介護保険サービスの利用者負担は、費用の1割が原則です。ただし、65歳以上(第1号被保険者)で所得が一定以上の人は、2割または3割になります。判定には、本人の合計所得金額と、同じ世帯の65歳以上の人の「年金収入等」の2つが使われます(2026年9月時点)。

事業所が利用者ごとの負担割合を正しく登録しておくと、利用者から受け取る額と保険者側へ請求する額を誤りなく分けられます。利用者やご家族の方にとっても、支払額を事前に知ったうえで必要なサービスを選べることにつながります。

この記事では、2割・3割になる条件、負担割合証で確認する項目と時期、負担割合のほかに支払額に影響する費用、2割負担の範囲の見直しの状況を扱います。

利用者負担は原則1割で保険給付は9割

介護保険法では、介護サービス費のうち保険から支給されるのは原則9割で、残りの1割を利用者が負担します。65歳以上で所得が一定以上の人は、保険から支給される割合が8割または7割に下がり、利用者負担が2割または3割になります。要支援の人が使う介護予防サービスも同じ仕組みです。なお、居宅介護支援(ケアプランの作成など)は全額が保険給付され、利用者負担はありません。

(参考:介護保険法 第41条第4項・第49条の2・第59条の2、厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第136回)資料2)

たとえば、介護保険の対象となるサービス費が1万円の場合、負担の内訳は次のとおりです。

負担割合

利用者の負担額

介護保険から支払われる額

1割

1,000円

9,000円

2割

2,000円

8,000円

3割

3,000円

7,000円

事業所は、負担割合に応じて利用者から受け取る額と、保険者(審査・支払を委託された国保連)へ請求する額を分けて計算します。単位数から利用者負担額を出すまでの計算は「介護報酬の計算方法」で解説しています。

2割・3割の判定に使う2つの所得

2割と3割の基準額は、介護保険法施行令第22条の2に定められています。65歳以上の人は、本人の合計所得金額と、同じ世帯の65歳以上の人全員の年金収入等の合計の2つがどちらも基準以上のときに、2割または3割になります。3割の条件に当てはまるかを先に見て、当てはまらなければ2割の条件を見る、という順に読むと分かりやすいでしょう。

負担割合

本人の合計所得金額

世帯の年金収入等(65歳以上が本人のみ)

世帯の年金収入等(65歳以上が2人以上)

1割

2割・3割の条件に当てはまらない人

−

−

2割(3割に当てはまらない場合)

合計所得金額が160万円以上

年金収入等が280万円以上

年金収入等の合計が346万円以上

3割

合計所得金額が220万円以上

年金収入等が340万円以上

年金収入等の合計が463万円以上

(参考:介護保険法施行令 第22条の2第3項・第4項・第6項・第7項)

表の「年金収入等」は、公的年金等の収入金額と、年金以外の所得である「その他の合計所得金額」を足した額です。世帯の判定で合算するのは同じ世帯の65歳以上の人だけで、同居していても64歳以下の家族は人数にも収入にも含めません。また、40〜64歳の第2号被保険者、市町村民税が非課税の人、生活保護を受けている人は、所得にかかわらず1割です。

判定に使う合計所得金額は、税の合計所得金額そのものではありません。土地などの売却にかかる特別控除を差し引き、給与所得と年金所得の合計から10万円を控除するなど、介護保険のための調整を加えた額です。源泉徴収票や確定申告書の数字をそのまま当てはめても、判定と一致するとは限りません。

本人の合計所得金額が220万円以上なら「必ず3割」ではない

本人の合計所得金額が220万円以上でも、世帯の年金収入等が3割の基準に届かなければ、2割の条件で判定されます。同じように、合計所得金額が160万円以上でも、年金収入等が2割の基準に届かなければ1割です。

利用者から収入を聞いて事業所が割合を判定することはせず、市町村が交付した負担割合証に書かれた割合を使ってください。

負担割合証で見る項目は割合と適用期間

負担割合証は、市町村が有効期限を定めて、要介護・要支援の認定を受けた人に交付します。利用者は、居宅サービスを受けるたびに、被保険者証と一緒に負担割合証を事業所に示すことになっています。一律1割の第2号被保険者にも交付されます。

有効期限は、8月1日から翌年7月31日までです。8月からの1年間の割合は前年の所得で判定されるため、所得が変わった人は8月に割合が変わることがあります。新しい証は、8月1日からのサービス利用に間に合うよう7月中に交付されます。

また、年度の途中で65歳になる第2号被保険者や、世帯の変更で割合が変わる人には、負担割合欄が2段になった証が交付される場合があります。2段の証では、それぞれの割合が何月のサービスから適用されるかを確かめます。

(参考:介護保険法施行規則 第28条の2第1項・第63条、厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1532「介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて」の一部改正について(令和8年7月31日))

事業所での確認は、次の順に行います。

  1. サービス開始時:被保険者証と負担割合証を確認し、記載された割合と有効期限を利用者台帳と請求ソフトに登録する。被保険者証だけを見て、割合を1割のまま登録しない。
  2. 毎年7〜8月:新しい負担割合証を確認し、8月のサービス提供分から反映する。前年の証の割合を引き継いだままにしない。
  3. 年度の途中で変更の連絡があったとき:新しい証の割合と適用開始日を確認し、どのサービス提供月から切り替えるかを決める。連絡を受けた日から切り替えるのではなく、証に書かれた適用開始日に合わせる。
  4. 請求前:登録した割合と、サービスの提供実績、保険対象の費用、保険外の費用を照らし合わせる。有効期限が切れた証の割合で計算していないかも確かめる。

利用者が負担割合証を示せないときは、市町村に問い合わせることもできますが、事業所であることの確認を求められます。世帯構成の変更の届出の遅れや、修正申告による所得の更正があると、割合が過去にさかのぼって変わる場合があります。その場合は保険者が過誤調整を行うため、過去の請求の直し方は保険者の案内に従ってください。過誤の手続きは「介護請求の過誤とは」で解説しています。

負担割合のほかに支払額を左右する費用

負担割合は、介護保険の対象となるサービス費にかける割合です。実際の支払額は、サービスの内容と回数、加算のほか、食費や居住費などの保険外の費用によって変わります。在宅サービスでは、区分支給限度基準額を超えて利用した分が全額自己負担になり、保険対象分の利用者負担が一定額を超えた月は高額介護サービス費の対象になる場合があります。

利用者やご家族の方に概算を伝えるときは、どのサービスを何回使う前提か、保険外の費用を含むかを添えて伝えると、あとで請求額との差を説明しやすくなります。

(参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」、厚生労働省 介護サービス情報公表システム「概算料金の試算」)

2割負担の対象拡大はどうなっている?

2026年9月時点では、2割負担となる所得基準の見直しが社会保障審議会介護保険部会で検討されており、2026年度中に結論を得るとされています。会議資料に載っている基準の案や負担増への配慮措置は、現在の請求に使う基準ではありません。

見直しが決まったら、新しい基準の施行日と、保険者から交付される負担割合証の適用期間を確認し、請求ソフトの設定に反映します。

(参考:厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第136回)資料2)

まとめ

介護保険の自己負担割合は原則1割で、所得の条件に当てはまる65歳以上の人は2割または3割です。

事業所の実務は、判定の条件を知ったうえで、利用者ごとの負担割合証に書かれた割合と有効期限を確認することから始まります。

サービス開始時と毎年8月の切り替え時に、証の割合を利用者台帳と請求ソフトに登録し、請求前に提供実績や保険外の費用と照らし合わせてください。2割負担の範囲の見直しは、決まった時点で施行日と新しい負担割合証を確認します。

参考