介護請求の過誤(過誤調整)は、支払済みの請求を取り下げて、請求し直す手続です。国保連の審査が済み、支払われた請求に誤りがあったときに行います。事業所は、利用者の保険者に過誤申立書を出します。保険者が国保連に依頼して、請求が取り下げられます。

申立書の様式や締切、同月過誤を受け付ける条件は、保険者ごとに違います。そのため、誤りに気づいたら、まず利用者の保険者の案内を確かめます。

この記事では、返戻との違いと、過誤申立が必要になる場面を扱います。申立から再請求までの流れと、運営指導・監査のあとの扱いも整理します。申立の前にそろえる情報も示します(2026年10月時点)。

過誤と返戻の違いは審査が済んでいるかどうか

過誤と返戻は、どちらも請求を直す手続です。ただし、対象になる請求の状態が違います。

区分

対象になる請求の状態

事業所がすること

返戻

国保連の審査で戻され、支払われていない請求

誤りを直して再請求する

過誤

国保連の審査が済み、支払われた請求

保険者に過誤申立書を出して請求を取り下げ、正しい内容で再請求する

審査中の明細書は、過誤申立の対象になりません。返戻・保留になった明細書も同じです。誤りに気づいたら、まずその明細書が支払済みかどうかを確かめます。返戻の対応は「介護請求の返戻とは」で解説しています。

なお、「過誤調整」は実務上の呼び方で、法令に定められた用語ではありません。厚生労働省の監査マニュアルは、不正請求と認定されない場合の次の手続を、こう呼んでいます。事業者が審査決定済の誤った請求を取り下げ、正しい請求をやり直す手続です。同じマニュアルは、過誤調整を、事業所が保険者・国保連と自主的に行う調整だと説明しています。自治体が命じるものではありません。

(参考:厚生労働省老健局「介護保険施設等に対する監査マニュアル」令和6年4月、江東区「【事業所の方へ】介護保険過誤申立(取下げ)の手続きについて」)

過誤申立が必要になる場面

支払済みの請求に誤りがあると分かる経緯は、主に次の3つです。

  • 事業所自身の点検で、支払済みの請求の誤りに気づいた場合
  • 運営指導や監査で請求の誤りを指摘され、不正請求とは認定されなかった場合
  • 利用者の負担割合が、世帯構成の変更の把握遅れや所得の更正によって、さかのぼって変わった場合

3つめの負担割合の変更は、厚生労働省の通知で、事業者には責任のない事情とされています。差額は本来、保険者と被保険者の間で調整するものです。方法は、追加給付や返還請求です。事業者がレセプトを再請求して差額を調整するのは、事業者の協力が得られる場合に限られます。保険者から協力を求められたときは、対象の月と進め方を保険者と確認してください。負担割合の判定は「介護保険の自己負担割合」で解説しています。

(参考:厚生労働省老健局「介護保険施設等に対する監査マニュアル」令和6年4月、介護保険最新情報Vol.997「介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて」令和3年7月5日)

過誤申立から再請求までの流れ

過誤では、誤った部分の差額だけを直すことはできません。誤りを含む月の実績をいったんすべて取り下げ、正しい実績で請求し直します。1日分の誤りでも、その月の実績全体が取り下げの対象になります。

  1. 対象の明細書と誤りの内容を特定します。支払済みであることを先に確かめます。審査中の請求や返戻になった請求を過誤申立しようとするのが、よくある失敗です。
  2. 利用者の保険者の様式で過誤申立書を作り、締切までに提出します。提出先は、利用者の被保険者証に記載された市区町村・広域連合です。事業所の所在地ではありません。保険者が複数あるときは、保険者ごとに申立書を作ります。
  3. 保険者が国保連に過誤申立を行い、国保連がその月の実績を取り下げます。結果は「介護給付費過誤決定通知書」で届きます。対象の利用者と月が申立どおりかを確かめます。
  4. 正しい内容で国保連に再請求します。通常過誤では、過誤決定通知書で取下げの完了を確かめてから再請求します。過誤が決定する前に再請求すると、実績の重複で返戻になります。再請求できる月は、通常過誤か同月過誤かと、申立書を出した日で決まります。申立の控えに再請求予定月を書いておきます。

通常過誤では、取り下げた給付費がいったん報酬から差し引かれます。再請求は、取り下げた審査月より後の月に行います。一方、同月過誤では、国保連が取り下げと再請求を同じ審査月にまとめて審査します。調整されるのは差額だけです。取り下げる額が大きいときは、同月過誤のほうが一時的な入金の減少を抑えられます。

ただし、同月過誤を受け付ける条件や締切は、保険者によって違います。たとえば、さいたま市が同月過誤を受け付けるのは、次の場合に限られます。実地指導による返還の場合と、市が特段の事情があると認めた場合です。事前の連絡と、国保連への依頼書の提出も求めています。締切は、さいたま市では通常過誤が毎月10日、同月過誤が毎月25日です。江東区は、毎月20日(12月と2月は15日)としています。

申立の前に、利用者の保険者のウェブサイトで様式と締切を確認します。申立書の書き方の例は、大阪市が公開している記入例で確かめられます。分からないことは、保険者の介護保険担当に問い合わせてください。

(参考:国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」令和7年12月、さいたま市「通常過誤申立・同月過誤申立」、江東区「【事業所の方へ】介護保険過誤申立(取下げ)の手続きについて」、大阪市「介護給付費の請求取り下げについて(介護給付費過誤申立)」)

運営指導・監査のあとの過誤調整と不正請求の違い

監査マニュアルは、不正請求を次のように説明しています。法令や基準に違反し、かつそれを偽って報酬を請求すること(架空請求など)です。不正請求と認定されると、保険者は不正利得として返還額を徴収できます。指定取消などの行政処分も検討されます。一方、不正とは認定されず、確定した給付費の誤りの返還を求めるにとどまる場合は、過誤調整で対応します。

その場合に監査マニュアルが示す流れは、次のとおりです。

  1. 指定権者または事業者から、保険者に過誤調整とする旨を連絡します。
  2. 保険者と事業者の間で、返還額を確定します。返還額は、すでに支払った請求額と適正な請求額との差額です。
  3. 事業者が、国保連を通じて過誤調整を行います。

事業者が事業を廃止する場合などは、保険者が事業者に直接返還を求めます。また、監査マニュアルは、差額の返還を求める権利の消滅時効を5年としています。どこまでさかのぼって取り下げるかは、保険者と返還額を確定するときに確認してください。

なお、単なる誤りか不正かは、自治体が事実関係を踏まえて判断します。事業所が決めるものではありません。監査マニュアルは、過失であっても重過失がある場合は不正と認定され得るとしています。指摘を受けたら、自己判断で過誤申立を出す前に、保険者に連絡して進め方を確認してください。

(参考:厚生労働省老健局「介護保険施設等に対する監査マニュアル」令和6年4月)

過誤申立の前にそろえる情報と再発防止

保険者への申立や問い合わせの前に、次の情報をそろえておくと手続が進めやすくなります。

  • 対象の利用者の被保険者番号と保険者
  • サービス提供月とサービスの種類
  • 誤りの内容(何がどう違っていたか)と、正しい請求内容
  • 誤りが分かった経緯と日付
  • 再請求で利用者負担額が変わるかどうか

再請求で利用者負担額が変わる場合は、利用者やご家族の方に理由と差額を説明し、精算します。誤りの経緯と正しい金額を、先に整理しておきます。説明が一度で済み、利用者の不信を招きにくくなります。

手続が終わったら、誤りの原因を提出前の点検項目に書き足し、同じ誤りを防ぎます。点検の観点は「介護報酬の請求ミスを防ぐ点検項目」で解説しています。加算の算定誤りの再請求内容は、「介護加算の過誤請求への対応」で解説しています。

まとめ

過誤は、支払済みの請求を取り下げて、正しい内容で請求し直す手続です。事業所が保険者に過誤申立をして進めます。

誤りに気づいたら、対象の明細書が支払済みかを確かめます。次に、利用者の保険者の様式と締切、同月過誤を使えるかを確認します。申立書を出したら、過誤決定通知書で取下げを確かめ、保険者の案内どおりの月に再請求します。運営指導や監査で指摘を受けた場合は、先に保険者に連絡して返還額と進め方を確認します。

請求ソフトの過誤対応の機能は「介護請求の返戻とは」で扱っています。

参考