介護施設の収入は、介護料収入・保険外の利用料・補助金の3つに、費用は給与費・減価償却費・その他(委託費など)の3つに分けると整理できます。ただし、収入に占める介護報酬の割合も、費用に占める給与費の割合も、サービス種別によって大きく違います。自施設の数字を他施設と比べるときは、種別をそろえないと判断を誤ります。

この記事では、厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査」(2025年5月調査)の2024年度決算の数値で、介護老人福祉施設(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院・特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の収入と費用の内訳を示します。そのうえで、自施設の決算を同じ区分に分けて比べる手順を説明します。2026年9月時点で結果が公表されている最新の調査です。

収入を構成する3つの区分

同調査は、介護サービスの収入額を、介護報酬による収入(利用者負担分を含む)、保険外の利用料による収入、補助金収入(物価高騰対策関連補助金を除く)の合計としています。介護料収入には、利用者が支払う1割(一定以上所得者は2割または3割)の自己負担分も含まれます。一方、介護保険施設の利用者は、この自己負担のほかに居住費・食費・日常生活費も負担します。調査票でも、食費・居住費・管理費などの収入は「保険外の利用料による収入」の欄に記入する形になっています。

(参考:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」、同調査の調査票(介護老人福祉施設)、介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」)

収入に占める介護料収入と保険外の利用料の割合

2024年度決算の1施設あたり1か月の収入と、そのうち介護料収入・保険外の利用料が占める割合は次のとおりです。割合は、統計表の千円/月の値から算出しました。

サービス種別

1か月の収入

介護料収入の割合

保険外の利用料の割合

介護医療院

約2,969万円

88.4%

11.5%

介護老人保健施設

約3,772万円

84.2%

15.6%

介護老人福祉施設

約2,905万円

78.2%

20.7%

認知症対応型共同生活介護

約682万円

72.9%

26.2%

特定施設入居者生活介護

約2,383万円

46.3%

53.3%

補助金収入は、どの種別でも収入の0.2〜1.1%でした。特定施設入居者生活介護では、保険外の利用料が介護料収入を上回っています。収入のうち介護報酬に連動する部分の大きさが種別で違うため、報酬改定や稼働率の変化が収入に与える影響も種別で変わります。他施設の数字を参考にするときは、まず自施設と同じ種別の行を見るとよいでしょう。

(参考:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」第1〜3表・第11表・第19表)

費用の内訳と給与費の割合

同調査の費用(介護事業費用)は、給与費・減価償却費・その他(委託費を含む)に分かれます。2024年度決算で、収入に対する割合は次のとおりです。

サービス種別

給与費

減価償却費

その他(うち委託費)

介護医療院

60.4%

4.7%

31.2%(7.6%)

介護老人保健施設

64.3%

4.0%

30.9%(9.5%)

介護老人福祉施設

63.5%

8.3%

29.1%(7.7%)

認知症対応型共同生活介護

63.5%

3.5%

25.6%(3.7%)

特定施設入居者生活介護

43.6%

3.6%

39.8%(11.3%)

給与費はどの種別でも費用の中で最も大きな区分で、特定施設入居者生活介護を除く4種別では収入の6割を超えています。特定施設入居者生活介護は、給与費の割合が低い一方、その他と委託費の割合が高くなっています。また、社会福祉法人の施設では、施設整備の補助金に対応する「国庫補助金等特別積立金取崩額」が費用から差し引かれています(介護老人福祉施設では収入の約3.1%)。そのため、3区分の割合を足しても費用全体の割合とは一致しません。給与費の割合の読み方は「介護施設の人件費率(給与費割合)」で詳しく扱っています。

支出は、この介護事業費用に借入金利息と本部費繰入を加えたものです。収入との差を収入で割った収支差率(税引前・物価高騰対策関連補助金を除く)は、介護老人福祉施設1.4%、介護老人保健施設0.6%、介護医療院3.5%、特定施設入居者生活介護5.3%、認知症対応型共同生活介護4.9%でした。収支差率の出し方は「介護施設の利益率は収支差率で確認」を参照してください。

(参考:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」第1〜3表・第11表・第19表、「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」)

自施設の決算を同じ区分で並べる手順

直近1年度の決算(または月次の損益)から、次の順に数字を出します。

  1. 比べるサービス種別を1つに決め、その種別の収入と費用を取り出します。拠点の決算に併設の短期入所生活介護や通所介護が含まれたままだと、割合がずれます。
  2. 収入を介護料収入・保険外の利用料・補助金に分け、収入合計に対する割合を出します。利用者の自己負担分は介護料収入に含めます。物価高騰対策関連の補助金は、調査の収入から除かれているので、別にしておきます。
  3. 費用を給与費・減価償却費・その他に分け、委託費は別に出して、それぞれ収入に対する割合を出します。給食や清掃を委託している施設は、その分の人件費が委託費に入るため、給与費だけで比べると低く見えます。
  4. 借入金利息と本部費繰入を加えて支出を出し、収支差率を計算します。同調査は本部費繰入を支出に含めているため、本部費を配賦していない決算のまま比べると、自施設の収支差率が高く出ます。
  5. 同じ種別の調査の数値と並べ、差が大きい区分に絞って原因を調べます。収入の差が大きいときは、延べ利用者数と利用者1人1日あたり収入に分けると原因を絞りやすくなります(「介護施設の売上の分け方」を参照)。費用側の確認項目は「介護施設が赤字になる原因の探し方」にまとめています。

調査の科目と自施設の会計科目は、範囲が一致しないことがあります。例えば調査票では、社会福祉法人会計基準の施設は派遣職員費を人件費の内数として、指定介護老人福祉施設等会計処理等取扱指導指針の施設は派遣委託費を委託費として記入する形になっており、会計基準によって派遣の費用が入る区分が違います。派遣費や本部費をどの区分に入れるかは比べる前に決め、毎年同じ扱いにしておきます。

(参考:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」、同調査の調査票(介護老人福祉施設))

まとめ

介護施設の収入と費用の構成は、特養・老健・介護医療院・特定施設・グループホームで大きく違い、特定施設では保険外の利用料が収入の半分を超え、その他の4種別では給与費が収入の6割を超えています。自施設の数字を見るときは、同じ種別の数値と、同じ区分・同じ科目の範囲で並べることが出発点です。まず直近の決算を収入3区分・費用3区分に分けて割合を出し、差が大きい区分から原因を確かめてください。見る数字を決めて改善を進める手順は「介護施設が赤字になる原因の探し方」で紹介しています。収支の構造を把握しておくと、報酬改定や物価の変化があったときに、利用者へのサービスを保ちながらどこを見直すかを早く判断できます。

参考