口腔衛生管理加算は、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が入所者の口腔衛生等の管理を月2回以上行い、介護職員に具体的な技術的助言・指導をした場合に、入所者ごとに1月につき算定する加算です。2026年9月時点の単位数は、(Ⅰ)が月90単位、(Ⅱ)が月110単位です。

要件の多くは歯科衛生士が行う業務なので、施設側の準備は、連携する歯科医療機関との取り決めから始まります。この記事では、対象施設と単位数、(Ⅰ)の要件、(Ⅱ)で加わるLIFE提出、医療保険の訪問歯科衛生指導との関係、運営基準で求められる口腔の評価、算定前の準備の手順を扱います。

対象施設と(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数

対象は、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院の4つです。単位数と要件の違いは次のとおりです。

区分

単位数(1月につき)

要件の違い

口腔衛生管理加算(Ⅰ)

90単位

歯科衛生士による月2回以上の口腔衛生等の管理と、介護職員への技術的助言・指導など

口腔衛生管理加算(Ⅱ)

110単位

(Ⅰ)の要件すべてに加え、入所者ごとの情報をLIFEで提出し、口腔衛生の管理に活用していること

(Ⅰ)と(Ⅱ)は併せて算定できず、どちらか一方になります。歯科衛生士の業務の要件は同じなので、LIFEへの提出を続けられる体制があるかどうかで区分を選ぶと考えると分かりやすいでしょう。なお、2026年6月の期中改定(令和8年厚生労働省告示第87号)は処遇改善加算の拡充と食費の基準費用額の引上げが中心で、この加算の単位数と要件は改正されていません。

(参考:厚生労働省「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第21号)、厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」(令和8年厚生労働省告示第87号)、厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」)

(Ⅰ)の算定要件と施設側の確認点

(Ⅰ)の要件は、厚生労働大臣が定める基準(大臣基準告示)第69号イに定められた次の5つです。

  • 歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の技術的助言・指導に基づき、入所者の口腔衛生等の管理に係る計画が作成されていること
  • 歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、入所者に対し、口腔衛生等の管理を月2回以上行うこと
  • 歯科衛生士が、その入所者の口腔衛生等の管理について、介護職員に具体的な技術的助言・指導を行うこと
  • 歯科衛生士が、その入所者の口腔に関する介護職員からの相談等に、必要に応じて対応すること
  • 施設が定員超過利用や人員基準欠如に該当していないこと

留意事項通知では、あわせて次の運用を求めています。施設は、加算に係るサービスを提供する月に、医療保険の訪問歯科衛生指導を受けているかどうかを入所者またはご家族に確認し、サービスを説明して同意を得ます。歯科衛生士は、口腔に関する問題点、歯科医師からの指示内容の要点、実施した管理の内容、介護職員への助言・指導の内容などの記録を、別紙様式3(口腔衛生管理加算 様式(実施計画)。地域密着型介護老人福祉施設は地域密着型サービスの留意事項通知の別紙様式1)を参考に作成して施設に提出し、施設はその記録を保管します。また、口腔の状態から医療保険での対応が必要になった場合は、歯科衛生士が歯科医師と施設に情報を提供します。

施設側で確かめたいのは、計画の作成、月2回以上の実施、介護職員への助言が、入所者ごと・月ごとに記録で追えるかどうかです。告示と留意事項通知の読み方は、「介護加算の算定要件の調べ方」で解説しています。

(参考:厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準」(平成27年厚生労働省告示第95号)第69号、厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月8日老企第40号))

(Ⅱ)で加わるLIFE提出の時期と項目

(Ⅱ)では、(Ⅰ)の要件に加えて、入所者ごとの口腔衛生等の管理に係る情報をLIFE(科学的介護情報システム)で厚生労働省に提出し、その情報やフィードバックを口腔衛生の管理に活用していることが要件になります。提出は入所者ごとに、次の月の翌月10日までに行います。

  1. 計画を新規に作成した日の属する月:作成月の提出を、翌月の定期分とまとめてしまわない。
  2. 計画を変更した日の属する月:歯科衛生士の助言で計画を見直したときも対象になるので、変更の連絡が提出担当に届くようにしておく。
  3. 上記のほか、少なくとも3か月に1回:前回の提出月から数え、3か月を空けすぎない。

提出する項目は、別紙様式3にある「要介護度」「日常生活自立度」「現在の歯科受診について」「義歯の使用」「栄養補給法」「食事形態」「誤嚥性肺炎の発症・既往」「口腔の健康状態の評価・再評価」「口腔衛生の管理内容(実施目標、実施内容及び実施頻度)」「歯科衛生士が実施した口腔衛生等の管理及び介護職員への技術的助言等の内容」です。様式の欄をそのまま埋めていけば提出項目がそろうので、記録と提出の様式を分けないほうが手間は減るでしょう。LIFEでの操作は「LIFEへのデータ提出の手順」で解説しています。

なお、口腔衛生管理加算(Ⅱ)は、栄養マネジメント強化加算とともに、介護老人福祉施設の個別機能訓練加算(Ⅲ)、介護老人保健施設のリハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)、介護医療院の理学療法等の加算(2024年度新設)の要件にもなっています。これらを算定している施設で(Ⅱ)が要件を欠くと、あわせて算定できなくなるため、担当者間で算定状況を共有しておきます。詳しくは「個別機能訓練加算」と「栄養マネジメント強化加算とは」で解説しています。

(参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和6年3月15日老老発0315第4号)、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)

医療保険の訪問歯科衛生指導との関係

医療保険で歯科訪問診療料が算定された月でも、この加算は算定できます。一方、訪問歯科衛生指導料が算定された月に、同指導料が3回以上(2024年6月以降、緩和ケアを実施するものの場合は7回以上)算定されていると、その月はこの加算を算定できません。

訪問歯科衛生指導料を算定するのは歯科医療機関なので、施設の記録だけでは、その月に加算を算定できるかどうかを判断できません。月ごとに、訪問歯科衛生指導料の算定回数を歯科医療機関から共有してもらう取り決めにしておきましょう。

(参考:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」新旧対照表(令和6年))

加算を算定しない施設にも求められる口腔の評価

加算とは別に、介護保険施設には運営基準で、口腔衛生の管理体制を整備し、入所者の状態に応じた口腔衛生の管理を計画的に行うことが求められています。2024年度改定では、施設の従業者または歯科医師・歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、入所者ごとに入所時と入所後月に1回程度、口腔の健康状態を評価すること、評価や技術的助言・指導を行う歯科医師・歯科衛生士と実施事項等を文書等で取り決めることが加わりました。

この取り決めは加算の算定の有無にかかわらず必要なので、加算の準備で歯科と結ぶ取り決めは、同じ文書にまとめると管理しやすくなります。

(参考:厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)第17条の3、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)

算定前の準備の手順

  1. 連携する歯科医療機関と、歯科衛生士の訪問日程(月2回以上)、介護職員への助言・指導の方法、相談への対応方法、訪問歯科衛生指導料の算定回数の共有方法を決め、文書にする。訪問日程だけを決めて、介護職員への助言の方法を決めないままにしないようにします。
  2. 入所者またはご家族に、医療保険の訪問歯科衛生指導の有無を確認し、加算に係るサービスを説明して同意を得る。確認はサービスを行う月ごとに求められているので、入所時に一度確認しただけで済ませないようにします。
  3. 歯科衛生士の技術的助言・指導に基づき、入所者ごとの計画を別紙様式3を参考に作成する。計画が歯科医師または歯科衛生士の助言・指導に基づくことが要件なので、施設だけで作った計画にしないようにします。
  4. 歯科衛生士が実施した管理と介護職員への助言の内容を、毎月記録して保管する。歯科衛生士の訪問が延期になっても月2回に届くよう、日程は月の前半から組みます。
  5. (Ⅱ)を算定する場合は、LIFEの提出担当を決め、計画の作成・変更日から提出月を割り出した予定表を作る。計画を変更しても提出担当に伝わらず、変更月の提出が漏れることがないようにします。

まとめ

口腔衛生管理加算は、歯科衛生士による月2回以上の口腔衛生等の管理と介護職員への技術的助言・指導が要件で、(Ⅱ)ではLIFEへの提出と活用が加わります。準備の出発点は、連携する歯科医療機関と、訪問日程・助言の方法・訪問歯科衛生指導料の算定回数の共有までを文書で取り決めることです。取り決めができたら、入所者ごとの計画と記録の様式をそろえ、(Ⅱ)を算定する場合はLIFEの提出予定表を作ります。

口腔の管理が計画どおりに続き、歯科衛生士の助言が介護職員の日々の口腔ケアに生きることで、入所者の口腔の状態の変化に早く気づき、歯科受診につなげやすくなります。

参考