加算を誤って請求していたと気づいたら、「過誤調整」で訂正します。審査が決定した請求を取り下げ、正しい内容で請求し直す手続です。過誤調整は、事業所が保険者・国保連と自主的に行います。返還する額は、すでに支払われた額と正しい額との差額です。再請求の内容は、誤りの種類で決まります。そのため、何が誤りだったかを特定することが出発点になります。

この記事では、加算で起きやすい4つの誤りについて、再請求の内容と差額の計算例を扱います。保険者へ相談する前の整理と、再発防止も整理します(2026年10月時点)。過誤申立の流れそのものは「介護請求の過誤とは」で解説しています。

加算の請求誤りが起きやすい4つの場面

誤りの種類

起きていること

算定要件の一部を満たしていない

要件を1つでも欠いた月に、加算を請求していた

減算を適用していない

人員基準欠如などで減算すべき月に、減算しない単位数で請求していた

LIFEへの情報提出が期限に間に合わない

科学的介護推進体制加算などでは、提出できない事実が生じた月から、提出した月の前月まで、利用者全員について加算を算定できない

算定開始月を誤った

訪問・通所系サービスや居宅介護支援では、単位数が増える加算の届出が15日以前なら翌月から、16日以降なら翌々月から算定する。届出日と開始月を取り違えて早く請求していた

どの種類かによって、再請求で直す範囲と保険者への説明が変わります。運営指導マニュアルは、要件の一部を満たさない請求を、単なる誤りの例に挙げています。制度の理解不足による誤りです。一方、減算の規定があるのに減算せずに請求した場合は、不正請求に当たる可能性がある例です。このため、減算の見落としはほかの種類より慎重に扱い、保険者への相談を先延ばしにしません。

誤りか不正かは、行政が監査などで事実関係を確かめて判断します。事業所だけで「誤りだから過誤調整で済む」と決めないようにします。扱いの違いは「介護加算の返還が必要になる場面」で解説しています。なお、算定開始月の決まりは、老企第36号の対象サービスのものです。施設系など他のサービスは、それぞれの留意事項通知で確認します。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等 運営指導マニュアル」Ⅰ 基本編 第3章 第2節 2、同「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」第2、老企第36号 第1の1(6))

誤りの種類ごとの再請求の内容

過誤調整は、誤りのあった審査決定済みの請求を取り下げ、改めて正しい請求を行う手続です。そのため、再請求では「本来請求できた内容」をそのまま請求します。

誤りの種類

再請求の内容

見落としやすい点

算定要件の一部を満たしていない

要件を欠いた月の加算を外して請求する。上位の区分の要件を欠き、下位の区分の要件は満たしていた場合は、満たしていた区分で請求する

体制に関する加算で要件を欠いた場合は、加算が算定されなくなる旨の届出も必要。算定しないのは、その事実が発生した日から

減算を適用していない

減算を適用した単位数で請求する

減算の対象になる期間と利用者の範囲を、減算の規定で確かめてから直す

LIFEへの情報提出が期限に間に合わない

提出できない事実が生じた月から提出した月の前月までの加算を外して請求する

提出できなかった利用者だけでなく、利用者全員分の加算を外す。提出できないと分かった時点で届出も必要

算定開始月を誤った

正しい開始月より前の月の加算を外して請求する

届出日ではなく、届出日から決まる開始月で判断する

差額の例を、通所介護の科学的介護推進体制加算(1月につき40単位)で示します。4月の情報を5月10日までに提出できず、6月に提出した場合です。算定できないのは、4月と5月のサービス提供分です。1人1か月の差額は40単位で、1単位の単価が10円の地域なら400円です。利用者負担が1割の人なら、保険給付の360円と利用者負担の40円に分かれます。利用者が30人なら、2か月分で2,400単位、費用の額で24,000円です。処遇改善加算の分は、この例に含めていません。

返還額は、保険者が差額を計算し、事業所との間で確定します。そのうえで、事業所が国保連を通じて過誤調整を行います。どの月まで遡って直すかは、誤りが始まった月を確かめたうえで、保険者と確認します。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等に対する監査マニュアル」3.4.1、3.4.6、老企第36号 第1の5、同「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」第2 1(1)、同「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、厚生労働大臣が定める一単位の単価(平成27年厚生労働省告示第93号))

保険者へ連絡する前の整理

保険者との確認を早く進めるため、連絡の前に次の順で整理します。申立ての様式や締切は、保険者や国保連の案内で確認します。

  1. 誤りの種類と原因を特定します。気づいた1件だけを直し、原因を確かめないまま次の月も同じ請求をする失敗がよくあります。
  2. 対象の範囲を洗い出します。誤りが始まった月から、同じ加算を算定したすべての利用者を確認します。事業所のある市町村の利用者だけを確認し、ほかの保険者の利用者を漏らす失敗がよくあります。点検の進め方は「介護加算の自己点検のやり方」で解説しています。
  3. 請求した内容と正しい内容を並べた一覧を作ります。月・利用者・加算の名称・区分・単位数を、誤りと正しい内容で横に並べます。根拠になる記録を添えずに、一覧だけを渡さないようにします。勤務実績、届出の受理通知、LIFEの提出記録などです。
  4. 体制に関する加算の要件を欠いていた場合は、加算が算定されなくなる旨の届出を出します。過誤調整だけを進めて届出を出さず、次の月以降も請求し続ける失敗があります。
  5. 保険者へ連絡し、返還額と手続の締切を確認します。保険者との確認が済む前に、再請求を出さないようにします。
  6. 利用者負担の精算方法を決めます。加算を外すと、利用者負担額も減ります。過払い分の返し方を決め、利用者やご家族の方に説明します。保険者への返還だけで手続を終えないようにします。

利用者負担の過払い分の返し方は「介護加算の返還が必要になる場面」で解説しています。さかのぼる期間にかかわる時効も、同じ記事で確かめられます。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等 運営指導マニュアル」Ⅰ 基本編 第3章 第2節 2(5)、老企第36号 第1の5・6)

原因別の再発防止策

再発防止は、原因ごとに業務の仕組みを1つ変えると定着しやすいでしょう。

原因

変える仕組み

要件の解釈の誤り

加算ごとに要件と根拠書類の一覧を作り、報酬改定やQ&Aが出たときに見直す

減算の見落とし

請求の前に、勤務実績で人員基準を満たしているかを確認する

LIFEへの提出の遅れ

加算ごとの提出期限(通知では、提出すべき月の翌月10日までとするものが多い)を予定表に載せ、提出できないと分かったら直ちに届出を出す

算定開始月の取り違え

届出日と受理の通知を確かめ、算定開始月を決めてから請求に反映する

通知上、自治体は、受理した届出について届出者と国保連合会へ通知します。届出日から決まる開始月と、この受理の通知の両方を確かめてから算定を始めます。こうすると、取り違えを防げます。請求の誤りが減ると、利用者の負担額も正しく計算されます。利用者が、後から精算のやり取りをせずに済みます。

(参考:老企第36号 第1の1(5)(6)、厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」第2)

まとめ

加算の請求誤りは過誤調整で直し、再請求の内容は誤りの種類で決まります。出発点は、誤りの種類と対象の月・利用者を特定することです。請求した内容と正しい内容を並べた一覧を作ります。一覧ができたら、保険者に連絡して返還額と手続の締切を確認します。あわせて、利用者負担の精算と、原因に合った再発防止策を1つ決めます。審査で戻された請求(返戻)は、手続が異なります。「介護請求の返戻とは」で確かめてください。

参考