認知症チームケア推進加算は、研修を修了した職員を中心に介護職員のチームを組み、認知症の入所者一人ひとりについて、BPSDの評価、ケア計画の作成、月1回以上のカンファレンスによる振り返りを続けている施設が算定できる加算です。BPSDが現に出ている人だけでなく、BPSDを予防するためのケアも評価の対象になります。

日頃から入所者の状態をチームで評価し、ケアの方針をそろえておくことは、BPSDの出現を防ぎ、出現したときにも早く対応して重症化を防ぐことにつながります。この記事では、対象サービスと単位数、対象者と割合の要件、研修修了者の確保、チームケアの進め方、算定開始までの手順を、2026年9月時点の告示・通知・Q&Aで整理します。

対象サービスと(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数

2024年度の介護報酬改定で新設された加算で、対象は認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、介護老人福祉施設(特養)、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設(老健)、介護医療院です。グループホームは介護予防認知症対応型共同生活介護も対象ですが、短期利用の場合は算定できません。単位数と、区分を分ける研修修了者の要件は次のとおりです。

区分

単位数

1名以上配置する研修修了者

認知症チームケア推進加算(Ⅱ)

1月につき120単位

認知症介護実践リーダー研修と認知症チームケア推進研修の両方を修了した人

認知症チームケア推進加算(Ⅰ)

1月につき150単位

認知症介護指導者養成研修と認知症チームケア推進研修の両方を修了した人

(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは研修修了者の資格だけで、対象者の割合やチームケアの要件は共通です。実践リーダー研修や指導者養成研修を修了しているだけでは要件を満たさず、認知症チームケア推進研修の修了が別に必要です。2026年6月の期中改定後の算定構造でも、単位数は変わっていません。まず職員の研修修了状況を確かめ、どちらの区分を目指すかを決めます。施設ごとのほかの加算は「特養(介護老人福祉施設)の加算一覧」「グループホームの加算一覧」「老健(介護老人保健施設)の加算一覧」で整理しています。

(参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」、厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、厚生労働省「認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について」第3、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)」問2)

対象者と入所者に占める割合の確認

加算の対象者は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」で、認知症高齢者の日常生活自立度がランクⅡ、Ⅲ、Ⅳ、Mに該当する入所者等を指します。施設の入所者等の総数のうち、対象者の割合が2分の1以上であることが要件で、この割合は、届出日の属する月の前3月の各月末時点の入所者等数の平均で判断します。BPSDが現に認められる人に限らず、対象者にBPSDの予防等に資するチームケアを実施していれば算定できます。

認知症専門ケア加算とは、同じ対象者について併せて算定できません。ただし、同じ施設内で、入所者Aには認知症専門ケア加算、入所者Bには認知症チームケア推進加算を算定することは可能です。認知症の症状が不安定で、チームケアがより望ましいと認められる人については、認知症専門ケア加算から切り替えてもかまいません。すでに認知症専門ケア加算を算定している施設は、入所者ごとにどちらの加算の趣旨に合うかを検討します。

(参考:厚生労働省「認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について」第2、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)」問3・問7〜問9)

認知症チームケア推進研修の受け方

認知症チームケア推進研修は、認知症介護研究・研修センター(仙台、東京、大府)が全国の介護職員を対象にオンデマンド形式で実施しており、センターの研修ページから申し込みます。2026年9月時点の研修ページでは、受講はオンライン研修システム「manaable(マナブル)」で申込・支払・受講・修了証の発行まで行い、動画の視聴時間は約70分、受講料は1,800円とされています。研修内容は、BPSDのとらえかた、アセスメント項目、評価尺度の理解と活用方法、ケア計画の基本的考え方、チームケアにおけるPDCAサイクルとチームアプローチです。

都道府県・指定都市が、認知症介護実践リーダー研修にこの研修内容を加えて実施する場合もあり、その場合は修了証で研修内容が含まれていることが分かるようにするとされています。また、東京都が開発した日本版BPSDケアプログラムのアドミニストレーター養成研修の修了者は、認知症チームケア推進研修の修了者とみなされます。ただし、ケアプログラムを使うには所在する都道府県が導入している必要があるため、導入状況は都道府県に確認します。

研修修了者は複数のチームに参加できますが、それぞれのチームで計画の作成、BPSDの評価、カンファレンスへの参加などに関わる必要があります。対象者が多く、1人の研修修了者で全チームに対応するのが難しい場合は、複数の職員が研修を修了しておくことが望ましいとされています。

(参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)」問1・問4、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.14)」問3・問5、厚生労働省「認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について」第4、認知症介護研究・研修センター「認知症チームケア推進研修」)

チームケアの進め方(評価・計画・カンファレンス・記録)

チームは、研修修了者を中心に、複数の介護職員で組みます。ここでいう介護職員は、対象者に加算の対象サービスを直接提供する職員のことで、介護福祉士でなくてもかまいません。チームケアは、次の流れで対象者ごとに回します。

  1. 評価:対象者ごとに、認知症チームケア推進研修で示された評価指標を使ってBPSDを評価する。研修で使うテキスト、ワークシート、BPSD25Qのシート、チェックリストは、研修ページの動画視聴ページからダウンロードできる。よくある失敗は、研修で示されたもの以外の独自の指標で評価してしまうこと。
  2. 計画:評価の結果と整合するチームケアの計画を、対象者の状態に応じて個別に作る。よくある失敗は、全員に同じ文面の計画を使い回すこと。
  3. カンファレンス:対象者1人につき月1回以上開き、状態の評価、ケア計画の策定、ケアの振り返り、再評価、計画の見直しを行う。心身の状態や環境に変化があったときは、その都度開く。よくある失敗は、状態が変わったのに次の定例まで見直しを待つこと。
  4. 記録:評価、ケア方針、実施したケアの振り返りを、「認知症チームケア推進加算・ワークシート」と、介護日誌や施設サービス計画書などの介護記録に残す。よくある失敗は、ワークシートを作らずに介護記録だけで済ませること。

ワークシートは算定にあたって必ず作成が求められる一方、介護記録等はこの加算のために新しい書式を作る必要はなく、ふだんの記録に評価やケアの振り返りを丁寧に書けば足ります。日本版BPSDケアプログラムの評価指標でチームケアを行う場合は、「DEMBASE」への記録から出力したPDFとそれに紐付く打合せ記録で、ワークシートに代えることができます。

(参考:厚生労働省「認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について」第1、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)」問5・問6・問10、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.14)」問4・問6)

算定開始までの手順

  1. 対象者の割合の確認:直近3か月の各月末時点で、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の入所者等の割合を出し、平均が2分の1以上かを確かめる。よくある失敗は、1か月分の数字だけで判断すること。
  2. 研修修了者の確認と受講:実践リーダー研修または指導者養成研修の修了者のうち、認知症チームケア推進研修を修了している人を確かめ、いなければ受講を申し込む。よくある失敗は、実践リーダー研修の修了だけで要件を満たすと考えること。
  3. チームと様式の準備:研修修了者を中心にチームを組み、研修ページからワークシートや評価のシートを入手して、カンファレンスの日程を月ごとに決める。よくある失敗は、研修修了者を名前だけチームに入れ、計画の作成やカンファレンスに関わらない体制にすること。
  4. 届出:指定権者(都道府県または市町村)に体制届を出す。算定を始められる月は届出の時期で決まるため、提出の締切と必要な書類を提出先の案内で確かめる。よくある失敗は、届出が受理される前の月の分から算定してしまうこと。

算定要件の原文の読み方は「介護加算の算定要件の調べ方」、届出の添付書類と算定後に残す書類は「介護加算の届出に必要な書類」で解説しています。

まとめ

認知症チームケア推進加算は、研修修了者を中心としたチームが、対象者ごとにBPSDを評価し、計画、月1回以上のカンファレンス、振り返りを続けることで算定できる加算で、(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは研修修了者の資格です。出発点は、入所者に占める認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の人の割合と、認知症チームケア推進研修の修了者がいるかどうかの確認です。どちらも満たせる見込みがあれば、研修の受講とワークシートの準備を進め、チームケアを試行しながら指定権者への届出の時期を決めます。

参考