加算を新しく算定するかどうかは、単位数の大きさだけでは決められません。加算の収入と、要件を維持するための費用を同じ表に並べます。費用は、人件費や記録の手間などです。判断の材料は2つあります。月あたりの純増と、要件を維持し続けられる見通しです。

収入だけを見て算定を始めると、要件を維持できずに算定をやめることがあります。利用者や居宅介護支援事業者への説明が後回しになることもあります。

この記事では、介護加算の費用対効果を、費用の見積もりを中心に扱います。収入の試算式の要点、費用に入れる5つの項目、判断の手順の順に説明します(2026年10月時点)。

収入の試算式「単位数×算定回数×1単位の単価」

加算の収入は、単位数に算定回数と1単位の単価を乗じて試算します。単位数は、厚生労働省の「介護報酬の算定構造のイメージ」で確かめます。たとえば、通所介護のサービス提供体制強化加算(Ⅰ)は1回につき22単位です。算定回数は、自事業所の利用実績から数えます。数えるのは、要件を満たす利用者と回数だけです。1単位の単価は、事業所の地域区分とサービスの種類で決まります。

試算式の組み方と、算定率を変えた試算は、「介護加算のシミュレーション方法」で解説しています。次の2点も、同じ記事で確かめられます。

1つは、介護職員等処遇改善加算の扱いです。ほかの加算を新しく算定すると、処遇改善加算の額も増えます。ただし、この加算は、算定額に相当する職員の賃金改善が必要です。増えた分は収益に入れず、賃金改善の原資として別に管理します。

もう1つは、利用者への影響です。加算を算定すると、その分だけ利用者の自己負担も増えます。支給限度額管理の対象になる加算では、限度額に近い利用者に注意します。ケアプランの見直しが必要になる場合があるためです。

訪問・通所系で単位数が増える加算は、届出の日で算定を始める月が決まります。毎月15日以前なら翌月から、16日以降なら翌々月からです。この期間は、利用者や居宅介護支援事業者への周知のために設けられています。算定を始めたい月から逆算して、届出日を決めます。利用者への説明と、担当の介護支援専門員への連絡も、試算の段階で予定に入れておきます。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、同 老発0313第6号「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」2⑴⑵、同「令和6年度介護報酬改定について」掲載の留意事項通知(老企第36号、新旧対照表)第1の1⑹)

費用に入れる5つの項目

月の費用は、3つの額を足して出します。追加の人件費と、追加の工数に時間単価を乗じた額が、そのうちの2つです。残りは、研修やシステムの費用を月あたりに直した額です。次の5つの項目を、収入と同じ表に並べます。

費用の項目

含めるもの

見落としやすい点

人件費

要件を満たすための追加の配置や勤務時間

配置換えで空いた業務を埋めるための人手

研修

資格の取得や研修の費用と参加する時間

研修で抜ける職員の代わりの勤務

記録と会議

計画書の作成、記録、会議に使う時間

算定を続けるかぎり毎月発生すること

システムと提出

請求ソフトの設定、LIFEへの提出が要件の加算ではその工数

提出の締切に合わせた入力の時間

届出と点検

届出、自己点検、根拠書類の整理にかかる工数

要件を満たし続けているかの定期的な確認

費用の見積もりでは、要件を維持し続けられるかどうかも確かめます。訪問・通所系の留意事項通知には、体制が要件を満たさなくなった場合の定めがあります。事業所は、速やかに届け出なければなりません。加算は、要件を満たさなくなった事実が発生した日から算定できません。届出をせずに請求すると不正請求となり、返還の対象になります。退職や異動で要件が崩れやすい加算は、費用が小さく見えても注意が要ります。維持の見通しを慎重に見積もってください。

(参考:厚生労働省 老企第36号「実施上の留意事項について」第1の5)

算定するかどうかの判断手順

判断は、次の順に進めます。

  1. 検討する加算の単位数と要件を、最新の算定構造と留意事項通知で確かめます。改定前の資料の単位数をそのまま使わないようにします。
  2. 月の収入を試算します。算定回数に、要件を満たさない利用者の分まで入れないようにします。
  3. 月の費用を5つの項目で出します。今いる職員が担う追加の作業を、費用ゼロとして扱わないようにします。
  4. 収入から費用を引いて、月あたりの純増を出します。要件を維持できる見通しとあわせて判断します。純増の大きさだけで決めないようにします。
  5. 算定を始めたら、加算を実施した効果を記録に残します。算定の根拠書類だけでは足りません。サービスの質や職員の負担がどう変わったかも残します。

純増が見込めて、要件をすでに満たしている加算から検討します。準備の負担が大きい加算は、担当者と期限を決めて計画します。純増が小さい加算や、要件の維持が難しい加算は、見送りも含めて判断します。加算の要件の多くは、人員の体制やケアの取り組みを求めるものです。維持できる体制で算定すれば、途中で算定をやめずに済みます。要件が求める水準のサービスを、利用者に届け続けられます。

算定後の効果は、運営指導の報酬請求指導でも取り上げられます。加算を実施したことによる効果の説明を受ける項目が挙げられています。要件の確認から届出、効果の測定までの流れは、「介護の加算で増収を検討する手順」で紹介しています。すでに算定している加算の収益は、請求データから確かめられます。方法は「介護施設の加算収益の集計方法」を参照してください。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等 運営指導マニュアル」Ⅱ 実践編 第3章 運営指導の実施)

まとめ

加算を算定するかどうかは、収入と要件を維持する費用を同じ表に並べて判断します。見るのは、月あたりの純増と、要件を維持できる見通しです。出発点は、検討する加算の単位数と要件を最新の算定構造で確かめることです。算定回数は、自事業所の利用実績で数えます。そのうえで5つの費用項目を見積もり、純増を出します。算定すると決めたら、算定開始月から逆算して届出日を決めます。利用者や居宅介護支援事業者への説明の予定も立ててください。

参考