介護報酬の請求に使うソフトには、クラウド型のソフト(SaaS)があります。ブラウザやアプリからアクセスして使う形のソフトです。クラウド型のソフトは、次の2点で差が出ます。1つは、記録から請求、国保連への伝送までが転記なしでつながるかです。もう1つは、報酬改定のたびに遅れず更新されるかです。

厚生労働省は、介護ソフトを選ぶ観点を3つ示しています。機能面、サービス面、価格面です。この記事では、まずクラウド型とオンプレミス型の違いを整理します。次に、3つの観点を介護報酬の業務に当てはめた、6つの比較項目を扱います。自施設のデータで試すときの手順も示します(2026年10月時点)。

なお、ソフトが計算を自動で行っても、事業所の役割は残ります。加算の算定要件を満たしているかの確認と、届出です。この点は最後の節で扱います。

介護システムのクラウド型とオンプレミス型の違い

介護システム(介護ソフト)を選ぶときは、機能とあわせて提供形態も決めます。厚生労働省は「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」を公表しています。このポイント集は、提供形態を3つに分けています。インストール型、サーバー設置型、クラウド型です。

提供形態

使い方

事業所の外からの利用

ポイント集が挙げる特徴

インストール型

パソコンに介護ソフトをインストールして使う

インストールした端末でしか利用できない

ネットワークにつながっていない状況でも使える。データのバックアップが必要

サーバー設置型

法人または施設・事業所が独自にサーバーを設置し、サーバー上の介護ソフトを使う

個別の設定により、外部からもアクセスできる

機器の購入、維持、管理の費用がかかる

クラウド型

ブラウザやアプリケーションから介護ソフトにアクセスして使う

外部からもアクセスできる

初期費用が安い。緊急時のデータの復元が容易。適切な情報管理が必要

オンプレミス型は、ポイント集には出てこない呼び方です。一般に、事業所が自前の機器にソフトを置いて使う形を指します。表では、サーバー設置型とインストール型が近い形です。

表からは、選ぶときの分かれ目が読み取れます。事業所の外や複数の機器から使うなら、サーバー設置型かクラウド型が前提です。ポイント集も、外部から接続できる形態の導入が必要としています。一方、サーバー設置型では、機器の購入と維持、管理の費用を見込みます。クラウド型は初期費用が安い反面、適切な情報管理が必要です。通信が途切れても使える形は、インストール型です。ただし、使える端末が限られ、データのバックアップも必要です。

どの形態が合うかは、自事業所の使い方で決まります。次の4点を書き出してから、候補を探します。

  • 拠点の数と、拠点をまたいで情報を共有する必要があるか。
  • 訪問先など、事業所の外で入力する業務があるか。
  • インターネット回線が安定しているか。
  • 今あるサーバーなどの機器を、使い続ける事情があるか。

ポイント集は、選定の確認項目にも提供形態を挙げています。クラウド型など、遠隔で接続できる形態に対応しているかです。報酬改定のときの更新の方法と、データの保管場所は、候補ごとに販売元へ確かめます。

(参考:厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」)

比べる6項目と確かめること

次の表は、ポイント集の確認項目をもとにしています。介護報酬の業務に関わるものを、6項目にまとめました。

比べる項目

確かめること

見落としやすい点

自動化の範囲

計算・明細書作成・伝送が一続きか

加算がどの入力から明細に付くか

報酬改定への対応

単位数表・コード表の更新時期

改定時の追加料金の有無

記録・LIFEとの連携

記録から請求まで転記が要らないか

LIFE・ケアプランデータ連携用の出力

料金体系

初期費用・月額・一定期間の総額

オプション機能と端末・無線LANの費用

サポート体制

導入時の研修とデータ引継ぎ

導入後の定期支援と災害時の復旧

データの扱い

情報セキュリティと個人情報保護

切り替え時にデータを引き継げるか

候補を比べるときは、表の「確かめること」をそろえて各社に聞きます。「見落としやすい点」は、見積書や契約書で確かめます。こうすると、条件の違いが見えやすくなります。自動化の範囲では、計算から伝送までが同じソフトで完結するかを見ます。計算とは、単位数、単価、端数処理の計算のことです。作成と伝送の対象は、介護給付費明細書、請求書、給付管理票です。

報酬改定への対応は、実際の改定でどう動いたかを聞くのが確実です。2026年6月には、年度途中の報酬改定がありました。厚生労働省は、同年5月25日の事務連絡で、変更資料の確定版を示しています。サービスコード表や、請求明細書のインタフェース仕様などの資料です。候補のソフトが、このとき何日に更新を配信したかを聞きます。追加料金がかかったかも聞きます。答えは、次の改定での対応を見込む材料になります。

料金体系は、契約の単位で変わることがあります。法人単位か、事業所単位かの違いです。職員数や利用者数で金額が変わることもあります。そのため、自施設の規模で見積もりを取ります。介護ソフトの導入費用は、都道府県の補助の対象になる場合があります。介護テクノロジー導入支援事業などの補助です。対象や条件は、都道府県と年度で異なります。申請前に、都道府県の案内で確かめてください。

(参考:厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」、厚生労働省「介護保険事務処理システム変更に係る参考資料(確定版)(令和8年5月25日事務連絡)」)

クラウド型で先に整える通信環境と端末の管理

タブレットやスマートフォンで介護ソフトを使うには、前提があります。ポイント集は、クラウド型のソフトを使うことと、Wi-Fi環境などの整備を挙げています。職員の私用スマートフォンを業務に使う場合は、適切な管理が必要とされています。厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づく管理です。訪問先での記録にスマートフォンを使う予定なら、比較の段階で2つを見込んでおきます。端末の費用と、管理のルールです。

(参考:厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」)

自施設の過去1か月分の請求での試用

ポイント集は、デモンストレーションや試用に対応できるかを確認項目に挙げています。商品を選ぶ時点で確かめる項目です。実際に使う現場職員も、検討に加えることが重要としています。介護報酬の業務では、すでに請求を終えた月のデータを使います。正しい答えと突き合わせながら試せるためです。

  1. 過去1か月分のサービス提供実績と、その月の請求内容を用意します。利用者の個人情報を試用環境に入れる前に、ベンダーと取り扱いの取り決めを確かめます。取り決めがないまま、実名のデータを入れないようにします。
  2. 体制と地域区分を登録し、請求明細に加算が想定どおり付くかを見ます。体制とは、算定している加算とその区分のことです。記憶に頼って登録すると、区分を取り違えやすくなります。体制等に関する届出の控えを見ながら登録します。
  3. 請求額が実際の請求と一致するかを確かめます。利用者ごと、サービスコードごとに見ます。合計額だけが一致しても、中身が相殺されている場合があるためです。差が出たら、端数処理、地域区分・単価、加算の設定の順に原因を探します。
  4. 国保連への伝送を試験できるかを確かめます。返戻や審査結果を確認する画面がわかりやすいかも見ます。伝送できることだけを確かめて、終わりにしないようにします。返戻が出たときの修正と再請求の流れも見ます。
  5. 現場職員に実際に記録を入力してもらい、入力の手間と画面の見やすさを聞きます。事務担当者だけで評価すると、導入後に記録の入力が負担になることがあります。請求のもとになる実績の入力が遅れる原因になります。

デモの依頼から選定までの進め方は「介護ソフトの比較の進め方」で解説しています。計算をソフトに任せられる範囲は「介護報酬の自動計算」を参照してください。

(参考:厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」)

クラウド型のソフトでも事業所に残る算定要件の確認

運営指導の報酬請求指導では、加算の算定と請求の状況が確認されます。対象は、事業所が届出等で算定している加算です。確認には、基準等に定められた算定要件にかかる文書等が使われます。クラウド型のソフトが加算の金額を計算していても、この点は変わりません。要件を満たしていることを示す記録や書類は、事業所が整えて管理します。

記録や書類をソフトに保管する場合は、比較の項目を1つ加えてください。運営指導で求められた文書を、すぐに出力できるかです。加算ごとの要件と根拠書類の管理は「介護加算の管理台帳」で解説しています。

(参考:厚生労働省「介護保険施設等 運営指導マニュアル」(令和4年3月策定・令和6年7月改訂))

まとめ

クラウド型の介護ソフトは、提供形態を決め、6つの項目で候補を絞ってから試用して選びます。試用では、自施設の過去の請求データで、請求額と加算の反映を確かめます。比較を始める前に、手元に3つをそろえておきます。算定している加算の区分、地域区分、直近1か月の請求内容です。そろえておくと、どの候補も同じ条件で試せます。そのうえで、各社に表の「確かめること」を聞きます。試用で差が出た点は、記録して比べてください。請求の誤りを防げれば、利用者負担額の請求をやり直す事態を避けられます。転記が減った時間は、利用者へのケアに回せます。製品の例は「介護請求ソフトの比較の基準と5製品を調べた表」で紹介しています。

参考