人手不足を補うために派遣職員や人材紹介会社を利用した結果、採用コストが膨らんでいませんか。
令和6年度は、介護事業所の65.2%が従業員不足を感じています。外部サービスは必要な選択肢ですが、利用目的や期間が曖昧なままでは、支払いが長期化しかねません(参考:介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」)。
本記事では、派遣費や人材紹介料が増えたときに確認したい5つのポイントを解説します。
派遣費と 人材 紹介料の 違い
まず、派遣と人材紹介の違いを整理しておきましょう。
派遣職員は派遣会社に雇用され、介護施設は働いた時間などに応じて派遣料金を支払います。
一方で、人材紹介では、紹介会社から候補者の紹介を受けて施設が直接雇用します。採用が決まった際に紹介手数料を支払うのが一般的です。
- 派遣:利用人数、勤務時間、利用期間、配置先
- 人材紹介:採用数、紹介手数料、採用後の定着率、返金条件
- 求人広告:掲載費、応募数、面接数、入職数
すべてを「採用にかかった費用」として一括管理すると、どこから見直せばよいか分かりにくくなります。まずは費用の種類を分けて集計しましょう。
1. 派遣費・ 人材 紹介料が 毎月いくらか 説明できるか
最初のポイントは、派遣会社や人材紹介会社への支払額を、担当者がすぐに説明できる状態になっているかです。
令和6年度決算で派遣委託費を計上していた事業所を見ると、1施設あたりの月額平均は、特別養護老人ホームで92万2,000円、介護老人保健施設で94万5,000円でした。
特別養護老人ホームでは、派遣委託費が収入の3.0%、給与費の4.9%に相当します。ただし、これは派遣費を計上した事業所だけの平均であり、すべての施設の平均ではありません。厚生労働省「派遣委託費の状況」
自施設では、次の項目を月ごとに記録しましょう。
- 派遣会社ごとの請求額
- 派遣職員の人数と勤務時間
- 人材紹介会社への手数料
- 求人サイトの掲載費
- 採用担当者が使った時間
- 入職後の研修や教育にかかった時間
直接雇用と派遣を比較する際は、派遣料金と基本給だけを比べないことが大切です。
直接雇用では、給与のほかに社会保険料の事業主負担、賞与、採用費、研修費などがかかります。比較する場合は、これらを含めた総額で考えます。
まずは3~6か月分を集計し、次のように増減理由を記録しましょう。
- 退職者が出たため派遣費が増えた
- 夜勤回数の増加で派遣時間が増えた
- 紹介会社経由の採用が2人決まり、紹介料が発生した
- 直接応募が増え、紹介料が減った
金額だけでなく、増えた理由まで記録すると、対策を決めやすくなります。
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介護2. 一時的な 派遣 利用が 長期化していないか
派遣職員は、急な退職、産休・育休、長期欠勤、新規事業所の開設など、一時的な人員不足を補う場面で役立ちます。
一方、同じ部署、職種、勤務帯で派遣利用が続いている場合は、一時的な不足ではなく、採用やシフトの問題が固定化している可能性があります。
派遣職員ごとに、次の項目を確認しましょう。
- 派遣を利用し始めた理由
- 利用開始日
- 終了予定日
- 配置している部署と勤務帯
- 直接雇用へ切り替える予定
- 派遣利用を終了できない理由
- 後任採用の担当者と期限
例えば、「夜勤だけ派遣職員が必要」という場合は、施設全体の人数ではなく、夜勤可能な職員の不足が問題です。
この状態で、日勤を中心とした通常の常勤求人を繰り返しても、夜勤の不足は解消できません。
次のように、必要な勤務帯に合わせて募集条件を組み直す方法があります。
- 夜勤専従で募集する
- 月2~4回だけ夜勤ができる人を募集する
- 曜日固定の勤務を認める
- 短時間勤務者と常勤職員を組み合わせる
- 既存職員の夜勤回数と希望を確認する
ただし、派遣を急に減らして、人員配置や利用者の安全に影響を与えてはいけません。
派遣利用を「継続する部分」「直接雇用へ切り替える部分」「シフト変更で対応する部分」に分け、終了予定を決めましょう。
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介護3. 紹介 会社 経由の 採用者が 定着しているか
厚生労働省が公表した令和5年度実績では、介護職の職業紹介1件あたりの平均手数料は全国で55万1,000円でした。実際の金額は、地域、紹介会社、採用する人の年収などによって異なります。厚生労働省「地域ブロック別の職種別平均手数料」
紹介会社経由で採用しても短期間で退職すると、再び紹介手数料や教育費が発生します。
採用人数だけでなく、次の数字を紹介会社ごとに確認しましょう。
- 入職30日後の在籍人数
- 入職90日後の在籍人数
- 入職6か月後の在籍人数
- 退職理由
- 紹介手数料の総額
- 返戻金の金額
返戻金とは、紹介された職員が早期退職した場合に、紹介会社が手数料の一部を返す仕組みです。
厚生労働省の調査では、早期退職が発生した介護事業者の83.7%が返戻金を受け取っていました。ただし、紹介手数料の25%未満だった事業者が40.7%を占めています。返金があるからといって、採用や教育にかかった損失がすべて戻るとは限りません。厚生労働省「早期離職発生時の返戻金」
紹介会社と契約する前に、次の内容を書面で確認しましょう。
- 何日以内の退職が返金対象か
- 在籍期間ごとの返金率
- 返金対象外になる条件
- 返金の申請期限と必要書類
- 採用辞退や入職延期の扱い
- 直接連絡や再雇用に関する違約金
令和7年4月からは、職業紹介事業者に紹介手数料率の実績公開や、違約金に関するルールの事前明示が求められています。契約書だけでなく、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」でも実績を確認できます。厚生労働省「雇用仲介事業者への新たなルール」
紹介会社を比べる場合は、手数料の安さだけでなく、施設への理解、紹介者への説明、入職後の定着状況まで確認することが大切です。
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採用4. 直接 応募がどの 段階で 止まっているか
紹介会社を使う理由が「直接募集では応募が来ないから」であれば、応募から入職までの流れを数字で確認しましょう。
記録するのは、次の項目です。
- 求人を見た人数
- 応募人数
- 面接を設定した人数
- 実際に面接した人数
- 内定人数
- 入職人数
- 入職90日後の在籍人数
求人を多く見られているのに応募が少ない場合は、給与、勤務時間、仕事内容の伝え方に問題がある可能性があります。
応募後に面接へ進まない場合は、連絡が遅い、電話がつながりにくい、面接候補日が少ないといった原因が考えられます。
内定辞退が多い場合は、競合施設との条件差や、面接での説明内容を確認します。
令和6年度の介護労働実態調査では、各募集方法を利用した事業所のうち「採用に効果があった」と回答した割合は、次のとおりでした。
- 職員からの友人・知人紹介:46.0%
- 有料人材紹介:45.2%
- 民間求人サイト:41.1%
- ハローワーク・福祉人材センター:40.1%
紹介会社を使わないことを目標にする必要はありません。
職員紹介、公的機関、求人サイト、自社採用ページを組み合わせ、紹介会社だけに依存しない採用経路をつくることが重要です。
求人媒体ごとに、次の数字も記録しましょう。
- 掲載費
- 応募人数
- 面接人数
- 入職人数
- 90日後の在籍人数
応募数ではなく、入職後の定着まで比較することで、効果のある採用経路を判断しやすくなります。
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介護5. 人手不足を 「人を 増やすこと」だけで 解決していないか
人手不足が起きると、すぐに追加採用を考えがちです。
しかし、仕事の分担や進め方を見直さないまま採用すると、新しい職員にも同じ負担がかかります。その結果、早期退職が起こり、派遣や人材紹介を再び利用することになりかねません。
まず、職員が行っている業務を1週間記録してみましょう。
- 介護職員でなければできない業務
- 資格がなくても担当できる業務
- 二重入力や転記が発生している業務
- 特定の職員に集中している業務
- 待ち時間や移動時間が長い業務
- 時間帯によって負担が偏っている業務
例えば、清掃、物品補充、シーツ交換、書類整理などの業務を分けられれば、介護職員が利用者への対応に使える時間を確保できます。
記録の重複、申し送り、巡回などは、介護ソフトや見守り機器によって負担を減らせる場合もあります。
ただし、機器を導入するだけでは改善しません。導入前に「どの作業を」「1日何分減らしたいか」を決め、導入前後で比べます。
人員配置基準や利用者の安全を守ることは大前提です。単純に人数を減らすのではなく、介護職員が担う仕事を整理し、必要な時間帯に人を配置することが目的です。
業務を見直した結果、必要な人数や勤務時間が変われば、派遣の利用期間や直接採用の条件も見直しやすくなります。
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介護採用 コストは 「入職後の 定着」まで 含めて 点検する
採用方法を比べるときは、1人を採用するまでの費用だけで判断しないことが大切です。
例えば、次の2つを計算します。
採用1人あたりの費用
求人広告費・紹介手数料・採用担当者の人件費 ÷ 入職人数
90日後に在籍している1人あたりの費用
求人広告費・紹介手数料・採用担当者の人件費 ÷ 入職90日後の在籍人数
採用単価が低くても、早期退職が多ければ、実際の負担は大きくなります。
反対に、紹介手数料がかかっても、必要な資格や勤務条件に合う人を短期間で採用でき、長く定着すれば、利用する意味があります。
派遣会社や人材紹介会社を「高いからやめる」「便利だから続ける」と決めるのではなく、利用目的、費用、採用後の定着まで含めて判断しましょう。
まとめ
派遣費や人材紹介料が増えたときは、次の5つのポイントを確認します。
- 派遣費・人材紹介料が毎月いくらか説明できるか
- 一時的な派遣利用が長期化していないか
- 紹介会社経由の採用者が定着しているか
- 直接応募がどの段階で止まっているか
- 人手不足を人の追加だけで解決していないか
派遣会社や人材紹介会社は、急な欠員や採用が難しい職種を補うための重要な選択肢です。
問題は、利用する目的や終了時期が決まらないまま支払いが続き、採用後の結果を確認できていないことです。
まずは派遣費、人材紹介料、求人広告費を分け、月ごとの金額と利用理由を記録しましょう。そのうえで、直接採用、早期退職の防止、シフトや業務分担の改善を並行して進めることが、サービスの安全性を守りながら採用コストを見直す方法です。

