返戻は、国民健康保険団体連合会(国保連)の審査で起きます。請求明細書や給付管理票に誤りが見つかり、支払われないまま事業所に戻されることです。返戻された分は、直して再請求するまで支払われません。対応の基本は、原因の確認と再請求です。国保連から届く「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」で、原因を確かめます。そのうえで誤りを修正し、請求受付期間に再請求します。
この記事では、返戻と保留・過誤の違いと、一覧表で見る項目を扱います。事由ごとの原因と確認先、再請求までの手順、返戻を減らす点検の進め方も整理します。最後に、国保連請求ソフトで確かめる機能をまとめます(2026年10月時点)。請求全体の流れは「介護請求の流れ」で解説しています。
返戻と 保留・ 過誤の 違い
介護保険法第41条第9項は、市町村が事業者からの請求を審査して支払うと定めています。審査は、厚生労働大臣が定める基準などに照らして行われます。同条第10項は、この審査と支払の事務を国保連に委託できるとしています。返戻と保留は、この審査の段階で起きます。一方、過誤は、審査で決定したあとの請求を直す手続です。国民健康保険中央会の手引きと、厚生労働省の監査マニュアルをもとに整理します。
区分 | 請求の状態 | 事業所がすること |
|---|---|---|
返戻 | 請求明細書や給付管理票に誤りがあり、支払われずに事業所へ戻された | 誤りを直して再請求する |
保留 | 請求明細書に誤りはないが、対応する給付管理票が未提出か返戻のため、支払が止まっている | 給付管理票を作成する居宅介護支援事業所などに提出を依頼する(請求明細書の再請求は不要) |
過誤 | 審査で決定済みの請求に、あとから誤りが見つかった | 保険者に取下げを依頼し、取下げが済んでから正しい請求をし直す |
返戻は、事業所が直して出し直します。保留は、給付管理票を作る事業所の対応を待つことになります。過誤は、保険者への取下げの依頼から始まります。
保留は、決められた期間内に給付管理票が提出されなければ、返戻に変わります。保留の有無や期間は、国保連ごとに異なります。ほかの都道府県の被保険者の分は、保留にならず返戻になります。
なお、「過誤調整」は法令で定められた用語ではなく、実務上の通称です。監査マニュアルは、過誤調整を次の手続としています。事業者が、誤りのあった審査決定済の請求を取り下げます。そのうえで、改めて正しい請求を行います。過誤の手続は「介護請求の過誤とは」で解説しています。
(参考:介護保険法第41条第9項・第10項、国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」、厚生労働省老健局「介護保険施設等に対する監査マニュアル」)
返戻 (保留) 一覧表で 見る 項目
返戻と保留は、国保連が送る審査結果通知で知らされます。帳票の名前は「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」です。国民健康保険中央会の手引きによると、審査結果通知は月末に送られます。基準日は29日前後です。伝送で請求している事業所には、伝送で届きます。該当がない月は送付されません。一覧表の主な項目は次のとおりです。
一覧表の項目 | 表示される内容 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
備考 | 4文字のエラーコード、または「返戻」「保留」の表示 | エラーコードか「返戻」なら返戻、「保留」なら保留 |
事由 | 返戻(保留)になった理由の大まかな分類(AからEの1文字) | 原因がどこにあるかの見当をつける(次の節の表を参照) |
内容 | 返戻(保留)の原因となった項目とコメント | 直す箇所はこの欄で確かめる |
種別 | 請(請求明細書)・サ(サービス計画費)・給(給付管理票)・ケ(介護予防ケアマネジメント費) | 出し直す書類がどれかを確かめる |
サービス提供年月 | 返戻(保留)になった明細のサービス提供年月 | 請求した年月ではないため、前月以前に出した明細が載ることがある |
サービス種類と単位数 | エラーになったサービスコードの分だけが表示されることがある | 一部だけの表示でも、請求明細書・給付管理票は1件全部が返戻(保留)になっている |
一覧表は、次の順に読むと迷いにくくなります。まず備考で、返戻と保留を分けます。次に事由で、原因の場所の見当をつけます。最後に内容とエラーコードで、直す箇所を特定します。エラーコードごとの原因と対応は、同じ手引きに掲載されています。各都道府県の国保連のウェブサイトでも確かめられます。
(参考:国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」)
事由ごとの 原因と 確認先
一覧表の事由は、国保連の審査でどのチェックに引っかかったかを表します。手引きの分類に沿って、原因のある場所と確認先を整理します。
事由 | 手引きでの内容 | 原因のある場所と確認先 |
|---|---|---|
A | 請求明細書等の基本的な項目の入力(記入)誤りや漏れ | 自事業所の請求明細書。請求ソフトの入力を直す |
B | 保険者が登録する受給者台帳や、県が登録する事業所台帳との不一致。すでに請求・登録された明細や給付管理票との重複など | 被保険者番号や要介護度などの資格の情報は保険者に、加算の体制など届け出た内容は届出先の自治体に確かめる |
C | 請求明細書と給付管理票の突合での不一致 | 給付管理票を作成した居宅介護支援事業所や地域包括支援センター。サービス種類・事業所番号・計画単位数が一致しているかを確かめる |
D | サービス計画費に対する給付管理票の未提出 | サービス計画費を請求した居宅介護支援事業所自身の給付管理票 |
E | 介護給付費等審査委員会での返戻 | 内容欄の指摘を確かめ、判断がつかなければ国保連に問い合わせる |
事由Aは、自事業所だけで直せます。一方、BとCは、自事業所だけでは対応が決まりません。保険者や居宅介護支援事業所の登録・書類が正しいかで、対応が変わります。たとえば、受給者台帳の登録が誤っている場合です。手引きは、保険者の修正が終わってから再提出するよう示しています。
加算の体制などの届出事項は、厚生労働省の通知に位置づけがあります。審査支払機関と保険者が、請求を適正に審査するうえで必要な事項とされています。加算の算定を始めた月や、体制を変えた月に、事由Bの返戻が出ることがあります。その場合は、届出の内容と時期を届出先に確かめてください。
給付管理票は、居宅介護支援事業所などが作成します。もとになるのは、月末時点の「サービス利用票(控)」です。事由Cの返戻では、自事業所の実績と、居宅介護支援事業所が把握している計画を見比べます。どちらが正しいかを、双方で確かめてください。給付管理票を直す必要があれば、「修正」として提出してもらいます。
(参考:国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」、厚生労働省老健局長通知「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」、厚生労働省「介護給付費請求書等の記載要領について」)
返戻から 再請求までの 手順
- 返戻と保留を一覧にします。一覧表から、利用者・サービス提供年月・種別・事由・エラーコード・返戻か保留かを書き出します。サービス提供年月は、請求した月と取り違えやすい項目です。一覧表の年月をそのまま写してください。
- 保留分は、給付管理票の提出を依頼します。保留の明細は再請求しません。依頼先は、給付管理票を作成する居宅介護支援事業所や地域包括支援センターです。依頼しないまま保留期間が過ぎると、返戻になります。その場合は、請求明細書の再請求が必要です。
- 返戻の原因を特定し、確認先と調整します。前の節の表をもとに、自事業所で直すのか、相手の対応を待つのかを決めます。原因が保険者の登録の誤りなら、修正を待ってから再提出します。待たずに出すと、同じ理由で返戻になるおそれがあります。
- 次の請求受付期間に再請求します。手引きは、返戻となった明細書等を修正し、請求受付期間中に再請求するよう示しています。一覧表に一部のサービスだけが表示されていても、1件全体が返戻になっています。明細書全体を見直してから出し直してください。
- 翌月の審査結果で確かめます。再請求した明細が、支払決定の通知に反映されたかを見ます。再び一覧表に載っていないかも確かめます。再請求の日と結果は、記録しておきます。記録がないと、出し直したかどうかが担当者の記憶頼みになります。
介護給付費の請求は、各月分を翌月10日までに行うと定められています。国保連の請求受付期間は、毎月1日から10日が基準日です。締切日は月によって前後します。国保連から届く年間の日程で確かめてください。
次の受付期間に再請求が間に合わないときの扱いは、国保連や保険者の案内で確かめます。たとえば東京都国保連は、10日を過ぎて受け付けた請求を翌月受付の扱いにしています。再請求が翌月に回ると、支払もその分遅れます。
請求には時効もあります。厚生労働省の事務連絡は、事業者が受け取る介護報酬の請求の時効を2年としています。根拠は、介護保険法第200条第1項です。東京都国保連は、起算日を原則「サービス提供月の翌々々月の1日」と案内しています。保険者の修正を待って再請求が延びるときは、時効までの残りの期間も確かめてください。締切日から逆算した月の日程は「介護請求の締め日」で解説しています。
(参考:介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令第3条、介護保険法第200条第1項、国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」、厚生労働省老健局介護保険計画課・老人保健課 事務連絡「「介護給付費請求書等の保管について」の一部改正について」、東京都国民健康保険団体連合会「受付日程・提出方法について」「請求時効について」)
返戻の 理由の 提出前 点検への 反映
返戻の事由とエラーコードは、月ごとに記録しておきます。自事業所で繰り返し出ている誤りが分かるためです。提出前の点検表に足す項目の優先順位も、決めやすくなります。
点検は、2つに分けておきます。1つは、請求ソフトや国保連の事前チェックで見つかる入力の誤りです。もう1つは、ほかの事業所や自治体の情報と照らし合わせないと分からないものです。届け出た体制や、給付管理票との整合がこれにあたります。分けておくと、担当者が変わっても続けやすくなります。国保連の事前チェックは、事業所台帳や受給者台帳との突合によるエラーを対象にしていません。そのため、後者は事業所の側で確かめる必要があります。
伝送で請求している場合は、送信後に伝送通信ソフトの「送信結果」を見ます。受付の状況と、事前チェックの結果を確かめるためです。「様式エラー有」と表示されたまま何もしなければ、エラーのある明細は返戻になります。受付締切日までなら、返戻を待たずに直せます。そのファイルの送信を取り消し、ファイル全体を作り直して送り直します。取消をせずに送り直すと、重複エラーになります。取消の完了を確かめてから送信してください。
給付管理票との不一致による返戻や保留は、居宅介護支援事業所にも出し直しの手間を生みます。月末に居宅介護支援事業所と実績を突き合わせておくと、双方の手戻りを減らせます。提出前の点検項目は「介護報酬の請求ミスを防ぐ点検項目」で解説しています。
(参考:国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」)
国保連 請求 ソフトの 返戻・ 過誤 対応で 確かめる 機能
国保連請求ソフトを選ぶときや見直すときは、返戻や過誤が起きたあとの作業も確かめます。原因の確認から再請求までを、画面上でどこまで進められるかです。
場面 | 確かめる機能 | 確かめる理由 |
|---|---|---|
返戻と保留の区別 | 利用者とサービス提供年月ごとに、返戻か保留かを分けて表示できるか | 保留の明細は再請求せず、給付管理票の提出を依頼するため |
修正箇所の特定 | エラーコードや内容から、直す明細の入力画面を開けるか。サービス提供年月で明細を探せるか | 一覧表の年月は、請求した月ではなくサービス提供年月のため |
再請求と履歴 | 直した明細を次の請求データに含められるか。再請求の結果と、過去の事由・エラーコードを見返せるか | 返戻となった明細書は修正して再請求し、理由を点検表に反映するため |
送信後の確認 | 受付の状況と事前チェックの結果を、どの画面で確かめるか。取消と再送信をどう行うか | 受付締切日までなら、送信を取り消して送り直せるため |
過誤の取下げの記録 | 過誤を依頼した明細と、過誤決定通知書で取下げを確かめたかを記録できるか | 取下げが決定する前に再請求すると、返戻になるため |
過誤のあとの精算 | 利用者負担額が変わるとき、差額を反映した請求書や領収証を出し直せるか | 利用者やご家族の方に、理由と差額を説明して精算するため |
過誤申立の方法は、保険者ごとに異なります。ソフトから申立書を出力できる場合は、利用者の多い保険者の様式に合うかも見ます。
機能の一覧だけでは、操作の手間は分かりません。デモや試用では、自事業所の例を使って次の順に操作します。
- 過去の返戻と過誤の例を用意します。自事業所で出た事由とエラーコードを書き出しておきます。単純な入力漏れだけで試し、自事業所で多い事由を試さないのがよくある失敗です。
- 返戻の明細を直し、次の請求データに含めるところまで操作します。過誤のあとの再請求と、利用者向けの請求書の出し直しも試します。修正画面を見ただけで終えると、実際の手間を見誤ります。
- 同じ操作を、ふだん請求を担当していない職員にも試してもらいます。担当者1人だけで評価すると、交代や休みのときに対応できるかが分かりません。
請求ソフトそのものの比べ方は「介護請求ソフトとは」で解説しています。
(参考:国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」)
まとめ
返戻は、国保連の審査で誤りが見つかった請求が、支払われずに戻されることです。事業所が直して再請求するまで、支払は行われません。一覧表を受け取ったら、まず備考で返戻と保留を分けます。次に、事由とエラーコードで原因の場所を見極めます。原因は、自事業所、保険者や自治体、居宅介護支援事業所のいずれかにあります。そのうえで、修正した明細を次の請求受付期間に再請求します。返戻の理由は、提出前の点検表に書き足してください。審査で決定したあとの請求の誤りは、返戻ではなく過誤の手続で直します。
参考
- 介護保険法(e-Gov法令検索)
- 介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令(e-Gov法令検索)
- 国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」令和7年12月(東京都国民健康保険団体連合会ウェブサイト掲載)
- 厚生労働省老健局「介護保険施設等に対する監査マニュアル」令和6年4月
- 厚生労働省老健局長通知「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」(令和8年3月13日一部改正後全文)
- 厚生労働省老健局老人保健課長通知「「介護給付費請求書等の記載要領について」の一部改正について」(令和8年3月31日老老発0331第1号、介護保険最新情報Vol.1489)
- 厚生労働省老健局介護保険計画課・老人保健課 事務連絡「「介護給付費請求書等の保管について」の一部改正について」(平成27年4月1日、介護保険最新情報Vol.462。埼玉県ウェブサイト掲載)
- 東京都国民健康保険団体連合会「受付日程・提出方法について」
- 東京都国民健康保険団体連合会「請求時効について」

