介護報酬の請求ミスは、提出前に4つの視点で点検すると減らせます。「届出との一致」「算定要件」「計算」「書類間の整合」です。届出や書類の食い違いと、明細書の計算誤りは、国保連の審査で返戻や保留になります。その分、入金が遅れます。一方、算定要件を満たしていなかった誤りは、審査では見つかりにくい誤りです。支払われたあとに気づくと、過誤調整での訂正が必要になります。請求の誤りは、利用者負担額の誤りにもつながります。提出前に見つければ、利用者やご家族の方に差額の精算をお願いする事態も防げます。

この記事では、点検項目と、月ごとの点検の手順を扱います。点検項目は、次の資料で確認できるものです。厚生労働省の通知と記載要領、国民健康保険中央会の請求の手引きです(2026年10月時点)。個々の加算の算定要件や単位数は扱いません。最新の告示と留意事項通知で確認してください。

国保連の審査で照合されるもの

国保連は、事業所から届いた請求書と明細書を、2種類の情報と突き合わせて審査します。都道府県や保険者から送られた台帳と、居宅介護支援事業所などが提出した給付管理票です。

審査での照合

照合に使われる情報

事業所が提出前に見るもの

事業所台帳との照合

都道府県等から送られた事業所番号・開設日・加算等の体制

請求する加算と、届け出た体制等の内容

給付管理票との照合

居宅介護支援事業所等が提出した給付管理票の事業所番号・サービス種類・計画単位数

利用実績と給付管理票の内容

請求書と明細書の照合

事業所が提出した請求書の件数・金額と明細書の集計

請求書と明細書の合計

このほか、被保険者番号や要介護状態区分などは、保険者から送られた受給者台帳と照合されます。明細書の計算誤りや記入漏れも、審査で返戻の対象になります。一方、台帳や書類どうしの照合では分からないこともあります。請求月に人員配置などの要件を実際に満たしていたかは、その1つです。請求した単位数が実際の提供時間に合っているかも、照合では分かりません。表の照合は、審査で見つかる誤りです。算定要件は、事業所が自分で確かめるしかない誤りです。こう読むと、点検の分担を決めやすいでしょう。

(参考:国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」令和7年12月)

届出との一致:請求する加算と届け出た体制等の照合

  • 請求に載せた加算が、届け出た体制等の内容(介護給付費算定に係る体制等状況一覧表)と一致している
  • 事業所番号・事業所名・所在地が、指定等を受けた際に届け出た内容と一致している

体制等に関する届出の項目には、請求の審査に必要な事項が含まれます。審査支払機関と保険者が、請求を適正に審査するための事項です。請求明細書は、事業所台帳の届出情報と突き合わされます。一致しないものは返戻になります。また、請求書の事業所名と所在地には、指定等を受けた際に届け出た内容を記載する決まりです。届出の時期や、算定漏れを防ぐ確認は「介護報酬の算定漏れチェック」で整理しています。

(参考:厚生労働省「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」、「介護給付費請求書等の記載要領について」、国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き」)

算定要件:加算ごとの実績記録の確認

  • 人員配置などが要件になっている加算は、その月の配置の記録を見る。請求月に要件を満たしていたことを確認する。
  • 所要時間で単位数が決まるサービスは、サービス提供記録を見る。実際に提供した時間に対応する単位数になっているかを確認する。

厚生労働省の監査マニュアルは、不正請求の例を挙げています。人員が不足しているのに、要件を満たしていると装って加算を請求することです。実際に提供した時間に対応する単位数を超えて請求することも、例に挙がっています。意図しない誤りでも、実際の配置や提供時間に合わない請求は、あとから訂正が必要になります。審査の照合で分かるのは、届出の有無までです。要件の根拠になる記録は、毎月、請求の前に確かめます。

(参考:厚生労働省老健局「介護保険施設等に対する監査マニュアル」令和6年4月)

計算:加減算ごとの四捨五入と1円未満の切り捨て

訪問・通所系サービスなどの端数処理は、留意事項通知(老企第36号)に示されています。箇所は、第2の1の(1)です。

  • 単位数の算定:基本の単位数に、割合を乗ずる加減算の計算を行うたびに、小数点以下を四捨五入する
  • 金額への換算:算定した単位数を金額に換算するときに生じる1円未満の端数は切り捨てる

通知の例(2024年4月改正時点)は、訪問介護の387単位で示されています。まず、夜間・早朝の25%を加算した483.75単位を、484単位に四捨五入します。次に、特定事業所加算の3%を加算した498.52単位を、499単位にします。387×1.25×1.03をまとめて計算してから四捨五入するのではない、とされています。ただし、対象となる単位数の合計に割合を乗じて算定するものもあります。特別地域加算などの支給限度額管理の対象外となる加算が、その例です。同一建物の利用者にサービスを行う場合の減算なども同じです。

請求書の費用合計にも、記載要領に決まりがあります。明細書の保険請求対象単位数に、単位数あたりの単価を乗じます。その結果(小数点以下切り捨て)の合計を記載します。手計算や表計算ソフトで検算するときは、割合をまとめて掛けていないかを確認してください。施設系など、老企第36号の対象外のサービスもあります。端数処理は、それぞれの留意事項通知で確認します。

(参考:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第36号)第2の1の(1)、「介護給付費請求書等の記載要領について」)

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書類間の整合:請求書・明細書・給付管理票の照合

  • 請求書の件数・単位数・費用合計が、明細書の集計と一致している。件数は、明細書の様式ごとに、被保険者等1人分の請求を1件と数える。
  • 明細書の事業所番号・サービス種類・単位数が、給付管理票と合っている。

給付管理票は、居宅介護支援事業所などが、月末時点のサービス利用票(控)から作成します。当初のサービス利用票の給付計画単位数を上回るような場合があります。この場合は、サービス利用票等の再作成が必要とされています。給付管理票が提出されていないと、明細書は保留になります。決められた期間内に提出されなければ、返戻になります。次の場合も返戻になります。給付管理票に、自事業所の事業所番号やサービス種類が記載されていない場合です。計画単位数が明細書より少ない場合も同じです。月の途中で利用回数が増えたときは、その時点で居宅介護支援事業所に伝えます。月末に実績を共有しておくと、請求時の食い違いを避けられます。

(参考:厚生労働省「介護給付費請求書等の記載要領について」、国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き」)

月ごとの点検の手順

請求ソフトの点検機能で見つかる項目と、人が確かめる項目を分けておきます。担当者が変わっても、点検の質がそろいます。次の順で進めます。

  1. 月初に、届け出た体制等(体制等状況一覧表)と請求ソフトの加算の設定を照らし合わせます。届出を変更した月にソフトの設定を変え忘れるのが、よくある失敗です。
  2. 加算ごとに、請求月の人員配置や実施の記録がそろっているかを確かめます。前月の記録で今月も満たしていると判断するのが、よくある失敗です。
  3. 月末に利用実績を確定し、居宅介護支援事業所と実績を共有します。月の途中で追加・変更した利用を伝え漏らすのが、よくある失敗です。
  4. 請求データを作成し、ソフトの点検機能と人の点検で確かめます。人が見るのは、届出との一致、算定要件の記録、給付管理票との突き合わせです。ソフトでエラーが出なかったことを、算定要件を満たしている証拠と受け取らないようにします。
  5. 伝送したら、送信結果で受付確認と事前チェックのエラーを確かめます。エラーがあれば、受付締切日までに送信データを取り消します。そのうえで、ファイル全体を作り直して送り直します。送信しただけで結果を確認しないと、エラーのある明細書がそのまま返戻になります。
  6. 審査結果が届いたら、返戻や査定の事由を点検表に書き足します。返戻を直して再請求しただけで、原因を次月の点検に反映しないのが、よくある失敗です。

伝送の受付時間は、国保連によって異なることがあります。事前チェックの結果が届くまでの時間や、保留の期間も同じです。所在地の国保連の案内で確認してください。

(参考:国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き」)

提出後に誤りに気づいたとき

審査で返戻になった請求は、原因を直して再請求します。原因の切り分け方は「介護請求の返戻とは」で説明しています。支払われたあとに誤りに気づいたときは、過誤申立で請求を取り下げてから再請求します。流れは「介護請求の過誤とは」で整理しています。

まとめ

介護報酬の請求ミスは、提出前の点検で減らせます。視点は、届出との一致、算定要件、計算、書類間の整合の4つです。点検の出発点は、届け出た体制等と、請求ソフトの加算設定が一致しているかの確認です。そのうえで、この記事の手順をもとに、自事業所の点検表を作ります。ソフトで見つかる項目と、人が確かめる項目を分けます。返戻の事由を書き足しながら、毎月使ってください。

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参考