ADL維持等加算は、利用者のADL(日常生活動作)を一定期間維持・改善できた事業所を評価する加算です。単位数は、(Ⅰ)が月30単位、(Ⅱ)が月60単位です。算定するには、3つの要件を満たす必要があります。1つ目は、利用期間が6月を超える利用者が10人以上いることです。2つ目は、Barthel Indexで測ったADL値をLIFEへ提出していることです。3つ目は、ADL利得の平均が(Ⅰ)は1以上、(Ⅱ)は3以上であることです。
算定できるのは、1年間の評価対象期間の結果が出たあとです。そのため、算定したい月のおよそ1年前から、届出とADL値の測定を始めます。この記事では、対象サービスと単位数、算定要件、ADL利得の基準を扱います。評価対象期間と届出の時期、2026年度のLIFEへの登録も整理します。最後に、準備の手順を示します(2026年10月時点)。
2024年度の介護報酬改定で、(Ⅱ)のADL利得の基準が「2以上」から「3以上」に上がりました。ADL利得の計算方法も簡素化されています。一方、2026年6月の期中改定は、処遇改善加算の拡充などが中心でした。この加算は見直されていません。
(参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」、「令和8年度介護報酬改定について」)
対象の 7サービスと 単位数
対象は次の7サービスです。単位数は、どのサービスも(Ⅰ)が月30単位、(Ⅱ)が月60単位です。(Ⅰ)と(Ⅱ)を同時に算定することはできません。
- 通所介護
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 介護老人福祉施設
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
これ以外のサービスには、この加算はありません。介護予防サービスも同じです。
(参考:厚生労働大臣が定める基準 第16号の2、指定居宅サービス・指定施設サービス等・指定地域密着型サービスの各費用の額の算定に関する基準)
(Ⅰ)と (Ⅱ)の 算定 要件と LIFEへの 提出
要件は、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)の第16号の2に定められています。
要件 | ADL維持等加算(Ⅰ) | ADL維持等加算(Ⅱ) |
|---|---|---|
評価対象者(利用期間が6月を超える利用者)の数 | 10人以上 | 10人以上 |
ADL値の測定と厚生労働省への提出 | 評価対象者全員について、評価対象利用開始月と6月目にADL値を測定し、測定した月ごとにLIFEで提出 | (Ⅰ)と同じ |
評価対象者のADL利得の平均 | 1以上 | 3以上 |
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは、ADL利得の平均の基準だけです。評価対象利用開始月は、その利用者の利用期間の初月を指します。6月目は、利用開始月の翌月から数えて6月目です。例えば、利用開始月が4月なら10月です。6月目にサービスの利用がない場合は、利用があった最終の月に測定します。
ADLの評価は、一定の研修を受けた者がBarthel Indexを用いて行います。厚生労働省のQ&Aは、「一定の研修」の例を2つ挙げています。Barthel Indexの測定方法に関する研修の受講と、厚生労働省のマニュアル・動画による学習です。Q&Aは、評価の質の管理も求めています。評価する職員を、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の指導を受ける研修に定期的に参加させます。参加履歴も管理します。はじめて評価する職員は、理学療法士等の同席の下で評価します。評価の項目と配点は「Barthel Indexの10項目と配点」で解説しています。
LIFEへは、評価対象利用開始月と6月目の月の情報を、それぞれ翌月10日までに提出します。提出する情報は3つあります。ADL値、「基本情報」、「初月対象又は6月対象への該当」です。「基本情報」は、科学的介護推進に関する評価の様式にある項目です。提出すべき月の情報を提出していない事実が生じたときは、直ちに届出を行わなければなりません。提出の操作は「LIFEのデータ提出方法」で解説しています。
(参考:厚生労働大臣が定める基準 第16号の2、留意事項通知の新旧対照表(2024年度改定)、「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」、「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)」問5)
ADL 利得の 計算で 見落としやすい 点
ADL利得は、利用者ごとに求めます。6月目のADL値から、評価対象利用開始月のADL値を引きます。そこに、開始月のADL値に応じた値を加えます。加える値は、サービスの種類によって異なります。通所介護向けの解説の値を、ほかのサービスに当てはめないようにします。サービス別の加える値と計算例は「ADL利得とは」で解説しています。
判定に使うのは、評価対象者のADL利得の平均です。平均が1以上なら(Ⅰ)、3以上なら(Ⅱ)の基準を満たします。平均を出すときは、ADL利得の多い順に、上位1割と下位1割の利用者を除きます。除く人数の1未満の端数は切り捨てます。例えば、評価対象者が15人なら、上位・下位から1人ずつ除きます。残りの13人の平均で判定します。
なお、2024年度改定の前は、計算方法に2つの区別がありました。1つは、初回の要介護認定から12月以内の利用者に、別の値を加える扱いです。もう1つは、他の事業所のリハビリテーションを併用している利用者の扱いです。改定で計算方法が簡素化され、現行の留意事項通知にはこれらの区別がありません。改定前の資料や社内の計算表を使い続けていないかを確かめてください。
(参考:留意事項通知の新旧対照表(2024年度改定)老企第36号・老企第40号・老計発第0331005号等、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)
評価 対象 期間と 届出の 時期
評価対象期間は、加算の算定を開始する月の前年の同月から起算して12月までの期間です。算定できるのは、評価対象期間の満了日の属する月の翌月から12月以内に限られます。例えば、2027年4月から算定する場合、評価対象期間は2026年4月から2027年3月までです。算定できるのは、2027年4月から2028年3月までです。
なお、留意事項通知には、届出の日から数える扱いもあります。算定を開始する月の前年の同月に、基準に適合するものとして届け出ている場合です。この場合は、届出の日から12月後までが評価対象期間です。算定開始月の前年同月には届出を済ませ、測定を始めておく必要があります。
届出先は、地域密着型サービスは市町村、それ以外は都道府県です。指定都市・中核市が指定権者の場合は、その市になります。届出の様式や締切は、指定権者ごとに示されています。算定開始の1年前の時点で確認してください。
(参考:厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等 第15号の2、留意事項通知の新旧対照表(2024年度改定)、各費用の額の算定に関する基準)
2026年度の 算定と LIFEへの ADL 値の 登録
LIFEは、2026年5月11日から国民健康保険中央会(国保中央会)が運用しています。厚生労働省が運用していたLIFEへ提出済みの様式情報は、原則として出し直す必要がありません。ただし、ADL維持等加算は扱いが別です。評価対象期間の途中で移ると、国保中央会運用LIFEでADL利得を算出できないためです。
2026年度に算定する場合の対応は、厚生労働省の2026年4月21日の事務連絡にあります。別添のQ&Aです。介護ソフトからCSVファイルを出力し、国保中央会運用LIFEに取り込みます。評価対象期間中に評価したすべてのADL値を登録し、そこから計算したADL利得で算定します。CSVで取り込めない場合の扱いは、算定の状況によって分かれます。場合ごとの扱いは「ADL利得とは」で解説しています。
(参考:介護保険最新情報Vol.1495 別添Q&A 問4・問6)
算定 開始までの 準備の 手順
- 評価対象者の見込みを確認する。評価対象期間中に、利用期間が6月を超える見込みの利用者を利用実績から数えます。10人以上いるかを確かめます。よくある失敗は、今の利用者数だけで判断し、期間中の利用終了や入院を見込まないことです。
- 評価者を決めて育成する。Barthel Indexで評価する職員を決め、研修やマニュアルで測定方法を学んでもらいます。研修の参加履歴も残します。よくある失敗は、評価に慣れていない職員が一人で初回の評価を行うことです。
- 算定開始月の前年同月に届け出る。指定権者の様式と締切を確かめて届け出ます。よくある失敗は、算定を始める直前に届け出ようとすることです。評価対象期間が足りなくなります。
- 利用者ごとの評価月と提出期限を一覧にする。評価対象利用開始月、6月目の月、それぞれの提出期限(翌月10日)を一覧にします。カレンダーにも入れます。よくある失敗は、6月目を利用開始月から数えて、1か月早く測定することです。
- LIFEへの提出をほかの加算と合わせて管理する。科学的介護推進体制加算の様式(別紙様式1)にも、Barthel IndexによるADLの項目があります。同じ利用者の評価の予定を1つの表で管理すると、手間を減らせます。よくある失敗は、提出が漏れたことに気づいても届出をしないことです。科学的介護推進体制加算の要件は「科学的介護推進体制加算の算定要件」で解説しています。
- 評価対象期間が終わったらADL利得を確かめる。上位・下位1割を除いた平均が、(Ⅰ)は1以上、(Ⅱ)は3以上かを確かめてから請求します。よくある失敗は、除外をせずに全員の平均で判断することです。
ADL値を決まった時期に測り続けると、利用者一人ひとりのADLの変化に早く気づけます。留意事項通知も、LIFEへの提出情報とフィードバックの活用を求めています。個別機能訓練計画の作成・実施・評価・見直しのサイクルを回すためです。評価結果は、利用者の生活動作を保つためのケアの見直しに使います。そうすると、自立支援・重度化防止という加算の目的に沿った運用になります。
(参考:厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等 第15号の2、「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」、厚生労働省「別紙様式1 科学的介護推進に関する評価(通所・居住サービス)」)
まとめ
ADL維持等加算は、1年間の評価対象期間の測定結果で、算定できるかが決まります。算定できるのは、その翌月からの12月です。準備の出発点は、算定したい月を決めることです。その前年同月に、届出と測定を始められるかを確かめます。次に、評価対象者の見込みを数え、評価者と利用者ごとの評価月の一覧を用意してください。
参考
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」新旧対照表(令和6年度改定)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」新旧対照表(令和6年度改定)
- 介護保険最新情報Vol.1213「「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について」(令和6年3月15日)
- 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和6年3月15日老老発0315第4号)
- 厚生労働省「別紙様式1 科学的介護推進に関する評価(通所・居住サービス)」
- 介護保険最新情報Vol.965「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)」(令和3年4月9日)
- 介護保険最新情報Vol.1495「LIFEの厚生労働省から公益社団法人国民健康保険中央会への移管に伴い事業所・施設で必要な対応について」(令和8年4月21日)

