介護施設のシフト管理で最初に整えるのは、システムよりもシフトを組むルールです。配置・希望休・変更の3つのルールを言葉にしておくと、システムに登録する条件と比較の基準がはっきりし、担当者が変わっても同じ基準でシフトを組めます。

紙や表計算でシフトを組んでいる施設では、ルールが担当者の経験に頼ったままになりやすく、担当者が休んだり異動したりすると同じ基準で組めなくなります。ルールが職員の間で共有されていれば、時間帯ごとに必要な職員が日によって欠けることを防ぎやすくなり、利用者はどの日も同じ体制でケアを受けられます。この記事では、3つのルールで決めること、配置のルールの根拠になる基準、希望休と変更のルールで気をつける点、ルールを書き出して担当者以外の職員で試す手順を扱います。

シフト管理システムはルールを再現する道具

シフト管理システムは、登録した勤務条件や職員の希望をもとにシフトを組む道具です。どの条件を登録するかは施設が決めるため、ルールが担当者の頭の中にしかないままだと、設定項目に何を入れればよいか分からず、結局は担当者の判断に頼ることになります。システムの比べ方は「介護施設向けシフト管理システムの選び方」、自動作成の試し方は「介護・看護向けシフト作成ソフトの選び方」で解説しています。

整理する3つのルール

ルール

決めること

決めていない場合の問題

配置のルール

時間帯ごとの人数・資格者・責任者

日によって必要な職員が欠ける

希望の扱い

希望休の締切・上限・優先順位

希望の通り方に不公平感が出る

変更のルール

交代の申請・承認者・周知の期限

確定後の変更が全員に伝わらない

3つのうち、配置のルールは基準や法令で決まる部分が大きく、希望の扱いと変更のルールは施設が決める部分が大きいという違いがあります。配置のルールから書き出すと、希望休をどこまで受けられるかの範囲も決めやすくなります。

配置のルールの根拠になる基準

配置のルールは、施設の都合だけでは決められません。施設の種類ごとの運営基準は、職種ごとに置くべき職員の数を定めています。夜勤については、厚生労働大臣が定める夜勤の基準(平成12年厚生省告示第29号)が、特養・老健・介護医療院・グループホームなどの種類ごとに、入所者の数などに応じた夜勤職員の数を決めています。特養では、介護・看護職員の数が基準に満たない場合や、夜勤の基準を満たさない場合は、介護報酬が減算されます。夜勤職員配置加算など、配置を要件とする加算を算定している場合は、その要件も配置のルールに入ります。夜勤の基準と加算の関係は「夜勤職員配置加算」で解説しています。

職員一人ひとりの勤務には、労働基準法の休憩(第34条)と休日(第35条)の定めや、就業規則で決めた勤務時間が関わります。夜勤明けの扱いや連続勤務の上限を施設で決めている場合も、配置のルールと一緒に書き出します。

また、特養と老健の運営基準の解釈通知は、原則として月ごとに勤務表を作り、職員の日々の勤務時間、常勤・非常勤の別、介護・看護職員の配置などを明確にするよう求めています。配置のルールは、この勤務表で基準を満たしていることを示すための土台にもなります。

書き出すときは、「基準や法令で決まっている条件」と「施設の運用として決めている目安」を分けておくと、システムに登録するときに、必ず守る条件と調整してよい条件を区別できます。基準の読み方に迷う点は、指定権者(都道府県や市町村)に確認してください。

(参考:指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第24条、厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」平成12年3月17日老企第43号、厚生労働省「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について」平成12年3月17日老企第44号、厚生労働省「厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準」平成12年厚生省告示第29号、厚生労働省「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、労働基準法第34条・第35条)

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希望休と変更のルールで気をつける点

希望の扱いは、施設が決める部分が大きいルールです。希望休の受付の締切、1人あたりの上限、希望が重なったときの優先順位を決め、全職員に同じ内容で伝えます。

1か月単位の変形労働時間制を採っている施設では、シフト表などで、対象期間のすべての労働日と労働日ごとの労働時間を前もって具体的に定める必要があり、いったん特定した労働日や労働時間を任意に変更することはできません。希望休の締切は、この確定の日から逆算して決めることになります。変形労働時間制の扱いは「介護の勤怠管理」でも解説しています。

変更のルールでは、職員からの交代の申し出を誰が承認し、いつまでに誰に周知するかを決めます。承認する人は、交代によって夜勤の人数や資格者の配置が配置のルールを下回らないかを確かめ、交代が決まったら勤務表にも反映します。施設の都合で勤務を変える場合の扱いは就業規則と照らして確かめ、迷う場合は労働基準監督署に相談できます。

(参考:労働基準法第32条の2、厚生労働省「1か月単位の変形労働時間制度」(リーフレット))

ルールの書き出しと担当者以外での試し方

  1. 直近数か月分の勤務表を用意し、担当者がシフトを組むときに気にしている条件を聞き取る。担当者の記憶だけで書き出すと、毎月手で直している例外の条件が漏れます。
  2. 条件を配置・希望・変更の3つに分け、配置の条件には根拠(運営基準・夜勤の基準・加算の要件・就業規則)を書き添える。根拠のない条件まで「必ず守る条件」に入れると、組めるシフトの幅が狭くなります。
  3. 希望休の締切と上限、交代の承認者と周知の期限を決め、職員に知らせる。決めた内容を担当者だけが持っていると、書き出す前と同じ状態に戻ります。
  4. 普段シフトを組んでいない職員に、書き出したルールだけで翌月分のシフト案を作ってもらう。担当者が横で補足すると、どこが言葉になっていないかが分かりません。
  5. 担当者のシフトと比べ、違いが出た箇所の理由を聞いてルールに書き足す。違いが出た箇所には、暗黙の了解のまま残っていた条件があります。

担当者以外の職員でも同じ基準のシフト案を作れるようになれば、そのルールがそのままシステムに登録する条件の一覧になります。システムを比べるときも、「このルールを登録できるか」を基準にできます。

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まとめ

介護施設のシフト管理は、システムを選ぶ前に、配置・希望休・変更の3つのルールを言葉にしておくことが土台になります。

出発点は、担当者がシフトを組むときに気にしている条件を書き出し、配置の条件に運営基準・夜勤の基準・加算の要件・就業規則などの根拠を添えることです。

次に、担当者以外の職員に同じルールでシフト案を作ってもらい、違いが出た箇所を書き足してから、そのルールを登録できるかを基準にシステムの比較に進んでください。

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参考