介護施設の1か月の売上(収入)は、2つの数字の掛け算に分けられます。延べ利用者数と、利用者1人1日あたり収入です。売上が前年より減ったときは、利用者が減ったのか、1人あたりの収入が下がったのかを先に切り分けます。空床を埋める入所調整を見直すのか、加算の算定や利用料を見直すのかが、これで決まります。

この記事では、2つの数字の中身と、施設種別ごとの平均値、自施設の月次の数字を分解する手順を扱います。平均値は、厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査」(2025年5月調査)の2024年度決算の値です。対象は5つのサービスです。介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院を扱います。特定施設入居者生活介護と、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)も対象です。

売上を分ける式と2つの数字の中身

式は「1か月の売上=延べ利用者数×利用者1人1日あたり収入」です。延べ利用者数は、その月の各日の利用者数を足し合わせた数です。たとえば、70人が30日間利用していれば2,100人になります。利用者1人1日あたり収入は、1か月の収入を延べ利用者数で割った値です。同調査の「利用者1人当たり収入」も、この値に当たります。統計表の収入を延べ利用者数で割ると、一致します。

1人1日あたり収入には、介護報酬による収入と、保険外の利用料による収入の両方が入ります。介護報酬による収入には、利用者の負担分も含まれます。負担は1割で、一定以上所得者は2割または3割です。保険外の利用料は、介護保険施設であれば居住費・食費・日常生活費などです。利用者は、これらを介護サービス費の自己負担とは別に支払います。収入に占める保険外の利用料の割合は、施設の種類で大きく違います。特定施設入居者生活介護では、半分を超えます。種別ごとの内訳は「介護施設の収益構造」で扱っています。

(参考:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」第1〜3表・第11表・第19表、介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」)

介護報酬の部分を決める単位数と1単位の単価

介護報酬の額は、単位数に1単位の単価を掛けて算定します。単価は、事業所の地域区分とサービス種類で決まります。自施設の単価は「介護報酬の1単位の単価」で確かめられます。

単位数は、基本報酬と加算で構成されます。そのため、同じ施設でも、要介護度の構成や算定する加算が変わると、1人1日あたり収入が動きます。単位数から請求額を出す手順は「介護報酬の計算方法」で解説しています。

(参考:厚生労働省「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第21号)、「厚生労働大臣が定める一単位の単価」(平成27年厚生労働省告示第93号)、厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」令和7年7月)

施設種別ごとの延べ利用者数と1人1日あたり収入

同調査の2024年度決算による、1施設あたりの値は次のとおりです。1人1日あたり収入は、新型コロナウイルス感染症関連と物価高騰対策関連の補助金収入を除いた値です。表は、1人1日あたり収入の低い順に並べています。

サービス種別

延べ利用者数(1か月)

1人1日あたり収入

1か月の収入

介護老人福祉施設

2,232.6人

13,012円

約2,905万円

特定施設入居者生活介護

1,548.5人

15,386円

約2,383万円

介護老人保健施設

2,445.7人

15,422円

約3,772万円

認知症対応型共同生活介護

440.9人

15,467円

約682万円

介護医療院

1,751.7人

16,947円

約2,969万円

たとえば介護老人保健施設では、15,422円に延べ利用者数2,445.7人を掛けると約3,772万円です。1か月の収入と一致します。延べ利用者数は、施設の規模によって大きく違います。そのため、他施設と比べるときは、1か月の収入ではなく1人1日あたり収入で比べると分かりやすいでしょう。ただし、平均値には、要介護度の構成、居室の種類、地域区分が異なる施設が混ざっています。自施設の目標値ではなく、同じ種別のおおよその水準として見ます。

同調査は、利用者1人1日あたり支出も公表しています。介護老人保健施設では、収入15,422円に対して支出が15,330円で、差は92円でした。延べ利用者数や1人あたり収入がわずかに動くだけで、収支が変わります。そのため、売上は支出とあわせて確認します。収支差率の見方は「介護施設の利益率(収支差率)の出し方」で扱っています。

(参考:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」第1〜3表・第11表・第19表、「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」)

延べ利用者数と1人1日あたり収入を動かす要素

延べ利用者数は、定員に対して何人が何日利用したかで決まります。退所から次の入所までの空床の日数や、入院・外泊の日数が増えると減ります。定員に対する利用の割合は「介護施設の稼働率の計算式」で詳しく扱っています。

1人1日あたり収入は、基本報酬・加算・保険外の利用料の3つで動きます。基本報酬は、要介護度の構成と居室の種類で変わります。加算は、算定の有無と対象になる利用者の数で変わります。なお、他の単位数の合計に一定の率を掛けて算定する加算もあります。介護職員等処遇改善加算がその例です。基本報酬や他の加算が増減すると、その分も連動して動きます。保険外の利用料は、利用料の設定のほか、居室の種類ごとの利用者の数でも変わります。

自施設の月次の数字の分解手順

毎月、前年同月と比べながら次の順に数字を出します。

  1. その月の延べ利用者数を出します。入院・外泊の日を含めるかどうかは、一度決めたら変えません。月によって数え方が変わると、前年との比較が成り立ちません。
  2. その月の収入を、介護報酬による収入と保険外の利用料に分けます。介護報酬による収入には、利用者負担分も含めます。国保連からの入金額だけを入れると、利用者負担分が抜けて低く出ます。
  3. それぞれを延べ利用者数で割り、1人1日あたりの介護報酬による収入と保険外の利用料を出します。2月など日数が違う月は、1か月の収入より1人1日あたりの値で比べると、差が見やすくなります。
  4. 前年同月との売上の差を、利用者数の変化による分と、1人あたり収入の変化による分に分けます。利用者数による分は、延べ利用者数の増減に前年同月の1人1日あたり収入を掛けた額です。残りが1人あたり収入による分です。2026年6月以降の月は、報酬改定の影響も1人あたり収入による分に入ります。
  5. 1人あたりの介護報酬による収入が動いた月は、請求明細を前年同月と並べます。並べるのは、加算ごとの算定単位数と、要介護度別の延べ利用者数です。集計は、請求した月ではなくサービスを提供した月で行います。返戻や月遅れ請求の分が混ざると、比較がずれるためです。

利用者数による分が大きければ、入退所の調整や入院中の空床の扱いを見直します。1人あたり収入による分が大きければ、原因を確かめます。要介護度の構成の変化か、加算の算定漏れや算定要件の変化かです。自施設のデータで報酬を試算する方法は「介護報酬シミュレーションのやり方」で紹介しています。

まとめ

介護施設の売上は、延べ利用者数と利用者1人1日あたり収入に分けて見ます。増減の原因が、利用者数にあるのか1人あたりの収入にあるのかを切り分けられます。出発点は、月次の数字を前年同月と同じ基準でそろえることです。延べ利用者数と、介護報酬による収入・保険外の利用料それぞれの1人1日あたりの値をそろえます。まず、直近の月と前年同月の数字を並べて、売上の差を2つに分けます。差の大きいほうから原因を確かめてください。原因を早くつかめれば、手を遅れずに打てます。空床の期間を短くして、入所を待つ人を受け入れられます。利用者の状態に合った加算の体制も整えられます。

参考