介護報酬とは、介護サービス事業者がサービスを提供したときに、対価として支払われる報酬です。金額は、事業所が自由に決めるものではありません。国が定める基準で算定し、基本報酬に加算を足し、減算を差し引いて決まります。

介護報酬は、事業所の収入のもとになります。利用者が支払う自己負担額も、この金額から計算されます。

この記事では、介護報酬が決まる仕組みと、単位から円への計算例を扱います。支払いの流れと、算定項目の一覧の作り方も整理します。

介護報酬は国の基準で決まるサービスの対価

介護報酬の金額は、サービスの種類ごとに決まります。サービスの内容や要介護度、事業所・施設の所在地などに応じた平均的な費用を勘案します。

算定の基準は、厚生労働大臣が定めます。基準を定めるときは社会保障審議会の意見を聴くことが、介護保険法で定められています。実際には、社会保障審議会の介護給付費分科会などで議論されます。

(参考:厚生労働省「介護報酬の仕組みについて」、介護保険法第41条第4項・第5項、厚生労働省「介護保険制度の概要」)

「基本報酬」「加算」「減算」の3つで算定

介護報酬は「基本報酬」を土台に、加算と減算で調整して算定します。

区分

内容

基本報酬

基本的なサービス提供に係る費用。サービスの種類、要介護度、提供時間などの区分ごとに単位数が決まっている

加算

事業所のサービス提供体制や利用者の状況に応じた評価として、基本報酬に上乗せされる

減算

業務継続計画の未策定や、虐待防止の措置が講じられていない場合など、求められる体制や措置が整っていないときに基本報酬が減らされる

加算は要件を満たしているかを、減算は該当していないかを、事業所が確かめたうえで請求します。それぞれの決まりは「基本報酬とは」「介護の加算とは」「介護の減算とは」で解説しています。

報酬は、円ではなく単位数で定められています。単位数を円に換算する1単位の単価は、地域区分とサービスの種類で異なります。単位の読み方は「介護報酬の「単位」とは」で解説しています。

(参考:厚生労働省「介護保険制度の概要」、「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」、「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」、「介護報酬の仕組みについて」)

支払いは「利用者負担」「保険給付」の2つ

介護サービスにかかった費用は、利用者の負担と保険からの給付に分かれます。事業所は、1回のサービスの報酬を、利用者と国保連の2か所に分けて請求します。

区分

費用に占める割合

事業所の請求先

利用者負担

1割(一定以上所得者は2割または3割)

利用者

保険給付(介護給付費)

9割(利用者負担が2割・3割の場合は8割・7割)

国民健康保険団体連合会(国保連)。各月分を翌月10日までに請求する

次の表は、単位から円までの計算例です。訪問介護の身体介護(30分以上1時間未満、387単位)を月8回提供したとします。単価は1級地の訪問介護の11.40円、利用者負担は1割です。加算と減算は無い場合です(2026年10月時点の値)。

計算の段階

計算式

結果

単位数の合計

387単位×8回

3,096単位

費用の総額

3,096単位×11.40円(1円未満は切り捨て)

35,294円

保険給付(国保連に請求)

35,294円×9割(1円未満は切り捨て)

31,764円

利用者負担(利用者に請求)

35,294円−31,764円

3,530円

端数処理を含む手順は「介護報酬の計算方法」で解説しています。

介護保険法では、事業所からの請求を審査して支払うのは市町村です。ただし、市町村はこの事務を国保連に委託できます。委託されている場合、事業所は国保連に請求します。この保険給付の部分は、請求に関する省令で「介護給付費」と定義されています。範囲は「介護給付費とは」で解説しています。

なお、居宅介護支援は利用者負担がなく、全額が保険給付です。一方、介護保険施設などでは、居住費・食費・日常生活費を利用者が別に負担します。算定を誤ると、利用者への請求額も変わります。

(参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」、厚生労働省「介護保険制度の概要」、介護保険法第41条第9項・第10項、介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令 第1条・第3条、厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、「地域区分」第262回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3、「介護給付費請求書等の記載要領について」(介護保険最新情報Vol.1489))

介護報酬の改定は「原則」3年ごと

介護報酬は、原則3年ごとに見直されます。直近の通常の改定は2024年度です。

ただし、2026年度には、2027年度の改定を待たずに改定が行われました。内容は、介護分野の職員の処遇改善(6月施行)と、食費の基準費用額の引き上げ(8月施行)です。改定があると、算定している単位数や加算の要件が変わる場合があります。改定の内容は「介護報酬改定とは」で解説しています。

(参考:厚生労働省「介護保険制度の概要」、「令和8年度予算に関する『大臣折衝事項』について(報告)」)

自事業所の算定項目の一覧の作り方

次の順で一覧を作っておくと、毎月の請求の確認と、改定時の見直しの両方に使えます。

  1. 算定しているサービス費の区分を書き出します。サービスの種類、要介護度、提供時間、事業所の規模などの区分ごとに整理します。利用者の要介護度が変わったのに、以前の区分のまま確認してしまうことがよくあります。
  2. 算定している加算を並べます。加算の名称と区分、届出日、要件の根拠となる書類を記録します。届出日だけを記録して、要件の確認を止めてしまわないよう注意します。
  3. 減算に該当していないかを確かめる項目を決め、毎月確認します。たとえば虐待防止の措置は、指針の整備だけでは足りません。委員会の開催、研修の実施、担当者の選任も求められます。
  4. 請求ソフトの設定がどの改定に対応しているかを、年月で書き留めます。改定後も、前回の設定をそのまま使っていないかを確かめます。

一覧に確認した年月を書き添えておくと、次の改定時に何が変わったかを比べやすくなります。

(参考:「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」)

まとめ

介護報酬は、国の基準で算定するサービスの対価です。基本報酬に加算・減算を反映した額が、利用者負担と保険給付に分かれて支払われます。まず押さえたいのは、自事業所がどの区分と加算で算定し、どの減算に注意すべきかです。上の手順で算定項目の一覧を作っておくと、利用者への正しい負担額の請求にもつながります。

参考