国保連伝送(インターネット請求)を始めるには、3つの準備が要ります。伝送に対応した介護請求ソフト、国民健康保険団体連合会(国保連)への届出、電子証明書の取得です。ソフトの契約や入れ替えと並行して手続を進めないと、最初の月の請求に間に合わないおそれがあります。

この記事では、請求方法の決まり、伝送に要る準備、請求の形による違いを扱います。開始までの手順と、送信後の受付の確認も整理します(2026年10月時点)。伝送に対応した介護請求ソフトの選び方は「介護請求ソフトとは」で解説しています。国保連が請求先になる仕組みは「介護請求とは」で解説しています。

請求方法の決まりは伝送か光ディスク等

請求の方法は、厚生労働省令が定めています。「介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令」(以下、請求命令)です。第2条は、事業所ごとに、次のどちらかで請求すると定めています。1つは、国が定める事項を、伝送(電子情報処理組織)で審査支払機関のファイルに記録する方法です。もう1つは、国が定める規格の光ディスク等を、審査支払機関に提出する方法です。審査支払機関は、制度上は市町村です。審査と支払の事務を国保連に委託している場合は、国保連を指します(第1条第3項)。

伝送は、以前はISDN回線でも行えました。2018年4月からは、インターネットによる請求だけになっています。いま「国保連伝送」と言うときは、インターネット請求を指すと考えてよいでしょう。

紙の請求書による請求(書面による請求)ができるのは、請求命令の附則に定める場合に限られます。附則第2条と第3条の届出期限は2018年3月31日、附則第4条の届出期限は2024年3月31日です。いずれも過ぎています。一方、附則第5条は、あらかじめ届け出れば書面で請求できる場合を定めています。通信回線の障害が起きている間は、その1つです。機器やソフトの導入契約を結んだものの、請求日までに導入作業が終わらない間も当たります。改築工事中の施設や臨時の施設で事業を行っている間、廃止や休止の計画がある場合も同じです。伝送や光ディスク等による請求が特に難しい事情がある場合も含まれます。届出には、その内容を確かめられる資料を添えます。ソフトの入れ替えが遅れたときの手段はありますが、請求先の国保連への相談が前提です。導入の日程は、余裕をもって組んでください。

(参考:請求命令 第1条第3項・第4項、第2条、附則第2条〜第5条、北海道国民健康保険団体連合会「介護保険におけるインターネット請求開始について」)

伝送に要る準備とソフトが担う範囲

インターネット請求では、請求データを介護の電子請求受付システムへ送信します。データは、そこから国保連に届きます。電子請求受付システムには、請求データを作ったり送信したりする機能はありません。そのため、データの作成と送信には請求ソフトを使います。国保中央会の介護伝送ソフトや、各社の介護ソフトなどです。国保連の案内をもとに準備するものを整理すると、次のとおりです。

準備するもの

用意する先

確かめること

インターネット回線とパソコン

事業所

電子請求受付システムの動作環境

伝送に対応した請求ソフト

ソフトの提供元

データの作成と送信の両方ができるか

電子請求受付システムのID

国保連(通知の文書で届く)

通知の文書を保管する人

電子証明書

国保連が発行

有効期間(3年)と更新の時期

ソフトの「伝送対応」は、表の2行目だけを指します。回線やパソコンの動作環境、国保連から届くIDと電子証明書は、ソフトを契約しただけではそろいません。電子証明書の発行には手数料がかかります。支払方法や金額は、国保連の案内で確かめてください。

(参考:東京都国民健康保険団体連合会「インターネット請求について」、兵庫県国民健康保険団体連合会「インターネット請求を始める際の準備について」)

事業所単独請求と代理人請求の違い

インターネット請求には、事業所が自ら送信する形のほかに「代理人請求」があります。代理人が、事業所に代わって送信する形です。北海道国保連の案内では、次の3つに分けています。

請求の形

送信する者

電子証明書

事業所単独請求

事業所

事業所ごとに取得

代理人請求(自法人)

事業所の開設者

代理人が取得

代理人請求(第三者)

開設者以外の法人

代理人が取得

代理人に請求を委任した事業所は、自ら電子証明書を取得する必要はありません。代理人は、1つの電子証明書で100事業所まで請求できます。複数の事業所をもつ法人がまとめて請求する場合や、外部の事業者に請求を任せる場合がこれに当たります。代理人請求では、代理人の登録や事業所の追加の申請、事業所からの委任の手続が別に必要です。

請求ソフトを比べるときは、送信の形を確かめます。事業所の電子証明書で送信する形か、提供元などが代理人として送信する形かです。どちらの形かによって、事業所が行う手続と、証明書の更新を管理する人が変わります。

(参考:北海道国民健康保険団体連合会「介護保険におけるインターネット請求開始について」、東京都国民健康保険団体連合会「インターネット請求について」、兵庫県国民健康保険団体連合会「インターネット請求を始める際の準備について」)

請求開始までの届出と手順

請求命令第4条第1項は、伝送または光ディスク等による請求を始めるときの届出を定めています。あらかじめ、次の事項を審査支払機関に届け出ます。

  • 請求事業者の名称と所在地
  • 請求を行う事業所の名称と所在地
  • 介護保険事業所番号
  • 伝送か光ディスク等かの別
  • 請求を始める年月

事業者や事業所の名称・所在地、請求の方法を変えるときも、あらかじめ届け出ます(第4条第2項)。光ディスク等から伝送に切り替える場合は、この変更の届出が必要です。届出の様式の名称や出し方は、国保連によって異なります。兵庫県国保連は、届出から請求ができるようになるまで1か月程度かかると案内しています。国保連の運用や準備の内容で異なる、としたうえでの案内です。

国保連の案内に沿うと、伝送を始めるまでの作業は次の順になります。

  1. 請求先の国保連のサイトで、伝送(インターネット)による請求を始める届出の様式と時期を確かめ、届け出ます。ソフトの契約を済ませただけで、請求を始められると考えないようにします。
  2. 事業所単独請求か代理人請求かを決め、その形で送信できるかをソフトの提供元に確かめます。代理人請求にする場合は、代理人の登録の手続も進めます。
  3. 国保連から届く「電子請求登録結果に関するお知らせ」のIDなどで、電子請求受付システムにログインします。事業所単独請求の場合は、電子証明書の発行を申請します。お知らせを受け取った人が分からなくならないよう、保管する人を決めておきます。
  4. 発行された電子証明書を請求に使うパソコンに取り込み、請求ソフトに送信の設定をします。初回の請求の前に、送信の操作を担当者どうしで確かめておきます。

北海道国保連のように、電子証明書の発行処理を月末から翌月10日までの平日に行う国保連もあります。開始したい月から逆算して、手続を始めてください。

(参考:請求命令 第4条、東京都国民健康保険団体連合会「インターネット請求について」、北海道国民健康保険団体連合会「介護保険におけるインターネット請求開始について」、兵庫県国民健康保険団体連合会「インターネット請求を始める際の準備について」)

送信後の受付の確認

請求は、各月分について翌月10日までに行います(請求命令第3条第1項)。伝送による請求は、審査支払機関のファイルに記録された時に到達したものとみなされます(同条第2項)。送信の操作をしても、エラーなどで記録されなければ、到達したことになりません。送信したあとは、受け付けられたことまで確かめてください。期限までに受け付けられなければ、入金が遅れます。事業所の資金繰りを通じて、利用者へのサービスを続ける体制にも響きます。

請求ソフトを比べるときは、送信の結果や受付の状況を画面で確かめやすいかを、試用や説明の場で見ます。期限から逆算した月の段取りは「介護請求の締め日」で解説しています。受け付けられたあとも、審査で請求が戻されることがあります。返戻や過誤への対応のしやすさは、伝送の機能とは別の比較の観点です。「介護請求の返戻とは」で紹介しています。

(参考:請求命令 第3条)

下の表は、介護ソフトの製品例です。国保連伝送への対応の有無は各社の公式サイトで、送信の形は提供元に確かめてください。5製品の伝送への対応を調べた表は「介護請求ソフトの比較の基準と5製品を調べた表」にあります。

製品名特徴料金
まもる君クラウド
公式サイト ↗
記録、請求、売上管理をクラウドで提供。端末を選ばず利用できる。初期費用+月額初期0円、月額7,800円~(税別。1事業所番号・1サービスあたり。60日間無料体験あり)
ケア樹
公式サイト ↗
介護記録と請求をクラウドで管理し、IoT機器やインカムとの連携にも対応する。年額ケア樹Freeは月額システム利用料0円で、事業所・サービスごとの年間費用。例:特養・老健・特定施設は1年目878,000円、2年目378,000円(税別)。施設以外は2年目以降サポート解除で年間最安9,800円(2か月無料体験あり)
楽々ケアクラウド
公式サイト ↗
介護保険の請求、利用者管理、計画・実績管理をクラウドで行う。初期費用+月額初期20,000円、月額8,150円~(税別)

まとめ

国保連への請求は、伝送か光ディスク等が原則です。請求ソフトが伝送に対応していても、国保連への届出と電子証明書がそろうまで請求は始められません。まず、請求先の国保連の案内で、届出の様式と時期を確かめてください。次に、事業所単独請求か代理人請求かを決めます。そのうえで、その形で送信できるかと、送信結果の確かめ方をソフトの提供元に聞きます。手続は、開始したい月から逆算して始めましょう。

参考