採用できているのに職員が入職後まもなく辞めてしまう場合、先に確かめたいのは、辞めた人が入職から何か月で、どんな理由で辞めたかです。退職が集まる時期が分かれば、求人票・面接・入職初日・最初の数か月のうち、どこで入職前に伝えた内容と実際の働き方が食い違ったのかを絞り込めます。

原因の場所が分からないまま求人広告を増やしても、同じ段階で同じように辞める人が続きます。食い違いを1つずつ直していけば、採用にかけた費用と教える手間が無駄になりにくくなり、利用者にとっても、顔なじみの職員から続けてケアを受けられる体制に近づきます。この記事では、退職の時期と理由の洗い出し方と自施設の離職率の出し方、求人・面接・入職初日・最初の数か月の4つの段階で見るところ、手を打つ順番の決め方を扱います。

1. 退職の時期と理由の洗い出し

何を見るか

介護労働安定センターの2025年度介護労働実態調査(2026年7月公表)では、訪問介護員と介護職員を合わせた2職種の1年間の離職率は12.4%で、介護職員だけでは12.7%でした。同センターは、厚生労働省の雇用動向調査と比べると、最近3年間の介護労働者の離職率は全産業より低い水準で推移しているとしています(調査の方法が違うため、単純な比較には注意が必要です)。一方、離職者の勤務年数を尋ねた最後の年である2022年度の調査では、1年間に辞めた介護職員のうち34.9%が勤務1年未満、26.4%が1年以上3年未満で、3年未満の人が離職者の6割を超えていました。

つまり、全体の離職率だけでは、入職後まもない退職が多いかどうかは分かりません。自施設でも、率とあわせて「入職から何か月で辞めたか」を見ます。直近1〜2年の退職者について、次の項目を1人1行で書き出します。

項目

書き出す内容

見るときの観点

在籍期間

入職日・退職日・在籍月数

退職が入職後のどの時期に集まっているか

配属と雇用形態

フロア・ユニット、職種、常勤・非常勤、無期・有期

同じ部署や同じ雇用形態に偏っていないか

採用の経路

求人サイト・人材紹介・ハローワーク・職員紹介など

経路によって在籍期間に差がないか

入職時の条件

採用した時点の求人票と労働条件通知書の勤務時間・夜勤・休日

求人票と通知書と実際の勤務表に違いがないか

退職の理由

退職面談での本人の言葉と、指導担当・上司の見立て

退職届の文言だけで分類していないか

入職後の記録

面談の有無と内容、夜勤に入った時期、残業の状況

本人の不満がいつから出ていたか

退職が集まる時期と、そこに共通する配属・経路・理由が、次の2〜5で見る段階を選ぶ手がかりになります。

どう直すか

自施設の離職率は、介護労働実態調査と同じ式で出すと全国値と比べられます。

  • 離職率(%)=1年間の離職者数÷1年前の在籍者数×100
  • 1年前の在籍者数=現在の在籍者数-1年間の採用者数+1年間の離職者数

入職後まもない退職の多さは、次の2つの式で見ます。1つめは、介護職員だけで出せば全国値(2022年度調査の34.9%)と比べられます。2つめは、自施設の前年の値と比べます。

  • 勤務1年未満の離職者の割合(%)=1年間に辞めた人のうち勤務1年未満の人数÷1年間の離職者数×100
  • 入職1年以内の離職率(%)=ある年度に入職した人のうち入職から1年以内に辞めた人数÷その年度の入職者数×100

職員数が少ない施設では、1人の退職で率が大きく動きます。率は前年との比較にとどめ、原因は上の一覧で1人ずつ確かめるほうが確実です。書き出しは次の順で進めます。

  1. 直近1〜2年の退職者を一覧にする。試用期間中の退職や、入職の直前・直後の辞退を外すと、入職前の説明と実際の違いがいちばん表れる退職を見落とします。
  2. 在籍月数で並べ替え、退職が集まる時期を見る。平均在籍期間だけを見ると、入職直後の退職と長く勤めた人の退職が打ち消し合って、偏りが見えなくなります。
  3. 理由を、本人の言葉と周囲の見立てに分けて書く。「一身上の都合」「家庭の事情」をそのまま理由として集計すると、施設の側で直せることが残りません。
  4. 採用した時点の求人票・労働条件通知書と、入職後の勤務表を突き合わせる。今掲載している求人票と比べると、採用した当時の条件との違いを見逃します。

よくある失敗

退職面談の内容が面談した人の記憶にしか残らず、あとから一覧にできないことです。退職面談では、入職前に聞いていた話と違った点を尋ね、答えを記録に残します。

(参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度「介護労働実態調査」結果の概要について」、同「令和4年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書」)

2. 求人票と実際の勤務条件の食い違い

何を見るか

採用した時点の求人票(媒体ごと)、人材紹介会社に伝えた条件、労働条件通知書、入職後の勤務表を並べ、勤務時間、夜勤の回数、休日、残業、配属先、担当する業務の範囲が一致しているかを確かめます。

求人と実態の食い違いには、法律上の決まりがあります。職業安定法は、労働者を募集する者に、業務の内容と賃金・労働時間などの労働条件の明示を求め(第5条の3第1項)、面接などの過程で当初示した条件を変えて契約する場合は、変更する内容の明示を求めています(同条第3項)。求人広告に虚偽や誤解を生じさせる表示をしてはならず、内容を正確かつ最新に保つことも求めています(第5条の4第1項・第2項)。2024年4月からは、募集時に明示する事項に、従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約の更新の基準(更新の上限を含む)が加わりました。複数の事業所をもつ法人で、入職後に別の施設へ異動させる可能性がある場合は、その範囲を求人の段階で示す必要があります。

契約を結ぶときは、労働基準法第15条第1項により労働条件を明示し、賃金や労働時間などは書面(本人が希望すれば電子メールなど)で示します。明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に労働契約を解除できます(同条第2項)。

どう直すか

夜勤の回数、休日、残業は、希望や方針ではなく、同じ職種の職員の直近の勤務表の実績から書きます。掲載している媒体と紹介会社に伝えている条件を一覧にし、条件を変えたときは同じ日にすべて直します。厚生労働省のリーフレットは、求人広告のスペースが足りない場合でも、原則として面接など最初に接触する時点までにすべての労働条件を明示するよう求めています。職種ごとの働き方を求人票で伝える視点は「介護業界の採用はなぜ難しいのか」、媒体ごとに条件をそろえる点は「介護求人の出し方」でも触れています。

よくある失敗

「夜勤は相談可」「残業ほぼなし」のように、人手が足りない月には守れない書き方をしてしまうことです。また、紹介会社の担当者が応募者にどう説明したかを施設が把握していないと、食い違いに気づけません。紹介経由の入職者には、入職前にどんな説明を受けたかを面接や入職時に確かめます。

(参考:職業安定法第5条の3・第5条の4、労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条、厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」)

3. 面接で伝える仕事の実像

何を見るか

応募者が何を期待して入職を決めたかを、面接の記録から確かめます。2025年度介護労働実態調査で、勤続1年未満の介護労働者が今の法人に就職した理由(複数回答)は、「通勤に便利だから」52.1%、「職場の人間関係がよさそうだったため」41.7%、「自分のやりたい介護ができそうだったため」40.3%、「時間外労働が少ないため」30.5%でした。人間関係とやりたい介護は、勤続年数を問わない全体の回答より高くなっています。入職前の「よさそう」という印象は、面接や見学で見聞きしたことから生まれるため、入職後の実際と離れていると、そのまま辞める理由になりえます。

どう直すか

面接では、配属予定の部署の1日の流れ、夜勤の体制と1人で受け持つ範囲、ケアで大事にしていることを、良い面も大変な面も具体的に伝えます。職場見学では、管理者の説明だけでなく、配属予定の部署の職員と話す時間をとると、応募者が人間関係や働き方を自分で確かめられます。あわせて、応募者の希望(夜勤に入れるか、休日の希望、やりたい介護)と、前の職場を辞めた理由を聞いて記録し、配属先と指導担当に引き継ぎます。

よくある失敗

人手が足りないと、応募者を逃したくない気持ちから大変な部分を伏せがちです。ただ、伏せた部分は働きはじめれば分かるため、そのときの落差が早期退職の理由になりえます。もう1つは、面接で聞いた希望が現場に伝わらず、配属後に同じことを一から聞き直すことです。

(参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度「介護労働実態調査」結果の概要について」)

4. 入職初日からの受け入れ体制

何を見るか

入職初日と最初の週について、予定が決まっていたか、指導担当が決まっていたか、教える内容と順番が書かれたものがあったかを確かめます。2025年度介護労働実態調査で、中途採用の介護労働者が直前の介護関係の仕事を辞めた理由(複数回答)は、「職場の人間関係に問題があったため」が27.3%で最も多くなりました。その具体的な内容は、「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」45.8%、「仕事の進め方に関する上司や同僚との意思疎通がうまくいかなかった」38.0%、「上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった」37.4%で、いずれも教え方や指示の出し方に関わる内容です。

どう直すか

入職初日から最初の週までの予定表を作り、初日に本人へ渡します。指導担当を1人決め、教える内容と順番をチェック表にして、誰が教えても同じ手順になるようにします。指導担当と新人の勤務が重ならなければ教えられないため、一定の期間は2人の勤務を重ねることを、シフトを組むときのルールに加えておきます。シフトのルールの整理のしかたは「介護施設のシフト管理のルール」で解説しています。指導担当には、新人がどこまでできるようになったかをチェック表で確かめながら進めることと、注意するときは理由と手順を具体的に伝えることを、事前に説明しておきます。

よくある失敗

指導担当をその日の勤務者に任せると、人によって教え方が違い、新人はどれが正しいのか分からなくなります。また、入職初日から人員に数えて配置すると、指導担当が自分の業務に追われて教える時間がとれません。

(参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度「介護労働実態調査」結果の概要について」)

5. 入職後数か月の面談と勤務の割り振り

何を見るか

入職後の数か月について、面談をしたか、夜勤に入った時期と準備、残業や休日出勤の状況、希望休の通り方を、退職者の一覧に書き加えて確かめます。2025年度介護労働実態調査で、事業所が職場定着に効果があったとした方策は、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」(行っている事業所の57.9%)、「人間関係が良好な職場づくり」(同54.6%)が上位でした。また、直前の介護関係の仕事を事業理念や運営への不満で辞めた人の具体的な内容は、「介護の質の向上の手法・方向性が自分の考え方とは異なっていた」34.2%、「介護の質の向上の取り組みに対して職員の体制や処遇が追いつかなかった」33.9%でした。

どう直すか

面談は、入職の翌週・1か月後・試用期間が終わる前など、時期を入職前に決めておきます。指導担当とは別に、管理者か別の先輩職員も面談に入ると、指導担当についての悩みも話しやすくなります。面談で聞いた内容は記録し、1で作った一覧に書き加えます。夜勤に入る時期は、チェック表で習熟を確かめてから決め、その決め方を面接の段階で伝えておきます。希望休の締切や上限も、ほかの職員と同じルールで新人に説明します。

メンター制度や1on1ミーティングを新しく制度として導入する場合は、厚生労働省の人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)の対象になることがあります。雇用管理制度等整備計画を計画開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出して認定を受け、計画どおりに導入したうえで離職率の低下目標を達成することが要件です。要件は年度によって変わるため、計画を作る前に厚生労働省の案内と都道府県労働局で確かめてください。業務の負担を減らす機器の導入に使う場合は「介護テクノロジー導入支援事業と補助金・助成金」で整理しています。

よくある失敗

欠員の穴埋めを、まだ勤務を断りにくい新人に回してしまうことです。もう1つは、面談で「大丈夫?」と聞くだけで終わることです。入職前に聞いていた話と違うところがあるか、教え方で困っていることがあるか、と具体的に尋ねると、辞める前の不満を拾いやすくなります。

(参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度「介護労働実態調査」結果の概要について」、厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」、同「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース 人材確保等支援助成金のご案内」)

手を打つ順番の決め方

1の一覧で退職が集まった時期から、まず確かめる段階と最初の手を選びます。

退職が集まる時期

まず確かめる段階

最初に打つ手

入職の直前・直後の辞退と入職初日の週の退職

2の求人票と3の面接

求人票・労働条件通知書・勤務表の突き合わせと、面接で伝える内容の見直し

1人で仕事を任されはじめる頃までの退職

4の入職初日からの受け入れ

指導担当とチェック表の決定と、指導担当と新人の勤務の重ね方の決定

夜勤に入ったあとや入職から数か月たってからの退職

5の入職後数か月の面談と勤務

面談の時期の決定と、夜勤・残業・希望休の割り振りの見直し

複数の時期に退職が分かれている場合は、早い段階から直します。求人票や面接で伝えた内容が実際と違ったままでは、そのあとの受け入れや面談を整えても、同じ食い違いで辞める人が出るためです。直すのは一度に1つの段階にとどめ、次に入職した人の在籍月数と面談の記録で効果を確かめてから次に進みます。

まとめ

介護施設で採用しても早期退職が続くときは、求人・面接・入職初日・最初の数か月のどこで、入職前の説明と実際の働き方が食い違っているかを突き止めることが先決です。

出発点は、直近1〜2年の退職者について、在籍月数・配属・採用の経路・退職の理由を1人1行で書き出し、自施設の離職率と勤務1年未満の離職者の割合を出すことです。

次に、退職が集まる時期から確かめる段階を1つ選び、採用した時点の求人票と労働条件通知書、勤務表、面接と面談の記録を突き合わせて、食い違いの早い段階から順に直してください。

参考