無料のインカムアプリと有料アプリを比べるときは、機能の数より先に、業務での利用が認められているか、職員のアカウントと通話の記録を施設が管理できるかを確かめます。無料アプリの中には、個人や仲間内での利用を想定して提供され、業務向けの機能は別の有料版で提供しているものがあるためです。

インカムの通話では、利用者の名前や体調が日常的に話されます。無料か有料かにかかわらず、施設の個人情報の取扱いに合う使い方ができるかが、業務で使えるかどうかの分かれ目になります。この記事では、無料アプリを業務で使う前の確認項目と、試用から有料アプリへの切り替えまでの進め方を扱います。スマホインカムと専用機の違いは「介護施設のスマホインカム」で解説しています。

無料アプリと有料アプリで違いが出やすい項目

違いが出やすいのは、次の項目です。いずれもアプリや料金プランによって異なるため、利用規約や提供元の説明で1つずつ確かめます。

確認する項目

確かめる内容

業務への影響

利用規約

業務・法人での利用を認めているか

認めていなければ業務に使えない

人数の上限

1グループの人数と同時に話せる人数

勤務中の職員が全員入れるか

アカウントの管理

施設側でIDを発行・停止できるか

退職者や紛失端末を止められるか

通話の記録

録音・履歴の有無と保存先・保存期間

利用者の情報が施設の外に残る

問い合わせ先

障害や不具合を問い合わせる窓口

使えないときに原因を確かめられるか

周辺機器

外付けボタンやイヤホンマイクの対応

介助中に画面を見ずに話せるか

無料アプリでも、この表の項目を満たしていれば業務に使える場合があります。一方、法人向けの有料アプリには、ユーザー(ID)ごとの月額料金に、IDを一括で管理する機能などを含めている製品があります。比べるときは、月額料金の差だけでなく、表の項目のどれが料金に含まれているかを見ます。

利用規約の確認

個人向けに無料で提供されているアプリは、業務での利用を想定していない場合があります。利用規約のうち、利用目的、商用利用、法人での利用に関する条項を読み、介護施設の業務連絡に使ってよいかを確かめます。規約だけでは判断できないときは、提供元に問い合わせ、回答を記録に残しておくと、あとで担当者が替わっても経緯を確かめられます。

職員のアカウントと端末の管理

無料アプリを職員が各自のアカウントで使っていると、退職や異動のときに、施設側でアカウントを止めたり、グループから外したりできないことがあります。職員の私物のスマートフォンで使う場合は、端末の紛失時にどう止めるかも決めておく必要があります。

個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンスは、個人データを扱う情報システムについて、IDやパスワードによる認証と、業務に必要な範囲にだけアクセスできる仕組みを、技術的な安全管理措置の例に挙げています。施設がIDを発行し、退職時に停止できるアプリかどうかは、この点から確かめます。

(参考:個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」7)

通話の記録と個人情報の扱い

通話を録音したり、履歴やテキストとして保存したりできるアプリでは、利用者の名前や状態を含む会話が、提供元のサーバーに残ります。保存先、保存期間、閲覧できる人、削除の方法を確かめ、施設の個人情報の取扱いの決まりと合わせておきます。

保存先が海外にある場合も注意が必要です。同じガイダンスは、外国で個人データを取り扱う場合、外的環境(その国の個人情報の保護に関する制度など)を把握したうえで安全管理措置を講じるよう求めています。海外の事業者が提供するアプリでは、データを保存する国や地域を提供元の説明で確かめます。判断に迷う場合は、施設の個人情報の担当者に相談してください。

(参考:個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」7、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」10-7)

生産性向上推進体制加算を算定する場合の人数

生産性向上推進体制加算でインカム等を使う場合は、同じ時間帯に勤務する全ての介護職員が使うことが要件になっています。インカム等には、マイク付きイヤホンのほか、ビジネス用のチャットツールによる連絡も含まれます。加算を算定する予定があるなら、グループの人数の上限や、職員に配る端末の台数が、勤務中の全員をまかなえるかを確かめます。加算の要件は「生産性向上推進体制加算の要件」で解説しています。

(参考:厚生労働省「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」3)

試用から有料アプリへの切り替えの進め方

無料アプリで試し、業務で続けて使うかどうかを決めるときは、次の順に進めます。

  1. 試す範囲と期間を決める。1つのフロアや1つの勤務帯など、範囲を区切って始めます。よくある失敗は、範囲を決めずに広げ、職員ごとの私物端末にアカウントが散らばることです。
  2. 使い始める前に、利用規約と通話の記録の保存先を確かめる。試用中も利用者の情報は話されます。よくある失敗は、試用だからと確認を後回しにすることです。
  3. 使った場面と困った点を記録する。誰が、どの時間帯に、どんな連絡に使ったかと、人数・電波・操作で困った点を書き留めます。よくある失敗は、感想だけを集めて、何が足りないのか分からなくなることです。
  4. 足りなかった点を条件にして有料アプリを比べる。人数、アカウントの管理、周辺機器などの条件をそろえ、無料試用を受けられる製品は実際の建物と勤務で試します。ナースコールや見守りシステムとつなげたい場合は、対応しているかを製品ごとに確かめます(「介護インカムとナースコール・見守りシステムの連携」を参照)。よくある失敗は、月額料金だけで比べ、必要なID数と使う年数での合計を出さないことです。
  5. 切り替えたら、無料アプリの利用をやめる。職員の端末からアプリとアカウントを削除し、保存された履歴の扱いを決めます。よくある失敗は、無料アプリを残したままにして、連絡が2つのアプリに分かれることです。
製品名特徴料金
Buddycom
公式サイト ↗
スマートフォンをインカムのように使い、音声・映像・位置情報を共有できる。月額Talk Liteプラン:年契約で1ユーザー月額600円、月契約で月額1,000円(税抜)。上位プランあり(30日間無料トライアルあり)
アルインコ インカム/アプリ無線
公式サイト ↗
施設内の職員同士がリアルタイムに通話し、連絡や応援要請を素早く共有できる。買い切り特定小電力トランシーバーなどの機器はオープン価格(販売店で購入)。構成により個別見積

まとめ

無料アプリと有料アプリの違いは、業務での利用の可否、アカウントの管理、通話の記録の扱いに表れやすく、料金の差だけでは判断できません。まずは使いたいアプリの利用規約と、通話の記録の保存先を確かめるところから始めます。そのうえで、範囲を区切って試し、足りなかった点を条件に有料アプリを比べてください。施設がアカウントと記録を管理できるアプリを選べば、職員どうしの連絡を速くしながら、利用者の情報も守りやすくなります。

参考