介護職の求人を出しても応募が来ない。面接後に辞退される。採用できても、数か月で退職してしまう。この状態が続くと、求人広告費だけでなく、面接や新人教育に使った時間も無駄になります。

介護関係職種の有効求人倍率は、2024年度で4.08倍です。求職者1人に複数の求人があるため、事業所も応募者から選ばれる必要があります。採用が決まらないときや早期退職が続くときは、次の6点を確認します。

(参考:厚生労働省「介護人材確保の現状について」)

求める人材の条件を厳しくしすぎていないか

応募条件を増やすほど、応募できる人は少なくなります。「介護福祉士必須」「経験3年以上」「夜勤・土日勤務ができる人」などの条件です。応募条件は、次の2つに分けます。

  • 入職時に必ず必要なもの
  • 入職後の教育で身につけられるもの

介護技術や記録方法は、研修で身につけられます。一方、短期間では変わりにくいものもあります。利用者への接し方、分からないことを質問する姿勢、周囲と協力する姿勢です。資格や経験だけでなく、自事業所の方針に合い、安定して働ける人かを確認します。有効求人倍率の推移と募集条件の見直し方は、「介護業界の採用はなぜ難しいのか」で解説しています。

給与・休日・勤務時間が地域相場と合っているか

求人広告を工夫する前に、雇用条件を点検します。2024年度の介護労働実態調査は、実施した事業所が「採用に効果があった」とした割合を示しています。賃金水準の向上が36.0%、休暇取得や勤務日時を変更しやすい職場づくりが25.7%でした。近隣の競合求人と、次の条件を比べます。

  • 基本給、手当、月収例
  • 夜勤手当と平均回数
  • 年間休日数と残業時間
  • 希望休の取りやすさ
  • 車通勤や駐車場の条件
  • 短時間勤務や曜日固定の可否

すべての条件で競合を上回る必要はありません。「夜勤回数を相談できる」「希望休を月3日出せる」など、生活に合わせて働けることも強みになります。ただし、求人票に書いた条件を実際に守れることが前提です。希望休の決まりの整え方は、「介護施設のシフト管理のルール」で解説しています。

(参考:介護労働安定センター 令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について)

求人票に具体的な情報を載せているか

「アットホームな職場です」「やりがいのある仕事です」だけでは、応募者の不安はなくなりません。同調査で、介護職員が現在の法人を選んだ理由は「通勤の便利さ」が51.9%でした。「自分のやりたい介護ができそうだったこと」と「職場の人間関係がよさそうだったこと」は、それぞれ33.6%です。求人票には、実際の働き方を数字で載せます。

  • 残業は月平均○時間
  • 夜勤は月平均○回、○人体制
  • 希望休は月○日まで申請可能
  • 有給休暇の平均取得日数
  • 駅からの時間や駐車場の有無
  • 新人教育の期間と担当者
  • 一人で夜勤に入るまでの期間

仕事の良い面だけでなく、入浴介助の件数や夜勤体制なども伝えます。入職前後の食い違いを減らすことが、早期退職の防止につながります。

(参考:介護労働安定センター 令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について)

効果のある募集方法を選んでいるか

求人媒体を増やせば、必ず応募が増えるわけではありません。同調査は、各方法を実施した事業所のうち「採用に効果があった」とした割合も示しています。職員紹介46.0%、有料人材紹介45.2%、民間求人サイト41.1%でした。ハローワーク・福祉人材センターは40.1%です。費用を抑えるなら、まずは次の組み合わせを検討します。

  1. 職員からの紹介
  2. ハローワーク・福祉人材センター
  3. 地域で利用者が多い求人サイト
  4. 詳しい情報を伝える自社採用ページ

応募者ごとに応募経路を記録し、面接・内定・入職につながったかを確認します。効果が分からない媒体へ掲載を続けると、採用費が膨らみます。募集方法ごとの料金の型は、「介護求人の出し方」で解説しています。

(参考:介護労働安定センター 令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について)

面接や職場見学で入職後の実態を伝えているか

面接では、事業所だけでなく応募者も職場を見ています。次のような対応は、辞退につながります。長時間待たせる、威圧的な質問をする、求人票と違う条件を伝える、などです。資格や経験の確認だけでなく、次のような質問をします。

  • どのような介護をしたいですか
  • どのような教え方だと覚えやすいですか
  • 勤務時間や家庭の事情で相談したいことはありますか
  • 前職で困ったことや、今回配慮してほしいことはありますか

可能であれば職場見学を行い、職員の様子、休憩場所、記録方法などを見てもらいます。良い部分と大変な部分を両方伝えたうえで入職してもらうことが、採用後の食い違いを防ぎます。

入職後3か月の教育・面談体制が整っているか

採用できても、受け入れ体制が整っていなければ定着しません。同調査で、前の介護職を辞めた理由は「職場の人間関係」が24.7%で最多でした。具体的な内容では、「上司や先輩の指導・言動がきつい、またはパワーハラスメントがあった」が49.1%でした。「上司の指示が不明確だった」は36.2%です。まず教育担当者を決め、次の内容を職場内で共有します。

  • 最初の1週間で教えること
  • 1か月以内に覚えてもらうこと
  • 一人で任せてよい業務
  • 困ったときの相談先
  • 夜勤を始める時期と判断基準

経験者にも、自事業所の記録方法や利用者への対応方針を説明する必要があります。また、入職3日後、2週間後、1か月後、3か月後を目安に面談します。教え方、人間関係、身体的な負担、面接時に聞いた内容との違いを確認します。問題があれば、対応期限を伝えます。

(参考:介護労働安定センター 令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について)

入職3か月後までの採用活動の振り返り

応募数だけでなく、次の数字を毎月記録します。

  • 応募・面接・内定・入職人数
  • 入職30日後、90日後の在籍人数
  • 応募経路
  • 辞退・退職理由

記録から人が離れている段階を確かめ、次の表で見直す項目を決めます。

人が離れている段階

記録で見る数字

見直す項目

応募が少ない

応募経路ごとの応募人数

応募条件、雇用条件、求人票の情報、募集方法

面接や内定のあとの辞退が多い

面接・内定・入職人数と辞退理由

連絡の速さ、面接での対応、職場見学

入職後3か月以内の退職が多い

入職30日後・90日後の在籍人数と退職理由

教育担当者と面談の体制、人間関係、求人票と実態の食い違い

採用広告を増やす前に、どの段階で人が離れているかを確かめることが重要です。応募者の記録をまとめる仕組みは、「採用管理システム(ATS)とは」で解説しています。

まとめ

介護職の採用が決まらない、または早期退職が続くときは、6点を確認します。応募条件、雇用条件、求人票の情報、募集方法、面接・職場見学、入職後3か月の教育・面談体制です。出発点は、応募から入職90日後までの人数の記録です。人が離れている段階を確かめ、その段階の項目から直します。

無駄の少ない採用とは、最も安く人を集めることではありません。自事業所に合う人へ正確な情報を届け、入職前後の食い違いを減らすことです。採用時に伝えた内容と実際の働き方を一致させることが、採用と定着につながります。

参考