に係る支払額、食事の提供に要した費用、居住に要した費用、その他の費用

第82条

どのサービスでも、「その他の費用」は個別の費用ごとに区分して記載します。たとえば通所介護では、おむつ代と日常生活費を別々の行に書きます。これらを「その他」の1行にまとめた領収証は、決まりに合いません。

自事業所の領収証を1枚取り出して、次の2点を確かめてください。1つは、表の費用がそれぞれ別の行になっているかです。もう1つは、その他の費用が品目ごとに分かれているかです。

(参考:介護保険法、介護保険法施行規則、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)

医療費控除の対象となる金額の決まり方

介護サービスの領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が記載されます。国税庁は、事業者や施設が発行する領収証について、そう案内しています。対象になるかどうかは、サービスの種類で決まります。福祉系の居宅サービスでは、その月のケアプランの内容でも変わります。主なサービスの扱いは次のとおりです。

サービス

医療費控除の対象となる金額

医療系の居宅サービス(訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション、短期入所療養介護など)

サービスの対価に係る自己負担額

福祉系の居宅サービス(生活援助中心型を除く訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、短期入所生活介護など)

医療系の居宅サービスと併せて利用する場合に限り、サービスの対価に係る自己負担額

生活援助中心型の訪問介護、認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与など

対象外

特別養護老人ホーム、地域密着型の特別養護老人ホーム

介護費・食費・居住費に係る自己負担額の2分の1に相当する金額

介護老人保健施設、介護医療院

介護費・食費・居住費に係る自己負担額

福祉系の居宅サービスの「併せて利用する場合」には、決まった意味があります。1か月単位のケアプランに、医療系サービスが位置付けられている場合のことです。国税庁は、サービス利用票に医療系サービスの記載があるかで判断すると説明しています。サービス利用票は、居宅介護支援事業者から利用者に交付される書類です。事業者には、同じ内容のサービス提供票が交付されます。同じ利用者でも、医療系サービスの利用がある月とない月で、記載する金額が変わります。

福祉系の居宅サービスで対象になるのは、介護報酬の基準で算定した費用の自己負担額です。訪問介護では、利用者負担額(保険対象分)から生活援助中心型の分を除いて記載します。これは、厚生労働省の様式例に書かれている決まりです。一方、施設では、理美容代などの日常生活費は対象になりません。特別なサービスの費用も対象外です。

なお、表は主なサービスをまとめたものです。利用の内容で扱いが分かれるサービスもあります。定期巡回・随時対応型訪問介護看護や、看護小規模多機能型居宅介護がその例です。喀痰吸引の対価やおむつ代には、個別の取扱いがあります。自事業所のサービスがどの区分に入るかは、国税庁のページで確かめてください。判断に迷うものは、所轄の税務署に確認します。

(参考:国税庁 タックスアンサー No.1127、No.1125、国税庁「介護保険制度の改正に伴う医療費控除の取扱いについて(情報)」)

厚生労働省の様式例にある欄

厚生労働省は、居宅サービスの領収証の様式例を示しています。名前は「居宅サービス等利用料領収証」です。欄と記載する内容は次のとおりです。

様式例の欄

記載する内容

利用者氏名、費用負担者氏名

利用者の氏名と、費用を負担した人の氏名・続柄

事業所名及び住所等

領収証を発行する事業所の名称と住所

居宅サービス計画又は介護予防サービス計画を作成した居宅介護支援事業者等の名称

ケアプランを作成した事業者の名称。利用者が自分で作成して市町村に届け出ている場合は、その市町村名

利用者負担額(保険対象分)

サービスの内容・種類ごとの単価、回数・日数、利用者負担額

その他費用(保険給付対象外のサービス)

保険給付の対象外の費用。支給限度基準額を超える部分の金額も、この欄に記載する

領収額

支払を受けた金額の合計

うち医療費控除の対象となる金額

領収額のうち、医療費控除の対象となる金額

領収年月日

支払を受けた年月日

この様式例を使わない領収証でも、次の2つが記載されていれば差し支えないとされています。ケアプランを作成した事業者名と、医療費控除の対象となる金額です。今使っている領収証に、この2つがあるかを確かめてください。食費と滞在費は、施行規則の決まりに合わせて、その他の費用とは別の行に記載します。

介護老人保健施設と介護医療院には、別の様式が示されています。施設の名称に加えて、「介護老人保健施設」「介護医療院」である旨を明記します。領収証だけでは、施設の種類の判別がつかない場合があるためです。金額は、介護費、食費、居住費などの区分ごとに記載します。あわせて、医療費控除の合計対象額を記載するよう努めることとされています。

(参考:国税庁「介護保険制度の改正に伴う医療費控除の取扱いについて(情報)」、国税庁「介護保険制度下での介護サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(情報)」)

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領収証の発行の手順

福祉系の居宅サービスの事業所を例に、毎月の発行の手順を示します。

  1. 支払を受けた費用を区分に分けます。介護報酬の利用者負担、食費、滞在費、その他の費用を別の行にします。その他の費用は品目ごとに書きます。保険給付の対象外の費用を1行にまとめてしまうのが、よくある誤りです。
  2. その月のサービス提供票で、医療系サービスの位置付けを確かめます。前の月の判定をそのまま使うと、利用がない月にも金額を記載してしまいます。居宅療養管理指導と、医療保険などによる訪問看護には注意が必要です。サービス提供票に記載されていない場合があるためです。厚生労働省の通知では、居宅介護支援事業者が事業者に連絡することになっています。方法は、サービス提供票の欄外への記載などです。欄外の記載と、居宅介護支援事業者からの連絡も確かめます。
  3. 「医療費控除の対象となる金額」を記載します。対象は、介護報酬の利用者負担の部分です。食費やその他の費用を含めた領収額を、そのまま書かないようにします。訪問介護では、生活援助中心型の分を除きます。
  4. ケアプランを作成した居宅介護支援事業者の名称を記載します。事業者が替わった利用者は、前の名称のままになっていないかを確かめます。
  5. 支払を受けた都度、領収証を交付します。様式例は、月ごとにまとめた形です。ただし通知は、支払を受けた都度の交付が必要であるとしています。利用のたびに現金で受け取っている事業所は、発行の運用を見直します。月末にまとめて1枚だけ発行していないかが、確かめる点です。

施設では、手順2と手順4は不要です。手順3は、介護費・食費・居住費に係る自己負担額をもとに記載します。特別養護老人ホームは、その2分の1の金額です。

(参考:国税庁「介護保険制度下での介護サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(情報)」)

領収書作成アプリと介護ソフトの確認点

領収証は、汎用の領収書作成アプリでも、介護ソフトの請求機能でも作れます。どちらの場合も、確かめる点は同じです。見本の領収証を1枚出力してもらい、次の4点を見ます。

  • 費用の区分ごとに行を分けられるか。その他の費用は、品目ごとに行を増やして記載できるか。
  • 「うち医療費控除の対象となる金額」の欄があるか。金額が自動で入る場合は、判定のもとになる情報は何か。
  • ケアプランを作成した事業者の名称を記載できるか。施設の種類(介護老人保健施設、介護医療院)を記載できるか。
  • 支払を受けた都度の発行と、月ごとにまとめた発行の両方に対応しているか。再発行のときに、発行済みの内容を呼び出せるか。

2点目は、販売元に確認しておきたい点です。医療系サービスの有無と、生活援助中心型の除外を、どう判定しているかを聞きます。手で直す必要があるのはどんな場合かも聞いておきます。答えが分かると、月ごとの確認の手順を決められます。

汎用の領収書作成アプリは、利用者ごとの介護報酬の情報を持っていません。そのため、区分と金額を毎月手で入力することになります。利用者の数が多い事業所には、請求のデータから領収証を出力できる介護ソフトが向いています。転記の誤りを減らしやすくなるためです。介護ソフトの請求機能の範囲は「介護ソフトの基本機能」で解説しています。

まとめ

介護サービスの領収証は、費用を区分して記載し、医療費控除の対象となる金額を添えて交付します。区分する費用は、介護報酬の対象となる費用、食費、滞在費・居住費、その他の費用です。自事業所の領収証を1枚取り出して、次の3つを確かめるところから始めてください。費用の区分、その他の費用の品目ごとの記載、医療費控除の対象となる金額の欄です。不足があれば、様式を変更できるかを、アプリや介護ソフトの販売元に確認します。医療費控除の対象になるかの判断に迷うサービスは、所轄の税務署に確認してください。

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参考