科学的介護は、データを使ってケアを継続的に見直す取り組みです。使うのは、ケアプランや介護計画、日々のアセスメントの結果などです。データから取組の効果や課題を確かめ、次の計画に生かします。この見直しを支える仕組みが、科学的介護情報システム(LIFE)です。厚生労働省が、2021年度から運用してきました。2026年5月11日からは、公益社団法人国民健康保険中央会(国保中央会)が運用しています。

事業所にとっての意味は、ケアの効果を同じ物差しで確かめられることです。「このケアで利用者の状態はよくなっているか」を、職員の実感だけに頼らずに確かめます。そのうえで、根拠をもって計画を変えられるようになります。

この記事では、LIFEの仕組みと、PDCAの各段階ですることを扱います。フィードバックで見えるものと、事業所で始める前に決めることも整理します。内容は厚生労働省の説明会資料に沿っており、2026年10月時点の情報です。

LIFE(科学的介護情報システム)とは

LIFEは、介護施設・事業所が提出した情報を集め、フィードバックを返すシステムです。LIFEという名称は、英語名 Long-term care Information system For Evidence の略です。

提出するのは、利用者の状態や、ケアの計画・内容などの情報です。たとえば、ADL、栄養状態、口腔の状態、認知症の状態の評価結果があります。提出する様式と項目は、加算ごとに決まっています。

返ってくるのは、全国のデータをもとに集計されたフィードバックです。事業所・施設の単位のものと、利用者の単位のものがあります。全国の同じサービスの事業所との差や、以前からの変化を確かめられます。

LIFEを使う流れは、提出、集計、フィードバック、ケアの見直しの4段階です。事業所は、利用者の状態を評価・記録し、決められた月に提出します。提出された情報は、全国のデータとあわせて集計されます。事業所はフィードバックをダウンロードし、計画やケアの見直しに使います。

正しいフィードバックを受け取るには、正しいデータの提出が前提になります。厚生労働省の説明会資料も、この点を挙げています。なお、LIFEの登録に費用はかかりません。

LIFEへの提出は、いくつかの加算で算定の要件になっています。対象の加算と提出する月は「LIFEへの提出が必要な加算の一覧」で整理しています。ただし、LIFEは提出して終わりではありません。返ってきたフィードバックを見直しに使うところまでが、一連の流れです。

(参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)第1回説明会 基礎編」、老老発0315第4号 第1・第2)

科学的介護のPDCAの各段階ですること

ケアの質を高めるには、PDCAサイクルの実践が重要です。厚生労働省の説明会資料は、そう説明しています。PDCAは、計画・実行・評価・改善の繰り返しです。利用者の意向を踏まえた目標や、過ごし方の希望に対して行います。その中で使うフィードバックは、答えそのものではありません。ケアプランや介護計画とあわせて、取組を振り返る材料の1つです。

各段階ですることは、次のとおりです。

  1. 準備:利用者や事業所が目指す姿を決めます。あわせて、介護職員と各専門職が多面的な視点で情報を共有できる体制を作ります。担当者1人に任せると、評価や振り返りが一部の職員だけの作業になりがちです。
  2. 評価・記録と提出:日々のケアの中で利用者の状態を評価・記録し、LIFEへ提出します。評価のしかたが職員ごとに違うと、状態の変化ではなく、評価者の違いがデータに表れます。そのため、評価方法をそろえます。そろえる先は、厚生労働省の「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)利活用の手引き」に載っている方法です。
  3. 評価(Check):フィードバックを確認し、複数の職員で見て気付いた点を共有します。資料は、見る点の例を2つ挙げています。全国の同じサービスの事業所と比べて、値が低い項目や高い項目が1つです。もう1つは、過去から変化があった項目です。気付きを共有する場には、サービス担当者会議などが挙げられています。
  4. 改善(Action):フィードバックで分かった変化の要因を検討します。手がかりは、利用者の背景と、ケアプラン・介護計画です。利用者の意向やこれまでの取組の効果を踏まえ、次の課題を整理します。数値の変化だけで判断しないようにします。入院や生活環境の変化など、利用者の背景と合わせて読みます。
  5. 計画(Plan)と実行(Do):次に目指す目標を設定して計画を立てます。その計画に沿ってケアを行います。見直した内容は、計画書や記録に残します。残さないと、次の評価で何を変えた結果なのかが分からなくなります。

(参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)第1回説明会 基礎編」、厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」)

LIFEのフィードバックで見えるもの

説明会資料は、LIFEを使う効果を3つ挙げています。共通の認識、状態の見える化、多様な視点です。

効果

LIFEでできること

現場での使い方

共通の認識

全国共通の項目で評価する

職員間で状態の捉え方をそろえる

状態の見える化

以前との変化と全国との差が分かる

変化や差が出た項目から計画を見直す

多様な視点

同じデータを複数の職種で見る

多職種で変化の要因を話し合う

3つは、別々の効果というより、PDCAの流れに沿ったものです。同じ物差しで評価し、変化や差を見つけ、その理由を職員で話し合います。そう読むと分かりやすいでしょう。

資料は、事業所の事例も紹介しています。厚生労働省の2023年度の事業の事例集からの抜粋です。1つ目の事業所では、IADL項目の「していない」の割合が想定より多く出ました。そこで、実態がデータに反映されていないと気付きました。この事業所は、個別支援計画書を情報共有の道具にして、職員の評価基準を統一しました。その結果、正確な数値を記録できるようになっています。

別の施設は、事業所フィードバックで全国の傾向を把握しました。誤嚥性肺炎を発症した人よりも、リスクのある人のほうが多いという傾向です。自施設では、嚥下調整食やとろみが必要な入居者が半数を占めていました。そこで、歯科衛生士の指導のもと、食事前の口腔体操や姿勢の改善に取り組みました。その結果、誤嚥性肺炎のリスク低減につながったと紹介されています。

1つ目の事例のように、フィードバックが評価のばらつきを映していることがあります。利用者の状態よりも、評価のしかたの違いが数値に出ている場合です。数値が実感と合わないときは、ケアを変える前に、評価のしかたを職員で確かめます。そうすると、その後の見直しがぶれにくくなります。

なお、国保中央会運用LIFEのフィードバックは、集計の対象が限られます。国保中央会運用LIFEに登録されたデータだけを集計しています。厚生労働省が運用していたLIFEのデータは含まれません。2026年5月より前のフィードバックと比べるときは、この違いに気をつけてください。フィードバックの種類と読み方は「LIFEのフィードバックの見方と活用」で解説しています。

(参考:「LIFE第1回説明会 基礎編」(「令和5年度 科学的介護に向けた質の向上支援等事業 事例集」事例2-1・3-4の抜粋)、介護保険最新情報Vol.1484)

事業所で始める前に決めること

説明会資料は、LIFEの導入に向けて2つを挙げています。取組の体制づくりと、環境整備です。2026年5月から、LIFEは国保中央会の運用に変わりました。そのため、利用開始の手続きも含めて、次の順で準備します。

  1. 担当とスケジュールの決定:LIFEの導入を検討するチームや担当者を決めます。次に、計画書の作成・見直しのスケジュールに沿って、どの職員が何を担当するかを決めます。計画書の作成時期は、利用者ごとにずれます。一覧で管理しないと、評価の時期が抜けやすくなります。
  2. 端末と回線の確認:LIFEの利用には、パソコン端末とインターネット回線が必要です。国保中央会運用LIFEには、電子証明書をインストールした端末でなければログインできません。管理ユーザーと別の端末で操作職員が使う場合は、その端末にも証明書が要ります。
  3. 電子証明書の準備と利用申請:新規の利用申請は、国保中央会運用LIFE(https://top.life-kkh.jp/)で行います。利用には、電子請求受付システム(介護)のID・パスワードが必要です。セキュリティ用メールアドレスと、電子証明書の設定も必要です。電子証明書は、介護保険証明書または介護DX証明書を使います。電子請求やケアプランデータ連携システムで使っている端末を、LIFEにも使う場合があります。その場合、証明書の新規取得は不要です。介護DX証明書の申請・発行に、費用はかかりません。ただし、発行には証明書発行用パスワードが必要です。このパスワードは、国保連合会から届いた「電子請求登録結果に関するお知らせ」に書かれています。紛失していると、再発行の手続きが要ります。
  4. 苦手な職員へのフォロー:ICT機器の扱いに苦手意識のある職員がいないかを確かめます。いる場合は、フォロー体制を検討します。操作を特定の職員だけが覚えていると、その職員の不在時に記録や提出が止まります。
  5. 振り返りの場の決定:フィードバックを多職種で確認する場と時期を決めます。場の例は、カンファレンスやサービス担当者会議です。提出だけで終わると、データが計画の見直しに使われません。

厚生労働省のLIFEから国保中央会運用LIFEへの移行は、2026年7月31日が期限でした。移行を済ませていない事業所は、国保中央会運用LIFEのヘルプデスクに対応を確認してください。利用者登録から提出までの操作は「LIFEのデータ提出方法」で解説しています。

(参考:「LIFE第1回説明会 基礎編」、厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」、介護保険最新情報Vol.1484・Vol.1495、「公益社団法人国民健康保険中央会運用LIFEへの移行に係る再周知について」令和8年7月2日事務連絡、国保中央会「【別紙】セットアップ手順書(電子証明書編)」)

LIFE関連加算を算定する場合の確認

LIFEへの情報提出が要件になっている加算では、提出する月と情報が加算ごとに決まっています。算定を考えている場合は、評価の予定を組む前に要件を確かめます。代表的な加算は、科学的介護推進体制加算です。その要件は「科学的介護推進体制加算の算定要件」で解説しています。

(参考:老老発0315第4号 第2)

まとめ

科学的介護は、利用者の状態を同じ物差しで評価・記録する取り組みです。その変化をもとに、PDCAでケアの計画を見直します。LIFEは、提出された情報からフィードバックを返し、その振り返りを支える仕組みです。

出発点は、評価の担当と時期を決め、職員の評価のしかたをそろえることです。

次に、LIFEを使う端末と電子証明書を確かめ、国保中央会運用LIFEの利用申請を行います。あわせて、フィードバックを多職種で確認する場を決めてください。評価と見直しを続けると、利用者の状態の変化に職員がそろって気付けるようになります。一人ひとりに合ったケアへの調整も、根拠をもって行えます。

参考