介護ICTは、情報通信の技術を使って介護の業務を支える機器やソフトの総称です。介護ソフト、タブレット端末、通信環境、インカムなどが含まれます。支える業務は、介護の記録、職員間の情報共有、請求などです。国の資料では、介護ロボットとICTをまとめて「介護テクノロジー」と呼ぶようになりました。補助金も、この呼び方で案内されています。

導入の目的は、機器を入れることそのものではありません。国の補助事業は、業務の改善や効率化で職員の負担を軽くすることを掲げています。生まれた時間を利用者への直接のケアに充てて、サービスの質を上げるためです。この記事では、介護ICTに含まれる機器とソフト、「介護テクノロジー」との関係を扱います。導入の順番の決め方、補助金と加算の確認先も整理します(2026年10月時点)。

介護ICTに含まれる機器とソフト

厚生労働省は、「介護テクノロジー導入支援事業」の資料で、ICTの補助対象を挙げています。介護ソフト、タブレット端末、インカム、クラウドサービス、バックオフィスソフトなどです。次の表は、これらに、事業所の外とデータをやり取りする国の仕組みを加えて整理したものです。

種類

支える業務

くわしい記事

介護ソフト

介護記録、計画の作成、介護報酬の請求

介護ソフトの基本機能

タブレット端末・スマートフォン・通信環境

居室や訪問先など、その場での記録の入力と確認

見守りシステムと通信環境

インカム

職員どうしの連絡と応援の依頼

インカム導入の目的

見守り機器・見守りシステム

利用者の状態の検知と職員への通知

見守りシステムとは

シフト作成・勤怠などのバックオフィスのソフト

勤務表の作成、出退勤の集計

シフト管理システムの選び方

ケアプランデータ連携システム

居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間の、予定と実績の受け渡し

ケアプランデータ連携システムとは

LIFE(科学的介護情報システム)

利用者の状態やケアの内容のデータの提出と、フィードバックの活用

科学的介護とは

表の上の5つは、事業所が選んで導入するものです。下の2つは、国が用意している仕組みです。下の2つは、対応した介護ソフトがあってはじめて使えます。介護ソフトを選ぶときに、ケアプランデータ連携とLIFEへの対応を先に確かめてください。あとからの入れ替えを避けられます。

なお、見守り機器は、補助金の区分では「介護ロボット」に入ります。同じ機器でも、制度によって区分の呼び方が違います。申請のときは、機器の名前ではなく、制度の資料にある区分で確かめます。

(参考:厚生労働省「介護テクノロジー導入・定着支援事業」)

介護テクノロジーとの関係

国は2024年6月に、「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改めました。新しい名前は「介護テクノロジー利用の重点分野」です。ICTやデータの活用が進んだことを踏まえた見直しで、2025年4月から運用されています。重点分野は、次の9分野16項目です。

  • 移乗支援
  • 移動支援
  • 排泄支援
  • 見守り・コミュニケーション
  • 入浴支援
  • 介護業務支援
  • 機能訓練支援
  • 食事・栄養管理支援
  • 認知症生活支援・認知症ケア支援

このうち「介護業務支援」は、介護ソフトなどのICTと重なる分野です。定義は、介護業務に伴う情報を集めて蓄え、活用できる機器・システムとされています。活用の例は、記録、職員間のコミュニケーション、ケア計画の作成などです。

補助金の対象になる介護ロボットは、この重点分野に当てはまる機器とされています。導入を考えている機器がどの分野に入るかを、販売元に確かめておいてください。申請の準備が進めやすくなります。

(参考:厚生労働省「「介護テクノロジー利用の重点分野」について」、厚生労働省「介護テクノロジー利用の重点分野」の定義)

導入の順番の決め方

どれから導入するかは、いちばん時間を取られている業務から決めます。次の順に進めると、選ぶ理由を職員に説明しやすくなります。

  1. 業務ごとにかかっている時間を書き出します。記録、申し送り、請求、勤務表の作成などに分けます。誰がどれくらいの時間を使っているかを記録します。感覚だけで決めると、困っている人の声が大きい業務に偏りやすくなります。
  2. 時間のかかっている業務に合う種類を、上の表から選びます。記録と請求なら介護ソフト、連絡の行き違いならインカムが候補です。夜間の巡回なら、見守り機器が候補になります。1度に複数を入れると、どれが効いたのか分からなくなります。
  3. 今ある機器やソフトとつながるかを確かめます。見守り機器の通知を、インカムや介護ソフトで受けられるかを販売元に確認します。介護ソフトがケアプランデータ連携とLIFEに対応しているかも確認します。つながらないと、同じ内容を2回入力する作業が残ります。
  4. 通信環境を確かめます。居室や浴室、訪問先で電波が届くかを、導入の前に実際の場所で試します。通信が途切れる場所があると、その場で入力できません。あとからまとめて入力する作業が残ります。
  5. 1つのフロアや1つの事業所で試します。導入の前後で、手順1で書き出した時間を比べます。効果を記録しておくと、補助金の報告や、次の機器を選ぶときの材料になります。

どの分野から見直すか迷うときは、「DX自己診断」も使えます。8つの質問に答えると、見直す分野の目安が分かります。

補助金と加算の確認先

介護ICTの導入費用には、都道府県の補助金を使える場合があります。介護テクノロジーの導入を支援する補助金です。国の資料では、業務改善の計画を出して効果を報告することが要件に挙げられています。第三者による業務改善の支援を受けることなども、要件です。

募集の時期、補助率、上限額、要件は、都道府県ごとに違います。交付が決まる前に契約や購入をすると、対象外になる場合があります。見積もりを取る段階で、都道府県のページを確かめてください。制度の見分け方は「介護テクノロジー導入支援事業と補助金・助成金」で解説しています。都道府県ごとの受付状況は「助成金・補助金 検索」で確認できます。

介護報酬では、2024年度の改定で、生産性向上の取組を評価する加算が設けられました。デジタル技術などを活用した、継続的な取組が対象です。要件は「生産性向上推進体制加算の要件」で解説しています。補助金と加算のどちらも、導入の前後の効果を記録していることが前提になります。前の節の手順1と手順5の記録が、申請と算定の準備になります。

(参考:厚生労働省「介護テクノロジー導入・定着支援事業」、厚生労働省 老健局高齢者支援課「介護現場の生産性向上とケアプランデータ連携システム」)

まとめ

介護ICTは、記録・情報共有・請求を支える機器やソフトの総称です。国の制度では、介護ロボットと合わせて「介護テクノロジー」として扱われています。導入は、業務ごとにかかっている時間を書き出すところから始めます。いちばん時間のかかっている業務に合う種類を、1つ選んでください。そのうえで、今ある機器やソフトとつながるかを確かめます。使える補助金の募集の時期も、あわせて確かめてください。

参考