介護報酬のシミュレーションは、「単位数×1単位の単価」の式に自施設の利用実績を入れて行います。先に、過去月の請求額を式で再現しておきます。そうすると、利用者数の増減や加算の取得で月の報酬がいくら動くかを、根拠のある数字で示せます。この記事では、計算式、試算に必要な情報、試算の手順、計算例を扱います(2026年10月時点)。

なお、2026年6月に処遇改善加算の期中改定がありました。加算率と対象サービスが変わっています。2026年5月以前の実績を使うときは、その月に適用されていた加算率で計算します。

介護報酬の計算式と事業所の収入になる範囲

介護報酬の額は、サービスごとの単位数に1単位の単価を乗じて求めます。1円未満の端数は切り捨てます。1単位の単価は、10円に割合を乗じた額です。割合は、事業所の所在地の地域区分とサービス種類で決まります。「その他」の地域区分では、どのサービスも1単位10円です。地域区分ごとの単価は、「介護報酬の1単位の単価」で一覧にしています。請求額と利用者負担額を出す手順と端数処理は、「介護報酬の計算方法」で解説しています。

試算では、利用者の負担割合にかかわらず、費用の額の全体を報酬として扱います。事業所の収入は、保険給付分と利用者負担分の合計だからです。ただし、居宅サービスには区分支給限度基準額があります。限度額を超えた分は保険給付の対象にならず、全額が利用者負担になります。

(参考:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」、「厚生労働大臣が定める一単位の単価」、介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」)

試算に必要な情報と集め方

試算には、次の4種類の情報を使います。

情報

中身

入手先

事業所の条件

サービス種類・地域区分・定員

体制届などの届出書類の控え

利用実績

利用者ごとの要介護度と利用回数

請求ソフト・記録システム

算定中の加算

加算の種類・単位数・算定回数

請求明細書

単位数と算定要件

現行の単位数表と留意事項通知

厚生労働省の告示・通知

利用者ごとの要介護度と利用回数を一覧で出力できるかは、請求ソフトによって異なります。集計を始める前に、出力できる帳票と項目を確認しておきます。確認先は、請求担当者やソフトの提供元です。手作業の転記を減らせます。請求ソフトで単位数から請求額まで計算する流れは、「介護報酬の自動計算」で扱っています。

単位数表と算定要件は、現行のものを使います。2024年度改定の告示に、2026年6月施行の期中改定を反映したものです。期中改定の告示は、令和8年厚生労働省告示第87号です。

(参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」、「令和8年度介護報酬改定について」)

過去月の請求額の再現から始める試算の手順

試算は、次の順で進めます。

  1. 直近1〜3か月の利用者別データから、利用者ごとの単位数を合計します。基本サービス費と加算・減算の単位数です。月の途中で要介護度が変わった利用者を、前の区分のまま数えないよう注意します。
  2. 合計単位数に1単位の単価を乗じて、月の報酬額を出します。その額を、国保連合会への請求額と比べます。差が出たときは、地域区分の単価、端数処理、加算の漏れの順に確かめます。
  3. 請求額と合ったら、変更点を1つだけ入れて差額を出します。利用者数・要介護度の構成・加算の取得を同時に入れないようにします。どの変更がいくら動かしたのか、分からなくなるためです。
  4. 処遇改善加算のように割合で算定する加算は、ほかの変更をすべて入れたあとで計算します。先に計算すると、加算率を乗じる元の総単位数が変わり、結果がずれます。

手順3では、利用者数の変化と、1人あたりの単位数の変化を分けて見ます。方法は「介護施設の売上の見方」で紹介しています。

処遇改善加算の単位数は、1か月の総単位数に加算率を乗じて求めます。総単位数は、基本サービス費に各種加算・減算を加えたものです。処遇改善加算そのものは除きます。加算率は、加算区分とサービス類型ごとに決まっています。2026年4〜5月と6月以降でも異なります。6月以降は、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援なども対象になりました。処遇改善加算は、区分支給限度基準額の算定対象から除かれます。

また、事業所は、処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善を行う必要があります。収支の試算では、この加算の増収分をそのまま利益とみなしません。賃金改善の費用と対にして見ると、実態に近くなります。加算の増収額は、算定率やコストと合わせて試算します。方法は「介護加算のシミュレーション方法」を参照してください。

実際の入金額は、請求額より少なくなることがあります。国保連合会の審査で、返戻や査定減、保留がある場合です。入金の見通しまで立てるときは、過去月の「介護保険審査決定増減表」を見ます。返戻や査定減がどの程度あったかを確かめておきます。

(参考:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」、国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」)

通所介護の単位数を使った計算例

通所介護の単位数で、計算の流れを示します。通常規模型の事業所で、7時間以上8時間未満の利用とします。要介護3の基本報酬は、1回900単位です。利用者数と利用回数は、仮の値です。単価は「その他」の地域区分の10円です。処遇改善加算は例から除いています。

項目

計算

結果

1人の月の単位数

900単位×月8回

7,200単位

1人の月の報酬

7,200単位×10円

72,000円

同じ条件の20人分の月の報酬

72,000円×20人

1,440,000円

利用者が1人増えたときの差額

72,000円×1人

72,000円の増

サービス提供体制強化加算(Ⅰ)を新たに算定したときの差額

22単位×月8回×20人×10円

35,200円の増

下の2行は、20人分の月の報酬に、変更点を1つだけ入れた差額です。サービス提供体制強化加算(Ⅰ)は、1回につき22単位です。実際の試算では、要介護度や利用回数ごとにこの式を作ります。それぞれの人数を掛けて積み上げます。

(参考:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」別表の6(通所介護費)イ・ニ、「厚生労働大臣が定める一単位の単価」)

まとめ

介護報酬のシミュレーションでは、単位数×1単位の単価の式に自施設の利用実績を入れます。過去月の請求額を再現してから変更点を1つずつ入れると、根拠を説明できる数字になります。

出発点は、請求ソフトから出力できるデータを確かめることです。直近1〜3か月の利用者別の要介護度と利用回数、算定中の加算です。過去月の再現が請求額と合ったら、差額を出します。利用者数の見込みや、取得を検討している加算を入れます。単位数と加算率は、2026年6月以降の告示・通知で確かめます。報酬の見通しが立つと、職員の配置や加算の取得を早めに判断できます。利用者へのサービス提供体制を、安定して保つことにつながります。

参考