デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者などのITツールの導入を支援する国の補助金です。2026年の公募から、IT導入補助金から名前が変わりました。介護事業所も、法人の規模の要件を満たせば使えます。対象は、事務局に登録されたITツールで、介護ソフトや勤怠管理ソフトなどです。

申請は、登録されたIT導入支援事業者と一緒に行います。この記事では、介護事業所が対象になる条件、通常枠の補助率と補助額、申請の流れを整理します。2026年10月時点の交付規程と事務局サイトをもとにしています。

介護事業所が対象になる条件

対象は、中小企業・小規模事業者などです。法人の種類ごとに、規模の基準が決まっています。

法人の種類

対象になる規模

社会福祉法人・医療法人

常時使用する従業員が300人以下

株式会社などの会社(サービス業の基準)

資本金5,000万円以下か、常時使用する従業員が100人以下

特定非営利活動法人(NPO)・一般社団法人など

主な業種の基準の従業員数以下

社会福祉法人と医療法人は、資本金ではなく従業員数だけで判断します。常時使用する従業員には、解雇の予告が必要な人が当たり、役員は含みません。会社の場合は業種ごとに基準が違うので、自社の業種の区分を公募要領で確かめてください。

大企業が株式の半分以上を持つ会社など、大企業の影響が大きい事業者は対象外です。グループ法人で申請するときは、資本関係も確かめておきます。

(参考:「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金 交付規程 通常枠」別紙1、デジタル化・AI導入補助金2026「申請の対象となる方」)

通常枠の補助率と補助額

介護事業所がソフトを導入するときは、主に通常枠を使います。補助率と補助額は、次のとおりです。

項目

通常枠の内容

補助率

1/2以内。最低賃金に近い賃金の従業員が多い場合は2/3以内

補助額(業務プロセスが1つ以上のソフト)

5万円以上150万円未満

補助額(業務プロセスが4つ以上のソフト)

150万円以上450万円以下

補助の対象になる経費

ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費

2/3以内になる条件は、2024年10月から2025年9月までの賃金で判断します。その時期の地域別最低賃金以上で、2025年度改定後の最低賃金未満の従業員を数えます。この従業員が全従業員の30%以上いる月が、3か月以上あることが条件です。

業務プロセスとは、会計、人事・給与、顧客対応などの業務を効率化する機能のことです。業種固有の業務の機能も、プロセスの1つに数えます。汎用・自動化・分析ツールだけのソフトは、申請できません。

通常枠の対象経費は、ソフトとクラウドの利用料、導入の設定・研修・サポートなどの費用です。パソコンやタブレットの購入費は、通常枠の対象経費に含まれていません。見積もりでは、業務プロセスの数とクラウド利用料の期間を確かめておきます。

(参考:「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金 交付規程 通常枠」第6条・別表、デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」)

生産性と賃上げの要件

申請する事業者は、労働生産性を上げる3年間の事業計画を作ります。1年後に3%以上、計画期間に年平均3%以上の向上が目標です。過去にIT導入補助金の通常枠などで交付決定を受けた事業者は、目標が4%以上になります。

補助額150万円以上の申請では、賃上げの事業計画も求められます。ただし、この要件は介護サービス事業者には適用されません。介護保険の居宅サービスや施設サービスを提供する事業者と、社会福祉事業を行う事業者が当たります。IT導入補助金2022〜2025を受けた事業者に課される賃上げ要件も、同じく適用外です。

適用外になるのは賃上げの要件だけで、生産性の計画と事業実施効果の報告は必要です。自事業所のサービスが適用外に当たるかは、申請前にIT導入支援事業者と確かめてください。

(参考:「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金 交付規程 通常枠」第9条)

介護事業所での使い道と注意点

対象になるのは、事務局に登録されたITツールだけです。介護記録や勤怠管理のソフトも、登録されていれば対象です。導入したい製品が登録されているかは、事務局サイトのITツール検索で確かめます。

都道府県の介護テクノロジー補助金と比べると、対象経費と補助率が違います。都道府県の定着支援事業は、端末やWi-Fi工事、見守り機器なども対象で、補助率は4/5です。都道府県の募集が受付中なら、両方の条件を比べてから使う補助金を決めます。

同じソフトの費用に、2つの補助金を重ねて使うことはできません。交付規程は、国のほかの補助金と重複する事業を対象外としています。都道府県の定着支援事業も、IT導入補助金などで助成を受けたものを対象外としています。

導入したITツールを1年未満で使わなくなると、交付決定が取り消されることがあります。試用で合うかを確かめてから申請すると、こうした事態を避けられます。介護ソフトの比べ方は「介護ソフトを公平に比較する進め方」で解説しています。

(参考:「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金 交付規程 通常枠」第10条・第27条、「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」6)

申請の流れ

申請から補助金の受け取りまでは、次の順で進みます。

  1. 公募要領と事業スケジュールの確認:事務局サイトで、申請枠と次の締切を確かめます。前回の締切の日程で準備を進めないようにします。
  2. GビズIDプライムとSECURITY ACTION:GビズIDプライムは、発行までおおむね2週間かかります。SECURITY ACTIONの宣言は「★一つ星」か「★★二つ星」で、ID発行まで2〜3日です。締切の直前に取り始めないようにします。
  3. IT導入支援事業者とITツールの選定:業務の課題に合わせて、ITツールと支援事業者を選びます。製品名だけで決めず、登録されたITツールかを確かめます。
  4. 交付申請:支援事業者から申請マイページに招待され、基本情報と書類を入力します。支援事業者がITツールと事業計画の数値を入れ、申請者が確認して提出します。
  5. 交付決定:審査が終わると、交付決定の通知が届きます。
  6. 発注・契約・支払い:交付決定を受けてから行います。交付決定の前に発注・契約・支払いをすると、補助を受けられません。
  7. 事業実績報告:発注・契約・納品・支払いの証拠を提出します。すべてのITツールの利用が始まっていることが条件です。
  8. 補助金額の確認と交付:確定した補助金額を申請マイページで承認すると、補助金が交付されます。承認しないと交付されないので、通知を見落とさないようにします。
  9. 事業実施効果の報告:決められた期間に、生産性などの効果を報告します。導入前の業務時間を記録しておくと、前後を比べられます。

(参考:デジタル化・AI導入補助金2026「新規申請・手続きフロー詳細」「申請を行う前に必要な手続き」「交付決定後に必要な手続き」)

2026年の締切

通常枠の次の締切は、2026年10月30日17時です。交付決定は12月10日の予定で、導入と実績報告は2027年5月31日17時までです。それ以降の締切は、10月15日時点では公表されていません。

GビズIDプライムの取得には約2週間かかるため、まだ持っていない場合は早めに申請します。次の締切に間に合わない場合も、取得を済ませておけば次の回に備えられます。最新の日程は、事務局サイトの事業スケジュールで確かめてください。

(参考:デジタル化・AI導入補助金2026「事業スケジュール」)

都道府県の補助金とあわせた確認

介護事業所が使える補助金には、都道府県の介護テクノロジー導入支援事業もあります。制度の内容は「介護テクノロジー導入支援事業とは」で解説しています。都道府県ごとの募集状況は、次のページで確かめられます。

市区町村の補助金もあわせて探すときは、助成金・補助金 検索を使えます。

まとめ

デジタル化・AI導入補助金は、登録されたITツールの導入に使える国の補助金です。規模の要件を満たせば、介護事業所も使えます。通常枠の補助率は1/2以内で、賃上げの要件は介護サービス事業者には適用されません。

まず、導入したいソフトが登録されたITツールかを確かめ、所在地の都道府県の補助金と条件を比べてください。

次に、GビズIDプライムの取得を済ませ、IT導入支援事業者と申請を進めます。契約は交付決定を待ってから行います。記録や請求の手間が減れば、その時間を利用者のケアに充てやすくなります。

参考