介護報酬改定は、介護サービスの報酬(単位数)や算定要件を国が見直すことです。3年ごとの改定が軸で、その間に期中改定が入ることもあります。直近の改定は2026年度の期中改定で、すでに適用されています。
次の2027年度改定は、社会保障審議会介護給付費分科会で審議が続いています。改定率や単位数は、まだ決まっていません。この記事は2026年10月9日時点で、第269回分科会(同日)の資料までを反映しています。
この記事では、改定の周期と改定率の推移・読み方、2026年度期中改定の内容を扱います。続いて、2027年度改定の議論の状況と、介護DXに関わる論点を整理します。生産性向上、LIFE、介護テクノロジー、ケアプランデータ連携の4つです。最後に、改定のたびに事業所で確認する手順をまとめます。介護報酬そのものの仕組みは「介護報酬とは」で解説しています。
改定で 見直される 内容と 改定の 周期
改定で見直されるのは、基本報酬・加算・減算の単位数や加算率です。加算の算定要件、届出や報告の様式と期日、報酬に関わる運営基準も対象になります。
介護保険制度は、原則3年を1期とするサイクルで運営されています。報酬改定も、2003年度から2024年度まで3年ごとの改定を軸に行われてきました。一方で、周期の間に行う改定もあります。2026年度の改定も、2027年度改定を待たずに行われた期中改定です。
単位数を変える改定とは別に、通知の改正で算定の取扱いが変わることもあります。2026年5月8日の通知がその例です。協力医療機関連携加算の会議の開催頻度の要件が見直されました。やむを得ない事情で人員が欠けた場合に、減算を猶予する特例も定められました。どちらも、2026年6月の算定分から適用されています。
事業所では、周期の間にも変更がありうる前提で、介護保険最新情報を定期的に確かめてください。
(参考:厚生労働省「介護保険制度の概要」令和7年7月、同「介護保険最新情報 Vol.1502」令和8年5月8日)
改定率の プラスは 自事業所の 増収と 同じではない
改定率は、介護報酬全体の水準をどれだけ変えるかを示す数字です。推移は次のとおりです。
改定の時期 | 改定率 |
|---|---|
2003年度 | ▲2.3% |
2006年度 | ▲0.5%(2005年10月の改定分を含めると▲2.4%) |
2009年度 | +3.0% |
2012年度 | +1.2% |
2014年度(消費税率8%対応) | +0.63% |
2015年度 | ▲2.27% |
2017年度(処遇改善) | +1.14% |
2018年度 | +0.54% |
2019年10月(処遇改善・消費税率10%対応) | +2.13% |
2021年度 | +0.70% |
2022年10月(処遇改善) | +1.13% |
2024年度 | +1.59% |
2026年度(処遇改善・食費の基準費用額) | +2.03% |
時期にかっこ書きのある改定は、周期の間に行われたものです。2024年度改定の内訳は、介護職員の処遇改善が0.98%、その他が0.61%です。サービスごとの経営状況の違いを踏まえた、メリハリのある対応とされました。このため、個々の事業所の増減は、サービスの種類や算定している加算で異なります。
2026年度の内訳は、処遇改善が1.95%、食費の基準費用額の引上げが0.09%です。ただし、処遇改善加算には、算定額に相当する賃金改善を行う決まりがあります。加算率が上がっても、事業所の利益が同じだけ増えるわけではありません。
改定率が発表されたら、自事業所が算定している項目で改定の前後を比べます。収入と支出のどこが変わるのかを確かめると、影響が分かりやすくなります。
(参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」、同「令和8年度予算に関する『大臣折衝事項』について(報告)」、同「介護保険最新情報 Vol.1479」)
すでに 適用されている 2026年度 期中 改定の 内容
2026年度の改定は、2025年11月21日の閣議決定を受けた期中改定です。この日の総合経済対策は、他職種と遜色のない処遇改善に向けた対応を掲げました。改定率は、2025年12月24日の予算大臣折衝で決まりました。主な見直しは次のとおりで、いずれも施行済みです。
見直しの内容 | 対象 | 施行 |
|---|---|---|
処遇改善加算の対象を介護職員から介護従事者に広げ、加算率を引上げ(月1.0万円・3.3%の賃上げに相当) | 処遇改善加算の対象サービス | 2026年6月 |
生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分(加算Ⅰロ・Ⅱロ)を新設(介護職員に月0.7万円・2.4%の上乗せ) | 処遇改善加算の対象サービス | 2026年6月 |
処遇改善加算を新設(加算率は訪問看護1.8%、訪問リハビリテーション1.5%、居宅介護支援・介護予防支援2.1%) | これまで対象外だった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援等 | 2026年6月 |
食費の基準費用額を1日100円引上げ(1,445円から1,545円) | 介護保険施設等 | 2026年8月 |
処遇改善加算を算定している事業所は、新しい加算率と上乗せ区分の要件を確かめます。上乗せ区分の加算Ⅰロ・Ⅱロには、2026年度特例要件があります。訪問・通所サービス等は、ケアプランデータ連携システムへの加入と実績の報告です。施設サービス等は、生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡの取得と実績の報告です。社会福祉連携推進法人に所属している場合も、要件を満たします。
加入と取得は、加算の申請時点では誓約で算定できます。誓約で算定した場合も、加入・取得と実績の報告は必要です。区分ごとの要件は「介護職員等処遇改善加算の区分と要件」で解説しています。
食費では、補足給付を受ける利用者の負担限度額も変わりました。第1段階と第2段階は据え置きです。第3段階①は1日30円、第3段階②は1日60円の引上げです。同じ8月から、第3段階②は居住費の負担限度額も見直されています。施設や短期入所の事業所は、負担限度額の段階ごとに請求額を確かめます。
(参考:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」社保審-介護給付費分科会 第253回 資料1、同「令和8年度予算に関する『大臣折衝事項』について(報告)」社保審-介護給付費分科会 第252回 資料1)
2027年度 改定の 議論の 状況 (2026年 10月 9日 時点)
2027年度改定の改定率と単位数は、まだ決まっていません。現時点で事業所に適用される内容はありません。2026年度改定の大臣折衝事項は、2027年度改定の進め方に触れています。経営状況を把握したうえで、物価や賃金の上昇等を反映する対応を行うというものです。あわせて、介護給付の効率化・適正化に取り組むとしています。
分科会での検討は、2026年4月27日の第256回から始まりました。5月からはサービス別の論点、7月からは分野をまたぐ論点が議論されています。9月には、関係団体等との意見交換会が3回開かれました。9月30日の第268回では、「基本的な視点」の案が示されています。案が挙げる視点は次の5つです。
基本的な視点(案) | 主な内容 |
|---|---|
物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善 | 経営状況や賃上げの状況を把握したうえで物価・賃金の上昇等を介護報酬に反映し、他職種と遜色のない処遇改善を実現する |
人口減少・サービス需要に応じたサービス提供体制の構築 | 「特定地域サービス」等の人員配置基準や報酬の検討、中山間地域の加算のあり方の見直し、地域での協働化やタスクシフト/シェアの推進 |
地域包括ケアシステムの深化 | 医療・介護連携、生活期のリハビリテーション、業務継続や虐待防止の取組、LIFEの一層の活用等による科学的介護の推進 |
職場環境の改善と生産性の向上を通じたサービスの質の向上及び介護人材の確保 | 多様な介護人材の確保・定着、居宅系サービスも含めたAI等の介護テクノロジーの活用、タスクシフト/シェアによる生産性の向上 |
制度の安定性・持続可能性の確保 | 限られた財源の有効な活用、介護報酬の評価の適正化・重点化、報酬体系の整理・簡素化 |
この5つは、議論の方向を示す案です。どの加算をどう見直すか、単位数がいくらになるかは示されていません。
10月9日の第269回では、サービスごとの資料に「改定の方向性」と「対応案」が載りました。対象の1つは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護です。ほかに、小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護があります。認知症対応型共同生活介護も対象です。対応案も、決定した内容ではありません。該当するサービスの事業所は、自事業所に関わる論点を資料で確かめておくとよいでしょう。
第256回の資料は、検討のスケジュール案を示しています。10〜12月頃に具体的な方向性を議論し、12月中に基本的な考え方をとりまとめる流れです。介護報酬改定案の諮問・答申は、2027年1月頃とされています。決まった内容の確かめ方は、後半の手順にまとめました。
(参考:厚生労働省「令和8年度予算に関する『大臣折衝事項』について(報告)」、同「令和9年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」社保審-介護給付費分科会 第256回 資料4、同「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」第268回 資料1・資料2、第269回社会保障審議会介護給付費分科会 資料、厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会)のページ)
介護 DXに 関わる 2027年度 改定の 論点と 審議会 資料
介護DXに関わる論点は、主に2つの回で議論されました。介護現場の生産性向上は、2026年8月28日の第263回です。LIFE(科学的介護情報システム)は、9月3日の第264回です。資料に書かれている方向性と、事業所が今確かめることを表にまとめます。いずれも審議中の内容で、決まったものではありません。
論点 | 資料に書かれている方向性 | 事業所が今確かめること | もとの資料 |
|---|---|---|---|
夜間の見守り機器の活用 | 実証で職員の業務時間の削減等が見られたことを踏まえ、夜間の見守り機器を活用した場合の方策が論点。認知症対応型共同生活介護では、見守り機器等の活用を要件に、3ユニットの夜勤を2人体制にできる場合を広げる対応案 | 導入している見守り機器、夜間の人員配置、利用者の安全や職員の負担軽減を検討する委員会の開催記録 | |
生産性向上推進体制加算 | 2024年度に新設された加算について、先進的な取組への評価のあり方が論点。訪問系・通所系サービスの生産性向上の取組の評価も論点 | 算定している事業所は、区分と年1回のデータ提供の状況。訪問系・通所系は、導入済みの機器やソフトと業務の変化の記録 | |
ケアプランデータ連携と介護情報基盤 | ケアプランデータ連携システムを地域の共通基盤として定着させる必要があり、居宅介護支援事業所の主体的な役割が期待されるとの記載。ケアプランデータ連携機能は2026年度中に介護情報基盤と統合するとの記載 | 加入の有無と利用の実績、連携している事業所、介護ソフトの対応状況 | |
LIFE関連加算のデータ提出とアウトカム評価 | データ提出とアウトカム評価の考え方が論点。検討会のとりまとめは、科学的介護推進体制加算を1階層目、ほかのLIFE関連加算をその算定を前提とする2階層目と整理すべきとした | 算定しているLIFE関連加算の一覧、科学的介護推進体制加算の算定の有無、提出を担当する体制 | |
AI等の介護テクノロジーの活用 | 基本的な視点(案)が、居宅系サービスも含めたAI等の介護テクノロジーの活用とタスクシフト/シェアによる生産性向上の推進を挙げている | 記録・連絡・請求のどの業務に機器やソフトを使っているかの一覧 |
表の論点の多くは、「どのような方策が考えられるか」と問う段階にあります。加算の単位数や細かい要件は、まだ示されていません。認知症対応型共同生活介護の夜勤体制も、第269回で示された対応案の段階です。
LIFEについては、提出項目の検討が作業部会で続いています。資料は、検討結果を秋頃に分科会へ報告する予定としています。検討会のとりまとめは、加算の見直しを2つの観点で整理すべきとしています。活用するうえでの有用性と、評価や入力の負担です。訪問系・通所系サービスについては、慎重な姿勢を示しています。2027年度改定に向けたLIFE関連加算の新たな導入は、慎重に検討すべきという内容です。
2026年度の処遇改善加算では、上乗せ区分の特例要件にDXの取り組みが含まれます。ケアプランデータ連携システムへの加入や、生産性向上推進体制加算の取得です。この特例要件は、2026年度の要件として定められています。2027年度の要件は、改定の内容とあわせて確かめてください。なお、2024年度改定では、委員会の設置が義務付けられています。利用者の安全や職員の負担軽減の方策を検討する委員会です。対象は短期入所系・居住系・多機能系・施設系サービスで、3年間の経過措置があります。
事業所が今できるのは、現在の取り組みと根拠書類の整理です。算定している加算ごとに、要件・提出の時期・担当者を一覧にしておきます。改定の内容が示されたときに、変わる点をすぐ比べられるためです。加算の要件は「生産性向上推進体制加算の要件」で解説しています。LIFEに関わる加算は「LIFEへの提出が必要な加算の一覧」で確かめられます。データ連携の仕組みは「ケアプランデータ連携システムとは」を参照してください。機器やソフトの全体像は「介護ICTとは」で整理しています。
(参考:厚生労働省「介護現場の生産性向上等の推進」社保審-介護給付費分科会 第263回 資料2、同「科学的介護情報システム(LIFE)」第264回 資料3、同「居宅介護支援・介護予防支援」第259回 資料6、同「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」第268回 資料1、同「認知症対応型共同生活介護(改定の方向性)」第269回 資料4)
改定のたびに 事業所で 確認する 手順
- 厚生労働省の一次情報で、改定の内容を確かめます。改定率は大臣折衝事項、考え方は分科会の審議報告に書かれます。単位数と要件は、告示・留意事項通知・Q&Aで見ます。解説記事やソフト会社の案内だけで判断すると、Q&Aで示された解釈を見落としやすくなります。
- 自事業所が算定している項目に絞って、単位数と加算率を改定の前後で比べます。前回の単位数や加算率のまま、収支を試算しないよう注意します。
- 要件が変わった加算は、記録・体制・研修などの根拠書類を見直します。2026年度の処遇改善加算で誓約した要件は、期限までに対応します。キャリアパス要件やケアプランデータ連携システムの利用は、2027年3月末が期限です。誓約したまま期限を過ぎるのが、起こりやすい失敗です。
- 届出、処遇改善計画書、実績報告書の期日を年間の予定表に入れます。処遇改善加算の届出は、居宅系サービスが算定を始める月の前月15日までです。施設系サービスは、算定を始める月の1日までです。2026年度分の実績報告書は、通常の場合2027年7月31日が期日です。この様式は、2026年7月14日に差し替えられています。古い様式を保存している場合は、提出前に掲載ページから取り直します。
- 請求ソフトの設定を更新します。利用者負担が変わる場合は、料金表と重要事項説明書も改めます。ソフトの更新だけで済ませると、利用者やご家族への説明が施行日に間に合わないことがあります。
(参考:厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1479」令和8年3月13日、同「令和8年度介護報酬改定について」掲載ページ、同「介護報酬」のページ)
まとめ
介護報酬改定は、単位数・算定要件・届出の期日をまとめて見直すものです。対応の出発点は、自事業所が算定している項目の一覧です。まず、2026年度期中改定の加算区分と食費の料金表が反映済みかを確かめます。2027年度改定は審議中で、生産性向上やLIFEの論点も決まっていません。今は取り組みの状況と根拠書類を整理し、内容が示されたら告示・通知・Q&Aで確かめます。改定を早めに反映できれば、職員の賃金改善が遅れません。利用者やご家族にも、負担の変化を前もって説明できます。
参考
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」(令和7年7月)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
- 厚生労働省「令和8年度予算に関する『大臣折衝事項』について(報告)」(社保審-介護給付費分科会 第252回(R7.12.26) 資料1)
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(社保審-介護給付費分科会 第253回(R8.1.16) 資料1)
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(掲載ページ)
- 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1479」(令和8年3月13日)
- 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1502」(令和8年5月8日)
- 厚生労働省「令和9年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」(社保審-介護給付費分科会 第256回(R8.4.27) 資料4)
- 厚生労働省「居宅介護支援・介護予防支援」(社保審-介護給付費分科会 第259回(R8.6.29) 資料6)
- 厚生労働省「介護現場の生産性向上等の推進」(社保審-介護給付費分科会 第263回(R8.8.28) 資料2)
- 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)」(社保審-介護給付費分科会 第264回(R8.9.3) 資料3)
- 厚生労働省「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」(社保審-介護給付費分科会 第268回(R8.9.30) 資料1)
- 厚生労働省「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)概要」(社保審-介護給付費分科会 第268回(R8.9.30) 資料2)
- 厚生労働省「第269回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」(令和8年10月9日)
- 厚生労働省「認知症対応型共同生活介護(改定の方向性)」(社保審-介護給付費分科会 第269回(R8.10.9) 資料4)
- 厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会)
- 厚生労働省「介護報酬」

