介護施設向けのシフト管理システムは、機能の数では選びません。自施設の勤務ルールを再現でき、現場の職員が無理なく使えるかで選びます。希望休の回収から確定表の共有までを1つの仕組みで扱えると、作成者の確認と連絡の手間が減ります。その分の時間を、利用者への対応に回しやすくなります。

この記事では、希望の回収から確定・変更・共有までの管理と運用を扱います。比較の7項目、自動作成の範囲、確定と変更のルール、試験導入の手順、見積もりの確認点です。勤務案の自動作成で確かめる条件は「介護・看護向けシフト作成ソフトの選び方」で解説しています。

シフト管理システムで減らせる作成・確認・共有の手間

厚生労働省の生産性向上ガイドラインは、生産性向上を「介護の価値を高めること」と定義しています。ガイドラインは、介護の業務を2つに分けて考えています。利用者に直接接して行う「直接的なケア」と、記録や会議など利用者と直接接しない「間接的業務」です。勤務表の作成や連絡は、間接的業務にあたります。ここを効率化できれば、直接的なケアに充てる時間を確保しやすくなります。施設サービスのガイドライン(令和6年度改訂)には、事例も載っています。勤務シフトの自動作成システムを導入して、作成時間を減らした事例です。

紙や表計算ソフトでも、勤務表は作れます。ただし、職員数や勤務区分が増えるほど、確認する箇所が増えます。転記や連絡の負担も大きくなります。システムにすると、職員がスマートフォンなどから希望を出せます。作成者は人の足りない時間帯を確かめ、確定表を同じ画面で共有できます。変更履歴が残る製品なら、どの表が最新かで迷うことも減ります。なお、システムは作成者の判断を置き換えるものではありません。条件の見落としを減らし、調整にかかる時間を短くするための道具です。

(参考:厚生労働省「介護分野における「生産性向上」とは?」、厚生労働省「介護分野における生産性向上_お知らせ」)

比較する7項目とデモでの確かめ方

候補の製品は、次の7項目で比べます。カタログの記載だけで判断せず、デモで自施設の条件を入れてもらうと、違いが見えやすくなります。

比較項目

確認すること

デモで試すこと

勤務区分

早番・夜勤・明けなどを自施設の表記で登録できるか

自施設の勤務区分をすべて登録する

配置条件

時間帯ごとの必要人数と資格者を設定できるか

夜勤帯の人数と資格の条件を入れる

希望の回収

職員が希望休を入力し締切を管理できるか

職員側の画面で希望を出す

自動作成

勤務案まで作るか違反の表示だけか

組みにくい月のデータで作成する

労務の確認

連続勤務・休日・労働時間の超過を警告するか

条件に反する表を作り警告を見る

変更と共有

交代の申請・承認・再通知・履歴に対応するか

確定後に交代を申請する

連携と出力

勤怠・給与との連携やCSV・印刷に対応するか

勤務形態一覧表への転記を試す

自施設で欠かせない項目と、あれば便利な項目を先に分けておくと、候補を絞りやすくなります。

連携と出力では、厚生労働省の標準様式も意識しておくとよいでしょう。指定申請などで使う「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」(標準様式1)です。この様式には、職種ごとの勤務の予定や実績、常勤換算後の人数などを書きます。勤務表のデータを、この様式に転記しやすい形で出力できるかを確かめます。出力できれば、届出や人員基準の確認のたびに勤務表を作り直す手間を減らせます。勤怠・給与との連携で確認する点は「介護の勤怠管理」で扱っています。

(参考:厚生労働省「介護事業所の指定申請等のウェブ入力・電子申請導入」)

自動作成の精度を決める条件設定と例外の扱い

自動作成と書かれていても、できる範囲は製品ごとに違います。人数を均等に割り当てるだけの製品があります。資格、夜勤の回数、固定の休み、研修の予定まで考慮する製品もあります。この違いで、作成後の手直しの量が変わります。

一方、例外をすべて登録しようとすると、設定が複雑になります。必ず守る条件と、できれば守りたい条件を分けます。前者はエラー、後者は警告として扱える製品だと、現実的な勤務案を作りやすくなります。デモでの試し方と確かめる6つの条件は「介護・看護向けシフト作成ソフトの選び方」で扱っています。

導入前に決めるシフトの確定と変更のルール

厚生労働省は、シフト制の雇用管理の留意事項を示しています。使用者と労働者があらかじめ話し合って定めておくことが、例に挙げられています。シフト表の作成前に労働者の意見を聴くことや、確定したシフト表を通知する期限と方法です。確定後に変更を申し出る場合の期限と手続も含まれます。

この留意事項の対象は、契約の時点では労働日や労働時間を決めず、シフトで初めて確定する働き方です。決められた勤務時間のパターンを組み合わせる三交替勤務のような形態は、除かれています。ただし、希望の締切、確定表の通知日、変更の承認者を先に決める考え方は、どの勤務形態でも役立ちます。これらが曖昧なままでは、システムを入れても調整の手間は減りません。

介護施設では、急な欠勤や利用者の状態の変化で、勤務を組み替えることもあります。変更の申請を誰が確認し、代わりの職員をどう探し、最終版を誰が周知するかを決めておきます。システムの通知だけに頼らず、緊急時の電話連絡の手順も残しておくと安心です。ルールの整理のしかたは「介護施設のシフト管理のルール」で解説しています。

(参考:厚生労働省「いわゆる「シフト制」について」)

1部署での試験導入の手順

いきなり施設全体で切り替えず、1部署で試してから広げます。

  1. 現行の勤務区分、必要人数、資格の条件、希望の締切、承認の手順を書き出します。書き出さないままデモを受けると、製品の標準設定を前提に評価しやすくなります。
  2. 欠かせない条件を満たす2〜3製品に絞り、同じデータでデモを受けます。製品ごとに違うデータを使うと、結果を比べられません。
  3. 1部署または1ユニットで、従来の勤務表と並行して1か月試します。並行期間中は、どちらの表が正式かを職員に伝えておきます。
  4. 作成時間、修正の回数、問い合わせの件数、職員の入力の負担を比べます。導入前の作成時間を測っていないと、比べる基準がなくなります。
  5. 試験で見つかった点に合わせて運用ルールを直してから、対象の部署を広げます。ルールを直さずに広げると、同じ問い合わせが部署の数だけ繰り返されます。

見積もりで確認する費用とセキュリティ

見積もりでは、月額のほかに別料金がないかを確認します。初期設定、職員や拠点の追加、勤怠システムとの連携、サポート、データ移行の費用です。費用対効果は、月額の安さでは見ません。毎月の作成・修正の時間がどれだけ減り、転記のミスや連絡漏れをどれだけ防げるかで見ます。なお、介護テクノロジーの導入補助は、都道府県が実施しています。シフト管理システムが対象になるかは都道府県の判断によるため、案内で確認してください。支援制度の全体は「介護テクノロジー導入支援事業と補助金・助成金」で整理しています。

勤務表は、職員の個人情報を含みます。権限の設定、通信の暗号化、バックアップを確認します。退職した職員のアカウントを止める方法と、障害時の連絡先も確かめます。

(参考:厚生労働省「介護サービス事業者の皆様へのお知らせ」)

製品名特徴料金
勤務シフト作成お助けマン
公式サイト ↗
勤務条件や希望を考慮してシフト表を自動作成するクラウドサービス。月額Day:1箇所1~50名で月額12,000円(スマホ利用オプション+3,000円)、51名以上は別途見積。初期費用0円(税別。2か月無料トライアルあり)
エピタルHR
公式サイト ↗
医療機関向けにAIでシフトと様式9を自動作成。個別見積要問い合わせ

まとめ

シフト管理システムは、自施設の勤務ルールを再現でき、職員が無理なく使えるかで選びます。最初に、勤務区分、必要人数、資格の条件、希望の締切と承認の手順を書き出します。そのうえで、7項目で候補を2〜3製品に絞ります。組みにくい月のデータでデモを受け、1部署で1か月試してください。作成と調整にかかる時間が減れば、その分を利用者への声かけや見守りに回せます。

参考