介護報酬の金額は、単位数の合計に1単位の単価を掛けて決まります。途中の端数処理の方法も、通知で定められています。そのため、決まったルールに沿った計算は請求ソフトに任せられます。ただし、計算のもとになる情報は、事業所が登録します。どの加算・減算を算定するか、事業所の地域区分、どのサービスをいつ提供したかです。

登録が届出や記録と食い違うと、ソフトが正しく計算しても請求額は誤ったものになります。返戻や過誤調整で、利用者負担額の返金や再請求が必要になることもあります。この記事では、計算ルールの要点と、ソフトに任せられる範囲を扱います。事業所で確認する設定、報酬改定のときの更新、手計算との突き合わせ方も整理します。加算の自動計算で確かめる点も、あわせて扱います(2026年10月時点)。

自動計算の前提になる計算ルール

介護報酬は、サービスごとに算定した単位数に、1単位の単価を掛けて算定します。単価は、サービス別・地域別に10円から11.40円の範囲で設定されています。単位数は、基本部分に加算・減算を組み合わせて決まります。

端数処理は、留意事項通知(老企第36号)で定められています。割合で定められた加算・減算は、割合を掛けるたびに小数点以下を四捨五入します。整数にしてから、次の割合を掛けます。一方、特別地域加算などの一部の加算・減算は、対象となる単位数の合計に割合を掛けます。介護職員等処遇改善加算も、1か月の総単位数に加算率を掛けて算定します。単位数を金額に換算するときに生じる1円未満の端数は、切り捨てます。計算の例と、保険請求額・利用者負担額への分け方は、「介護報酬の計算方法」で解説しています。

(参考:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第262回 資料3「地域区分」、老企第36号 第2の1⑴、厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」2⑴)

請求ソフトに任せられる計算と事業所が決める入力

計算の段階ごとに、ソフトが自動で行うことと、事業所が決めて入力することを分けます。

計算の段階

ソフトが自動で行うこと

事業所が決めて入力すること

基本部分の単位数

サービスコードに応じた単位数の当てはめ

提供したサービスの種類と時間区分

加算・減算

割合の計算と四捨五入

届け出た加算の区分と該当する減算

1単位の単価

地域区分に応じた単価の掛け算

事業所所在地の地域区分

金額への換算

1円未満の切り捨て

なし

ソフトに任せられるのは、入力された内容をルールどおりに計算する部分です。算定してよい加算かどうかを、ソフトは判断できません。実際に提供したサービスが何だったかも同じです。そのため、右の列は事業所が届出や記録と照らして確かめます。なお、ソフトが使う単位数やサービスコードのマスタも、事業所で確かめる点です。改定後の内容になっているかを見ます(「報酬改定のときのソフトの更新」の節を参照)。

加算の自動計算でも、線引きは同じです。ソフトは、登録された区分にもとづいて加算の単位数を計算します。人員配置や研修、計画書の作成といった算定要件を満たしているかは、判断しません。要件を示す記録は、事業所が日ごろから整えておきます。

加算の自動計算では、区分支給限度基準額の管理も確かめます。加算の中には、限度額の管理の対象から外れるものがあるためです。介護職員等処遇改善加算は、区分支給限度基準額の算定対象から除外されています。訪問介護では、特別地域訪問介護加算と、中山間地域等に関する2つの加算も対象外です。対象外の項目は、算定構造にサービスごとに示されています。自事業所のサービスの算定構造で、対象外の加算を確かめてください。そのうえで、ソフトがこれらを除いて限度額を管理しているかを見ます。

(参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、同「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」2⑴)

事業所で確認する設定と入力

1単位の単価は、ソフトに登録した事業所所在地の地域区分とサービス種類で決まります。地域区分の登録を誤ると、その事業所のすべての利用者の請求額と自己負担額がずれます。確かめる時期は、ソフトの導入時と、級地が変わるときです。級地は、事業所の移転や報酬改定で変わります。届け出た地域区分とソフトの設定が一致しているかを確かめてください。確かめる手順は、「介護報酬の1単位の単価」で解説しています。

加算・減算の登録と毎月の実績の入力は、次の順に確かめます。手順ごとに、よくある失敗を添えています。

  1. 加算の体制の登録:ソフトに登録した加算と区分が、届け出た内容と一致しているかを確かめます。届出先は、都道府県や市町村です。区分を変更した加算を、前の設定のまま残さないようにします。届出を取り下げた加算も同じです。
  2. 減算の登録:事業所に当てはまる減算が、ソフトに登録されているかを確かめます。高齢者虐待防止措置未実施減算や、業務継続計画未策定減算などです。加算の登録だけを確かめて、減算の確認を省かないようにします。
  3. 毎月の実績の入力:サービス提供記録どおりのサービスコードで、実績を確定させます。時間区分などが記録と合っているかを見ます。予定の内容のまま実績を確定しないようにします。

届出済みの加算が毎月の請求に載っているかは、請求の前に点検します。点検の手順は、「介護報酬の算定漏れチェック」で解説しています。未届出の加算や上位の区分の探し方は、「介護加算の取りこぼしの見つけ方」で扱っています。

国保連合会は、請求明細書を2つの台帳と突き合わせます。都道府県や市町村から送られる事業所台帳と、保険者が登録する受給者台帳です。事業所台帳には、届け出た加算の体制などが入っています。一致しないものは、返戻(保留)になります。また、運営指導では、算定している単位数が実際のサービスに相応したものかも確認されます。提供したサービスと異なる基本単位数での請求は、不正請求に当たる可能性があるとされています。減算すべきところを減算しない請求も同じです。ソフトの計算結果は、サービス提供記録と突き合わせられる状態にしておきます。指導を受けるときに説明しやすくなります。利用者やご家族に請求額の内訳を示すときにも役立ちます。

(参考:国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き」、厚生労働省「介護保険施設等 運営指導マニュアル」)

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報酬改定のときのソフトの更新

報酬改定では、単位数やサービスコードが変わります。厚生労働省は、改定に合わせてサービスコード表などを示しています。「介護保険事務処理システム変更に係る参考資料」です。2026年6月の改定分は、2026年5月25日に確定版が出ています。請求ソフトのマスタがいつ改定後の内容に更新されるかは、提供元に確かめておきます。

厚生労働省の「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」は、価格面の確認事項を挙げています。その1つが、介護報酬改定やその他のアップグレードの際の追加料金です。ソフトを選ぶときや契約を更新するときは、次の2点を確かめます。改定時の更新が料金に含まれるかと、更新が施行月の請求に間に合うかです。比較の基準は、「介護請求ソフトの比較の基準」で解説しています。請求ソフトが対応する処理は、「介護請求ソフトとは」で確かめられます。

(参考:厚生労働省「介護保険事務処理システム変更に係る参考資料(確定版)」、厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」)

導入前と改定後の手計算との突き合わせ

ソフトの計算が自事業所の請求と合っているかは、実際の請求月の数字で確かめます。ポイント集も、デモンストレーションや試用への対応を、選定時の確認事項に挙げています。試用のときは、次の順に確かめます。改定後は、手順2からを更新後のソフトで行います。

  1. 事業所の体制(加算の区分)を登録し、請求明細に加算が自動で付くかを確かめます。付かない加算があれば、手入力の手順も確かめます。届出が受理される前の月から体制を登録しないようにします。
  2. 過去1か月分の実績を、ソフトに入力します。割合で算定する加算がある利用者を含めます。加算のない利用者だけで試すと、四捨五入の順番の誤りが見つかりません。
  3. ソフトの計算結果を、実際に請求した額や手計算の結果と、利用者ごとに比べます。事業所全体の合計だけで比べると、見落としが出ます。利用者ごとの差が打ち消し合うためです。
  4. 差が出たときは、次の順に見て原因を絞ります。端数処理の順番、地域区分と単価の設定、割合で算定する加算の扱いです。加算の扱いは、1回ごとに掛けるか、月の合計に掛けるかを見ます。
  5. 原因がソフトの設定やマスタにあると分かったら、ずれた段階を控えて提供元に問い合わせます。ソフトの設定を直さずに、請求額だけを手作業で修正しないようにします。
  6. 区分支給限度基準額の管理で、対象外の加算が除かれているかを確かめます。請求する単位数の合計と、限度額の管理に使う単位数を、同じものと考えないようにします。
  7. 要件に関わる情報を記録として残し、必要なときに出力できるかを確かめます。LIFEへの提出や、計画書の作成日などです。ソフトに記録があることと、要件を満たしていることは別です。記録の中身は、事業所で点検します。

計算が一致したら、国保連合会への伝送の試験に進みます。

(参考:厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」)

まとめ

介護報酬の計算ルールは、告示と通知で決まっています。そのため、単位数の計算から金額への換算までは請求ソフトに任せられます。一方、ソフトが使う加算の体制・地域区分・実績は、事業所が登録します。届出と記録に合わせて登録することが前提です。確認の出発点は、ソフトに登録した加算と減算が、届け出た内容と一致しているかです。次に、過去1か月分の実績をソフトに入力します。利用者ごとに、手計算の結果と突き合わせてみてください。

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参考