スマホインカムと専用機のいちばん大きな違いは、通話の経路です。スマホインカムは携帯電話回線やWi-Fiなどのインターネット回線を経由して話し、専用機(特定小電力トランシーバーなど)は機器どうしが直接電波をやり取りします。この違いが、費用のかかり方、通話できる範囲、使えなくなる場面の違いにつながります。

どちらが合うかは、建物の構造、勤務の人数、すでにある端末によって変わります。この記事では、両者の比べ方と、導入前の試用で確かめることを扱います。

スマホインカムと専用機の比較

ここでの専用機は、特定小電力トランシーバーを指します。特定小電力無線局は、総務省が定める条件を満たした無線設備であれば、無線局の免許も無線従事者の資格も要りません。

比べる点

スマホインカム

専用機(特定小電力)

通話の経路

携帯電話回線やWi-Fiを経由

機器どうしが電波で直接通話

通話できる範囲

回線につながる場所

電波の届く範囲

主な費用

アプリ利用料と通信費

機器の購入費

話すときの操作

画面操作か外付けボタン

本体やマイクのボタン

使えなくなる場面

圏外・回線の障害・電池切れ

電波の届かない場所・電池切れ

スマホインカムは、回線につながる場所であれば距離の制限を受けにくく、フロアや建物をまたいで話せます。その代わり、Wi-Fiの届かない場所や携帯電話の電波が弱い場所では、音声が遅れたり途切れたりすることがあります。停電や回線の障害でWi-Fiが止まったときに、どう連絡を取るかも決めておく必要があります。

専用機は回線に頼らずに通話できますが、電波の届く範囲に限りがあり、壁や階の多い建物では届きにくい場所が出ることがあります。届く範囲は中継器を置いて広げられるため、見積もりの段階で中継器が要るかを確かめます。専用機の選び方は「介護施設向け業務用インカムの選び方」で解説しています。

(参考:総務省 信越総合通信局「免許などを要しない小電力無線局について」)

「既存のスマホがあれば費用はかからない」わけではない

業務用スマートフォンをすでに配布していれば、スマホインカムは端末を買い足さずに始められます。ただし、アプリの利用料が端末(ID)ごとの月額でかかる製品があり、携帯電話回線で使うなら通信費も続きます。専用機は機器の購入費が中心で、台数を増やすたびに購入費がかかります。

比べるときは、初期費用だけでなく「台数 × 使う年数」で合計額を出すと、違いが分かりやすくなります。無料のアプリで済ませる場合の注意点は「無料インカムアプリと有料アプリの違い」で解説しています。

介助中の操作で気をつける点

介助中は両手がふさがっていたり、手袋をしていたりするため、画面を見て操作する方法は使いにくい場面があります。スマホインカムでも、製品によってはBluetoothなどでつなぐ専用のボタンやイヤホンマイクで、画面を見ずに話せるものがあります。試用のときは、アプリだけでなく、実際に使う周辺機器を組み合わせて確かめます。

スマートフォンを介助中に身につける場合は、落下や水濡れへの対策(ケースやストラップなど)も合わせて考えます。また、通話を録音・保存できる製品では、利用者の名前や状態が記録に残ります。保存先と閲覧できる人を、施設の個人情報の取り扱いに合わせて決めておきます。

スマホインカムが選択肢になる施設

次のような施設では、スマホインカムが選択肢になります。

  • 業務用スマートフォンをすでに職員に配布している
  • 複数の建物や拠点をまたいで連絡を取りたい
  • 専用機では電波が届きにくい階や場所がある
  • 記録や連絡のアプリと同じ端末にまとめたい

一方、Wi-Fiや携帯電話の電波が弱い場所が多い建物では、専用機のほうが確実に話せる場合があります。ナースコールや見守りシステムとつなげたい場合は、対応する機種かどうかを確かめる必要があるため、「介護インカムとナースコール・見守りシステムの連携|選ぶときの確認項目と問い合わせ前の準備」も確認してください。

無料試用での確かめ方

スマホインカムも専用機も、無料試用やデモ機の貸し出しを受けられる製品があります。次の順に確かめます。

  1. 試す場所を決める。浴室、居室の奥、階段、エレベーターなど、電波の届きにくい場所を必ず含めます。よくある失敗は、事務所の近くだけで試して問題なしとすることです。
  2. 実際に使う職員に試してもらう。介助中の職員が、手袋をしたまま、両手がふさがったまま話せるかを見ます。よくある失敗は、導入担当者だけで操作性を判断することです。
  3. 1回の勤務を通して使う。夜勤を含め、勤務の終わりまで電池が持つか、同時に話す人数が増えても聞き取れるかを確かめます。よくある失敗は、数時間の試用で決めることです。
  4. 費用を同じ条件で比べる。必要な台数と使う年数をそろえて、スマホインカムと専用機の合計額を出します。よくある失敗は、初期費用だけで比べることです。
製品名特徴料金
Buddycom
公式サイト ↗
スマートフォンをインカムのように使い、音声・映像・位置情報を共有できる。月額Talk Liteプラン:年契約で1ユーザー月額600円、月契約で月額1,000円(税抜)。上位プランあり(30日間無料トライアルあり)
アルインコ インカム/アプリ無線
公式サイト ↗
施設内の職員同士がリアルタイムに通話し、連絡や応援要請を素早く共有できる。買い切り特定小電力トランシーバーなどの機器はオープン価格(販売店で購入)。構成により個別見積

まとめ

スマホインカムと専用機の違いは通話の経路にあり、そこから費用のかかり方、通話できる範囲、使えなくなる場面が分かれます。選ぶときは、まず電波の届きにくい場所と、介助中に話す場面を書き出すところから始めます。そのうえで、候補の製品を実際の建物と勤務で試し、台数と年数をそろえた費用と合わせて決めてください。職員どうしの呼びかけが確実に届けば、応援が早く来て、利用者を待たせる時間を減らすことにもつながります。

参考