介護施設の稼働率は、一般に「定員に対して実際に何人が利用したか」の割合で、月単位では延べ利用者数を「定員×日数」で割って求めます。介護報酬は利用した日数や回数に応じて請求するため、稼働率は収入に直結する数字です。ただし、分子や分母の取り方に決まった定義はなく、式の決め方しだいで数字が変わります。

この記事では、入所系と通所系の計算式、全国の利用率と比べるときの注意点、定員を超えたときの扱い、稼働率を上げるための空床の記録のしかたを紹介します。

入所系と通所系の計算式

稼働率を月単位で見るときは、1日ごとの利用者数を合計した「延べ利用者数(人日)」を使います。月末の人数だけで見ると、月の途中の空床が数字に表れないためです。

区分

稼働率の計算式

入所系(特養・老健など)

延べ入所者数÷(定員×月の暦日数)

通所系(通所介護など)

延べ利用者数÷(定員×月の営業日数)

ある1日の稼働率

その日の在所者数÷定員

たとえば定員50人の施設で、30日の月に延べ入所者数が1,410人日なら、稼働率は1,410÷1,500で94%です。

式を決めるときに迷いやすいのは、分子に何を含めるかです。空床を利用して短期入所(ショートステイ)を受け入れている場合は、短期入所の利用者を含めるかどうかで数字が変わります。また、介護報酬の算定では原則として入所した日と退所した日の両方を日数に含めますが、後で述べる定員超過の判定に使う平均入所者数は、入所した日を含み、退所した日を含めない数え方です。どちらに合わせるかを決め、毎月同じ式で計算すると、月ごとの比較ができます。

(参考:老企第40号 第2の1(2))

全国の利用率と比べるときの注意点

厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」は、介護保険施設の利用率を、定員に対する9月末の在所者数の割合として公表しています。

施設の種類

利用率(2024年9月末)

1施設当たり定員

1施設当たり在所者数

介護老人福祉施設

94.5%

70.4人

66.5人

介護老人保健施設

88.2%

87.0人

76.7人

介護医療院

91.1%

58.2人

53.0人

前年(2023年)の利用率は、介護老人福祉施設94.4%、介護老人保健施設87.6%、介護医療院91.2%で、大きな変化はありません。

この利用率は9月末の1日時点の値で、月間の延べ人数で見た稼働率とは別の数字です。自施設の数字と並べるときは、自施設の9月末の在所者数を定員で割って計算し直すと、同じ条件で比べられます。なお、この調査の利用率は介護保険施設だけが対象で、グループホームや通所介護の数字はありません。

(参考:厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」結果の概要 表3)

定員を超えたときの扱い

稼働率は高いほどよいとは限りません。介護保険施設や通所介護などでは、1か月の平均利用者数が運営規程の定員を超えると、定員超過利用として、翌月から解消した月まで、利用者全員の所定単位数が100分の70で算定されます。特養には、市町村の措置による入所や、入院していた入所者が予定より早く戻った場合など、やむを得ない場合の例外があります。

入所系の平均入所者数は、その月の延べ入所者数を暦日数で割り、小数点以下を切り上げて求めます。切り上げるため、延べ入所者数が「定員×暦日数」を1人日でも超えると、平均が定員を超えます。通所介護では、サービス提供日ごとに同時にサービスを受けた人数の最大値を合計し、サービス提供日数で割って求めます。なお、特養の空床を利用する短期入所は、特養の入所者と合わせて入所定員と比べます。

入所の調整では、月の途中で延べ入所者数と「定員×暦日数」の差を確かめておくと、定員超過を防げます。減算の例外にあたるかどうかの判断は、指定権者(都道府県・市町村)に確認してください。

(参考:厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法(平成12年厚生省告示第27号)、老企第40号 第2の1(3)、老企第36号 第2の7(24))

稼働率と収入の関係

月間の収入の増減は、おおむね「延べ利用者数の増減(人日)×利用者1人1日あたり収入」で見積もれます。自施設の1人1日あたり収入は、月間の収入を延べ利用者数で割って出します。実際の収入は要介護度や加算の算定状況で変わるため、全国平均ではなく自施設の数字を使います。

参考までに、厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」では、介護老人保健施設の2024年度決算の利用者1人当たり収入は1日15,422円、1施設当たりの延べ利用者数は月2,445.7人でした。この収入には、保険外の利用料なども含まれます。

売上を延べ利用者数と1人1日あたり収入に分けて確かめる方法は、「介護施設の売上の見方|延べ利用者数と1人1日あたり収入の分解と施設別の平均」で解説しています。収支が赤字の場合の原因の切り分けは、「介護施設が赤字になる原因の探し方」を参照してください。

(参考:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」統計表 第2表)

空床の理由別記録の手順

稼働率の数字だけでは、何を変えればよいかが決まりません。空床日数を理由別に分けて記録すると、どこで時間がかかっているかが見えてきます。

  1. 稼働率の式を決める。分子に短期入所や入院・外泊中の人を含めるか、入所日と退所日をどう数えるかを決めて書き残す。よくある失敗は、担当者や月によって数え方が変わることです。
  2. 毎月、延べ入所者数(延べ利用者数)から稼働率と平均入所者数を計算する。よくある失敗は、月末の人数だけを見て、月の途中の空床を見落とすことです。
  3. 空床日数を理由別に記録する。入所系は「退所から次の入所まで(連絡・判定・部屋の準備を含む)」「入院・外泊」に分け、待機者の人数と、すぐに入所できる状態の人数もあわせて控える。通所系は、曜日別・時間帯別に利用者数と定員の差を記録する。よくある失敗は、空床の合計日数だけを記録し、理由を残さないことです。
  4. 直近3か月分を振り返り、退所から次の入所までの日数が長い場合は、連絡・判定・部屋の準備のどこで時間がかかっているかを担当者と確認する。よくある失敗は、日数の合計だけを見て、どの工程で止まっているかを確かめないことです。

退所から次の入所までの日数を縮めることは、施設の収入だけでなく、入所を待っている方が早く入所できることにもつながります。

まとめ

介護施設の稼働率は、延べ利用者数を「定員×日数」で割って求め、式の決め方で数字が変わる指標です。まず、分子に含める範囲と日の数え方を決め、毎月同じ式で計算してください。そのうえで、空床を理由別に記録して、退所から次の入所までのどこで時間がかかっているかを確かめ、定員を超えない範囲で入所を調整します。

稼働率をほかの経営指標と合わせて見る方法は、「介護施設が赤字になる原因の探し方」で紹介しています。

参考