介護報酬の加算の算定漏れとは、請求に加算が載っていない状態です。届出を済ませ、要件も満たしているのに起こります。起きやすい場所は4か所あります。届出と請求の区分の違いと、算定単位の数え違いが、そのうちの2つです。残りは、LIFEへの提出期限と、処遇改善加算の加算率の設定です。どれも、毎月の請求の前に確かめれば見つけられます。
請求の前に見つければ、利用者に最初から正しい利用者負担額を請求できます。請求をやり直して、利用者やご家族に追加の負担をお願いする場面も減らせます。
この記事では、算定漏れが起きやすい4か所と、請求前の確認手順を扱います。載せ忘れと算定できない月の見分け方、届出が遅れた月の扱いも整理します。請求後に見つけたときの訂正と時効も扱います(2026年10月時点)。届出をしていない加算や、下位の区分で止まっている加算は、この記事では扱いません。見つけ方は「介護加算の取りこぼしの見つけ方」で解説しています。
算定 漏れが 起きやすい 4か 所
加算の単位数は、算定単位が加算ごとに決まっています。「1回につき」「1日につき」「1月につき」などです。処遇改善加算のように、月の総単位数に加算率を掛けて求めるものもあります。そのため、請求ソフトの設定や記録の拾い方が加算の決まりと合っていないと、漏れが起きます。要件を満たしていても、請求に載りません。
起きやすい場所 | 起きやすい漏れ | 照らし合わせる資料 |
|---|---|---|
区分 | 届け出た区分(Ⅰ・Ⅱなど)と、請求ソフトに設定した区分が違う | 体制届の控えと請求ソフトの体制設定 |
算定単位 | 「1回につき」「1日につき」「1月につき」の数え方と、記録から回数や日数を拾う方法が合っていない | サービス提供記録と請求明細 |
LIFEへの提出期限 | 提出の状況を確かめないまま請求し、提出済みの加算まで外している | LIFEの提出記録 |
処遇改善加算の加算率 | 届出の区分や改定後の率が、請求ソフトの設定に反映されていない | 処遇改善加算の届出と請求ソフトの設定 |
表の4か所のうち、区分と加算率は請求ソフトの設定の問題です。届出を変えた月や改定の月に崩れやすくなります。一方、算定単位とLIFEは毎月の記録の問題です。こちらは月ごとの確認が欠かせません。
(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、同「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(老発0313第6号)2⑴)
請求前の 5つの 確認 手順
次の順に、請求データを確定する前に確認します。
- 体制届の控えと、請求ソフトの体制設定を照らし合わせます。加算の名称だけでなく、区分まで一致しているかを見ます。区分を変える届出をしたのに、ソフトの設定が前の区分のままになっていることがよくあります。
- 処遇改善加算は、月の総単位数に掛ける加算率を確認します。届け出た区分の率になっているかを見ます。2026年度は、4月・5月と6月以降で加算率の表が別に定められています。6月分以降の設定が更新されているかを見落とさないようにします。
- 算定単位ごとに、記録から数えた回数・日数・月数を請求の入力と比べます。「1日につき」の加算を、サービスの提供回数で数えてしまう誤りに気をつけます。
- LIFEへの提出が要件の加算は、その月に提出すべき利用者の情報を提出したかを確認します。定期の提出だけを見ていると、見落としが出ます。新たに利用を始めた人や、利用を終えた人の提出です。
- 加算の単位数の合計が、前月から大きく変わった利用者を抜き出します。入退院、新規、終了などの利用者です。変わった理由を1人ずつ確認します。事業所全体の合計だけを比べるのは、よくある失敗です。利用者ごとの増減が相殺されて、漏れに気づけません。
体制届の内容は、「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」にまとめられます。この一覧表は、審査支払機関と保険者が請求を審査するときにも使われます。手順1で届出と請求ソフトをそろえておくと、算定漏れを防げます。届出にない加算を請求してしまう誤りも防げます。
算定漏れは、要件を示す記録が見つからず、請求を見送ったときにも起きます。人員配置、研修、会議などの記録は、月ごとにそろえておきます。前月にそろっていたからといって、今月も満たしているとは限りません。
LIFEへの提出の頻度は、加算ごとに決まっています。たとえば科学的介護推進体制加算では、利用者ごとに次の月の情報を提出します。算定を始める月、少なくとも3月ごと、利用を終える月です。算定開始のあとに利用を始めた人は、利用開始月の情報を提出します。提出の期限は、それぞれ翌月10日です。ほかの加算の提出頻度は、「LIFEへの提出が必要な加算の一覧」で整理しています。
(参考:厚生労働省「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」第1、同「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」第2 1⑴、同「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」2⑴)
「載せ 忘れ」と 「算定できない 月」の 区別
請求に加算が載っていない月が、すべて算定漏れとは限りません。たとえば、科学的介護推進体制加算の場合です。提出すべき情報を提出できない事実が生じたら、直ちに届出を行う必要があります。この場合、その月のサービス提供分から、提出を行った月の前月まで算定できません。対象は利用者全員です。通知には、4月の情報を5月10日までに提出できない例が示されています。この例では、4月サービス提供分から算定できません。
届出が遅れた月も、算定できない月です。届出が必要な加算は、届出の日をもとに、算定を始める月が通知で決められています。要件を満たしていても、その月より前にさかのぼって算定することはできません。決まりは、サービスの種類で2通りに分かれます。1つは、訪問・通所系のサービス、居宅療養管理指導、福祉用具貸与、居宅介護支援です。届出が毎月15日以前なら翌月から、16日以降なら翌々月から算定します。たとえば、9月16日に届け出ると、算定は11月からです。この決まりの対象は、算定される単位数が増える届出です。
もう1つは、短期入所、特定施設入居者生活介護、介護保険施設です。届出が受理された日の属する月の翌月から算定します。受理された日が月の初日なら、その月から算定できます。地域密着型サービスと介護予防サービスも、サービスごとにどちらかの決まりに分かれます。たとえば、小規模多機能型居宅介護は、15日を境にする決まりです。認知症対応型共同生活介護は、受理された月の翌月からの決まりです。
加算によっては、通知に別の定めがあります。報酬改定の施行時に、別の期日が示されることもあります。処遇改善加算は、体制届のほかに処遇改善計画書の提出も必要です。計画書の期日は、その年度に初めて算定する月の前々月の末日です。サービスごとの期限は、「介護加算はいつから算定できるか」で確かめられます。
加算が載っていない月を見つけたら、要件を満たしていたことを示す記録を先に確かめます。LIFEの提出記録や勤務実績などです。届出の控えで、届出の日と区分も確かめます。記録がそろっていれば、載せ忘れとして訂正を検討します。訂正を検討できるのは、届出が済んでいて、要件も満たしていた月だけです。要件を欠いていた月や届出より前の月は、算定できない月として理由を記録に残します。提出期限を過ぎたときの扱いは、「LIFEの提出期限」で詳しく解説しています。
(参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」第2 1⑴、留意事項通知(老企第36号)第1の1⑹、留意事項通知(老企第40号)第1の1⑵、地域密着型サービスの留意事項通知 第1の1⑹、介護予防サービスの留意事項通知 第1の1⑹、厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」4)
請求 後に見つけたときの 訂正
審査が決定した請求を直す手続は、実務で「過誤調整」と呼ばれています。厚生労働省の監査マニュアルは、この手続を次のように整理しています。事業者が、誤りのあった審査決定済みの請求を取り下げ、改めて正しい請求を行う手続です。載せ忘れた加算を追加するときの進め方は、事前の確認が必要です。申立の窓口や様式、再請求できる時期を、保険者や国保連の案内で確かめてください。
加算を追加して請求し直すと、その月の利用者負担額も変わります。利用者やご家族への説明と、差額の請求の方法もあわせて決めておきます。居宅サービスでは、給付管理票との突き合わせにも気をつけます。請求単位数が給付管理票の計画単位数を超えると、国保連合会は計画単位数で決定します。超えた分は支払われません。加算を追加する前に、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに連絡します。給付管理票の修正が要るかを確かめるためです。
過誤の申立から再請求までの流れは、「介護請求の過誤とは」で解説しています。加算の誤りの種類ごとの直し方は、「介護加算の過誤請求への対応」で確かめられます。
(参考:厚生労働省「介護保険施設等に対する監査マニュアル」3.4.1、国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」)
さかのぼって 訂正できる 期間
介護保険法第200条第1項は、保険給付を受ける権利の時効を定めています。この権利は、行使できる時から2年を経過すると、時効によって消滅します。厚生労働省の事務連絡は、事業所の請求にもこの2年の時効が適用されるとしています。事業所が受け取る介護報酬は、被保険者を代理して受領するものだからです。
時効の起算日の数え方は、国保連の案内で確かめます。算定漏れを見つけたら、古い月から順に保険者や国保連へ相談します。相談の前に、次のものをそろえておくと話が早く進みます。対象の利用者、サービス提供月、加算の区分、単位数と回数です。要件を満たしていたことを示す記録も用意します。
(参考:介護保険法第200条第1項、厚生労働省老健局介護保険課・老人保健課 事務連絡「介護給付費請求書等の保管について」)
点検の 担当と 記録の 残し 方
5つの確認手順は、請求を締める前の決まった日に行います。担当者も決めておくと、続けやすくなります。見つかった漏れは、月・利用者・加算の区分・単位数と回数を記録します。原因が区分・算定単位・提出期限・加算率のどれだったかも書きます。この記録は、保険者への相談にそのまま使えます。月をまたいで原因の傾向を見ると、直すべき場所も分かります。請求ソフトの設定か、記録の拾い方かです。
まとめ
届出済みの加算の算定漏れは、4か所を請求前に確かめれば、多くを防げます。区分、算定単位、LIFEへの提出期限、処遇改善加算の加算率です。出発点は、いま算定している加算の確認です。体制届の控えと請求ソフトの設定が、区分まで一致しているかを確かめてください。次に、5つの確認手順を、請求の締めの前の決まった日に組み込みます。過去の月に漏れが見つかったら、時効を踏まえて早めに保険者や国保連に相談します。
参考
- 厚生労働省「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」(令和8年3月13日一部改正後全文)
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」
- 厚生労働省 老老発0315第4号「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和6年3月15日)
- 厚生労働省 老発0313第6号「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月1日老企第36号)令和6年度改定の新旧対照表
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月8日老企第40号)
- 厚生労働省「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年3月31日老計発第0331005号・老振発第0331005号・老老発第0331018号)令和6年度改定の新旧対照表
- 厚生労働省「指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年3月17日老計発第0317001号・老振発第0317001号・老老発第0317001号)令和6年度改定の新旧対照表
- 厚生労働省「介護保険施設等に対する監査マニュアル」(令和6年4月)
- 国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」令和7年12月(東京都国民健康保険団体連合会の掲載資料)
- e-Gov法令検索「介護保険法」(第200条)
- 厚生労働省老健局介護保険課・老人保健課 事務連絡「介護給付費請求書等の保管について」(平成13年9月19日、岩手県国民健康保険団体連合会の掲載資料)

